企業兼大株主ENEOSホールディングス東証プライム:5020】「石油・石炭製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。

(1)ガバナンス

・ESG経営推進体制

 企業が持続的に成長するためには、事業活動を通じて社会ニーズに応え続けるとともに、社会課題の解決に貢献することで社会から信頼され、価値を認められる存在でなければなりません。

 この認識のもと、当社グループは「ESG経営に関する基本方針」を定め、当社経営会議において将来の経営に大きな影響を及ぼし得るリスクや事業機会を分析し、特定したリスク・重点課題への対応状況を適切に管理する体制を取っています。

[リスク・重点課題及び対応状況確認プロセス]

 ア.包括的な協議(原則年1回、第4四半期)(次頁、図①)

 経営会議では、議論の実効性及び意思決定の迅速性を高めるため、下記の事項を包括的に協議しています。

(ア)全社的なリスクマネジメントに基づいて特定する重点対応リスク事象

(イ)ESGに関するリスク分析に基づいて特定するESG重点課題

(ウ)内部統制システムに基づいて特定する内部統制上のリスク事象

 イ.対応方針決定及び状況確認(原則年1回、第1四半期)(次頁、図②)

 当社所管部署主導のもと、関係部署及び主要な事業会社(注)が組織横断的に連携し、特定したリスク・重点課題への対応方針を策定・実行しています。

 経営会議では、前年度の状況確認とともに、当該年度の対応方針確定・決定を行っています。

(注)主要な事業会社とは、ENEOS株式会社、JX石油開発株式会社及びJX金属株式会社の総称です。

 ウ.事業機会の議論(適宜)(次頁、図③)

 経営会議では、中期経営計画や年度ごとの事業計画及びそれらに基づく予算の審議を行っています。

 その都度、事業機会について議論しています。

 エ.取締役会への報告(適宜)(次頁、図④)

 取締役会は、経営及び中期経営計画・予算等の事業戦略を決議するとともに、経営会議で決定したリスク・重点課題とそれらへの対応状況の報告(原則年2回)を受けることで、監視・監督しています。

2022年度に取締役会に報告されたESG関連事項は、下記のとおりです。

(ア)2021年度ESG活動状況実績及び2023年度ESG重点課題の特定

(イ)個別課題への対応

 カーボンニュートラル基本計画の策定方針について

 オ.グループ会社との共有(適宜)(次頁、図⑤)

 特定したリスク・重点課題をグループ各社と適宜共有し、グループ各社が自律的に自社の事業戦略に反映することで対応しています。

(2)リスク管理

・ESG重点課題の検証と特定

 当社グループは、各種ガイドライン、ESG評価機関の評価項目や評価ウエイト等を踏まえ、毎年ESG重点課題を特定しています。

 特定手順に沿って、2023年度は9個のESG重点課題を特定しました。また、ESG重点課題ごとに責任部署・KPIを設定しており、ESG重点課題におけるKPIの進捗状況、取り組み結果を経営会議及び取締役会に報告することとしています。

(注)上から評価点の高い順に記載しています。

(3)気候変動対応(TCFD)

 ア.シナリオ分析

 当社グループは、世界エネルギー需要の長期的見通しについてはIEAのWEO(World Energy Outlook 2022)を参照し、物理的なリスク評価(気候や海面変化への対応など)についてはIPCCのRCPを参照してシナリオ分析を実施しています。

 長期ビジョンの見直しにあたり、低炭素社会は IEA WEOのSTEPS(注1)、カーボンニュートラル社会はAPS(注2)及びNZE(注3)を参考に検討し、その中間シナリオを当社グループのベースケースとしました。その結果、長期ビジョンで描く社会シナリオの方向性は変わらないものの、その変化のスピードは公表時の想定より加速すると考えています。

 当社グループのシナリオでは、2040年社会における国内燃料油需要はおよそ半減する(2019年比)一方、脱炭素・循環型資源由来のエネルギー市場が大きく成長していく中で環境価値取引も一般化することを想定しています。また、EV・シェアリングなどのモビリティ関連、生活を快適にするライフサポート関連の高付加価値サービスや、リサイクル資源、デジタル機器等に必要な高機能材料、先端材料等の需要が拡大していくと見込んでいます。

 当社グループは、1.5℃を含む複数のシナリオを検証しており、化石燃料中心のポートフォリオから脱炭素分野へシフトしていく過程において、燃料油の需要動向等にも注視しながら、エネルギー安定供給とカーボンニュートラル社会の実現を両立していく方針です。様々なシナリオに対応する高いレジリエンスを有しており、社会全体がよりカーボンニュートラル実現に向けて進展し、日本全体で1.5℃シナリオに向かっていく環境により近づけば、当社の取り組みもさらに加速させることで日本のエネルギートランジションをリードし、脱炭素社会の形成に大きく貢献します。

