日本航空電子工業 【東証プライム:6807】「電気機器」 へ投稿
企業概要
当社グループは、グローバルな視点での事業運営と顧客価値の追求に徹し、優れた製品をタイムリーに市場に供給するため、グローバルマーケティング力の強化及び技術開発力の強化を積極的に推進しております。これを牽引し支えるために、商品開発センターにおいては、基礎・応用技術の研究開発を主体に、各事業部の技術部門においては、所管事業に関する新製品、新製法の開発を主体に、それぞれが連携をとりながら長年にわたって培ってきた経験と実績を生かして研究開発活動を実施しております。また、各生産子会社は、所管製品に関連する事業部との密接な連携のもとに新製法の開発を主体に取り組んでおります。
当連結会計年度におけるセグメント別の主な研究開発成果は次のとおりであります。
(1) 商品開発センター
IoT社会に貢献する探索研究に取り組んでいます。具体的には柔軟性や伸縮性という新たな電気接続の市場要求に応えるべくフィルム型コネクタ(Film Type Connector:以下FTC)の研究を継続し、FTCをモビリティやヘルスケアなどで使用されるセンサモジュールに搭載し、お客様と協業して製品適用を目指しております。また、FTCは柔軟性や伸縮性による電気機器内の省スペース化に加え、はんだや接着剤レスによる省資源、省エネルギー化というカーボンニュートラル対策にも繋がるものであります。
一方、IoT領域拡張の鍵となるセンサおよび解析技術分野では、構造物診断市場への参入を目的として、独自に開発したMEMS加速度計を用いた高精度のセンサシステムによる橋梁の劣化診断研究を継続しております。大学や地方自治体と連携し、このセンサシステムを一般道と高速道路上の橋梁に設置した実証実験を行い、劣化診断に資するデータ取得技術の向上に加え、道路事業者と連携し事業性を調査しております。
この他、産学官連携で独自の水位計システムを山岳エリアに設置し、過疎化する山岳農村地帯の安全確保に貢献すべく地すべりセンシングの実証実験を継続しております。また、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の研究助成の下、産学連携を通じて、ウイルスなどの生体物質の多数検体同時検査を目指した多点電気化学測定システムを試作し、ビジネス化に向けた新興国のニーズ探索を目的とする実証実験も行いました。これらの活動を通じて、IoTによるデータ駆動型のビジネス創出(デジタルデータを有効活用した商品開発)に必要なデータ統合・解析・呈示技術、省電力化技術、ならびにニーズ探索手法などが醸成されました。
量子センサの開発では、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業の下、資源探査や自動運転などに貢献すべく高感度センサとそれを利用した次世代航法システム開発を推進しました。今後はJSTの経済安全保障プロジェクトにて技術開発を継続しこのプロジェクトを通じて、当社事業を支える将来のセンサシステムの構築を目指します。
モノづくり面では、電磁両立性(EMC)解析技術や材料分析技術による製品設計へのフィードバック強化に加え、カーボンニュートラルの実現に向け、再生材料や植物由来材料の特性把握を目指す材料分析研究も進めております。また、撥水付与や潤滑や摩耗といった現象に関する材料特性の制御技術を磨き上げ、EV充電端子などの接点部における金属めっき膜の摩耗を大幅に抑制する接点界面の設計技術 「wearzerO™ 」を一部の製品に適用し、摩耗抑制に加え、材料使用量の低減なども実現しております。
(2) コネクタ事業
製品開発では、スマートフォンやPCをはじめとするICT(情報通信技術)が、広く社会に浸透し、自動車市場における車載インフォテインメントシステムなどでも広がりを見せている中で、当社の強みである小型で堅ろうなICT機器向けコネクタである、狭ピッチ基板対基板(FPC)コネクタ「WP26DK」シリーズとUSB Type-C®コネクタ「DX07」シリーズを、より厳しい車載環境相当の試験にも適合する製品として販売を開始しました。また、microSD™・microSIM・nanoSIMなどのカード用コネクタの自動車市場対応も進めております。
車載のECU(Electronic Control Unit)とディスプレイ間の映像信号伝送や、車内のPC、スマートフォン、ゲーム機器との通信のニーズに対応して、USB3.2伝送(最大データ転送速度20Gbps)やDisplayPort1.4伝送(最大データ転送速度32.4Gbps)を可能とした車載向けコネクタ「MA07」シリーズを開発しました。本品は、民生市場で拡大しているUSB3.2伝送などの高速伝送性能に加え、車載対応として4種類のかん合キーバリエーション、また斜め挿入を防止するアウターハウジングを採用した堅ろう構造、さらにかん合時の明確なクリック感とかん合音が得られるロック構造を装備しており、自動車内装のハーネス組立ラインにおいて目視が困難な場合でも、未かん合を防止できる製品となっております。その他に車載向けでは、自動運転などで用いられるカメラの性能向上に応じ、高度な伝送特性に加え、高周波ノイズ耐性を高次元で実現する車載高周波コネクタの研究開発を進めております。
