E・Jホールディングス 【東証プライム:2153】「サービス業」 へ投稿
企業概要
当連結グループは、グループミッションを「地球環境にやさしい優れた技術と判断力で、真に豊かな社会創りに貢献」と定め、国土や環境のサステナビリティを確保すべく、企業活動を行うようSDGs目標を定めて事業を行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当連結グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当連結グループは、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、気候変動を含むESGに関する経営のリスクと機会について審議・決定するとともに、担当取締役企画本部長の下で「企画本部」がその具体化を進めております。
また、「取締役会」は、「サステナビリティ推進委員会」で協議・決議されたサステナビリティ経営に係る課題と対応策について報告を受け、E・Jグループの持続的成長に向けた対応方針及び実行計画等についての論議・監督を行っております。
併せて、資本効率性やPBR(株価純資産倍率)を意識した経営を実践し、企業価値向上に資するため、自社の資本コスト等を的確に把握し、その内容や市場評価に関して、取締役会にて分析・評価を行い改善に向けた「成長投資」、「人的資本投資」等を策定・実践する事により持続的な成長を図り企業価値の向上に取り組んでまいります。
<サステナビリティ経営にかかるガバナンス体制>
(2)戦略
①気候変動に対する取り組み
<全般的取り組み>
2022年5月期より、パリ協定(※1)が示す「産業革命前からの全世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるという目標」達成に向けた取り組みに着手し、TCFD(※2)の枠組みに沿った環境情報を当社のホームページ(URL https://www.ej-hds.co.jp/sustainability/s_environment/tcfd.html)で継続的に開示しております。
当連結会計年度においては、科学的根拠を持ったCO₂排出量の算出と削減目標を設定するため、SBTイニシアティブ(※3)に対して、2年以内の温室効果ガス削減目標の認定取得を目指すことをコミットメントするとともに、SBT認定取得のための申請書を提出いたしました。また、気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)(※4)へ参加するとともに、環境評価の情報開示に国際的に取り組む非政府組織(NGO)であるCDP(※5)から、2022年に実施された気候変動情報開示に対する活動を評価する「気候変動プログラム」において、「B⁻」スコアを取得いたしました。
※1 パリ協定:
2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連機構変動枠組条約第21回締約国会議)で成立した2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みで、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2.0℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的とする国際協定を指しております。
※2 TCFD:
気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」を指し、気候変動に関する情報開示の項目及び内容について提言しております。
※3 SBTイニシアティブ:
複数の気候関連イニシアティブによる共同イニシアティブであり、企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ、1.5℃に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進しております。
※4 気候変動イニシアティブ:
2018年7月に設立された、気候変動対策に積極的に取組む企業や自治体、NGOなど、国家政府以外の多様な主体の情報発信や意見交換を強化するためのネットワークであります。
※5 CDP:
機関投資家が連携し、企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクトを指します。2000年の発足当初は「Carbon Disclosure Project」が正式名称でありましたが、現在はCarbon以外も対象とすることから、略称のCDPが正式名称となっております。このプロジェクトは発足以降、主要国の時価総額の上位企業に対して、毎年質問表が送付されており、企業側からの回答率も年々高まってきております。日本国内でも2005年より活動を始めており、2021年度までは日本企業のトップ500社を対象としておりましたが、2022年度からその対象を東京証券取引所プライム市場上場会社(約1,840社)に拡大しております。
