AeroEdge 【東証グロース:7409】「輸送用機器」 へ投稿
企業概要
当社は、現時点において受託加工が主たる事業となっておりますが、ものづくり製造業としてグローバルでの成長を目指すにあたり、下記の開発にも取り組んでおり、当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は139,634千円であります。
(1) チタンアルミブレード用新材料開発
LEAPエンジン向けチタンアルミブレードの合金材料は仏SAFRAN社から無償支給されておりますが、現在その材料メーカーは海外の1社のみとなっております。当社は、新たな材料調達先に選定されるべく、材料の開発を進めております。当社が開発している新材料は、Near Net Shape(NNS)形状と呼ばれ、現在のスラグ形状(鋳塊)と異なり、最終製品により近い形状の材料となります。そのため、コストの高いチタンアルミ原料の利用の削減、及び加工段階におけるコストが高い初期工程の削減が可能となります。その結果、環境負荷低減や材料及び副資材調達の海外依存からの脱却につながるとともに、調達リードタイムの短縮や物流費の低減にも寄与することとなります。また、工法開発に加え、適用範囲の拡大につながる合金の改良にも取り組んでおります。なお、当該開発は、国立研究開発法人物質・材料研究機構と共同で進めております。
当事業年度においては、前事業年度に導入した試験用の溶解炉を用いて一定量の試作を行い、特に量産に向けての品質改善、コストを継続的に検証してまいりました。特に量産時に安定的に生産が可能となる鋳造設備の一部自動化機能の設計や改修作業を進めました。また、昨今航空機エンジンメーカーが推進する品質保証の考え方として、プロセスの開発段階から量産時のあらゆるリスクを低減するために、所望のフレームワークや管理ツールを用いた開発を推進しております。品質管理の技術として、チタンアルミ鋳造材料の化学分析技術の知見を深めており、来期は仏SAFRAN社と有効な化学分析手法について検討する予定です。当該開発は、当社の主力事業であるチタンアルミブレードの材料の供給多様化等の観点において、顧客の期待も高いことから優先的に推進してまいります。
(2) AM技術開発
当社は、AM(Additive Manufacturing、積層造形、いわゆる3Dプリンタ)技術の開発を進めております。積層造形とは、電子ビームやファイバーレーザーにより金属粉末の溶融凝固を繰り返すことにより、金属部品を製作する技術のことをいいます。積層造形技術を活用することにより、今までは加工が困難であった複雑形状のものを作り上げることが可能となります。しかしながら、積層造形は高額な設備が必要となること、また、造形には時間がかかることが量産にあたっての課題となります。保有する金属積層造形設備2台を活用した研究開発を推進するとともに、積層造形を活用した試作品の受託を行い、設計機能や当社が実績を持つ精密加工や非破壊検査技術をも取り込んだ新たなビジネスモデルの構築を検討しております。また、積層造形は、デジタル製造や分散型製造モデルとも言われており、従来のサプライチェーンや大量生産モデルと異なるビジネスモデルが可能となると考えられております。このような特徴を有する積層造形とデジタル技術を組み合わせたビジネスモデルの検討も推進しております。
当事業年度においては、これまで培ってきた技術力やノウハウをもって市場開発と営業強化を行い、特定の顧客と金属・樹脂を問わずAM技術を活用した鉄道車輌用のスペア部品の試作、実験に着手しました。鉄道産業においても、運用年数が何十年と非常に長く、航空機産業におけるMRO(Maintenance Repair Overhaul、整備・補修・オーバーホール)ビジネスとの類似性もあり、引き続きAM技術と親和性が高い産業やアプリケーションに向け、技術開発、並びに事業開発を進めてまいります。
(3) AMを活用したチタンアルミブレードMRO技術開発
航空機エンジンはその安全性を担保するため、一定の飛行距離や時間に応じて、MROとして定期的にエンジンを点検することが求められております。航空機エンジンに搭載される様々なタービンブレードもその過程で補修することが必要となりますが、LEAPエンジン向けのチタンアルミブレードについてはその素材の特徴から補修する技術が確立しておらず、不具合が見つかった場合には、現時点では全て取り換えることが必要となります。当社は、AM技術を活用し、チタンアルミブレードの補修技術を確立すべく、研究開発を進め、MRO市場に参入することを目指しております。
当事業年度においては、欧州の研究機関とも連携を強め、チタンアルミ部品の補修時に発生し得る欠陥を低減するための技術やプロセス条件について検討を進めてまいりました。解決策の方向性の目処付けが出来つつあることから、今後は製品形状に特化した最適化を行ってまいります。また、当該技術は、生産過程で生じる欠陥の補修にも技術的には活用可能であるため、こうした技術の活用により、生産現場におけるスクラップ率の低減に向けても開発を進めてまいります。
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