サンケン電気 【東証プライム:6707】「電気機器」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する取組みは、2020年にSDGsを経営に取り込み、重点課題(マテリアリティ)を「本業(省エネ・高効率化)によるCO2の削減」と「事業活動を通じた環境負荷の低減」と定めて活動を行っております。また、これらの活動を支える動きとして「働きやすさの価値創造」を目指し、安心・安全な職場の実現や柔軟な働き方への志向、そして社員の健康の向上を図っております。こうしたサステナビリティへの動きを一層活発化させるため、2021年10月にサステナビリティ委員会を設置し、ESG経営としての施策の明確化・指標化を行うなど、推進体制の整備を実施しております。
また、当社グループでは、「持続可能な社会環境の実現に向け、高い信頼性と最先端の技術を用いたパワーエレクトロニクスとその周辺領域の製品の開発・生産・販売を通じて、国際社会の発展に寄与」することをグループCSR基本方針のひとつとして掲げています。持続可能な社会環境を実現するためには、気候変動への対応が重要課題であると認識しており、国内外のサステナビリティ開示で広く利用されている「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に沿った取り組み並びに情報開示を進めております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
ESG経営を推進するにあたり「サステナビリティ委員会」を中心に、環境・社会・ガバナンスの3部会と気候変動等のテーマごとのチーム活動を展開しています。この部会・チーム活動は当社グループのメンバーで構成されており、グループ一丸の活動体制としています。各部会・チームからサステナビリティ委員会への報告は、半期に一回行われています。その結果は、代表取締役社長を最高責任者とする業務執行の最高意思決定機関である「経営会議」に報告され、取締役会にも上申されています。そこで協議・決議された内容が、サステナビリティ委員会および配下の各部会・チームにフィードバックされています。2022年度は、臨時開催を含め、サステナビリティ委員会は3回、各部会は4回ずつ、チームの会議は50回開催されました。また、サステナビリティに関する事項は、経営会議へ13回答申されました。サステナビリティ委員会の委員長は「ESG担当役員」である取締役 吉田智が務めております。
また、TCFD提言の「ガバナンス」項目では、気候関連のリスクと機会に対応するガバナンス体制の設置と開示が求められており、当社では「ESG経営」を組織横断的に審議する「サステナビリティ委員会」がその役割を担っています。サステナビリティ委員会では、気候関連のシナリオ分析・気候変動に関するリスクと機会の特定・評価とそれに対する対応策の検討・対応策の進捗状況の確認に関する協議・審議を行っております。
※ESG経営推進体制図
(2)-1 重要なサステナビリティ項目と戦略
当社グループは、「本業(省エネ・高効率化)によるCO2の削減」と「事業活動を通じた環境負荷の低減」を重点課題(マテリアリティ)と定めて活動を行っております。グローバルの大きな変化に対する迅速な対応を強化するとともに、事業機会の拡大と社会課題の解決を目指し、柔軟で強靭なESGガバナンスを構築し、ESG経営の推進体制の整備を実施しております。
また、TCFD提言に基づき、気候関連リスク・機会の特定・評価を全社の統合リスクマネジメントに組み込んでおります。具体的にはまず考えられる、直接操業における気候変動リスクと機会を部門ごとに列挙します。その後本社・工場の各部門長により、重要度を①リスクが顕在化した場合に受ける影響の大きさ(財務的・戦略的)、②影響を受けるタイムスケール(短期、中期、長期の視点から)、③発生頻度(リスクが顕在化した際に影響を受ける頻度はどの程度か)、④顕在化する可能性(リスクが顕在化する可能性はどの程度考えられるか)、⑤顕在化する時期(リスクが顕在化するのはどの程度先の将来か)の5項目について、「大」「中」「小」の3段階で分析、審議します。この審議の結果、特定されたリスクと機会は、サステナビリティ委員会が気候変動関連リスクを含むESGに関する事業リスクを組織横断的に評価しております。また、サステナビリティ委員会は、年に2回以上、経営会議に付議・審議した議案を取締役会に報告しており、適宜情報開示も行っております。
■リスクと機会の特定方法
製品及びそのサプライチェーン全体に係る気候変動関連のリスク及び機会を各STEPに従い特定しました。
STEP1 | 考えられるリスクと機会の列挙 |
STEP2 | 本社・工場の各部門長により、重要度を以下の5項目基準、3段階分類にて分析 ・リスクが顕在化した場合に受ける影響の大きさ(財務的・戦略的) ・影響を受ける期間(どの程度の期間、影響が続くか) ・発生頻度(リスクが顕在化した際に影響を受ける頻度はどの程度か) ・顕在化する可能性(リスクが顕在化する可能性はどの程度考えられるか) ・顕在化する時期(リスクが顕在化するのはどの程度先の将来か) |
