企業PHCホールディングス東証プライム:6523】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは、ヘルスケア分野において、世界中の健康を願うすべての人々の豊かな社会づくりに貢献するため、技術の革新・融合により新たな価値を創造することを目指し、研究開発に取り組んでいます。2022年11月に公表した中期経営計画Value Creation Planでは今後のグループの成長を牽引する成長領域事業を定めており、研究開発活動において成長領域を支えるテーマに優先的に資源配分を行い、重点的に取り組んでいます。研究開発の方針として、自社で全てを行うのではなく我々の強みを増強できる社外パートナーと積極的に協業しスピード感をもって技術・製品開発を行うこと、また従来のやり方にとらわれず、組織や文化のもと研究開発を行うことを掲げ、イノベーションを推進しています。

 当社グループでは組織体制として、先行技術開発センターと、事業部の研究開発チームとが研究開発に取り組んでいます。先行技術開発センターでは、事業を横断するようなテーマや、基礎研究をベースとする要素技術開発等グループ全体の研究開発に取り組んでいます。事業部の研究開発チームでは、より製品化に近いテーマの研究開発や既存製品・サービスの継続的な開発を行っています。

 当社グループの研究開発費は、11,971百万円となっております。先行技術開発センターを含む本社その他における研究開発費は1,253百万円となっております。

(1) 糖尿病マネジメントドメイン

 糖尿病マネジメントドメインでは血糖値測定システム(BGM)、HbA1cや脂質等を測定できる簡易迅速検査器(POCT)、及び薬剤注射のために通院せず薬剤が自宅で自己注射できる電動医薬品注入器に関する開発を行っております。当連結会計年度には、「グロウジェクターDuo」をJCRファーマ株式会社と共同開発しました。成長ホルモン治療に用いられるヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト」専用の電動式医薬品注入器で、従来製品による治療状況や市場のニーズを踏まえ、より簡便な操作を好まれるユーザー向けに開発を行い、PHC株式会社が製造販売し、JCRファーマが発売しました。

 電動式注入器では処方量を簡単・正確に自身で自宅で注射できる一方で服薬管理も重要であることから、スマートフォン等で使える服薬管理アプリの開発にも力をいれています。JCRファーマと共同で電動式成長ホルモン注入器「グロウジェクターDuo」並びに「グロウジェクターL」に対応する、成長ホルモン治療服薬管理アプリケーションソフトウェア「めろん日記」の機能を更新し、公開しました。この度の更新によりスマートなメイン画面表示で治療サポート機能に特化した「シンプルモード」が追加され、従来のメイン画面表示である「通常モード」との切替えを可能とし、幅広い年代の患者さんのライフスタイルに寄り添い、長期にわたる治療のサポートと服薬アドヒアランス向上に貢献していきます。

 持続血糖測定システム(CGM)については、資本業務提携をしているSenseonics Holdings, Inc.社(以下、「Senseonics社」)が研究開発に取り組んでいます。PHCグループが独占販売するEversenseは、超小型センサを皮下に埋め込み、利用シーンに応じて取り外し可能な送信機を通じてスマートフォン等でグルコース値がモニタリングできる画期的な製品です。2022年に6か月装着が可能なEversense E3を米国及び欧州で発売して以来、ユーザー数は大幅に増加しており、同システムは大きな成長の基盤として確立されました。現在Senseonics社において、患者様からのフィードバックを活かした次世代モデルの開発を行っており、糖尿病の患者様が抱える様々な悩みに対し、独自の解決策と快適さを提供していきます。Senseonics社とは、CGMの成長における重要パートナーとして今後も共に取り組んでまいります。

 また、再生・細胞医療分野において、株式会社サイフューズと戦略的パートナーシップの強化を目的とした業務提携に関する基本合意を締結しました。PHCの血糖値測定システムの開発と生産工程で蓄積したオリジナルトレーサビリティシステムを活用し、サイフューズの革新的な再生医療等製品の商業化に向けた生産体制の構築に取り組みます。両社による提携関係の強化を通じて様々な研究開発・技術開発の促進、及び新たな製品の創出等、本分野の成長発展への貢献を目指しています。

 当連結会計年度の糖尿病マネジメントドメインにおける研究開発費は、2,460百万円となりました。

(2) ヘルスケアソリューションドメイン

 ヘルスケアIT事業では、診療所用医事一体型電子カルテシステム、保険薬局用電子薬歴システムを基軸とした次世代に繋がるクラウド関連の商品や特定保健指導支援ツール、遠隔医療システム等商品開発を進めております。当連結会計年度では、クラウド技術を応用したロケーションフリー及びデバイスフリーを実現した診療所向け医事一体型電子カルテシステム「Medicom HRf Hybrid Cloud」を発売しました。高いカスタマイズ性、及び「Medicom Cloud Connect API」を通じた他社サービスとのAPI連携も可能であり、医療従事者の多様な働き方を支援します。

 一般・療養型向け電子カルテシステムとしては「Medicom-CKII」を発売しました。オンプレミス型・クラウド型双方の機能が選択できるだけでなく、シンプルな操作性と充実したサポート体制を通じて、療養型病院における医療DXを支援します。

