企業兼大株主王子ホールディングス東証プライム:3861】「パルプ・紙 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。

(1) 企業集団の経営戦略

 当社グループは、「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」を経営理念とし、「領域をこえ 未来へ」向かって、新たな未来を支えるモノづくり、持続可能な社会への貢献に取り組んでいます。

 また、企業存続の根幹である「コンプライアンス・安全・環境」を経営の最優先・最重要課題と位置付け、企業としての社会的責任を果たすための法令遵守、労働災害リスク撲滅、環境事故防止等を全役員・全従業員へ確実に浸透させる取り組みを続けています。

 経営理念を踏まえ、当社グループのあるべき姿として、「森林を健全に育て、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」という当社グループの存在意義(パーパス)を策定しています。

 当社グループの事業の核は、大切な財産である「森林」です。森林を適切に育て、管理することは、二酸化炭素の吸収固定や生物多様性保全、水源涵養、土壌保全等、森林が持つ様々な公益的機能を高めることにつながり、森林資源を活用した製品群は、化石資源由来の素材・製品を置き換えていくことが可能です。今後も森林資源に根付いた事業活動を通じて環境問題・社会課題への対応に尽力していきます。

 また、当社グループのあるべき姿の実現に向け、「成長から進化へ」を基本方針とする2030年までの長期ビジョンを策定し、「環境問題への取り組み」、「収益向上への取り組み」、「製品開発への取り組み」の3つの柱を掲げ、企業価値の向上に取り組んでいます。

・環境問題への取り組み

 石炭使用量ゼロに向けた燃料転換、再生可能エネルギーの利用拡大による温室効果ガス排出量削減や、植林地を取得・拡大し、有効活用することにより森林による二酸化炭素純吸収量の拡大を図り、環境問題に対する取り組みを進めていきます。

・収益向上への取り組み

 コスト削減や操業改善等により既存事業を掘り下げ深化させていくことに留まらず、戦略投資やM&A等を通じて、既存の有望事業や環境配慮型製品等により事業を伸ばしていきます。

・製品開発への取り組み

 環境配慮型素材・製品の開発、プラスチック代替品の商品化等、木質由来の製品を新しく世に出していきます。

 これらの取り組みを通じて、2030年度までに売上高2.5兆円以上を目指し、また、2030年度に2018年度対比で温室効果ガス排出量70%以上の削減を目標とする「環境行動目標2030」を達成し、企業価値の向上と社会への貢献をしていきます。この2030年度までの長期ビジョンのマイルストーンとして策定した2022年度から2024年度を対象とする中期経営計画(2024年度目標 連結営業利益1,500億円以上、連結純利益1,000億円以上<安定的に1,000億円以上を継続> 等)につきましては、取り巻く環境が厳しい中、各施策を継続して遂行していきます。

 なお、2023年12月、当社は、ROE(自己資本利益率)とPER(株価収益率)の向上によるPBR(株価純資産倍率)の向上にむけて、「事業ポートフォリオ転換・生産体制効率化」、「不要資産の処分・資産のスリム化」、「収益力に応じた適切かつ安定的な株主還元(配当性向30%目安)」等を取り組みの柱とする、「企業価値向上に向けた取り組みについて」を公表しました。長期的企業価値向上とパーパスに基づいた社会的使命の遂行に向けて、資本効率性の改善と持続的成長につながる取り組みを推進するとともに情報発信を強化していきます。

 具体的には以下の取り組みを行っています。

(a) 生活産業資材

・産業資材(段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業)

 需要が底堅く推移する段ボール事業について、生産体制再構築や原紙加工一貫生産化を進めると同時に、新工場建設・M&Aを通じ一層の事業拡大に努めています。

 海外では、東南アジア・インド・オセアニアでのパッケージング事業のさらなる強化を図ります。2023年10月にはベトナムで新たに段ボール工場が稼働しました。さらに2024年度下期にはインドでも工場の稼働を予定しており、東南アジア・インド・オセアニア地域における37カ所目の段ボール工場となります。国内では、段ボール需要の伸びが特に大きいと期待される首都圏を中心とした段ボール事業の拡大・強化を図っています。

 加えて、環境意識の高まりに伴い、紙製品への期待が一層集まる中、国内外で脱プラスチック製品の開発・拡販を一段と進めていきます。

・生活消費財(家庭紙事業、紙おむつ事業)

 王子ネピアでは、2024年4月から新TVCM「森のnepia篇」を全国で放映開始するなど、マーケティング戦略を通じた「nepia」ブランドのより一層の醸成を図るとともに、「人と地球に、ここちいい。」、人々のくらしと環境に寄り添う製品づくりを行っています。

