稲葉製作所 【東証スタンダード:3421】「金属製品」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営方針
当社グループは、「独自性のある高品質な製品をお客さまにお届けする」という事業精神のもとで、お客さまの声に対し、社員一人ひとりが新しいアイデアを出し合い、モノを創造していくこと、それが最高の品質を生み、最高の価値を生むものと考え、技術部門は「独自性」を、製造部門は「品質とコスト」を、営業部門は「信頼」を徹底的に追求し、「信頼に応えるモノづくりを通じて社会に貢献する」ことを経営理念としています。
この経営理念のもと、鋼製物置及びオフィス家具を製造・販売し、「くらしの快適さのための機能的な収納空間の実現と快適で創造的なオフィス空間の実現」に向けて事業活動を行っています。
当社グループは創業以来、社会環境の変化に向き合いながら、開発・生産・販売の一貫体制を活かした着実な事業展開と効率的な経営を実践し続けることで、イナバらしさを追求し、企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上を目指していきます。
(2) 経営環境
① 当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和や外国人観光客の増加によるインバウンド需要の回復などにより、景気は緩やかな回復基調にあります。一方で、ウクライナ情勢の長期化の影響によるエネルギー・原材料価格の上昇、物価高のなかで足踏みが続いている個人消費など、依然として先行き不透明な状況が続いています。
翌連結会計年度においては、景気は緩やかな回復傾向にあるものの、ウクライナ・中東情勢を巡るリスクの継続、諸資材の高騰など、先行きは極めて不透明な状況になると予想されます。材料の価格動向は、一部の材料において値上げの動きがあり、引き続き高止まりの水準で推移することが予想され、材料費の増加が見込まれます。また、生産設備新設などの投資が予定されていることから、設備関連費用や減価償却費の増加が見込まれます。
② 鋼製物置事業を取り巻く環境
当連結会計年度においては、前連結会計年度での価格改定の実施や物価の高止まりなどの影響で個人消費が振るわなかったことから、鋼製物置の出荷数は減少しました。一方で、防災意識の高まりを背景に、より頑丈な物置・ガレージが求められるようになり、お客さまのニーズに対応すべく指定建築材料を使用するなど、風・雪・地震に強い製品ラインナップの充実を図りました。
翌連結会計年度においては、価格改定効果が一巡し販売数量が徐々に回復する見込みであり、需要は堅調に推移すると見込んでいます。
③ オフィス家具事業を取り巻く環境
当連結会計年度においては、単なる執務空間からコミュニケーションやイノベーションの場へとオフィスを再構築する動きなど、新しい働き方に対応したオフィスのリニューアル需要が増加し、オフィス家具の需要は好調に推移しました。
翌連結会計年度において、デジタル時代におけるオフィスのあり方が変化し、人材の確保・コミュニケーションの確保などがオフィスに求められていることから、需要は引き続き好調に推移すると見込んでいます。
(3) 経営戦略等
① 一貫生産の維持・強化
当社は、1940年の創業以来、独自の加工技術と新製品の開発に努力を重ね、1961年に鋼製事務用デスクの生産を開始、1975年に物置の生産を開始しました。メーカーとして、イナバならではの品質と価値を徹底的に追求し、独自の技術を開発し続けています。
鋼製物置事業では、イナバ物置の生産開始以降、CM「やっぱりイナバ、100人乗っても大丈夫」での認知度に加えて、ユーザーの立場にたって組み立てやすく高品質な製品づくりを心掛けてきた結果、鋼製物置市場では国内トップシェアを獲得しています。また、物置の製造で培ったノウハウを活かしてガレージ、倉庫、自転車置場等で製品領域を拡げ、快適な住環境からパブリックスペースまで多様なニーズに対応する製品を提供しています。
オフィス家具事業では、ユーザーの使いやすさを徹底的に追求し、今では常識となっている「ノックダウン方式」、「天板のメラミン化粧板化」、「樹脂のベアリング」を使用した引き出しなどは、当社が業界で初めて採用したものであり、お客さま視点を第一に、最先端の製品を開発しています。
