KADOKAWA 【東証プライム:9468】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「世界の才能と、感動をつなぐ、クリエイティブプラットフォーマーへ」をコーポレートミッションとして掲げ、中長期的な成長及び企業価値の向上を図るべく、出版・IP創出、アニメ・実写映像、ゲーム、Webサービス、教育・EdTech事業等において、多彩なポートフォリオから成るIP(Intellectual Property)を安定的に創出し、事業間連携によりIPのLTV(Life Time Value)の最大化を図り、さらに最新のテクノロジーを常に取り入れることで、IPを世界に広く展開する「グローバル・メディアミックス with Technology」を推進することを基本戦略としております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度を含む5か年の中期経営計画において、2028年3月期に売上高3,400億円(うち、海外売上高700億円)、営業利益340億円、EBITDA430億円を達成することを経営目標として掲げております。あわせて中長期的な目標として、ROE(自己資本利益率)12%以上を目指してまいります。
※EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
(3)経営環境
当社グループを取り巻く事業環境は、国内出版市場においては電子出版が継続的に成長する中、紙出版は減少傾向が継続しています。海外での日本発コミック市場は、コロナ禍での特需は沈静化したものの、長期的な日本コンテンツの需要は拡大基調にあります。
映画館やイベントについては、国内興行収入は上昇基調でコロナ禍前2019年の85%まで戻しており、リアルイベント市場はコロナ禍前を凌ぐ水準となっています。
また、映像配信、オンラインゲーム及びオンラインライブの一層の普及により、デジタルのコンテンツ需要が世界的に高まるとともにコンテンツを中心に他者とつながる楽しみ方も広がっております。
こうした事業環境を捉え、当社は「グローバル・メディアミックス with Technology」を中期経営計画の基本方針とし、IP創出やメディアミックス及び海外展開、ライセンス展開の強化を通じて「IPのLTV(Life Time Value)最大化」を達成するとともに、教育・EdTech事業の拡大やファンコミュニティ運営の強化により、継続的な業績拡大に努めてまいります。
加えて、「世界の才能と、感動をつなぐ、クリエイティブプラットフォーマーへ」のコーポレートミッションの下、クリエイティビティ、モチベーション、テクノロジーをキーワードに従業員一人ひとりが創造性を最大限発揮できる社内基盤整備を継続し、イノベーション創出に挑戦してまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
事業別の状況及び課題は以下のとおりであります。
[出版・IP創出事業]
引き続き強力なIPの創出に努め、グローバルな作品流通を増やすとともに、国内では製造・物流の改革による返品率の更なる改善や編集DXによる生産性の改善を進めてまいります。
IP創出においては、国内での小説投稿サイト「カクヨム」や台湾の「KadoKado」等を通じたネット投稿作品の開発を継続強化するとともに、新たにグループ入りするタイの出版社や新規進出となるインドネシア、フランス、韓国の各合弁会社を加えた海外子会社と一体となってグローバルに作品を開発してまいります。
また、スマートフォン読者層を拡大するため、縦スクロール漫画についても専用レーベル「タテスクコミック」を中心に配信本数を拡大してまいります。
グローバルな作品流通においては、多言語化の制作投資を行い、電子書籍でのサイマル流通や紙書籍での流通を拡大してまいります。
メディアでは、Web媒体を中心にデジタルシフトをさらに進めながら、IP創出と認知向上の機能を強化することで収益性の向上に取り組んでまいります。
電子書籍では、電子書籍配信プラットフォーム「BOOK☆WALKER」において英語・繁体字・タイ語といった多言語展開を拡大してまいります。IP創出においても、コミックWebプロモーションメディアの「Comic Walker」を「カドコミ」にリニューアルし、全コミック編集部が参加し新規コミックの連載を始めております。今春にアプリ版も投入し、当社のIP創出媒体として読者に支持される連載媒体に育ててまいります。グローバルに才能を集める「TATESC COMICS Global Awards」においては、多数の言語から応募があり、受賞者の連載と育成が決定しております。今後も継続的に開催するとともに、縦スクロール漫画、コミック、及びライトノベル等のグローバル市場の開拓に引き続き注力してまいります。
