東光高岳 【東証プライム:6617】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「お客さまと共に新たな価値を創造します」、「ものづくりを究めます」、「限りない変革への挑戦を続けます」を企業理念とし、お客さまの信頼と、技術への情熱を大切に、新たな可能性に挑み続ける企業づくりを目指しております。電力ネットワークをトータルにサポートする企業として、これまでの電力流通システムのモノ売りから、エネルギー利用の高度化・多様化に対応した事業で、「サステナブル社会」に貢献してまいります。
(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、当連結会計年度において、前連結会計年度に続いて過去最高の営業利益を達成することができました。
しかしながら、2023年5月の変成器類の不適切事案の公表後(2023年5月16日に公表)※1に進めている当社グループ大の全製品を対象とした品質に係る総点検(以下、「品質総点検」という。)の中で、特別高圧変圧器類の不適切事案(2024年1月22日に公表)※2及び変成器類の一部製品における不適切事案(2024年5月14日に公表)※3が判明いたしました。
お客さまや関係者の皆様へ多大なるご迷惑とご心配をお掛けしていることを改めて深くお詫び申し上げます。
当社は現在、品質総点検の最終的な取り纏め作業を進めており、並行して、当社とは利害関係のない独立した調査・検証委員会による事案の調査や原因分析等が行われています。なお、調査・検証委員会から、2024年5月14日に特別高圧変圧器類の不適切事案に関する調査検証委員会の中間報告書を受領し、同日付けで公表※4しております。当社は、この中間報告書の内容を真摯に受け止め、現行の再発防止策(①品質マネジメントシステム(QMS)の再構築②人財育成の強化③コミュニケーションの充実④意識・風土改革)について、必要に応じて適宜見直し・強化を図ってまいります。
また、現在当社内で進めている品質総点検の結果や、同点検等のプロセスに対する評価・検証及び内部統制システム全般に関する調査・評価を目的とした調査・検証委員会による追加の報告書(以下、「追加報告書」という。)での評価・提言内容も踏まえて、当社が「安全・品質・コンプライアンスを最優先とする企業へと再生するための改革施策」を策定・実行してまいります。なお、品質総点検の調査結果や上記の改革施策につきましては、取り纏め次第、速やかに公表してまいります。
当社は、一連の不適切事案の真因究明と再発防止策の徹底を図ると共に、当社グループ大でのコンプライアンスの一層の強化に取り組み、当社グループの信頼回復に全力で取り組んでまいります。
※1 当社HP(https://ssl4.eir-parts.net/doc/6617/tdnet/2283237/00.pdf)にて公開しております。
※2 当社HP(https://ssl4.eir-parts.net/doc/6617/tdnet/2382637/00.pdf)にて公開しております。
※3 当社HP(https://ssl4.eir-parts.net/doc/6617/tdnet/2440387/00.pdf)にて公開しております。
※4 当社HP(https://ssl4.eir-parts.net/doc/6617/tdnet/2440388/00.pdf)にて公開しております。
このような状況下、当社は2024年4月25日に公表しました通り、次期中期経営計画の編成を1年間延期することといたしました。これは、安全・品質・コンプライアンスを最優先とする企業へと再生することが当社の最重要課題と認識し、この課題への対応に集中し方向性を定めたうえで、改めて持続的成長を目指す次期中期経営計画を編成し、ステークホルダーの皆様へお示しすべきとの判断によるものです。
次に、当社グループを取り巻く状況ですが、最大取引先である電力業界においては、世界的な燃料価格の高騰や小売り事業における更なる競争の激化に加え、カーボンニュートラルの実現、電力需給の安定性の確保、地域社会の防災・レジリエンス強化への要請、新しい託送料金制度であるレベニューキャップ制度など、事業環境が大きく変化すると共に一層厳しくなっており、生産性向上と徹底的なコスト削減が各社で進められております。一方、脱炭素社会の実現に向けては、日本政府が2050年カーボンニュートラル宣言をしたことにより、国内では再生可能エネルギーを含めた分散型エネルギー関連設備の更なる普及や、電気自動車向け急速充電器需要が立ち上がりつつあります。