<TCFDフレームワークに基づく取り組み>
当連結グループは、2022年5月期より、グループ会社全体を対象として、気候変動によるリスク・機会の特定・評価、気候関連問題が事業に与える中長期的な影響を把握するため、TCFDフレームワークに準拠したシナリオ分析を実施しております。
<シナリオ分析>
シナリオ分析の概要は以下のとおりであります。
・分析の時間軸は、当社の長期ビジョンの最終年度である2030年からカーボンニュートラルの目標年度である2050年までの中長期を対象といたしました。
・分析においては、以下に示すシナリオを採用し、政策や市場動向の移行リスク・機会と、地球温暖化による水面上昇や自然災害などによる水面上昇や自然災害などによる物理的変化に起因する物理的リスク・機会の特定と財務的影響を定性評価いたしました。採用した主なシナリオは以下のとおりであります。
(移行シナリオ)
国際エネルギー機関(IEA)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇を1.5℃以下に抑えるシナリオ(SDS及びNZE)
(物理的シナリオ)
国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇が4.0℃を超えるシナリオ
・各シナリオの前提条件は、各国際機関等が公表している将来的な気候予測や、日本政府による各種データにもとづき設定いたしました。
<事業インパクト評価>
・シナリオ分析に基づく事業インパクト(リスクと機会)評価結果は下記の通りです。
・財務的影響につきましては、2030年の営業利益目標に対する影響程度を大、中、小の3段階で評価いたしました。
■1.5℃シナリオに対する移行リスク
分類 | 要因 | 2030年度における 事業インパクト | リスク | 機会 | 影響の時間軸 | 2030年度における財務的影響 | 対応策 |
政策・規制 | 脱炭素社会に向けた規制強化(炭素税の導入等) | ・炭素税(140ドル/ton×3700tco2)の負担額増加(2030年度のスコープ1,2のCO₂排出総量に対する課税を想定) ・CO₂削減のための対策費用の増 | ● |
| ~ 2030 | 中 | CO₂排出量の削減(省エネ施設への更新、再エネへの転換、ハイブリッド車及び電気自動車への更新 等 |
市場 | 脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大 | ・CO₂削減・環境負荷軽減事業への参画の可能性 ・再エネ管理事業への参入の可能性 ・新技術、新素材の開発の可能性 |
| ● | ~ 2030 | 中 | 脱炭素関連の新規事業への参入、研究開発の強化 |
市場 | ESG投資の拡大 | ・脱炭素への取り組み姿勢の評価による投資の拡大 |
| ● | ~ 2030 | 小~中 | 環境関連施策の確実な実践 |
■4.0℃シナリオに対する物理リスク
分類 | 要因 | 2030年度における 事業インパクト | リスク | 機会 | 影響の時間軸 | 2030年度における財務的影響 | 対応策 |
慢性 | 平均気温上昇 | ・野外での労働条件の悪化に対するコスト増 | ● |
| ~2050 | 小 | 野外労働環境の改善、現場作業の省人化の推進、劣悪環境に対する手当の考慮 |
急性 | 集中豪雨に起因する気象災害の激甚化 | ・災害対応業務のニーズ拡大 ・国土強靭化への対応に関するニーズ拡大 |
| ● | ~ 2050 | 大 | 災害対応、国土強靭化対応の強化、人員のシフト、関連技術の研究開発・アライアンスの強化 |
急性 | 降水量の減少 | ・水環境関連業務のニーズ拡大 |
| ● | ~ 2050 | 大 | 水環境関連対応の強化、人員のシフト、関連技術の研究開発・アライアンスの強化 |
急性 | 海面上昇、気象災害の激甚化 | ・事業所の土砂・洪水災害リスクへの対応 | ● |
| ~ 2050 | 小 | 事業所の洪水リスクは限定的 |
<気候関連のリスクと機会に対する対応策>
・事業インパクト評価により特定されたリスクと機会のうち、インパクトが大きいと判断された機会に対して、現時点で考えられる対策例を以下に示しております。
・当連結グループでは、長期ビジョンのもと、このような対応を推し進めるとともに、これらの機会を確実にとらえて、SDGs目標の達成につながるサステナブルな世界の進展に貢献してまいります。
分類 | 要因 | 対応例 |
移行/市場 | 脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大 | ・再エネ(バイオマス)関連計画の拡大 ・脱炭素を目指した廃棄物処理システムの再構築 |
急性 | 異常気象の激甚化による災害発生への対応 | ・グリーンインフラ形成 ・再エネ利用スマートシティ ・流域治水計画、立地適正化 ・河川、砂防施設の更新 ・避難計画、被害想定、BCP、防災訓練・防災計画の更新 ・減災計画の見直し ・土砂災害対策施設の更新・新設 ・各種監視、避難誘導、情報伝達システムの新設更新 ・雨水管理計画の見直し、処理場・ポンプ場施設の更新 |