また、動画コンテンツによる新たな体験価値の創出、児童書等の商品化の拡大、dマガジン等の他プラットフォームとの連携、及び電子書籍のサブスクリプションサービスを推進し、多様な楽しみ方を世界中の読者に提案してまいります。
[アニメ・実写映像事業]
アニメ・実写映像事業では、制作能力の強化や新しい映像表現と効率的な制作工程の実現のため、アニメ制作スタジオやバーチャルプロダクションへの投資を行い、グローバルな映像配信に対応した企画制作一気通貫のIP創出体制の確立を目指してまいります。
アニメでは引き続き自社制作力を強化し良質な作品をラインナップしながら制作規模を拡大してまいります。また、北米を中心とするマーケティングを強化し作品認知度を上げ、国内及び海外市場における権利販売や映像配信事業に注力してまいります。
実写映像の製作・配給においては、作品の大型化とグローバルな映像配信に向けた作品開発の強化を行ってまいります。また、㈱角川大映スタジオで開始したバーチャルプロダクション事業では、歴史ある美術製作力と最先端のテクノロジーとの融合により、新しい映像表現と環境負荷が低くローコストな制作工程を同時に実現してまいります。
[ゲーム事業]
ゲーム事業では、世界市場が長期的に拡大する中で、当社原作のスマートフォンゲームの開発ラインを拡大し、メディアミックスによる更なる収益力の向上を図ってまいります。
PCや据置機のゲームにおいては、『ELDEN RING』の大型ダウンロードコンテンツが2024年6月に発売され、3日間で世界累計売上本数500万本を突破しました。今後は、これまでのヒット作品によって培われたブランド力や開発力の高さを活用しながら、2023年12月にグループ入りした㈱アクワイアも加えて制作パイプラインを拡大し、当社グループのシリーズタイトルの開発や他社からの受託開発を引き続き行ってまいります。
[Webサービス事業]
Webサービス事業では、ニコニコのプレミアム会員数を増加に転じさせるための継続的な取組みとニコニコチャンネルにおけるファンコミュニティの強化を行ってまいります。また、サービスの向上と開発効率の向上及び長期的な費用低減を行うため、クラウドサーバを活用したデジタルインフラへの投資を継続的に行ってまいります。
各種イベントの企画・運営では、2024年4月22日~4月28日の7日間にわたり日本最大級のユーザー参加型イベント「ニコニコ超会議」を開催いたしました。ネットとリアルのハイブリッドで開催し、4月27日~28日の幕張メッセでのリアル開催には昨年比6%増の12万5,362人にご来場いただきました。こうした大型イベントでユーザーの一体感と満足度を高めるとともに、ネットでの投稿や視聴を促進しユーザーの参加機会を拡大いたします。同時にイベントの選択と集中を高め収益の改善を図ってまいります。
[教育・EdTech事業]
教育・EdTech事業では、インターネットによる通信制高校であるN高等学校及びS高等学校の継続的な生徒数増加に伴い、両校等への教育コンテンツ提供事業が成長しているとともに、VR学習教材を提供することで教育コンテンツの高度化も進めております。また、2025年4月開学を目指すオンライン大学「ZEN大学(仮称・設置認可申請中)」に向けた教育システムやコンテンツの準備を進めております。今後もより付加価値の高いコンテンツを提供することで収益拡大を目指してまいります。
㈱バンタンにおいては、マンガやアニメ等グループシナジーを活用した分野の新コースを中心に生徒数が拡大しております。今後も展開地域を拡大し継続的な成長を図ってまいります。
[その他事業]
その他事業では、角川武蔵野ミュージアム、イベント、飲食等の商業施設を展開するところざわサクラタウンをはじめとする施設運営事業に関し、一部事業の撤退やコスト適正化を進め、持続可能な事業への再編成を進めております。
今後の更なる来場者増に向けて、IPファンのみならず地域の住民の皆様やインバウンド需要にも応える多様な企画を展開し、引き続き収益力を高めてまいります。
財務面では、自己資本比率50%~60%を維持し財務の健全性を確保しながら中長期でROE12%以上を目指すことを基本方針とし、持続的な事業成長と高い資本効率及び中長期的な企業価値の向上に向け、成長投資と株主還元を実行してまいります。
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