伊藤ハム米久ホールディングス 【東証プライム:2296】「食品業」 へ投稿
企業概要
当社グループは、グループ理念「私たちは事業を通じて、健やかで豊かな社会の実現に貢献します」に基づき、持続可能な社会の実現に貢献することをサステナビリティの基本と考えています。その実現に向けて「7つのマテリアリティ」を特定し、中期経営計画2023では「サステナビリティへの取り組み」を重点的に取り組む主要テーマの一つと位置付け、事業を通じた社会課題の解決に努めています。
(1)ガバナンス
当社グループのサステナビリティに関する重要事項については、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会での審議を経て取締役会にて審議、または報告がされています。
当社のサステナビリティ委員会は、取締役常務執行役員管理本部長が委員長を務め、各事業部門の関連する責任者及び社外有識者が委員として参加しており、社外の知見も得られる体制を整えています。
更に、2022年4月にサステナビリティ推進室を新設し、事業部門と連携してサステナビリティの取り組みをグループ全体で推進する体制を構築しています。また、サステナビリティ推進室と各事業部門・部署とを繋ぐため、各事業部門及び関連するコーポレートの各部署にサステナビリティ推進委員を任命し、サステナビリティへの取り組みを全社で加速させる体制としています。
(2)リスク管理
当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会を全社的なリスクマネジメントプロセスの中で管理しています。サステナビリティ関連を含む経営上のリスクについては、年に1回全社的なリスクマップの見直しを実施しています。具体的には、発生可能性と当社事業への損失影響度から定量的に評価を行い、当社事業にとっての重要リスクを選定し、取締役会にて分析・最終評価する仕組みとなっています。特定された重要リスクについては、対応策を策定・実行するため、リスク毎に管理責任者及び担当部署責任者を設定しています。担当部署責任者は、管理責任者の指示の下、各リスクに関連する情報収集、ステークホルダーや専門家との意見交換、コンサルタントとの検討等に基づくリスクの分析や対応策の検討を行っています。また、対応策を実行するため、当社グループ会社や関係部署にリスクや対応策の周知や教育等を実施しています。
サステナビリティ関連リスク及び機会については、経営戦略部長が管理責任者、サステナビリティ推進室が担当部署となり取り組みを進めています。
特に気候変動関連リスク及び機会については、シナリオを設定してリスクを分析・評価する方法を活用しており、毎年サステナビリティ委員会にてリスク評価を行い、必要な対応策について審議しています。分析・評価結果は、全社プロセスに統合され、他の経営上のリスクと一体となって管理されています。
(3)戦略/指標及び目標
①気候変動に関する取り組み
戦略
当社は、畜産物及び畜産加工品を取り扱う事業を展開していることから、気候変動に伴う気温上昇による家畜への影響や自然災害の激甚化によるオペレーションの中断等に加え、社会の脱炭素化の流れの中で進む畜産品の需要低下等、当社事業が気候変動により様々な影響を受ける可能性があると認識しています。このような状況下、その発生可能性に拘わらず、あらゆるシナリオを想定して当社事業にとってのリスク及び機会を把握し、その対応策を検討することは当社事業の持続可能性を高める上で有用であると考え、2021年度にTCFD提言に則った分析を開始しました。
当社は、FAO(Food and Agriculture Organization of the United Nations、国連食糧農業機関)が発行するThe future of food and agriculture-Alternative pathways to 2050やIEA(International Energy Agency、国際エネルギー機関)のWorld Energy Outlook 2021の各気候シナリオを参照しながら、当社事業にとってのリスク・機会を評価し、対応策の検討を実施しました。
当社事業に大きな影響を及ぼし得る気候変動関連リスクとして、当社が事業を行う国・地域においてカーボンプライシングが導入された場合、特に1.5℃シナリオ下においては大きなコスト負担となる可能性があります。これに対し、当社は、当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量を2030年度までに半減(2016年度比)、2050年ネットゼロとする削減目標を掲げ、GHGの排出削減に取り組んでいます。今後着実に削減を進めると共に、削減を促進する社内制度の整備も検討していきます。また、2℃シナリオ下においては、先進国を中心に環境負荷の低い食品への需要シフトが起こると見込まれ、食肉消費量が中長期的に大幅に減少すると、これに伴いハム・ソーセージなどの当社の畜産品の需要も減少すると考えられ、中・長期的に当社加工食品事業の売上に大きな影響を及ぼし得るものと認識しています。当社は、畜産品の需要減少に対する対応策として、植物性たんぱく質製品の開発・販売を既に進めています。さらに、培養肉をはじめとしたその他代替たんぱく質の研究開発、調理加工品などの売上拡大の検討を進めていきます。
一方で、2℃シナリオにおいては、環境意識の高まりを受け、環境負荷の低い代替肉の生産量が世界的に増加することが見込まれます。こうした環境下、植物性たんぱく質製品を取り扱う当社にとっては中・長期的に売上増加を見込むことができる大きな事業機会となり得ます。当社は、代替肉の中でも植物由来の大豆ミート商品の発売を2020年から開始しており、今後は、商品ラインアップの拡充と共に、食感・味・香り全てにおいて食肉由来品により近づけるための研究開発を継続して行っていきます。