このような状況下、当社グループは次の取り組みを実施しております。
<1>安全・品質・コンプライアンスを最優先とする企業へと再生するための改革への取り組み
当社は、2021年に公表したガス絶縁開閉装置及び自動開閉器用遠方制御器の不適切事案を受け、以下の再発防止策(①品質マネジメントシステム(QMS)の再構築②人財育成の強化③コミュニケーションの充実④意識・風土改革)を進めておりますが、調査・検証委員会より受領した中間報告書の内容を真摯に受け止め、当該再発防止策について、必要に応じ適宜見直し・強化を図ってまいります。
また、品質総点検の結果と、調査・検証委員会による最終報告書での評価・提言内容も踏まえて、当社が「安全・品質・コンプライアンスを最優先とする企業へと再生するための改革施策」を策定・実行してまいります。
1)品質マネジメントシステム(QMS)の再構築につきましては、(1)社内マニュアル類の総点検と体系的整理・見える化、(2)規格改正情報のタイムリーな収集とマニュアル反映の強化(3)規格遵守状況のモニタリング強化を進め、一連の品質に係る不適切事案の再発防止の基礎となる公的規格・社内規程を遵守するための基盤を構築しております。
2)人財育成の強化につきましては、(1)マネジメント層の強化(2)品質保証部門への研修、全社員向け教育の充実を進め、品質管理のプロセス、及び製品やサービスの品質を監視する仕組み・ルールを遵守するための人財教育を強化しております。
3)コミュニケーションの充実につきましては、(1)経営層と第一線職場の物理的・精神的な距離を近づける(2)職場コミュニケーションの充実・風通しのよい職場づくりを進め、ミスやトラブルの報告をためらうことのない活性化したコミュニケーションを充実させ、円滑かつ正しい業務遂行に向けた情報共有を密に行っております。
4)意識・風土改革につきましては、(1)品質第一主義の徹底(2)職場ミッションの再定義・共有(3)SQCD向上へのカイゼン&DXの推進(4)内向き・閉鎖的風土の打破を進め、誤った考え方や暗黙の規範の撲滅、ルール不備の見直し、社員の行動変容に向けた制度の整備に取り組んでおります。
<2>2030VISIONに向けて
当社グループは、2021年4月に「2030VISION」を策定し、「コア事業の深化・変革」、「事業基盤の構造転換」、「2030将来像開拓への挑戦」の3つの基本方針のもと、既存事業の変革と新規事業の開拓を同時に行う両利きの経営に取り組んできております。
このような状況下、以下の取り組みを実施しております。各取り組みの詳細は次頁から記載の通りです。
Ⅰ 「東光高岳グループ企業行動憲章」の改定及び「東光高岳グループ人権方針」の制定
Ⅱ マテリアリティとありたい姿の特定
Ⅲ 2023年3月末に東京証券取引所より通達発信された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を受けた現状認識と改善に向けた方針・目標と対応策の立案
① 「東光高岳グループ企業行動憲章」の改定及び「東光高岳グループ人権方針」の制定
サステナビリティを巡る課題の1つである「人権の尊重」に関する取り組みをより具体化・加速化させることを目的に、2023年8月29日に「東光高岳グループ企業行動憲章」を改定し、また以下の通り「東光高岳グループ人権方針(以下、「本方針」という。)」を制定しました。
「東光高岳グループ人権方針」
1)人権尊重へのコミットメント
「国際人権章典」、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、「ビジネスと人権に関する指導原則」など、人権に関する国際規範を尊重します。
事業活動を行う国・地域で適用される法令を遵守します。なお、人権に関する国際規範が各国・地域の法令と相反する場合は、人権に関する国際規範を尊重するための方法を追求します。
2)人権方針の適用範囲
本方針は、東光高岳グループのすべての役員・従業員に適用します。また、事業活動のすべてのプロセスにおいて関わるステークホルダーに対しても、本方針を理解・支持いただくことを求めます。
3)人権尊重の取り組み
