野村総合研究所 【東証プライム:4307】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
(1) サステナビリティ共通
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティを重要な経営課題に位置づけています。取締役会の構成や監督においてサステナビリティを考慮し、サステナビリティに知見のある社外取締役の選任に加えて、サステナビリティ基本方針(マテリアリティを含む)を取締役会で決議しています。
また、取締役会の監督のもと、サステナビリティ経営推進担当取締役を委員長とするサステナビリティ会議を設置しています。その下部委員会としてそれぞれ常務執行役員を委員長とする価値共創推進委員会、サステナビリティ推進委員会があり、グループ全体のサステナビリティを推進し、活動の進捗を定期的に取締役会へ報告しています。サステナビリティ推進委員会は、ESGの観点で基盤となる活動を推進する役割を担っています。5つの検討チームに分かれ、シナリオ分析をはじめとしたESG情報開示や、サプライチェーン全体での脱炭素化、人権関連調査等といった各種サステナビリティ施策に取り組み、サステナビリティ経営を支える活動を推進しています。サステナビリティ会議を含む当社のガバナンスの状況は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりです。
なお、取締役(社外取締役を除く。)及び執行役員その他の従業員(役員待遇)に対して支給する株式関連報酬の決定においては、温室効果ガス排出量削減、人的資本拡充を含む当社グループのサステナビリティ指標の達成に向けた取組状況を考慮する仕組みを導入しています。
② 戦略
当社グループは、サステナビリティに関連するリスクと機会を踏まえたマテリアリティを特定し、それらを事業や戦略へ反映しています。リスクと機会の概要、事業及び財務への影響、主な取組みは以下のとおりです。
マテリアリティ | 事業及び財務への影響 | 主な取組み | ||||
内容 | リスク | 機会 | 顕在時期 | 影響度 | ||
活力ある未来社会の共創 | 社会課題が複雑化、深刻化する中で、持続可能な未来社会づくりと当社グループの成長が一体的に進み、事業及び財務に影響。 | - | ○ | 短~長期 | 大 | ・顧客のビジネスモデル変革 ・社会・制度提言、情報発信 など |
最適社会の共創 | ・顧客のビジネスプロセス変革 ・ビジネスプラットフォームによる共同利用促進 など | |||||
安全安心社会の共創 | ・持続可能な社会インフラ実現 ・ITインフラ変革 ・安定サービス運用 ・防災・減災政策提言・復興支援 など | |||||
人的資本の拡充 | 人材獲得競争が激化する中、優秀なプロフェッショナル人材を獲得できるか否か、その人材を成長させる人材マネジメントシステムが機能するか否かが、事業及び財務に影響。 | ○ | ○ | 中~長期 | 大 | ・一人ひとりの成長機会の拡大 ・ダイバーシティ&インクルージョンの定着 ・成長ストーリーを実現するケイパビリティの増強 など |
知的資本の創出・蓄積 | 社会や事業環境の不確実性が高まる中、未来予測や社会提言の発信とともに、事業活動を通じて得られたノウハウを実践的な知的資産として活用し競争優位性を発揮できるか否かが、事業及び財務に影響。 | ○ | ○ | 中~長期 | 大 | ・ビジネスモデルの進化(ソフトウエア資産の拡充等) ・進化し続けるブランドの形成(情報発信のコンテンツ充実等) ・事業展開を支える組織ケイパビリティの強化(品質監理、生産革新等) など |
地球環境への貢献 | Scope3を含む温室効果ガス排出量削減に取り組まなければ、社会や顧客からの信頼を得られず、事業及び財務に影響。 | ○ | - | 中~長期 | 中 | ・温室効果ガス排出量削減・再生可能エネルギー利用の促進(Scope1+2) ・Scope3における温室効果ガス排出量削減に向けた対応 など |