 家庭紙事業では、2023年10月に「ネピア プレミアムソフト」をはじめとした主力製品のパッケージを、製品の特長や品質面が瞬時に判断できるようにリニューアルしたほか、保湿ティシュ「鼻セレブ」が2024年9月に20周年を迎えるのに先立ち、FSC®認証紙の採用及びパッケージデザインの一新を行いました。また、当社グループではこれまで、森を守るためにバイオマスインキの使用や環境配慮型製品の展開などの取り組みを実施してきましたが、この度新たに、独自の環境マーク「地球にいいこと。森といいこと。」を制定しました。製品購入時に環境に配慮していると判断ができることで、当社グループの地球温暖化に対する取り組みの理解促進を図っていきます。

 紙おむつ事業の子供用分野では、2024年9月をもって国内事業から撤退することを決定しています。なお、市場の成長が続く海外(マレーシア、インドネシア)については事業の継続・拡大を図っていきます。大人用分野では、今後も高齢化が進むわが国の介護現場が抱える課題を解決する製品の開発を進め、紙おむつ事業を強化していきます。

(b) 機能材(特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業)

 環境配慮型素材及び製品の開発を進めるとともに、市場ニーズを先取りし、お客様の期待を超える製品やサービスを迅速に提供できるよう、新たな事業領域の拡大にも積極的に取り組んでいます。

 海外では、感熱製品の世界市場での拡販と印刷・加工を含めた競争力強化を進めています。南米での旺盛な感熱紙需要に対応するため、ブラジルで生産能力を倍増させたほか、ドイツにおいても2024年1月に感熱紙の生産設備の増強を行いました。タイで展開する感熱紙・粘着紙事業、マレーシアの高機能ラベル印刷・断裁加工事業に、2022年9月に買収したAdampakグループが加わり、原紙から加工までの一貫生産が可能となりました。東南アジア・南米・中東・アフリカ等の経済発展に伴い事業の拡大を進めるとともに、既存拠点での競争力強化を図っていきます。

 国内では、高機能・環境対応製品の積極的な開発に継続的に取り組んでいます。2023年9月には一般社団法人ラベル循環協会(J-ECOL)へ加盟し、シール・ラベルにおける、さらなる資源の循環を推進しています。また、生産体制の継続的な見直しを行い、競争力・収益力を高めることで既存事業の基盤を強化しています。脱炭素社会への転換がグローバルに進行し電動車が急速に普及していることを受け、王子エフテックス滋賀工場で、電動車のモーター駆動制御装置のコンデンサに用いられるポリプロピレンフィルムの生産設備増設を進めており、2023年7月に1台が稼働し、2024年度下期にも1台の稼働を予定しています。

(c) 資源環境ビジネス(パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業)

「総合パルプメーカー」として世界的なパルプ事業の拡大・強化に加え、再生可能エネルギー事業や森林資源を活用した木材加工事業等の拡大に注力しています。

 パルプ事業では、事業基盤強化のため、海外主要拠点での戦略的収益対策を継続して実施しています。また、国内では、成長性のある溶解パルプ事業で増産・拡販を進めるとともに、高付加価値品の生産拡大による収益力向上を図っています。

 エネルギー事業では、再生可能エネルギーの事業強化を目指し、様々な事業の検討を継続的に進めています。また、国内外の拠点を活かし、エネルギー事業の拡大に合わせたバイオマス燃料の調達・販売強化を進めています。

 植林事業では、国内外に保有する社有林において、森林を適切に管理し持続可能な資源活用を図るとともに、森林の成長性向上にも取り組んでいます。また、「環境行動目標2030」に掲げる「海外植林地面積250千ヘクタールから400千ヘクタールへの拡大」という目標に向けて持続可能な森林資源の取得を推進しています。

 木材加工事業では、国内外で製材・木材加工製品の生産能力増強、販売強化に取り組んでいます。また、国内では建築資材分野での拡販等を通じ、収益力の強化を図っています。

(d) 印刷情報メディア(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)

 需要動向を見極め、引き続きコストダウンを徹底すると同時に、保有するパルプ生産設備・バイオマス発電設備等の資産を最大限有効活用し、当社グループ全体としての最適生産体制再構築等を通じて、収益力・競争力の強化に取り組んでいます。王子製紙苫小牧工場においては、新聞用紙生産設備1台を段ボール原紙生産設備へ品種転換するとともに、王子マテリア名寄工場から特殊ライナー・特殊板紙生産設備の移設を行い、2024年2月には構造的な環境変化から新聞・印刷用紙生産設備1台の停止を決定しました。また、王子製紙米子工場では、既存のパルプ生産設備に連続工業プロセスを導入し、高品質な溶解パルプの生産を行っています。加えて、三菱製紙株式会社との業務提携を継続し、提携メリットの最大化に努めています。