事業活動のすべてのプロセスにおいて関わるステークホルダーの人権を尊重し、人種、民族、国籍、性別、性的指向、性自認、年齢、出身、社会的身分、信条、宗教、疾病・障がいの有無、身体的特徴などを理由にしたあらゆる差別や人権侵害を行いません。真に人権が尊重される社会の実現のために、多様化する人権問題をすべての役員・従業員一人ひとりが自らの問題ととらえ、豊かな人権感覚を持って行動に結びつける企業風土の醸成を推進します。
4)人権デュー・デリジェンスの実施
ビジネスと人権に関する指導原則に従って、事業活動において起こりうる顕在的または潜在的な人権への負の影響を定期的に評価し、未然防止・軽減する仕組みを構築し継続的に実施します。
5)救済・是正
人権への負の影響を引き起こしたり助長したりすることが明らかになった場合には、適切な手段を通じてその是正に取り組みます。
また、実効性のある救済措置として、社内外のステークホルダーが利用可能な通報窓口を設置し、運営します。窓口への通報者に対して、匿名性・秘匿性を担保し、不利益な取り扱いを受けることがないように保護します。
6)教育
本方針が事業活動の中で効果的に実施されるために、すべての役員・従業員に対して適切な教育に取り組みます。
7)情報開示
本方針に基づく人権尊重の取り組みについては、当社ホームページや統合報告書を通じて開示します。
8)ステークホルダーとの対話・協議
本方針に基づく人権の尊重の取り組みについて、ステークホルダーとの対話や協議を行います。
② マテリアリティとありたい姿の特定
当社は、2021年12月27日にお知らせしたとおり「サステナビリティ基本方針」を策定しております。それは、「変わらぬ使命」と「新たな使命」という二つの使命を果たしつつ、社会とともに持続的な成長を遂げることを目的として策定した「東光高岳グループ企業行動憲章」の実践を基本方針としております。
また、この基本方針に従い、様々なサステナビリティ課題に取り組んでおります。
2023年12月22日には、経営戦略とサステナビリティ基本方針の取り組みの連動を更に深めるとともに、持続可能な社会の実現と持続的な企業価値向上のために当社が優先的に取り組むべき重要課題「マテリアリティ」を特定しました。あわせて、マテリアリティを解決できた長期的な当社のありたい姿も特定しました。
マテリアリティは、棚卸しした当社の価値創造プロセスや経営方針、当社の事業に影響を及ぼす産業のメガトレンドや外部環境などをもとにサステナビリティ課題を抽出、課題の重要性評価をおこない、経営層を中心に議論を重ね、特定しました。
また、マテリアリティを解決できた状態を当社のありたい姿として定義して、経営層を中心に議論を重ね、言語化しました。
今後、マテリアリティとありたい姿に紐づいた具体的なKGI、KPIを次期中期経営計画にて設定してまいります。
マテリアリティ | ありたい姿 |
電力の安定供給と 高度利用への貢献 |
電力ネットワークのS+3E(安全+安定供給、経済性、環境性)を支える製品やサービスの高度化とイノベーションを追求し続け、世界中が皆が豊かで安心できる暮らしや社会経済活動の発展に貢献し、広く認知されている状態
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カーボンニュートラル への貢献 |
再生可能エネルギーの普及拡大や電化の促進、電力・エネルギーの効率利用に貢献する製品・ソリューションの提供、環境負荷の低い製品・サービスの開発・供給を通じて、お客さま、そして世界がカーボンニュートラルに近づくことを手助けしている状態 当社の生産活動を含むサプライチェーン全体で、カーボンネガティブとなるロードマップが描けている状態
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多様な人材が共創し、 挑戦し続ける、 活力ある人と組織の実現 |
従業員一人ひとりが自律したプロの企業人として、自らの専門性を高め変革に挑戦し、また多様な能力・経験・価値観を持った人材が集い、共創することで組織力を最大化する、活力ある人と組織が実現できた状態 その結果、お客さまの満足度向上、企業価値の向上、従業員の成長と幸福度向上のWin-Win-Winが実現出来た状態
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ステークホルダー・ エンゲージメント |
ステークホルダー(株主、顧客、ビジネスパートナー、社会、従業員)の方々に対し、双方向にコミュニケーションを取って経営に活かすことで、当社の取り組みや存在価値の理解が得られているとともに健全で透明性のある会社になっている状態 また、公平で適正な取引が出来ていることも併せ、Win-Winの関係性が築かれ、信頼され応援して頂いている状態