STEP3 | 結果の集計(項目の重みや重要度高の頻度も考慮)と類似項目をまとめ、 リスク5個、機会3個を特定し、その重みを「大」「中」「小」に評価・分類 |
(要約)
・1.5℃、2℃の分析のために3つのシナリオ、4℃の分析のために2つのシナリオを使用。
・リスクとして炭素税導入による、電気代高騰、原材料価格、輸送費用高騰等を考慮。
・リスク低減の施策として多面的な省エネ活動、水力由来の電力など自然エネルギーの購入。
・機会として、気候変動による低炭素商品ニーズが高まる中で、「EV向けパワーモジュール」等の販売拡大の期待。
SiC等の次世代デバイスの開発加速を見込む。
・リスク管理体制として、サステナビリティ委員会(ESG各部会)と危機管理委員会等が連携し監視。
(2)-2 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
21中計(中計期間2021~2023年度)の人材戦略について、「自立」した人と組織を目指し、全社員が最大のパフォーマンスを発揮できる環境づくり、人材育成の促進、また組織変革を進めています。
1)働きがいをもって働ける環境づくり
当社は多様な人が効率的な働き方ができる場所の提供を通じて、新たな「価値創造」に結び付けるという発想のもと、ダイバーシティや働き方改革を推進し、誰もが安心して働きがいをもって働くことができる環境づくりを進めています。
①人材の多様化の推進
国籍や性別等に関係なく、多様なバックグラウンドをもつ人材の採用を推進し、女性活躍だけでなく、シニア社員の活用等、組織変革の土台として人材基盤の強化を図っています。
②働く環境の整備
フレックスタイムやテレワークなどの柔軟な勤務制度を整えるだけでなく、2022年度からは有給の産後パパ育休制度導入と育児休業の取得を原則必須化することで取得に後ろ向きになりがちな男性社員の取得促進を後押しする等、更なるワークライフバランスの充実を図っています。また併せて、自宅での勤務が難しい社員や出張者が最寄りで利用できるサテライトオフィスの導入や国内生産拠点を含めたオフィスの完全フリーアドレス化を実施するなど、働く場所の多様化だけでなく、よりフレキシビリティの高い働き方やコミュニケーションの活性化に繋げる取り組みを継続推進しています。
2)人材育成の促進
社員の成長は会社の成長につながるという考えの下、「人材育成ポリシー」を制定し、様々な成長支援、自立支援を行っています。
<人材育成ポリシー>
●会社は、成長機会を提供し、自己研鑚・OJT・研修を基本とし、社員一人ひとりの成長を積極的にサポートしながら、「学ぶ風土」、「育てる風土」を醸成する。
●管理者は、部下の成長支援の責任がある。成長意欲の醸成、成長機会の提供、フィードバックを行うと共に、率先垂範し、自己成長に努める。
●社員は自己成長に責任を持ち、主体的・計画的に取り組む。
●管理職の部下育成力の強化、社員の成長・自立を支援する。
<教育体系と主な施策>
①Sanken Nexus School(技術学校)
『社員一人ひとりが繋がり(Nexus)、次世代の個人と会社の成長・成功に繋げる』という理念のもと、今年度4月に技術学校を開校し、コアビジネスとなるパワー半導体について、理系・文系を問わず学ぶ事ができる基礎教育と、技術者がより専門的な技術知識を身に付けるための講座を実施しています。
②フレックス スタディー
社員のビジネス基礎スキルの底上げを目指し、デジタル学習コンテンツ(動画)を使い、いつでも・どこでも学び、成長する楽しさを実感し、学習の習慣化に結びつける教育を今年度から実施しています。
3)社員の健康づくり
当社グループでは、従業員の健康・維持に向けた積極的な取り組みが、企業全体の持続的な成長に影響を与える重要な要素であることに鑑み、グループ一丸となって職場の健康づくりを推進しています。
4)組織の変革
①ES調査をベースとした対話会
組織の変革を目的として、2018年からES調査を年1回実施しています。この調査を活用し、組織の良さや不満、強み・弱みなど現状の課題を全員で共有し、ありたい組織の姿を語り、自分たちで創り出していける組織を目指し、経営層による対話会、また職場単位の対話会を実施しています。
②グループ・コーチング
役職や立場に関係なく、社員同士が信頼関係で結ばれ、傾聴・質問・フィードバックなど本質的な議論・対話ができる組織を目指し、昨年度から管理職に対し、グループ・コーチングを実施しています。
(3)気候変動リスクと機会に対応するプロセス
前述(2)のプロセスを経て特定・評価された気候変動リスクと機会はサステナビリティ委員会において戦略的な取り組み方針が定められ、具体的対応策の検討が行われております。サステナビリティ委員会の下に環境 (E)・社会 (S)・ガバナンス (G) に特化した部会が設置されており、その社会 (S) 部会の下に危機管理委員会を設置し、自然災害や情報管理リスクなどに対応しております。さらにガバナンス (G) 部会の下に内部統制推進委員会を設置することで、各部門における業務の点検を支援するとともに、全社レベルおよび業務プロセスレベルにおける統制活動の有効性を審査・評価しております。これらのリスク管理の内容はサステナビリティ委員会に報告され、そこで気候変動関連リスクを含むすべての事業リスクについて統合的に管理しております。