社会的責任の遂行 | 社会的責任を遂行しなければ、顧客、従業員、パートナー会社の信頼を失い、事業及び財務に影響。 | ○ | - | 短~長期 | 中 | ・従業員のウェルビーイング ・人権・労働慣行に関する取組み(AI倫理等含む) ・パートナー会社との協力関係強化、ステークホルダーやコミュニティとの関係形成 など |
ガバナンスの高度化 | 適切なガバナンスが機能しなければ、顧客や投資家の信頼を失い、事業及び財務に影響。 | ○ | - | 短~長期 | 大 | ・グループ全体でのガバナンスと内部統制システムの整備・運用 ・統合リスク管理(ERM) ・品質監理、情報セキュリティ管理の強化 ・情報開示促進と透明性向上 ・コンプライアンスの徹底 など |
(注) 影響度は影響額、発現の蓋然性等を加味して総合的に判定。
③ リスク管理
当社グループにおけるサステナビリティに関連するリスクは、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループ全般のリスク管理体制、管理方法の中で識別、評価、管理しています。加えて、サステナビリティ会議及びサステナビリティ推進委員会において重要指標のモニタリング及び進捗管理、取締役会への報告を行っています。また、サステナビリティ推進部を設置し、サステナビリティに関する動向や規制の把握、当社グループへの影響を確認しています。
マテリアリティ | 主な機会とリスク | 「3 事業等のリスク」に記載の関連リスク |
活力ある未来社会の共創 | 様々なパートナーとの共創を通じた社会課題解決と、それに付随した売上増加と企業価値向上(機会) | (3)特に重要と認識するリスク ①品質に関するリスク、②情報セキュリティに関するリスク (4)重要と認識するリスク ①経営戦略に関するリスク |
最適社会の共創 | ||
安全安心社会の共創 | ||
人的資本の拡充 | 人材獲得、人的資本拡充の成否が競争力に直接影響(機会/リスク) | (3)特に重要と認識するリスク ⑥人材確保・育成に関するリスク |
知的資本の創出・蓄積 | 知的資本の創出・蓄積、組織ケイパビリティ強化の成否が競争力に直接影響(機会/リスク) | (3)特に重要と認識するリスク ①品質に関するリスク、③プロジェクトに関するリスク (4)重要と認識するリスク ②コンプライアンスに関するリスク a. 知的財産権について |
地球環境への貢献 | 気候変動の物理的影響や規制リスクによる収益性低下、レピュテーション低下(リスク) | (3)特に重要と認識するリスク ⑤事業継続に関するリスク (4)重要と認識するリスク ④サステナビリティに関するリスク (気候変動・人権等) |
社会的責任の遂行 | 人材流出、人的資本毀損による競争力低下、パートナー会社を失うことによる事業継続困難、訴訟等の発生、レピュテーション低下(リスク) | (3)特に重要と認識するリスク ⑥人材確保・育成に関するリスク (4)重要と認識するリスク ③パートナー会社に関するリスク、④サステナビリティに関するリスク(気候変動・人権等) |
ガバナンスの高度化 | 重大な障害等の発生による実害、訴訟等の発生、法令・コンプライアンス違反、のれんの減損、レピュテーション低下(リスク) | (3)特に重要と認識するリスク ①品質に関するリスク、②情報セキュリティに関するリスク、③プロジェクトに関するリスク、④グループガバナンスに関するリスク |
④ 指標及び目標
当社グループは、サステナビリティに関連するリスクと機会を評価、管理するため、中計2025において、重要指標(マテリアリティ指標)と目標値を定めています。
マテリアリティ | 重要指標 | 2026年3月期目標 | (参考)2023年3月期実績 |
活力ある未来社会の共創 | 業界・社会変革を実現するDX2.0/3.0 ※1 総投資額・施策額 | 630億円※2 | (2024年3月期より計測) |
最適社会の共創 | 最適社会に貢献するビジネスプラットフォーム売上高 | 1,410億円 | 1,285億円 |