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安全・品質・コンプライアンスの確保と ガバナンスの強化 |
一人ひとりが安全・品質・コンプライアンスの意識を高め、「お客さまのために、社会のために、私たちが目指す明日のために」を合言葉に、日々の仕事や生活の中で「Do the right things right」を実践している状態 上記を含め、企業としてのありたい姿を実現するために迅速かつ適切な経営判断を下すガバナンス体制が築かれ、企業の持続的成長に向けてカイゼン・強化を続けている状態
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③ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について
(2021~2023年度の現状認識)
・当社のPBRは0.5~0.7倍程度であり、近年上昇しているものの1倍を割れている状況です。
・1倍割れの主要因は、ROEが低いことにあり、ROE要素の中では売上高当期純利益率が低い状況です。
コア事業の強化とこれの両輪となる新たな成長事業の育成が課題と考えております。
・また、資本収益性については、エクイティスプレッド「ROE-株主資本コスト」の確保が十分ではありません。
・PERにおいては、持続的成長に向けた事業戦略の具体性が十分でなく、ステークホルダーの理解を得られていないことや会社・事業内容の認知度が低いこと、IR活動が途上であること等に課題があります。
・その他、近年の業績上昇に伴い配当性向が低下傾向にあります。
<2021~2023年度の当社PBR・ROE・PERのレンジ>
PBR 0.5~0.7倍 | = | ROE 5.5~8.3% | × | PER 7.3~13.0倍 |
2021~2023年度 指標推移
| 株価 | 配当 利回り | 配当性向 | PBR | PER | ROE | ROE分解 | ||
売上高 当期純利益率 | 総資産 回転率 | 財務 レバレッジ | |||||||
2021年度 | 1,479円 | 3.4% | 24.6% | 0.46倍 | 7.3倍 | 6.5% | 3.6% | 0.9回 | 2.0倍 |
2022年度 | 2,351円 | 2.3% | 30.4% | 0.71倍 | 13.0倍 | 5.5% | 3.0% | 0.9回 | 2.0倍 |
2023年度 | 2,572円 | 2.3% | 20.7% | 0.71倍 | 8.9倍 | 8.3% | 4.3% | 1.0回 | 2.0倍 |
(改善に向けた方針・目標と対応策等)
・資本コストを意識した経営を志し、資本コストを上回るリターンを創出し企業価値の向上を目指していきます。
・そのために、まずはROE8%以上の水準を達成し、PBR1倍の早期達成を目指していきます。
・長期的には、2030年度に資本コストを上回るROE10%以上とし、PBR1倍超の達成を目指します。
・なお、次期中期経営計画公表に合わせ、PBR1倍の目標時期や中長期戦略等について開示していきます。
(3) 目標とする経営指標
2024年度の目標とする経営指標については以下の通りであります。
次期中期経営計画につきましては、2025年4月を目途に公表する予定です。
| 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
(実績) | (実績) | (実績) | (予想) | |
売上高 | 919億円 | 977億円 | 1,073億円 | 1,050億円 |
営業利益 | 46億円 (5.0%) | 48億円 (5.0%) | 82億円 (7.7%) | 40億円 (3.8%) |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 32億円 | 29億円 | 46億円 | 25億円 |
ROE <自己資本利益率> | 6.5% | 5.5% | 8.3% | 4.2% |
ROA <純利益ベース> | 3.3% | 2.8% | 4.2% | 2.1% |
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