日本テレビホールディングス 【東証プライム:9404】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、メディア・コンテンツ事業においては、地上波テレビ放送で長年培ってきたコンテンツ制作力と媒体力をコアコンピタンスとし、事業を拡大し成長させてまいりました。しかし、インターネットメディアの普及等に伴うコンテンツ視聴環境の変化や、それに伴う広告手法の進化によって、インターネット広告へのシフト、動画配信市場の拡大等が進み、テレビが持つメディアとしてのパワーの維持が大きな課題となっています。また、オリンピック等の大型スポーツイベントを中心に放送権料が高騰しているほか、5Gなどの新技術対応のためのコストも必要となり、収益の確保が難しくなってきていると認識しています。一方で、インターネットを通じた動画配信事業は、社会のデジタルシフトを受け、市場全体が右肩上がりに成長していくことが見込まれているものの、豊富な資金力を有する外資系企業が日本に進出しているほか、国内配信事業の統合もあり、会員獲得に多額の投資が必要なビジネスモデルとなっていることから、厳しい競争環境に晒されています。
生活・健康関連事業においては、総合型スポーツクラブから特化型スポーツクラブへの利用者ニーズの移行に伴い、小規模事業者の新規参入が容易な状況となっており、24時間営業のトレーニングジム、ホットヨガ、ストレッチ専門店等に加え、アプリ等を利用した自主トレーニングなど多様化が進んでおります。また、コロナ禍において減少した会員数の回復に時間を要しているなど、厳しい状況が継続しています。
これらに加えて、急激な社会のデジタル化へのシフト、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化などの世界情勢不安、甚大な被害を伴う自然災害といった外的要因による大きな経営環境の変化が生じております。当社グループはこのような経営環境の変化に適切に対処し、進化していくことが重要な課題であると認識しております。
当社グループは2022年5月、経営方針を新しく定めるとともに、2022年度から2024年度を計画期間とする中期経営計画を策定し、当連結会計年度はその2年目に該当します。中期経営計画2022-2024は、「総合コンテンツ企業」への進化を目指した前中期経営計画をさらに深化・拡張させ、あらゆる感動を創造し、生活者に信頼されるNo.1企業となるための取り組みと目標を示すものです。
(2) 経営方針及び基本姿勢
経営方針
感動×信頼のNo.1企業へ
生活者にとってのいちばんに、クリエイターにとってのいちばんに。
日本テレビグループはあらゆる感動を創造し、信頼されるNo.1企業を目指します。
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基本姿勢
メディアの信頼性向上・サステナビリティへの恒常的な取り組み
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当社グループは、すべてのステークホルダーから信頼されるコンテンツ・サービスを提供し、報道機関として迅速・正確な報道の強化に努めます。また、サステナビリティポリシーに則り、多様な人材の活躍と共生を支援し、社会的責任を果たしていきます。
■報道の信頼性向上
▶報道機関として公平・公正さを保ち、迅速・正確な情報を発信し、信頼性を高めます。
▶言論および表現の自由を確保し、健全な民主主義の発展に尽くすことで社会の信頼に応えます。
▶放送とインターネットの両輪による安心・安全な情報の発信に努めます。
■サステナビリティへの恒常的な取り組み
▶サステナビリティポリシーに則り、あらゆる活動をクリエイティブに発想し、持続可能な未来に向けて積極果敢に取り組みます。
・Good For the Planet(※1)の地上波にとどまらない通年発信
・健康経営の推進、DXによるワークライフバランスの実現 など
(3) 中期経営計画2022-2024
中期経営計画のスローガン
「テレビを超えろ、ボーダーを超えろ。」
感動×信頼のNo.1企業として メディア、国境、固定概念、すべての境界を超えた新しい感動体験を創造しよう。
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中期経営計画2022-2024重点目標
コンテンツの価値最大化
新規ビジネス創出の加速
ウェルネス経済圏の構築
①中期経営計画2022-2024の取り組み
メディア・コンテンツ事業領域においては「コンテンツ中心主義」を改めて掲げ、あらゆるプラットフォーム、デバイスに向けて生活者に最適なコンテンツを制作します。また、外部パートナーとの協業・共創を推進し、国内外に向けて発信していきます。