安全安心社会の共創 | 強くてしなやかな社会を支える安全安心関連売上高※3 | 2,160億円 | 1,698億円 |
価値共創共感度※4(当社国内グループ) | 70% | 64% | |
人的資本の拡充 | 従業員エンゲージメント(当社)の総合スコア 女性への機会付与率※5(当社) | 総合スコア:70以上継続 機会付与率:17% | 総合スコア:71 機会付与率:14.3% |
知的資本の創出・蓄積 | 知的資本創出・蓄積のための投資額 | 410億円※2 | 132億円 |
地球環境への貢献 | 温室効果ガス排出量削減率・再生可能エネルギー利用率 (基準年:2020年3月期) | 2031年3月期目標 Scope1+2:ネットゼロ※6 Scope3:30%削減 再生可能エネルギー利用率:100% | Scope1+2:66%減 Scope3:5%増 再生可能エネルギー利用率:73% |
社会的責任の遂行 | 「NRIグループビジネスパートナー行動規範」※7への同意または同等規範の保有率※8 | 当社国内グループ 90% (参考:当社グループ80%) | 当社国内グループ 63% (参考:当社グループ56%) |
ガバナンスの高度化 | 重大なリスクの発現件数(規制当局への報告またはそれに準ずる当社グループ責の事案) | 0件 | 1件 |
外部評価指標 DJSI World (Dow Jones Sustainability Indices) | 選定継続 | 選定 |
(注)※1 デジタル技術で新しいビジネスモデルそのものを生み出すDXを「DX2.0」、社会課題を解決し、パラダイム変革を実現するDXを「DX3.0」と定義。
※2 中計2025期間の累計値。
※3 IT基盤サービスセグメント売上高(内部取引を含む)。
※4 「価値共創」や「3つの社会価値」の概念に強く共感する社員の割合。
※5 プロジェクトや事業における責任者の女性比率。
※6 Scope1+2の排出量を97%削減、残余排出量は中和化。なお、残余排出量とはネットゼロ目標年度の時点で当社グループのバリューチェーン内で削減できない排出量、中和化とはバリューチェーンの外で炭素除去技術等を活用し残余排出量を相殺することを指します。
※7 環境・人権等を含む行動規範。
※8 システム開発委託先など、当社グループの調達先企業における同意または同等規範保有率。
(2) 気候変動
① ガバナンス
気候変動に関連するガバナンスについては、「(1)サステナビリティ共通 ① ガバナンス」に記載の事項に加えて、サステナビリティ推進委員会の「ESG情報開示」検討チーム及び「脱炭素化」検討チームにおいて、気候変動に特化した検討・対策を推進し、これらの検討結果は取締役会へ報告されます。取締役会は、気候変動による影響について経営・事業戦略への反映等に向けた議論・方針の決定に加え、監督を行っています。なお、サステナビリティ推進委員会の「ESG情報開示」検討チームでは、TCFDシナリオ分析を実施し、気候関連のリスク・機会について検討と対策を進めています。「脱炭素化」検討チームでは、当社グループにおいて多くの電力を消費しているデータセンターのカーボンニュートラル、Scope3排出量削減、再生可能エネルギー調達などの各種サステナビリティ施策の検討と対策を進めています。
② 戦略
当社グループでは、2019年3月期より気候変動によるリスク・機会の特定や当社グループへの財務的影響についてシナリオ分析を継続して実施しています。
2019年3月期 | 当社グループ事業の全体でのリスク・機会の特定 ・2℃、4℃シナリオでのリスク・機会を特定 (現在は「2℃シナリオ」を「1.5℃シナリオ」に読み替えて適用) |
2020年3月期 | 重要度が高い事業を対象にシナリオ分析 ・データセンター事業を対象に実施 |
2021年3月期 | 収益部門を対象にシナリオ分析 ・資産運用ソリューション事業、コンサルティング事業を対象に実施 |
2022年3月期 | シナリオ分析の対象事業の拡大 ・証券ソリューション事業を対象に実施 |