当社は、市場から求められる高品質な製品を安定的に供給し続けるため、引き続き国内での一貫生産の維持・強化に取り組みます。資材調達から板金、成型、塗装、組立、梱包、発送まで、全工程を同じ敷地内で行うことで、余計な工程を省き生産コストの低減に繋げています。当社は、このコスト低減等により高品質な材料を仕入れ、長年培った高度な技術により、堅牢性・耐久性に優れた製品をお客さまにお届けします。また、部材の一つ一つを社内で一貫生産することにより、品質の安定やノウハウの蓄積はもちろん、コスト削減や工程管理など万全な生産体制を確立していきます。
② 営業・技術・製造の3本柱
当社のモノづくりは、「モノづくりの仕組み」をつくることから始まっています。
営業部門が「信頼」をつくる。
技術部門が「独自性(オリジナリティ)」をつくる。
製造部門が「品質」をつくる。
3本の柱でお客さまのニーズに応えます。
ⅰ)営業部門
相互理解を深めながら製品価値を伝えることで、お客さま一人ひとりと当社の間に信頼をつくることが、営業部門の役割です。営業部門は、お客さま、代理店・販売店様の声を直接耳にすることでマーケットニーズを把握し、その情報を技術や製造にリアルタイムで伝え、次の新製品開発のきっかけをつくります。
当社は、すでに40年以上の歴史と延べ8万人以上のお客さまに参加いただいている「勉強会」を定期的に開催しています。勉強会については、製品の販売・施工に携わるお客さまの本音を聞ける最高のチャンスと捉えており、互いに学びあい、理解を深め合うことが、信頼づくりのための大きな推進力となります。
当社では、物流を営業部門が統括しています。全国に22カ所の配送センターを持ち、常に変化するお客さまの需要に正確かつ迅速に応えています。必要な製品を迅速にお届けすることは、大切な信頼づくりにも繋がり、お客さまへのサービスを追求する上でスピーディな物流(配送)は不可欠な要素であると考えています。
ⅱ)技術部門
「イナバらしさとは何か」と、自らに問い続けながら、お客さまに満足いただく独自性(オリジナリティ)をつくることが、技術部門の役割です。イナバらしいオリジナリティあふれる製品をつくることができれば、お客さまに満足していただけると考えています。斬新な考え方や見た目よりも、細やかな工夫を凝らした誰もが使いやすい仕様が大切と考え、製品をつくり続けています。
当社の開発思想の原点は、「お客さまにいかに満足していただくか」にあります。技術部門の自己満足ではなく、常に徹底的なお客さま視点に立ち、「お客さまにとってどんなメリットがあるのか」自ら問い続けています。この姿勢が、独創的な技術の発明に結び付き、お客さまのニーズに根差した製品を開発できるというイナバの強みに繋がります。
ⅲ)製造部門
「イナバ製品は、他とは違う」と、お客さまに納得いただく品質をつくり続けることが、製造部門の役割です。製造部門は、内製比率が90%以上と自社生産比率が極めて高く、高炉メーカーから直接搬入されるコイルやアルミ素材など原材料の加工から最終検品まで、一貫して製品化できる体制が特徴です。また、加工専用機械やライン編成・塗装設備等も自社で設計・製作しているため、コスト削減と徹底した品質管理による高品質保持を実現しています。
当社では、早い時期から製造ラインに自社開発の専用機械を導入し、内製比率を高めてきました。その根底にあるのは、「できることは自社で」、「ないものは開発を試みる」というモノづくりのスピリットです。長年にわたって培って技術やノウハウが蓄積され、高品質を安定的に保持する製造ラインがイナバの今日を形づくっています。また、塗装や溶接にはロボットを導入するなど、製造ラインの合理化にも徹底的に取り組んでいます。
当社は、JIS規格を上回る過酷な試験を独自に実施し、使う方の安全だけでなく、組み立てる方の安全にまで配慮する品質にこだわっていきます。
③ 持続的成長・企業価値向上への取り組み
当社グループは、持続的成長・中長期的な企業価値の向上には、設備投資・生産革新が重要であるとの認識のもと、生産性・生産技術の向上に資する設備投資を進めることで売上高収益率の改善に結び付け、これにより資本収益性・ROEの改善を図ります。そして、これを次の設備投資・生産革新に結び付けていく好循環サイクルを目指しています。