物理的/急性 | 降水量の減少 | ・灌漑事業の拡大 ・地下水利用計画 |
②人的資本・多様性(人財の育成及び社内環境整備に関する方針)に関する取り組み
当連結グループは、グループ事業の発展が社会に貢献していくものとして、長期に亘る業容拡大を目指しています。この成長を作り出すのは、人財と適切な職場環境であり、「人財は会社にとって最大の資本であり、その確保・育成に努める」ことを人財基本方針として掲げ、社員の満足度を高め、やりがいのある職場づくりを目的に、働き方改革を推進しております。この取り組みのベースとしているのが生産性の向上です。他の産業に漏れず、建設コンサルタント業界も人手不足の状況にあり、国土交通省が進める「i-Construction」や「CIM」など、AI、ICTを活用した生産性向上を推進しております。また、満足度向上に重要なワーク・ライフ・バランス(WLB)についても取り組みを進め、当社グループの主要子会社である株式会社エイト日本技術開発では、働き方改革のキャッチコピーを定め、社内への浸透を図っております。
一方、建設コンサルタント業界は、大きな変革の時代を迎える中で、従来にも増して活躍の場が広がっております。そして、社会に提供するインフラには、お客さまやご利用者・地域住民のご要望、環境負荷低減、修景、将来への拡張性など、多様な視点・価値観が必要となり、E・Jグループは社員の教育・研修と共にダイバーシティ経営にも力を入れております。
<ダイバーシティ&インクルージョン>
E・Jグループの考える「ダイバーシティ経営」は、多様な人財がその能力を最大限に発揮できる環境を提供することによって、個人と組織がともに持続的成長を成し遂げるものです。多様性を確保していくうえで、特に力を入れているのが女性活躍です。元来、建設コンサルタント業界では、女性の就業比率が低く、男性中心の人員構成となっておりました。このような中、グループ子会社である株式会社エイト日本技術開発、株式会社共立エンジニヤの2社は女性活躍を推進する行動計画を策定し、「えるぼし」の認定を受けています。今後も、他のグループ子会社を含めて、女性管理職比率の向上や男性社員の育休取得率の向上等、女性活躍のための様々な取り組みを積極的に行ってまいります。また、当連結グループにおける「女性活躍推進法」に基づく「全労働者の男女の賃金の差異」は60.5%であり、当該差異の縮小を図るべく取り組みを進めてまいります。
<働き方改革>
当連結グループでは、全役職員が活き活きと働き、やりがいのある職場づくりを目指して働き方改革を進めております。この働き方改革を進めていくに当たりましては、業務のデジタルシフトによる、“しくみを変え”、“しごとを変える”ことに取り組んでおります。デジタルシフトにより効率化を図り、長時間労働の更なる是正や多様な働き方が可能な環境の整備とともに、多様な人財が能力を最大限に発揮できる新しい働き方を創り出すことに努めております。具体的な取り組みといたしましては、複数のE・Jグループ各社において、ウィークリースタンスの徹底やノー残業デーなどを実施しております。また、E・Jグループ各社のうち株式会社エイト日本技術開発では、「次世代育成 行動計画」を見直し、アニバーサリー休暇を正式に制度化するとともに、育児・介護に係る「勤務地限定正社員制度」も導入しております。
<人財育成>
企業経営にとって最大の資産となる人財の育成について、E・Jグループは、3つの領域を考えています。1つ目は、倫理・あり方などの人間としての育成です。2つ目は、働く上でのリーダーシップやマネジメントなどのキャリア形成です。そして、3つ目は、業界の第一線で働き続けるための技術・ノウハウの修得です。この3つの領域を相互に連携させながら、OJTや研修などを通じて社会に開かれた人財の育成を進めてまいります。
特に、建設コンサルタント業界においては、事業領域が拡張することにより習得すべき知識・技術が広がり、日進月歩のテクノロジーの進化を取り込む教育が重要となっているため、株式会社エイト日本技術開発の中に企業内学校として「EJアカデミー」を開設し、E・Jグループ社員が参加することで、グループの技術力の向上・人的資源の拡充を目指しております。
(3)リスク管理
当連結グループは、グループ全体のリスク管理の推進全般を統括する組織としてグループリスク管理委員会を設置しており、気候変動リスク、人的資本経営リスクを含む、全てのリスクを対象として、グループリスク管理委員会において、特定・評価を実施すると共に、是正計画の妥当性を審議し、継続的にモニタリングできる体制を構築しております。グループリスク管理委員会では具体的な取り組みのひとつとして、2022年12月1日付で制定した「E・Jグループ人権方針」に沿って、今後、定期的に人権デューデリジェンスを実施し、人権侵害に係る救済プロセスを適切に進めてまいります。
また、気候変動リスクへの対応につきましては、TCFDに関する調査、モニタリングを企画本部にて行い、サステナビリティ推進委員会で適切に管理しております。