当年度~ | シナリオ分析継続、開示体系検討 ・シナリオ分析を継続 ・より進化した情報開示の枠組みを検討 |
<当社グループ事業の全体でのリスク・機会の特定(2019年3月期)>
2019年3月期は、当社グループ事業の全体でリスク・機会を特定しました。シナリオとして2℃に気温上昇を抑える「2℃シナリオ」と現在想定されている以外の対策が実行されない「4℃シナリオ」を設定し、「コンサルティング」「金融ITソリューション」「産業ITソリューション」「データセンター(IT基盤ソリューション)」の4つの事業分野を対象としました。なお、現在は「2℃シナリオ」を「1.5℃シナリオ」に読み替えて適用しています。
対象事業分野 | 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||
コンサルティング | + | 顧客企業に脱炭素への変革が求められるため、当社の持つ、サステナビリティに関する知見やソリューションへの需要が高まる。 | - | 4℃シナリオで想定するような自然災害の激甚化は、マクロ経済の停滞や顧客の収益を悪化させ、事業の売上に影響するリスクがある。 |
金融ITソリューション | + | 当社の共同利用型サービスは個別企業が独自にシステムを開発する場合より、消費電力やCO2排出量、コストを大幅に削減することができ、さらにRE100の達成に向けた再生可能エネルギー利用率を増加させることで、需要は増加する。 | - | 気候変動が資産の損失やマクロ経済の長期停滞の要因となり、金融機関の収益が悪化した場合には、提供するサービスへの需要に影響するリスクがある。 |
産業ITソリューション | + | サプライチェーンや物流プロセスの効率化支援は、低炭素化につながるものであり、今後関連する取組みが進展することは、需要増加の機会になる。 | + | クラウド型システムの提供により、自然災害が生じた場合の被害を最小限にとどめることが可能であり、顧客のリスクを抑えることができる。 |
データセンター(IT基盤ソリューション) | + | 当社は、全ての電力を再生可能エネルギーで賄う、脱炭素型のデータセンターを目指しており(※)、顧客の環境配慮が強まれば、需要増加の機会になる。 | + | 自然災害を考慮した立地選定とともに、複数のデータセンターによる相互バックアップで事業停止リスクを抑制しているため、需要増加の機会になる。 |
- | 自然災害に伴う電力障害や真夏日の増加は、機器のメンテナンス・更新費用や冷却費用を増大させるリスクになる。 |
(注)1. +:対象事業全体に正の影響が働く。 -:対象事業全体に負の影響が働く。
2. ※:分析時点。当年度末時点では当社グループ保有の全てのデータセンターの電力は全て再生可能エネルギー由来。
<個別の対象事業におけるシナリオ分析(2020年3月期~)>
上記対象事業のうち、「コンサルティング」「金融ITソリューション(資産運用ソリューション/証券ソリューションに区分)」「データセンター」については、気候関連の事象を想定して、当社グループとしてのリスクと機会や当社グループへの財務的影響をより具体的に分析しました。下表はその結果を示したものです。
なお、2020年3月期、2021年3月期の分析では「2℃未満シナリオ」及び「4℃シナリオ」を、2022年3月期の分析では「1.5℃シナリオ」及び「4℃シナリオ」を適用しています。
対象事業 (シナリオ分析の実施時期) | シナリオ | 気候関連事象によるリスク・機会と影響 | |||
リスク | 機会 | 事象 | 影響 | ||
コンサルティング (2021年3月期) | 2℃ 未満 | ○ | ○ | カーボンプライス(炭素税等)の導入、新技術に対する補助 | 脱炭素化への移行に向けた戦略構築、事業構造変革等の必要性が高まることによるコンサルティング事業へのニーズ増加。 一方で、長期的には脱炭素化への移行に失敗をした企業が多い場合には、コンサルティング事業の売上に影響を及ぼす可能性がある。 |
○ | ○ | 市場における気候変動を加味した取引条件の設定 | |||