さらに、VTuber事業を始めとした社内インキュベーション事業の強化・拡充を図るとともに、新たな領域への投資機会を追求し、新規ビジネスの創出を加速させます。また、ティップネスを始めとしたウェルネス経済圏を構築し、国民の健康寿命の伸長に貢献します。
当社グループは、あらゆるボーダーを超えた「感動×信頼のNo.1企業」として、生活者に新たな価値を提供し、企業価値のさらなる向上に取り組んでまいります。
A コンテンツの価値最大化
コンテンツ戦略本部の設立
▶顧客体験価値(カスタマーエクスペリエンス)を重視し、これまで以上にメディア横断的に生活者が見たいコンテンツを届けるためのコンテンツ制作・指揮組織を作ります。
▶戦略的パートナー ウォルト・ディズニー・ジャパンなどとのコンテンツ共同開発により、世界配信強化を図ります。
▶海外展開を軸としたアニメ事業の強化を行い、利益最大化での配信を目指します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶コンテンツ戦略本部を中心に、放送・配信を統合した総合編成戦略を強化し、コンテンツのPF最適化、生活者接点の最大化に向けたコンテンツ制作の指揮コントロールに努めています。引き続き、「生活者接点No.1」の実現を目指してまいります。
▶日本テレビ系2023年1月期ドラマ「ブラッシュアップライフ」及び2023年7月期ドラマ「こっち向いてよ向井くん」のNetflixグローバル配信を行いました。また、2024年度に向けてドラマ・配信一括制作の「ACMA:GAME」プロジェクトをスタートさせました。本作は、地上波放送後にTVerとHuluに加えPrime Videoで国内配信を行っている他、多くの国と地域において世界配信も実現しました。ウォルト・ディズニー・ジャパン㈱との取り組みではHuluとディズニープラスとのセットプランをスタートするなど連携を深めています。今後も、世界市場に向けたコンテンツの共同開発を目指してまいります。
▶2023年10月からスタートした金曜23時台の新アニメ枠、「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」にて第一弾「葬送のフリーレン」を放送し、日本テレビ系「金曜ロードショー」での初回2時間スペシャルも大きな話題となりました。また、土曜24時台枠では「薬屋のひとりごと」を2クール連続で放送し、2023年に放送・配信が開始された新作アニメ番組の中でTVerでの総再生数1位を記録しました。今後も、グローバル展開の強化、有力な原作の獲得及びグループ会社である㈱スタジオジブリ、㈱マッドハウス、㈱タツノコプロ等との連携をさらに強め、アニメ事業の拡大を目指してまいります。
知的財産(IP)コンテンツの開発
▶Nizi Project、THE FIRSTに次ぐ大型IP開発を推進します。
▶ビーグリーとの共創、メディアミックス展開により原作クリエイターの発掘・育成を行い、世界でヒットする新規IPを開発します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶第2のBiSHを作るオーディション番組「BiSH THE NEXT」から、人気絶頂の中で解散したBiSHの魂を継ぐ6名の男女混合グループ「BiTE A SHOCK」が誕生。2023年7月の「THE MUSIC DAY」で華々しいデビューを飾りました。また、NiziUを生んだ「Nizi Project」のシーズン2、J.Y.Parkによるボーイズグループオーディションを行い、昨年12月に7人組ボーイズグループ「NEXZ(ネクスジ)」が誕生しました。
▶BE:FIRSTの生みの親SKY-HIと日本テレビが手掛ける、番組&イベントプロジェクト「D.U.N.K.-DANCE UNIVERSE NEVER KILLED-」の第二弾を2023年12月に京セラドームで行うなど、自社が関与したヒトIP(グループやアーティストを生み出す、またはブーストする過程における権利)との良好な関係を築き、収益性の高い主催LIVE興行を行うことが出来ています。
▶今後は、更なるヒトIPの精度の向上、新しいジャンルへの挑戦の他、自社が関与したIPを活かしたデジタル展開の拡大及び海外進出の強化を図ってまいります。
新たな共創体制の構築
▶ムラヤマ、ビーグリー、ディズニーに続く共創体制の構築機会を追求します。
▶アフターコロナ時代に向けた、共創によるリアルイベント制作体制強化を図ります。
(当連結会計年度の取り組み)