当社はこれまで2014年着工の富岡工場新設をスタートに、犬山工場及び柏工場の刷新を進めてきました。これを更に進め、将来にわたる資本収益性の維持・向上を目指していきます。富岡工場の新設では、大型製品の生産能力増強と自動化を推進しました。犬山工場では物置生産ラインの全面更新、塗装設備の更新並びに倉庫レイアウトの変更を行うことで、生産性の向上と自動化を推進するとともに、物流負荷・環境負荷の低減を図りました。柏工場でも、塗装設備の更新を行い、環境負荷の低減を図りました。
当連結会計年度においては、これまでの設備刷新等を基盤として、さらに次の設備投資を計画的に進めています。
ⅰ)富岡工場に加え、犬山工場にガレージ製品の生産ラインを新設し、併せて西日本地区への大型製品配送の効率化を図ります。
ⅱ)オフィス家具の生産を犬山工場から主要マーケットである首都圏に近い柏工場に生産を移管します。
ⅲ)柏工場の物置生産の一部を富岡工場に生産を移管します。
当社はこれらの成長投資を通して、収益力の向上だけでなく物流負荷低減とBCPの強化に努めていきます。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、中長期的な経営指標として売上高経常利益率を重視しています。また、経営基盤の強化や将来の収益向上に向けて、設備投資を継続的に行っていることから、減価償却前営業利益の水準も重要な経営指標と考えています。
翌連結会計年度の経営目標・指標は、次のとおりです。
売上高 | 44,290百万円 |
営業利益 | 3,240百万円 |
経常利益 | 3,600百万円 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 2,450百万円 |
<経営指標> | |
売上高経常利益率 | 8.1% |
減価償却前営業利益 | 5,215百万円 |
売上高減価償却前営業利益率 | 11.8% |
(経営指標のトレンド)
| 2020年7月期 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 |
減価償却前営業利益(百万円) | 3,300 | 4,458 | 3,826 | 4,583 | 4,885 |
売上高減価償却前営業利益率(%) | 9.5 | 11.8 | 9.8 | 11.0 | 11.5 |
売上高経常利益率(%) | 6.1 | 8.1 | 5.8 | 7.4 | 8.0 |
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く事業環境において、鋼製物置事業では価格改定効果が一巡し販売数量が徐々に回復する見込みであり、需要は堅調に推移することが見込まれます。オフィス家具事業では、デジタル時代におけるオフィスのあり方が変化し、人材の確保・コミュニケーションの確保などがオフィスに求められていることから、需要は好調に推移することが見込まれます。
このような状況のなか、当社グループは、持続的成長・中長期的な企業価値向上への取り組みを推進していきます。持続的成長・企業価値向上への取り組みの詳細については、「第2事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営戦略等 ③ 持続的成長・企業価値向上への取り組み」に記載しています。
また、当社グループは、鋼製物置事業では高シェアと高収益を維持していくこと、オフィス家具事業では多様化するマーケットニーズに対応した競争力のある製品のラインナップ充実などに加え、徹底したコスト管理の強化、品質・生産性の向上などに努め、収益性の改善に取り組んでおります。そして、両事業の成長と収益力の向上により創出したキャッシュを、事業基盤の拡大、経営基盤の強化を目的とする設備投資などの成長投資や株主還元に活用していきます。
あらゆるステークホルダーからの信頼にお応えするために、省エネルギー・省資源、廃棄物削減、部品共通化等、持続的環境負荷低減に取り組むほか、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス体制強化による内部統制システムの充実、BCPなどリスク管理体制の整備による安定した事業継続に取り組んでいきます。
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