(注)1.Stated Policies シナリオ(現在公表されている各国の政策を反映したシナリオ)

2.Announced Pledges シナリオ(各国の意欲的な目標が達成されると仮定したシナリオ)

3.Net Zero Emissions by 2050 シナリオ(2050年に世界でネットゼロを達成するシナリオ)

 イ.リスクと機会

 当社グループは、2017年度からCOSO(注4)ERMフレームワークに基づく全社リスクマネジメント(ERM)を導入しています。このプロセスから気候変動対応は経営上の重要なリスクと捉え、かつ機会とも認識しており、次頁の項目を特定しています。

 財務影響については、移行リスクは当社ベースシナリオ、物理リスクはストレスケースとしてIPCC  RCP8.5シナリオ(注5)に基づき試算していますが、多くの潜在的リスク・不確実な要素・仮定を含んでおり、実際には、重要な要素の変動により大きく異なる可能性があります。

 なお、リスク・機会を含むTCFD推奨の開示項目については、毎年発行される「統合レポート」に詳細を記述しています。2023年度も9月に発行する予定ですので、そちらをご参照ください。

(注)4.COSO(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission:トレッドウェイ委員会支援組織委員会)が発表した内部統制のフレームワークで、世界各国で採用されています。

5.IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価シナリオで、世界の平均気温が2100年までに

1986年~2005年と比べ約4℃相当上昇するシナリオ

●リスク・機会と時間軸ごとの財務影響

 

項目名

財務影響

短期

(2025年)

中期

(2030年)

長期

(2040年)

評価方法

移行リスク

・カーボンニュートラル 達成のために要するコストの増加

なし

300億円/年

1,200億円/年

2030年の目標削減量400万トン、2040年の目標削減量1,900万トン全量を炭素クレジット購入した場合の営業利益減少額

炭素クレジット価格(50ドル/tCO2※ )×数量×為替

※内部炭素価格

・技術革新によるEVの普及加速による石油需要減

・環境意識の高まりによる石油需要減

影響は限定的

約500億円/年減少

約1,000億円/年減少

2019年比2030年に国内石油需要が約2割減、2040年に約半減した場合の営業利益減少額

(第3次中期経営計画の2025年度の利益目標をベースに算出)

・石油上流資産の座礁化

リスクは限定的

保有する石油上流資産の埋蔵量を、現行生産量で割り戻した可採年数から推定

物理リスク

・異常気象(大型台風等)と海面水位の上昇による極端な風水害の発生、過酷度の増加

1~2億円/年

IPCC RCP8.5シナリオを参照し、国内に保有する製油所・製錬所など31箇所の設備・資産を対象に、WRI Aqueduct(注6)などを用い被害総額(営業利益減少額)を試算

・温暖化に伴う海面上昇

リスクは限定的

Aqueductが予測する2040年時点の日本近海における海面上昇量(約0.2メートル)から推定

 

 

 

・再生可能エネルギー、水素、CN燃料に対する需要増加

周到な準備と展開フェーズ

〜500億円/年

〜2,000億円/年

脱炭素・循環型社会の進展に伴い、再生可能エネルギー、水素、CN燃料に対する需要の増加が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した当期利益

・EV充填や環境に配慮したモビリティサービスの拡大

周到な準備と展開フェーズ

〜500億円/年

〜1,000億円/年

脱炭素社会に向けて普及が見込まれるEV充電の需要増加や、環境に配慮したモビリティサービスなどのビジネス機会拡大が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した当期利益

・環境負荷の削減効果を持った製品の需要増加

・循環型資源由来(リサイクルを含む)の素材・電材の需要増加

1,000億円

〜1,500億円/年

〜2,000億円/年

GHG排出削減貢献につながる製品の需要拡大や、サーキュラーエコノミーに対応した循環型資源由来の素材・電材の需要増加が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した当期利益

(注)6.世界資源研究所(World Resources Institute)が開発した水リスク評価ツール

 ウ.指標と目標 ~カーボンニュートラル基本計画~

 カーボンニュートラル社会の実現に向けて、当社グループはカーボンニュートラル基本計画(2023年5月公表)を策定しています。本計画では、当社の温室効果ガス排出削減を製造・事業の効率化やCCS、森林吸収等によって進めるとともに、社会の温室効果ガス排出削減に貢献するため、水素・カーボンニュートラル燃料・再生可能エネルギー等による「エネルギートランジション」の推進とリサイクルやシェアリング等による「サーキュラーエコノミー」の推進を掲げ、具体的な目標やロードマップを定めています。

