アルバック 【東証プライム:6728】「電気機器」 へ投稿
企業概要
当社グループは、真空技術をコアとしたイノベーションの創出・共創の推進を経営の重要な柱に位置付けるとともに、持続可能な社会の実現に向けた技術開発を進めています。気候変動や環境問題などといった社会課題に対応するためには、半導体や高機能な電子デバイスが貢献すると認識しており、当社グループの持つ真空薄膜形成技術がこれらのデバイスを製造するための核心技術となっています。
当連結会計年度においては、先端デバイス及び材料、エネルギー・環境、ヘルスケア領域に注力した研究開発活動を以下のとおり実施しております。
当社グループの開発体制は、グローバルに展開する各開発拠点において顧客密着型の開発を実施し、競合他社に先駆けた独創的な新技術の開発、積極的な応用技術の開発を行っております。真空技術をコアとした製品のうち、主力である半導体、電子部品、FPD製造用スパッタリング装置に加え、スパッタリングターゲット材料の開発などシナジー効果を生かした開発を重点的に行っております。また、省エネルギーに貢献するとして注目されているパワーデバイス向けイオン注入装置の開発を加速しております。
さらに、顧客の近くで製品・技術開発を加速し、コラボレーションと技術サポートを強化することを目的に、韓国 平澤市にTechnology Center PYEONGTAEKを設立いたしました。新たな研究開発拠点の追加により、当社グループの柱と位置づけている半導体事業の更なる成長を目指してまいります。
「真空技術をコアとしたイノベーションの創出・共創の推進」として、次々世代半導体分野においては、スキルミオン技術や光電融合、ヘルスケア分野においては、国立大学法人大阪大学医学部と共同で赤血球の真空凍結乾燥保管技術の開発を行っております。産学連携の取組みの成果としては、大阪大学大学院工学研究科アルバック未来技術協働研究所において、電圧磁性制御による超低消費スキルミオン計算に関する先駆的な研究の取組みが評価され、国際会議MMM2023(*1)にて招待講演を行いました。東京工業大学アルバック先進技術協働研究拠点においては、プロセスプラズマの空間分布診断手法を応用し、国際会議ISPlasma2024(*2)にて「Best Poster Presentation Award」を受賞いたしました。このように、数多くのテーマが表彰されるなど共創による異分野交流から生まれる新しいビジネス創出の場を形成しています。
また、長年にわたり真空技術に関する包括的な知識を提供してまいりました「真空ハンドブック」を、真空産業における最新の規格見直し動向を取り込み、三訂版として刊行いたしました。本書はエレクトロニクス、医療、エネルギー、航空宇宙などの分野で活用されている真空基礎技術や半導体製造、成膜、分析などに関わる真空装置の構築・設計の現場で必要となる技術データの集大成です。
当連結会計年度における研究開発費の総額は13,313百万円となり、セグメントごとに研究開発活動の成果を示すと次のとおりであります。
(真空機器事業)
当社の事業の柱である、半導体や高機能電子デバイス、FPDなどの電子デバイス製造装置の各分野に開発投資を行い、新商品や新技術を創出し、高度なお客様のご要求にお応えしております。また、真空ポンプや真空計測機器等各種のコンポーネント分野へも開発投資を行い、真空装置と機器を合わせて開発するシナジー効果を発揮しております。
当セグメントに係る研究開発費は12,403百万円となり、代表的な成果は次のとおりであります。
(1)半導体及び電子部品製造装置
半導体製造装置においては、最先端ロジック分野におけるメタルハードマスク工程の実績をもとに他工程参入を実現するための装置及び成膜プロセス性能向上の開発を行っております。また、メモリ分野においても微細化、高積層化の進むDRAM及び3次元NANDフラッシュメモリでの他工程参入を目指した装置及び成膜プロセス開発も進めております。
電子部品製造装置においては、パワーデバイス、通信デバイス、オプトデバイス、電子部品(MEMS等)及びパッケージングの製造に適した装置及びプロセス開発を行っております。
(2)FPD製造装置
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びフレキシブルディスプレイなどの分野における次世代技術への装置及びプロセス開発を行っております。
有機ELディスプレイにおいては、高精細化プロセスの要求が高まり、製品歩留まりを改善するための開発(スパッタリング装置等における低発塵新搬送機構、マスク合わせ精度向上)や成膜性能を向上する新ユニットの開発、新材料開発など、総合的な成膜技術向上を進めております。さらに、高い水準で面内の均一性を維持管理していくためにAI活用による安定稼働、生産性向上、省人化を実現するための装置を開発しております。
今後採用の拡大が予想される、高移動度の酸化物半導体薄膜トランジスタ(TAOS)向けスパッタリングターゲット材料の開発を行うとともに、スパッタリング成膜プロセス開発も進めております。
(3)コンポーネント
真空装置を構成する主要な機器として、真空ポンプや真空計測機器のほか、直流(DC)電源、真空搬送ロボット、真空バルブ等の開発を行っております。その成果の一例として、一般社団法人日本真空工業会(以下、「JVIA」という。)において、プロセスガスモニタQulee「RGM2-201F」が2023年度のJVIA真空コンポーネント大賞を受賞し、JVIAでは初の4年連続の受賞となりました。
さらに、主に有機ELディスプレイ製造装置に搭載されるクライオポンプ、量子コンピュータや医療関連に使用する極低温冷凍機の開発も進めており、次世代半導体やヘルスケア分野などの幅広い分野に真空機器が貢献しております。
(真空応用事業)
スパッタリングターゲット材料をはじめとする先端材料、表面分析装置やマスクブランクスの開発を行っており、当セグメントに係る研究開発費は910百万円となりました。
主に、半導体やFPDの高性能化に貢献するスパッタリングターゲット材料等の先端材料、先進的な表面分析装置の開発を行っております。また、半導体やFPDのリソグラフィ工程の重要部材であるマスクブランクスなどの開発を行っております。具体的には、表面分析分野において飛行時間型二次イオン質量分析計(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)のフラッグシップモデルとなる「PHI nanoTOF 3+」を開発、2023年10月に販売を開始いたしました。
(*1)The 68th Annual Conference on Magnetism and Magnetic Materials
(*2)16th International Symposium on Advanced Plasma Science and its Applications for Nitrides and Nanomaterials
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