▶2023年10月に㈱スタジオジブリの株式を追加取得し、子会社化しました。英国演劇界で最も権威のある「ローレンス・オリビエ賞」で6冠を獲得した舞台「となりのトトロ」について、2023年度もロンドン公演を開催した他、展覧会「金曜ロードショーとジブリ展」を東京と富山で開催しました。今後も引き続き全国各地で開催していきます。2024年度は展覧会「ジブリパークとジブリ展」を開催するなど、引き続き共創を進めてまいります。
▶また、前年に引き続き㈱アールビーズとの共創による「カラダWEEK47都道府県対抗ウオーキングバトル」の開催など、当社グループ内の共創によるリアルイベントの制作体制強化を着実に推進しております。
B 新規ビジネス創出の加速
社内インキュベーションからの新規事業確立
▶VTuber事業はClaN Entertainmentへの分社化と人材採用強化でインフルエンサーに特化したエンターテイメント企業へと進化させます。
▶HR事業(※2)・XR事業(※3)について、独立した事業として体制を構築します。
▶上記に続く新規事業を社内インキュベーションから立ち上げます。
(当連結会計年度の取り組み)
▶㈱ClaN Entertainmentは分社化後も順調に事業を拡大しており、2023年7月にはバーチャルアーティストとリアルアーティスト双方による祭典「バズリズム LIVE V 2023」を開催しました。
▶XR事業を手掛ける「日テレXR」では、新たな没入体験および撮影ができるサービス「mixta IMMERSIVE Shot」をリリースしました。ディズニー・アニメーションへの没入体験を楽しめるイベント「ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス」では「日テレXR」が技術面を担うなど、事業の幅を拡大しています。
▶2018年に開始したeスポーツ事業は順調に事業を拡大しています。大会・イベント部門では「ポケモンユナイト甲子園2023」等の大型イベントを開催いたしました。また、子会社であるアックスエンターテインメント㈱が担うチーム事業では、AXIZシャドウバース部門が対戦型オンライントレーディングカードゲーム「Shadowverse」の大会「RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 23-24 CHAMPIONSHIP」で年間王者となった他、AXIZ WAVE(第五人格部門)が2年連続で世界大会に出場する等、順調に成果を上げています。
▶トップアスリートを多数集めたアスリート派遣マッチング事業である「Dream Coaching」では、スポーツ庁によるアスリート全国学校派遣プロジェクト「アスリーチ」事業を受託して全国622校にアスリートを派遣する等、事業の幅を拡大しています。
▶その他にも、新たな社内インキュベーション事業として、人気声優陣演じる、星座の王子様が星占いを毎週届けるサブスクリプションサービス「君ノ隣ニ座ル星。」をローンチいたしました。
新規事業領域への投資機会の追求
▶当社グループならではの価値を創造できる領域の探索・進出を行い、M&Aを含め、収益の柱となる事業領域への投資機会を追求します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶2023年7月には、VR/XRコンテンツの制作と配信プラットフォーム事業を手掛ける㈱アルファコードへの出資を行い、同社とのジョイントベンチャーとしてVR/XRコンテンツ制作を担う㈱NeoRealXを設立しました。日本テレビが持つ企画力やコンテンツ力と㈱アルファコードが持つVR/XR関連技術を結集し、VR/XRコンテンツの制作や配信及びビジネス創出に取り組んでいきます。
▶2023年9月にはeスポーツ事業の更なる拡大に向けて、㈱JCGを子会社化しました。数々のeスポーツ大会を手掛けてきた㈱JCGの実績とノウハウと当社グループのメディアパワーやコンテンツプロデュース力を融合してeスポーツ業界の更なる活性化を目指します。
▶新規事業創出及び戦略的投資に際しては、当社グループならではの価値を創造できる領域の探索・進出を引き続き行っています。
C ウェルネス経済圏の構築
CDP(顧客情報システム)構想によるウェルネス経済圏
▶ティップネスの顧客情報を、当社グループが持つ他の顧客情報と併せて活用することにより、生活者個々に寄り添った生活満足度の向上に寄与します。
▶CDPの活用を検討する委員会を発足、ウェルネス事業者CDPとの連携を行いサービスの付加価値をさらに向上させていきます。
(当連結会計年度の取り組み)
▶㈱ティップネスをご利用の皆様への満足度を高めるべく、前連結会計年度に立ち上げたCDP開発プロジェクトチームにより、次年度に導入するフィットネス支援アプリの開発を進めました。