 中国では、紙パルプ一貫生産体制の強みを最大限に活かしたコストダウンを徹底して行い、さらなる競争力強化に取り組んでいます。

(e) その他(商事、物流、エンジニアリング、不動産事業、液体紙容器事業他)

 当社は持続可能な社会の構築に貢献すべく、液体紙容器事業や国内社有林の有効活用、脱プラスチックに貢献する環境配慮型製品などの新規事業の開発を推進し、新しいビジネスモデルの創出に取り組んでいます。

 液体紙容器事業では、既にチルド市場においては原紙製造から加工、販売に至る一貫体制を実現していますが、2023年5月にイタリアの液体紙容器事業会社であるIPI社を買収し、アセプティック(無菌状態のなかで充填・密封する包装技術)市場においても、原紙製造から加工、販売及び充填機の製造、販売までを行う総合一貫体制を確立し、国内外での事業拡大を目指しています。

 また、2024年4月には、包装・包装廃棄物規制に関連するリサイクル及び脱プラスチックの分野で最先端の原料加工技術を保有する、フィンランドのWalki社を買収しました。同社の加工技術を活用した新たな「環境対応包装ソリューション」を当社グループの提案ラインナップに加え、拡販を目指します。

(f) グリーンイノベーションによる新たな価値創造

 創業当時から紙づくりや森づくりで培ってきた多様なコア技術と、国内外に保有する豊富な森林資源を活用することにより、当社ならではの新たな価値を創造し、社会的課題を解決するためにイノベーションを推進しています。現在は、三つのテーマを中心に研究開発を進めています。

 まず、「木質由来の新素材開発」として、セルロースナノファイバー(CNF)は、化粧品や塗料用途などで実用化されたほか、新たな用途を探索し、天然ゴムとの複合化において、事業化に向けて実証設備を導入しました。2024年3月には、CNFを用いた燃料電池用「高分子電解質膜」を開発し、実用化に向けた研究開発を進めています。セルロース素材を効果的に活用するため、セルロース樹脂ペレットなどの商品化も進めています。また、脱炭素化を目的として、木質由来の「エタノール」や「糖液」の製造に取り組んでいます。木質由来のエタノールは、持続可能な航空燃料(SAF)や基礎化学品製造の原料として期待され、木質由来の糖液は、バイオマスプラスチックや合成繊維等の様々なバイオものづくりの基幹原料として、ニーズの拡大が見込まれています。なお、2024年度下期には王子製紙米子工場に製紙工場のインフラを活用した国内初の木質由来のエタノール及び糖液のパイロット製造設備が稼働予定です。さらに、今般、原料に木質バイオマスを採用することにより、有機フッ素化合物群を使用せず、かつ、微細化につながる最先端半導体向けレジストの開発にも成功し、製品化を目指しています。

 次に「メディカル&ヘルスケア領域への挑戦」として、木材の主要成分を利用することで、動物由来に依存する課題を回避できる医薬品の開発に取り組んでいます。また、創薬における動物実験の回避や再生医療の促進を目指し、細胞培養基材の開発にも力を入れています。さらに、医薬品や化粧品、甘味料など幅広く使用されている薬用植物「甘草(カンゾウ)」についても確立された大規模栽培の技術を駆使し、海外の野生品に依存せずに国産化することで、供給の安定性を確保できるよう努めています。

 そして、「環境配慮型製品の開発」として、植物由来のポリ乳酸を含有したバイオマスプラスチックフィルムの営業生産を開始するとともに、ポリ乳酸のラミネート紙の商品化を進めています。なお、2024年1月、ポリ乳酸合成のベンチプラントが運転を開始し、今般、世界に先駆けて木質(非可食原料)由来のポリ乳酸の合成に成功しました。また、現行の紙リサイクルシステムでも再生可能な紙コップ原紙やフッ素系の耐油剤を使用せず、紙素材で耐油性能を実現した非フッ素タイプの耐油紙を開発し販売しています。

 なお、当社グループでは、主に焼却処分(サーマルリサイクル)されていた、プラスチックラミネート加工が施された使用済の紙コップやアルミ付きの紙容器を回収し、効率的に繊維(パルプ)分を回収するシステムを開発しました。段ボール原紙へのマテリアルリサイクルに取り組み、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に貢献していきます。

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