○ | ○ | 新たな環境技術による市場構造の変化 | |||
4℃ | ○ | ○ | 自然災害の激甚化 | 自然災害による損害が生じたことに起因して、経済活動が停滞することでコンサルティング事業の売上に影響を及ぼす可能性がある。 一方で、対応策の構築に向けたコンサルティング事業へのニーズの増加可能性もある。 | |
○ | ○ | 気候パターンの変化 | |||
資産運用 ソリューション (2021年3月期) | 2℃ 未満 | ○ | ○ | カーボンプライス(炭素税等)の導入、新技術に対する補助 | 企業の競争力、企業価値が変化し、資産残高に影響が生じる。 |
- | ○ | 企業へのESG/気候関連の情報開示の強化の要請、標準化の促進 | 企業から開示される情報量が増加。また、開示内容が標準化されていくことで、資産運用会社において企業情報の整理ニーズが増加。 | ||
- | ○ | 資産運用会社への情報開示強化 | 監督当局、アセットオーナーより運用におけるESG投資、サステナブルファイナンスに関する開示強化により、その支援に対するニーズが増加。 | ||
- | ○ | 金融商品のESG情報開示の強化 | 資産運用会社が開発する個人向け金融商品におけるESG関連の項目についての説明等が求められる。 | ||
- | ○ | 個人のESGや気候変動への関心増加 | 環境・社会問題への関心が高いミレニアル世代・Z世代を中心にESG投資やインパクト投資への需要が高まることで、資産運用による環境・社会への影響の可視化へのニーズ増加。 | ||
4℃ | ○ | - | 自然災害の激甚化 | 自然災害により損失が生じたことに起因して、経済活動が停滞し、資産残高は一時的に下落。 | |
証券 ソリューション (2022年3月期) | 1.5℃ | ○ | ○ | カーボンプライス(炭素税等)等移行に向けた政策の導入・強化 | 企業の競争力、企業価値が変化し、資産残高に影響が生じる。 |
○ | - | カーボンプライス(炭素税等)の導入 | カーボンプライシングによる光熱費の高騰に伴い、サーバーなどの機械製造コスト増加。 | ||
- | ○ | 市場改革(サステナブルファイナンス関連)、環境配慮行動への圧力・要請拡大 | サステナブル関連の市場改革(区分の設定、税制優遇など)と環境配慮行動への高まりにより個人投資家のサステナブル投資が拡大する。 | ||
- | - | 取引条件の変化、環境配慮行動への圧力・要請拡大 | 取引条件に再生可能エネルギー利用率の導入が要請される。 | ||
○ | - | 取引条件の変化、環境配慮行動への圧力・要請拡大 | 上記に対して、再生可能エネルギー調達をする場合は一部コスト増加。 ただし、再生可能エネルギー費用が削減されればコスト抑制が可能。 | ||
4℃ | ○ | - | 自然災害の激甚化 | 自然災害の激甚化に伴い、市場での取引が停止。 (一方で対応策を他よりも整備することで競争優位を創出) | |
○ | - | 自然災害の激甚化 | 自然災害の激甚化への対応策として、広域被災への対応が求められる。 | ||
○ | - | 自然災害の激甚化、気象パターンの変化 | 自然災害の激甚化に伴い、海外での開発停止を国内で代替することで費用増加。 資源価格などの高騰に伴う人件費増加。 | ||
データセンター (2020年3月期) | 2℃ 未満 | ○ | - | カーボンプライス(炭素税等)の導入 | 2℃未満シナリオで想定する炭素税が導入されたことにより電気代が上昇。 |
○ | ○ | 再生可能エネルギーの利用拡大 | 再生可能エネルギー導入目標達成のために費用負担が発生。 ただし、目標が達成されれば、炭素税導入の影響緩和が可能。 | ||
4℃ | ○ | - | 自然災害の激甚化 | データセンターの設備が自然災害から影響を受ける。 (取水制限・断水、水害(集中豪雨等)、強風被害、電力供給障害等。ただし、ハザードマップ等を分析した結果、影響は小さいと評価) |
<財務的影響に関する分析(2020年3月期~)>