ティップネスの再成長
▶ティップネスはコロナ禍からの早期回復を図り、CDP活用により健康ニーズに迅速・的確に応える「コンテンツ・サービス企業」へと進化します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶地域に開かれたフィットネスクラブを目指し、従来の会員向けのサービス提供に加えて、地域住民のライフスタイルを豊かにする体験や学びを積極的に提供し、地域のウェルネス実践者を増やしていく活動として「OPEN TIPNESS」を2023年5月にスタートしました。また2023年6月にはAI姿勢分析サービスの「シセイカルテ」を総合店の全店舗に、更にキッズスクール事業でも、スイミングスクールにおいて、新サービス「スタディスイム」を33店舗に導入しました。IT技術を駆使した動画の活用で、お子様のアクティブラーニングにつなげています。
健康事業部の設置
▶生活・健康関連事業をさらに強力に推進するために、当社グループに統括する部門を設置します。
(当連結会計年度の取り組み)
▶2023年8月に生活者自らアクションし、進んで、楽しんで運動に励む活動に積極的にチャレンジする「運DO!部」プロジェクトを発足しました。また2023年11月のカラダWEEKのキャンペーンでは㈱askenや㈱博報堂らと共同企画を実施したり、47都道府県対抗ウオーキングバトルを開催したり、生活者に向けた健康の啓発活動を精力的に行いました。
②戦略的投資方針
投資枠1,000億円を継続し、メディア・コンテンツ事業と生活・健康関連事業の強化と領域の拡張、さらに新規領域への挑戦に向けて投資を実行し、企業価値の持続的な向上を目指します。
メディア・コンテンツ事業領域
・知的財産(IP)開発
・コンテンツ制作体制の強化
新規事業領域
・XR領域、メタバース領域をはじめとする成長テクノロジー投資
・HR事業の拡大
生活・健康関連事業領域
・CDP構築のためのデータ保有企業との連携
・ウェルネス経済圏構想の具体化
サステナブル投資
・社会に貢献する事業への積極的な投資の実行
(当連結会計年度の取り組み)
▶当連結会計年度においては、複数の事業領域において投資を実行いたしました。具体的には、メディア・コンテンツ事業領域において、㈱スタジオジブリの株式を追加取得し子会社化した他、ECサイト大手のla belle vie㈱の株式を取得し子会社化するとともに、eスポーツ事業を営む㈱JCGの株式を取得し子会社化いたしました。新規事業領域において、VR/XRコンテンツの制作等を手掛ける㈱アルファコードへの出資を行うと共に、㈱NeoRealXを持分法適用関連会社化いたしました。
▶また、当社グループがこれまで行ってきたサステナブル投資に関しても、経済的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的インパクトを同時に生み出す「インパクト投資」という考えを取り入れた上で、投資検討段階から継続的に社会的インパクトの測定・マネジメントを行う「インパクト投資」の1号案件として、映像クリエイター支援事業を手掛ける㈱Vookへの出資を行いました。今後も引き続き積極的に投資を実行し、企業価値の向上に努めてまいります。
③財務方針
A 重要な経営指標
事業の規模と成長の尺度である「売上高」と、事業の収益性の尺度である「営業利益」とします。また、事業資産の効率的な利用と金融資産を活用した積極的な投資により「ROE(自己資本利益率)」の向上にも努めてまいります。なお、政策保有株については保有の合理性について随時見直しており、2023年度も売却を進めております。
B 株主還元政策
事業環境の変化への対応や収益基盤の強化、成長領域への投資の調和を図りながら、持続的な収益の拡大・成長に努め、業績動向など諸要素を勘案しながら継続的で安定的な株主還元を行うことを基本方針とします。なお、具体的な施策として、自己株式の取得を実行したほか、株主名簿外の外国人等株式への配当支払を実施いたします。
(※1)Good For the Planet グップラ …2020年からスタートした日本テレビ系SDGsキャンペーン。「地球のため、未来のため、より良い暮らしのために今できること」を情報・バラエティ・スポーツ・報道番組が「オール日テレ系」で一丸となって取り組みます。
(※2)HR事業…Human Resources(人的資源)。育成・研修等を含む人事支援サービス。
(※3)XR事業…Extended Reality。VR(仮想現実)、AR(現実拡張)、MR(複合現実)などの先端技術を活用した事業。
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