 当社グループのカーボンニュートラル基本計画の詳細は、以下のとおりです。

 エ.2022年度の主な取り組み

(ア)CO2の見える化

 製油所での削減推進のために排出量の適時把握が重要となる事から、2023年度中にCO2見える化システムを導入し、全社の排出量一元管理と製品ごとのカーボンフットプリント(CFP)算定ができる体制を構築することを公表しました。法定報告の効率化、月次予実管理による計画の実行管理を行うとともに、一部製品のCFPデータを顧客に提供し、炭素製品の環境価値訴求によるビジネス機会創出を目指します。さらに、GHG排出削減に資する事業を推進すべく、インターナルカーボンプライス50$/tを導入し、感応度分析を行っています。

(イ)CCS

 エネルギーセグメントに属する子会社であるENEOS株式会社、石油・天然ガス開発セグメントに属する子会社であるJX石油開発株式会社及び電源開発株式会社とともに、国内大規模CCSの事業化調査に共同で取り組むことを2022年5月に発表しました。2030年国内初の本格的なCCSを実装化し、エネルギーの安定供給を果たしつつ、日本のGHG排出削減目標達成への貢献を目指します。本取り組みは順調に進捗しており、3社で合弁会社(西日本カーボン貯留調査株式会社)を2023年2月に設立しました。

(ウ)自然吸収

 国内森林プロジェクトでは、久万高原町や新潟農林公社と連携し、クレジット創出事業への取り組みを加速しています。創出したクレジットを当社が買い取り、還元された利益を森林の維持・管理に利用する事で日本の林業が抱える社会課題解決と脱炭素社会における新たな森林の価値創造を追求していきます。

 なお、2022年度のGHG排出量(Scope1,2)の実績は、2023年11月公表予定の「ESGデータブック」をご参照ください。

(4)人的資本と多様性

 当社グループは、「グループ人材育成基本方針」に則り、中長期的な企業価値向上の実現を担う人材と、創造と革新の精神を持ちグローバルに挑戦し続ける人材を育成することで、確かな収益の礎の確立とエネルギートランジションを実現します。

 ア.人材育成

ENEOS株式会社(以下、ENEOS)では、ベンチャー企業派遣型研修、M&A研修等による能力開発、リスキリングなどを通じて、事業ポートフォリオの転換を実現する人材を育成していくほか、2022年度より導入したオンライン学習支援制度(ENEOS Learning Platform)の利用者数の向上を図ることにより、全社的に社員の自律的なキャリア形成を支援していきます。

JX石油開発株式会社(以下、JX石油開発)においては、プロジェクトマネジメント研修、JX金属株式会社(以下、JX金属)においては、グローバル研修やデジタル研修などを通じて、事業計画の実現に資する人材を育成していきます。

 イ.社内環境整備

(ア)人事制度

 当社グループでは、2021年度から2022年度にかけて、各社で人事制度を改定しました。

 具体的には、ENEOS(管理職)とJX石油開発では、役割等級制度を導入し、経営戦略に基づいて設定されたポストに年齢問わず最適な人材を抜擢するなど、ダイナミックな人材シフトと登用が可能になりました。

 また、ENEOS(一般職)とJX金属では、コース別人事制度を導入し、コース毎に求められる役割やキャリアを明示することで、各人材像に適した評価や育成を丁寧かつスピーディーに実行できるようになりました。

(イ)ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)と働き方改革の推進

 当社グループでは、多様な人材一人ひとりが最大限に力を発揮できるよう、DE&Iの推進を重要な経営戦略の一つと位置付けており、各社で様々な施策を展開しています。その施策の一つとして、女性活躍推進法及び次世代育成支援対策推進法に基づいた行動計画を策定しており、ENEOSにおいては「学卒採用者の女性比率」や「女性役職者数」等の目標を掲げています。

 また、自律的な働き方の選択と、それに伴う生産性の更なる向上を狙いとして、テレワークを始めとした柔軟な働き方を支援する制度を整備するなど、働き方改革も継続して推進しています。

 第3次中期経営計画における「経営基盤強化」のためのグループ人材戦略は、以下のとおりです。

 ウ.指標及び目標

 当社グループ各社は、上記の戦略の実現に向け、各事業会社の特性に応じ定量目標を設定しており、ENEOSでは、以下の目標を掲げています。

 

2022年度実績

2025年度目標

学卒採用者の女性比率

事務系 52%

事務系 50%以上

 

技術系 16%

技術系 20%以上

女性役職者数

51名

100名以上

経験者採用役職者数

56名

80名以上

男性育児休業取得率(注)

83.9%

90%以上

ENEOS Learning Platform

延べ利用人数

589名

1,500名以上

(注)当社基準の計算方法により、算出した数値です。

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