各対象事業の分析においては、気候変動による当社グループへの財務的影響についても分析しています。2020年3月期には、特定したリスクと機会の中で最も気候変動の影響が大きいデータセンター事業を対象に、2℃未満シナリオにおける炭素税や再生可能エネルギー導入による財務的影響について、ベースライン、ケース1、ケース2の状況を想定して評価しました。ベースラインでは、炭素税が導入されたことにより、電気代が2019年3月期比で21~28%上昇した世界において、当社として再生可能エネルギーを調達しなかった場合を想定しました。これに対してケース1は2020年3月期時点の目標として掲げていた「2031年3月期までに再生可能エネルギー調達比率36%」を達成した場合を、ケース2ではケース1と同じ条件で、かつ再生可能エネルギー調達価格が下落した世界を想定しました。結果、2℃未満シナリオでは、再生可能エネルギー調達目標の達成により、炭素税導入の影響緩和が可能であることがわかりました。
当社グループでは、このような財務的影響に関する分析結果を踏まえ、再生可能エネルギー導入等の温室効果ガス排出量削減の取組みがカーボンプライス(炭素税等)の導入や環境配慮行動への要請拡大等によるリスクを緩和する施策となるとの認識のもと、対応を進めています。具体的には、当社グループの温室効果ガス排出の多くが電力に起因していたことから、事業で使用する電力を再生可能エネルギー由来のものに切り替えることが、脱炭素に向けた重要な取組みであると考えています。これらの認識のもと、当社グループが保有する全てのデータセンターの電力は、当年度末時点で全て再生可能エネルギー由来となっています。また、オフィスにおいても、2022年3月期から一部の主要なオフィスの電力を再生可能エネルギー由来に切り替えています。
なお、当社グループは2023年2月に温室効果ガス排出量の削減目標を改定し、「④指標及び目標」に記載の目標を掲げています。さらに現在、2030年及び2050年を見据えて長期的かつ安定的な再生可能エネルギーの調達方法について検討を進めています。
③ リスク管理
「(1) サステナビリティ共通 ③リスク管理」及び「3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループ全般のリスク管理体制、管理方法の中で識別、評価、管理しています。
また、気候関連リスク及び機会の特定、評価、対応に関しては、2019年3月期よりサステナビリティ推進委員会において、気候関連リスク(自然災害の激甚化などによる事業継続リスクも含む)について、外部環境やイニシアティブの状況、サービス提供部門からの情報等を勘案し、各気候関連リスクに対する施策の検討及び決定を行っています。
④ 指標及び目標
当社グループでは、グループのバリューチェーン全体の脱炭素化を目指すために、SBTイニシアティブの「企業ネットゼロ基準」に則り、2023年2月に、以下のとおり環境目標を改定しました(SBTイニシアティブによる削減目標の認定については2023年6月時点で申請中です)。また、当社は2019年2月にRE100に参加しています。
指標 | 目標 | 当年度実績 | (参考) 当年度排出量実績 |
温室効果ガス排出量削減率 (基準年:2020年3月期) | [2031年3月期]Scope1+2:ネットゼロ※1 | 66%減 | 20千t※3 |
[2031年3月期]Scope3:30%削減 | 5%増 | 190千t※3 | |
[2051年3月期]Scope1+2+3:ネットゼロ※2 | 12%減 | 211千t | |
再生可能エネルギー利用率 | [2031年3月期]再生可能エネルギー利用率:100% | 73%※3 | - |
(注)※1:Scope1+2の排出量を97%削減、残余排出量は中和化。
※2:Scope1+2+3の排出量を90%削減、残余排出量は中和化。
※3:実績値は第三者保証を取得しています。
(3) 人的資本・多様性
① ガバナンス