詳細については、3 事業等のリスクをご参照ください。
気候変動が事業に及ぼす移行・物理的リスクおよび機会については、TCFDガイダンスに沿ったシナリオ分析により適切に把握しております。
■リスク
種類 | 主なリスク | 施策 | 重要度 | |
移行リスク | 施策および規制 | 化石燃料価格上昇により、電気代が高騰し操業費用が上昇 | CO2排出量の削減 ・省エネ活動 ・再生可能エネルギーの電力置換え ・生産時の効率化 ・輸送の最適化 ・リサイクルの促進 | 大 |
炭素税導入により、操業費用が上昇 | 大 | |||
気候変動の新たな規制の強化により、既存製品の需要減少に伴う売上の減少 | 中期経営計画による省エネ・高効率の新製品開発で売上拡大 | 中 | ||
評判 | 気候変動対策が遅れることにより、ステークホルダーからの信頼が下がり、市場評価が低下 | カーボンニュートラル実現に向けた計画を策定し実行 | 中 | |
物理リスク | 急性 | 自然災害等により生産への影響、サプライヤーの操業停止や物流機能被害によって売上が減少 | 危機管理体制の充実等リスク管理の強化 | 小 |
■機会
種類 | 主なリスク | 施策 | 重要度 |
製品およびサービス | カーボンニュートラルに向けた商品の市場拡大(車載・白物家電等)により売上増 | ・インバータ向け製品の開発 ・IPMの開発 ・高効率電源デバイスの開発 ・次世代半導体の開発 | 大 |
資源の効率 | 生産ラインおよび社内インフラの省エネ・省資源化 | DX・スマートファクトリー導入 | 大 |
評 判 | 生産段階のカーボンニュートラルを推進することでステークホルダーからの信頼向上 | カーボンニュートラル実現に向けた計画を策定し実行 | 中 |
(4)指標及び目標
2015年のパリ協定の決定を踏まえ、シナリオ分析を行った結果、気候変動により平均気温が4℃上昇するシナリオでは物理的リスクとして拠点の洪水等被災リスクの上昇による財務リスク、低炭素経済に移行する1.5℃シナリオでは移行リスクとして炭素税の導入、電力価格高騰による財務リスクが大きいことがわかりました。また一方で、1.5℃シナリオにおいては、自動車のEV化の進展により、当社グループが製造するxEV向け半導体デバイスの売上機会が生じることも判明しました。
これら気候関連リスク・機会のうち、炭素税の財務インパクトが最も大きく、最優先で取り組むべき気候関連課題であることが判明しました。この結果を踏まえ、中長期温室効果ガス排出削減目標を策定しました。これは2020年を基準年とし2030年度までにScope1, 2を33%削減、2050年カーボンニュートラルを目指すものです。この目標達成に向け既に行っている取り組み事例として、2022年4月、福島サンケンにおいて使用電力の100%を再生可能エネルギー由来に切り替えております。また、石川サンケン堀松工場は2025年までの電力使用によるCO2排出ゼロを目指し、再生可能エネルギーの導入・省エネ施策を進めております。
なお、上記記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2023年3月31日)現在における情報に基づいております。
■当社グループの中長期GHG(温室効果ガス)排出量削減のための具体策及び事例
①具体策
・国内外省エネの活動の推進
・太陽光発電の導入
・再生可能電力への転換
②事例
・福島サンケン:2022年4月から使用する全ての電力を100%「再生可能エネルギー」由来に切り替え。
③Scope1,2 の削減実績 (※1) 単位:[Kt-CO2]
| 2020年度 | 2021年度 | 2022年度(※2) |
Scope 1 | 6.3 | 5.8 | 6.5 |
Scope 2 | 83 | 78 | 69 |
※1 算定範囲:サンケン電気本社、石川サンケン、山形サンケン、福島サンケン、大連三墾電気
※2 2022年度データは暫定値。第三者検証機関により検証実施中(2023年6月16日時点)。
また、上記(2)-2 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略において記載した事項に関する主な指標の目的と実績につきましては、次の通りであります。
主な指標(目標及び実績)[提出会社及び国内グループ会社]
| 目標値 (2025年度) | 実績 2022年度 |
男性育児休業取得率 | 80% | 74.3% |
女性管理職比率 | 11% | 6.3% |
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