上記の分析結果を事業環境分析に用いながら、今後の当社事業戦略に反映していきます。
指標及び目標
当社グループでは、気候変動への対応として以下のGHG排出削減目標を策定し、この達成に向けて取り組みを進めています。
GHG Scope1,2排出量(CO2換算)
2030年度目標 2016年度比半減
2050年目標 ネットゼロ
2022年度GHG排出量実績及び目標に対する進捗状況については、2023年9月発行予定の「伊藤ハム米久グループ統合報告書2023」にて開示予定です。
②人的資本に関する取り組み
戦略
(a)人材の多様性の確保を含む人材育成の方針および取り組み
当社は、従業員一人ひとりの多様な視点や価値観を活かしながら、積極的に変革に挑戦し続けていくことが企業の競争力や成長力を高める源泉であると考えています。一方で、少子高齢化や労働人口の減少など、労働市場の不確実性は高まっており、従業員の価値観や働き方も多様化する中で、従業員が働きやすく、自律的に成長できるような環境を醸成していくことも重要な課題であると認識しています。このような観点から、長期的な人材育成を基本に据えながら、多様性や価値観を尊重し、持続的な挑戦によって個人のキャリア形成が自律的にできるよう支援していくことを人材育成の基本方針としています。
具体的な施策としては、テレワーク環境の整備を更に推し進め、男性の育児休暇取得や育児支援策を推進・拡充するとともに、介護についても社内制度や公的支援などの関連する情報提供を充実させることにより、従業員が安心して働き、その能力を存分に発揮できる仕組みを整えて、多様な働き方に対応していきます。また、従業員が自律的に成長してキャリアアップできるための支援を充実させていくとともに、既存のFA制度や公募制度、また、ジョブローテーションの活性化や挑戦した姿勢を表彰する制度の見直しや拡充を進め、持続的に成長し続けることができる風土の醸成を目指していきます。
(b)人材採用方針および取り組み
当社では、国籍や性別を問わず応募者の適性や能力を重視した公正公平な採用活動を方針としています。加えて、多様性の確保という視点においては管理職や係長級における女性比率の向上を目指し、定期学卒採用およびキャリア採用における女性比率の拡大を推進しております。さらに変革の激しい時代に、既成概念を打破し新たな価値を創造していくためにもキャリア採用を継続し、年齢を問わず事業運営のニーズに合った専門性の高い中核人材の確保・育成に努めてまいります。
(c)従業員の安全・健康に関する方針および取り組み
当社は、当社の事業に関わるすべての方々が安全に安心して働くことができる職場環境を実現することを労働安全衛生の基本方針としています。
具体的には、当社グループの財産である従業員の安全衛生、健康維持に配慮した取り組みを下記の通り行っています。これらは安全な職場環境づくりのために労働安全衛生法など関連する法令を遵守するとともに、労働安全衛生マネジメントシステムの考え方に準拠した形で進めています。
安全衛生については、各事業所に安全衛生委員会などを設置し情報の共有化を進めています。中でも最大の課題である労働災害防止では、入職時安全教育の徹底、定期的な職場安全教育、日頃からの職場巡視やリスクアセスメントなどを計画的に実施しています。加えて、従業員一人ひとりが安全衛生に向き合う活動として、危険予知トレーニングの実施や、ヒヤリハット報告への参加により事前の対策と危険の認識を深めるなど、積極的に取り組める職場環境の実現を目指しています。健康維持に関しては、定期健康診断・ストレスチェックの実施に加え、グループの全従業員およびその家族が24時間使用できる「セーフティーネット電話センター」窓口を設け、いつでも相談できる体制を整えています。また、長時間労働、過重労働、メンタルヘルスなどについて従業員への産業医面談を実施し、グループ全体で健康障害の防止を図るための対策に取り組んでいます。
指標及び目標
目標
・研修参加人数(年間) 2023年度 14,000名(2021年度 13,389名)
・管理職の女性比率 2030年度 10%(2021年度 6.1%)
・係長級の女性比率 2030年度 20%(2021年度 10.9%)
・1人当たり年間有休取得率 2025年度 70%(2021年度 62.8%)
(注)管理職の女性比率、係長級の女性比率の指標の対象は主要国内グループ会社となります。
③人権尊重に関する取り組み
戦略
当社は、「人権の尊重は全ての判断や行動において根底をなすもの」との認識のもと、事業に関わる全ての人々の人権を尊重し、企業としての社会的責任を果たしていくために、「伊藤ハム米久グループ人権方針」を定めています。また、サプライチェーン全体で人権の尊重や環境への配慮等の取り組みが行われるよう「伊藤ハム米久グループ調達方針」及び「サプライヤー調達ガイドライン」を策定・開示しています。
さらに、人権デュー・ディリジェンスの実施を通じて当社事業による人権への負の影響の把握に努め、必要な防止・軽減措置を実施していきます。この一つの手段として、当社サプライヤーに対してアンケート調査を実施し、サプライチェーンにおける人権に関する負の影響の状況把握と人権リスクの防止に努めています。
指標及び目標
目標
当社調達額の80%をカバーするサプライヤーに対して、サプライヤー調査を毎年実施
・サプライヤー調査実績
2022年度に当社調達額の80%をカバーするサプライヤーに対してサプライヤー調査を実施し、人権をはじめとした各課題について追跡調査を要するレベルのリスクは確認されませんでした。
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