人的資本・多様性の拡充に関連するガバナンスについては、「(1)サステナビリティ共通 ① ガバナンス」に記載の事項に加えて、取締役会の監督のもとで、コーポレート部門管掌取締役を委員長とする人材開発会議において検討・議論を行っています。各施策を主管部で推進し、重要な事項については、定期的に経営会議、取締役会でその実施結果を報告・審議しています。
② 戦略(人材の育成及び社内環境整備に関する方針)
当社グループでは、人的資本・多様性を拡充するための仕組みを「人材の成長サイクル」として定義しています。人材の成長サイクルは、「多様な優秀人材の採用」「チャレンジングなアサインメント」「仕事に対する誇りの醸成」「個々人・組織の成長」の4つの要素が連動して機能することで、当社の人的資本の強みである「プロフェッショナリズム」「変化対応力」「自律的成長力」「異才(彩)融合」がより強固なものになるという考え方です。人的資本・多様性の拡充には、成長サイクルを支えるための制度の拡充、改善をしていくことが重要であり、V2030に向けては、成長サイクルを更に加速させるための取組みとして「成長ストーリーを実現するためのケイパビリティ増強」「ダイバーシティ&インクルージョンの定着」「一人ひとりの成長機会の拡大」の3つの分野で施策を検討・推進しています。
また、当社グループでは、従業員の健康と安全を経営の視点で考え、戦略的に実践することを目的に、社長をCHO(Chief Health Officer)とした上で「健康経営」を表明しています。安全衛生に関連する各種法令(労働基準法、労働安全衛生法等)への準拠は当然のこととして、健診後対応への支援、禁煙支援、運動促進の活動など、安全衛生を守るための様々な取組みを実施しています。
③ リスク管理
当社グループでは、人的資本が価値を生み出す源泉と考えており、人的資本・多様性の拡充の取組みが停滞することが重大なリスクにつながります。そのため、人的資本・多様性拡充に関する取組みについて、「3 事業等のリスク (3)特に重要と認識するリスク ⑥人材確保・育成に関するリスク」に記載の事項に加えて、独自のKPIを定め各事業本部単位に進捗状況を可視化、連携した上で、施策の浸透と推進を実施しています。その実施状況については、人材開発会議に報告し、リスクへの対応を管理・検討しています。
④ 指標及び目標
「(1)サステナビリティ共通 ④指標及び目標」及び「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載のとおりです。
(4) 知的資本
① ガバナンス
知的資本の創出・蓄積に関連するガバナンスについては、「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」に記載の事項に加えて、取締役会の監督のもとで、常務執行役員を委員長とする事業開発会議、システム開発会議等を開催し、定期的に経営会議、取締役会にその実施結果を報告し、重要な事項の審議を行っています。
② 戦略
当社グループでは、知的資本を「卓越したビジネスモデル」「進化し続けるブランド」「事業展開を支えるケイパビリティ」の3つと定義しています。
当社グループは、創業以来培われてきた洞察力と緻密な実装力を活かした高付加価値サービスを提供しています。知的資本は、当社グループの競争力の源であり、独自の重要な要素です。知的資本の創出と蓄積によって個の力を組織力に昇華するとともに、時代を超えて知識・ノウハウを継承しています。こうした知的資本のマネジメントを通じて、当社グループは顧客との長期的な関係を続け、事業の成長を実現しています。
③ リスク管理
「(1) サステナビリティ共通 ③リスク管理」及び「3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループ全般のリスク管理体制、管理方法の中で識別、評価、管理しています。
④ 指標及び目標
「(1)サステナビリティ共通 ④指標及び目標」に記載のとおりです。
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