 また、情報処理能力が向上しスムーズな操作性を実現した、保険薬局向けシステム「PharnesX」シリーズを発売し、薬局従業員の負荷軽減に貢献しました。

 遠隔医療システムについては、日本国内における医療現場のニーズに対応した小型カートタイプの「Doctor Cart」を発売しました。十分な診察スペースの確保が困難な日本の医療現場でも扱いやすいコンパクトな設計となっており、患者さんや医療スタッフの空間を確保しながら適切な診療のサポートを可能としています。またリアルタイム遠隔医療システム「Teladoc HEALTH」は、次世代の医師教育プログラムへの採用や透析、周産期支援システムの実証実験、施設間連携の実証事業、医療MaaS車両への搭載、離島における診療所への導入等様々に活用され、地域医療に貢献しています。

 その他、「オンライン資格確認」と連携する医療機関・薬局向け医事コンピュータ用ソフトウェア導入を進め、累計導入数で50,000件を超えました。

 このように国の進める多様な医療・健康データとの接続に関する施策との積極的な連携を通じ、PHCグループによるデジタルプラットフォームを実現していきます。

 LSIM事業では、臨床検査事業、診断薬事業、創薬支援事業における、新たな商品、技術の開発を行っております。

 当該事業年度、臨床検査事業では、新規マーカーの導入(上市)や検査手法の改良を、診断薬事業では、全自動血液凝固システム『STACIA CN10』や移動式免疫発光測定装置『PATHFAST』の装置、試薬の改良や新規検査項目の開発及び海外薬事への対応、創薬支援事業では新しいモダリティと革新的な治療概念の普及に対応すべく、がん、認知症含む神経変性疾患、感染症等の各種疾患への治療薬開発に貢献する薬効薬理モデルの拡充や新たな分析技術の開発等に取り組みました。

 当連結会計年度のヘルスケアソリューションドメインにおける研究開発費は2,908百万円となりました。

(3) 診断・ライフサイエンスドメイン

 バイオメディカ事業では、医療、ライフサイエンス分野の研究で用いられる保存機器、培養機器、実験環境機器、及び病院や薬局等の調剤室で用いられる調剤機器、フードソリューション機器の商品開発を行っております。

 -85℃ノンフロン超低温フリーザーについては、米国シアトルで開催されたバイオバンクの国際学会、International Society for Biological and Environmental Repositories(環境及び生物学的リポジトリ国際学会「ISBER」)2023年度年次総会において、2023年3月期に発売した「VIP ECO SMART」シリーズ(品番:MDF-DU703VH/VHA)が、技術の革新性と独自性、バイオバンク業界への影響力、製品の価値を裏付ける客観的データ、市場ニーズの観点から優れていると評価され、「Outstanding New Product Award(優秀新製品賞)」を受賞しました。

 当連結会計年度では製薬企業及び研究施設・医療機関向けに、内扉への着霜の大幅低減を実現した-85℃ノンフロン超低温フリーザー「FrostLess(フロスト・レス)」(品番:MDF-DU700ZH)を発売しました。高い省エネルギー性能を継承しつつ、霜の発生を限りなく抑制する事により、貴重な研究サンプルを守るだけでなく、研究現場における作業負担の軽減と、より効率的な研究活動の遂行に貢献します。また、地球環境への負荷軽減と省エネルギー性能の向上を追求した-85℃小型ノンフロン超低温フリーザー(品番:MDF-DC102VH/DC202VH)を発売しました。臨床現場での小型超低温フリーザーの需要拡大が見込まれる中、貴重な医薬品や検体の長期保存のみならず、SDGsの実現も期待されています。

 薬用保冷庫については省エネルギー性能の向上と、より精緻な温度制御を追求した大型ノンフロン薬用冷蔵ショーケース「Twin Guard ECO」(品番:MPR-S1201XH/RXH)を開発しました。

 病理事業では、エプレディアのミッションであるEnhancing Precision cancer diagnosticsを推進するための新製品の開発を行っております。当連結会計年度ではがん診断における病理医の作業効率化を目指し、3Dhistech Ltd.(本社:ハンガリー ブダペスト、以下「3DHistech」)が開発したデジタルスライドスキャナ「PANNORAMIC 480」の日本での販売を開始しました。本製品は病理医が診断に使用するスライドガラス上の様々な標本を画像データ化するスライドスキャナであり、すでに展開しているフラッグシップ機の「PANNORAMIC P1000」を日本市場に合わせて開発したコンパクトモデルです。

 また、病理のラボにおける検体のトレーサビリティを向上させる最新のスライドプリンター「SlideMate Laser」の米国での販売を開始しました。高解像度の600dpiレーザー印刷により、がん診断のワークフローで使用するスライドガラスにより多くの識別情報を含める事が可能となりました。

 診断・ライフサイエンスドメインでは独自の電気化学センサ技術を活用した細胞代謝モニタリングの開発や、パートナー企業との協業を通じたデジタル病理、免疫組織化学技術の開発を進め、中期経営計画における先端治療開発ソリューションの拡大を推進します。

 当連結会計年度の診断・ライフサイエンスドメインにおける研究開発費は5,349百万円となりました。

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