車載向け以外では、データセンター通信業界最速クラスの224Gbpsに対応するハイスピードコネクタの開発を進めております。またUSB4®(~20Gbps)対応のリタイマ―を内蔵したハーネスの開発においては、ケーブルの細径長尺化、信号と電源のライン共用による省資源及び軽量化の研究を進めております。
生産技術開発では、携帯機器用、車載用、インフラ用コネクタを中心に、組立工程、ハーネス加工工程における自動化設備開発による省人化を進め、作業人員確保が困難な状況や人件費高騰への対応を強化するとともに高品質、低価格の製品の実現を目指しております。車載ハーネス工程では、完全自動化ラインの開発に取り組み、生産ラインの省人化及び品質安定性を大きく向上させるとともに、属人的なモノづくりから改善を図りました。また成形工程、プレス工程、表面処理加工工程におけるシミュレーションソフトを導入し、部品の加工工程を事前にシミュレーションすることで、手戻りのない効率的な開発及び改善活動を引き続き推進しております。
サステナビリティに関する取り組みとして、バイオマスやリサイクル材料を活用した部品生産のノウハウ構築や、検査工程において、必要な機能に絞り込むとともに消費電力を抑制した高周波対応の検査回路の開発など、サステナブルな生産に向け取り組んでおります。
基盤技術開発では、洗濯対応スマート衣料向けコネクタの小型化や多品種化の検討開発や、次世代車載ネットワークの光化に向けた車載用AOC(Active Optical Cable)の研究開発、車載コネクタ及びハーネスの電磁ノイズ低減技術と100GHz伝送解析技術などの開発を推進しております。また、振動解析技術、熱環境下でのゴム解析技術、最適化解析技術の研究に取り組んでおります。大電流対応としては、アルミ太径電線とコンタクトの超音波結線技術の開発と、大電流コネクタ接点の長寿命化の研究を推進しております。
新領域である高性能アンテナでは、金属製表面実装アンテナ「AN01」「AN02」シリーズに加えて、新たなラインアップとして同軸ケーブル付PCBアンテナ「AP01」、同軸ケーブル付FPCアンテナ「AP02」シリーズの開発を行いました。「AP01」「AP02」シリーズは、アンテナに接続した同軸ケーブルを介して、通信用回路基板から離れた場所にも配置できるのが特徴で、取り付け場所の自由度が高いというメリットやスプリットリング共振器構造による小型化、高い放射効率及び金属接近時の特性向上を実現しております。
※microSD™のロゴはSD-3C, LLCの商標です。
USB4®、USB Type-C®はUSB Implementers Forum, Inc.の登録商標です。
(3) インターフェース・ソリューション事業
自動車市場では自動運転技術の進展に伴い、LiDAR等ADASセンサの搭載が拡大しており、これまで車室内用タッチセンサ向けに開発してきたメタルメッシュ印刷技術と、低反射・透過性・防汚性といった機能を付与できる表面処理技術を活用する為の開発を進めております。ADASセンサでは、雪や霜の付着による性能低下が課題であり、素早い解氷・除霜機能をもつヒーターが求められており、低抵抗且つ高精細といった特徴を持つ当社のメタルメッシュ印刷技術では、均一な熱分布と素早い昇温を実現する事が可能となります。また、ADASセンサを保護するカバーは、表面処理技術の応用で、高い透過性の実現により、センサ性能向上に繋がります。これらの実現に向け、構造設計、シミュレーション技術を駆使した透過性能の作り込み、量産プロセス開発に取り組んでおります。また、メタルメッシュ印刷技術の更なる用途拡大に向け、印刷技術をより高度化する研究を産学連携で取り組んでおります。
産機・インフラ市場では、ロボット用操作端末の作業者の疲労軽減や操作性向上に取り組んでおり、製品重量が軽く感じる低重心化などの設計を盛り込んだ試作品を展示会へ出展しました。
(4) 航機事業
ドローン市場向け製品では、都市部での実用化を想定し、より安全性を向上させたフライトコントローラの冗長化機能の研究と、従来製品である電波高度計の計測範囲を拡大し、高度計測だけでなく水平方向の障害物も検知可能な電波距離計の開発を進めております。
産機市場向け製品開発では、ICT建機向けの小型IMUについて、振動、衝撃等のより厳しい耐環境性への対応技術の研究を継続しており、実証モデルによる実運用を想定した環境での評価試験が完了し、量産化に向けたハードウエアでの最終検証を実施しております。また、スマート農業における農機の自動運転化に向けた小型IMUについては、GNSS信号を受信できない環境でも位置精度を保持出来る慣性アルゴリズムの開発を進めております。
高性能光応用センサでは、将来防衛市場製品への適用も視野に入れた小型化・高精度化及び耐環境性能向上のための製品開発を行っております。
以上の研究開発費総額は10,922百万円であります。
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