併せて当社取締役会およびグループ経営会議等での取り組みを通じて、建設コンサルタント業界の事業領域拡大に伴う技術者に求められる知識・技術の広がりや高度化に対応すべく必要な基盤整備を行い、引き続き適切な人的資本経営に努めてまいります。
(4)指標及び目標
①気候変動に対する指標と目標
<CO₂排出量削減目標>
SBT認定取得のため、SBTイニシアティブが求める目標との整合を考慮して、2023年5月期に、サステナビリティ推進委員会及び取締役会の審議を経て目標の見直しを行いました。また、2022年5月期のCO₂排出量についても、SBT認定取得申請に向けての精査により、スコープ3の実績値の一部見直しの必要があり、この数値の見直しを行いました。見直し後の2022年5月期のCO₂排出量を基準として、長期ビジョン「E・J- Vision2030」の最終年度である2030年度に向けたCO₂削減目標(下表)を設定し、事業活動におけるCO₂削減の取り組みを進めております。
目標設定の前提条件は以下のとおりであります。
・削減目標は、21世紀末の温度上昇を1.5℃以内に抑えるSBT水準を目指して設定いたしました。
・削減目標は、長期ビジョン「E・J-Vision2030」の最終年度である2030年度を対象とし、初めてCO₂排出量を算定した2022年5月期を基準年といたしました。
・CO₂排出量の算定は、環境省等が策定した「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」(Ver.2.4)に基づいております。
■CO₂排出量削減目標
分類(※) | 2030年度CO₂排出量目標 | |
スコープ1 | 基準年排出量の42.0%削減 | |
スコープ2 | ||
スコープ3 | カテゴリー1 | 2027年度までに主要サプライヤーに環境目標の設定を求める |
カテゴリー6 カテゴリー7 | 基準年排出量の25.0%削減 |
<CO₂排出量の実績値>
・2023年5月期のCO₂排出量の実績値は以下のとおりであります。
・2023年5月期は、CO₂排出量削減のために、社有車をハイブリッド車及び電気自動車へ積極的に更新するとともに、使用電力の55.0%を再生可能エネルギー由来により調達しております。
■CO₂排出量の実績値
分類(※) | 指標 | 目標 | ||
基準値 (2022年5月期)(tCO₂) | 実績 (2023年5月期)(tCO₂) | 2030年度CO₂排出量 (tCO₂) | 2030年度CO₂削減 (%) | |
スコープ1 | 2,774 | 1,879 | 1,609 | ▲42.0 |
スコープ2 | ||||
スコープ3 (カテゴリー1) | 17,427 | 17,404 | - | - |
スコープ3 (カテゴリー2~5) | 2,038 | 3,450 | - | - |
スコープ3 (カテゴリー6、7) | 2,285 | 3,165 | 1,714 | ▲25.0 |
合計 | 24,524 | 25,898 | - | - |
※ スコープ1:燃料消費によるCO₂の直接排出
スコープ2:電力消費等のエネルギー消費によるCO₂の間接排出
スコープ3
カテゴリー1:購入した製品・サービスによる間接排出(サプライチェーン排出)
カテゴリー2:自社の資本財の建設・製造に伴う間接排出
カテゴリー3:スコープ1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動による間接排出
カテゴリー4:輸送、配達(上流側)による間接排出
カテゴリー5:事業から出る廃棄物の輸送、処理に伴う間接排出
カテゴリー6:従業員の出張に伴う間接排出
カテゴリー7:従業員の通勤に伴う間接排出
②人的資本・多様性に関する指標と目標
当連結グループは、グループ事業の発展が社会に貢献していくものとして、長期に亘る業容拡大を目指しています。この成長を作り出す原動力は、人財と適切な職場環境と考え、社員の満足度を高め、やりがいのある職場づくりを目的として、以下の指標と目標のもと、ダイバーシティ経営の推進に取り組んでまいります。
指 標 | 実 績 (当連結会計年度) | 目標値 (2030年度) |
女性管理職比率 | 4.0% | 10.0%以上 |
新入社員に占める女性比率 | 32.5% | 30.0%以上 |
男性育休取得率 | 52.0% | 100.0% |
女性活躍は当連結グループの成長に不可欠であり、2030年度には、女性管理職比率10.0%以上を達成する事を目標として設定いたしました。また、その実現のために新入社員に占める女性比率30.0%以上を毎年維持してまいります。
以上の取り組みにより、働き易い職場環境と自由な発想による生産性向上を実現し、自社の競争力強化につなげ、全てのステークホルダーへの還元を積極的に実施するとともに、E・Jグループ企業価値の更なる向上に努めてまいります。
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