企業兼大株主栗本鐵工所東証プライム:5602】「鉄鋼 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは有用な製品とサービスを社会に提供して、人類社会の幸福に貢献するという企業理念のもと、基盤となる事業ドメイン「社会インフラ」および「産業設備」において、鋭意研究開発活動に努めております。近年は新事業創造に向けた研究開発成果の早期創出を目指して、コーポレート研究開発部門(クリモト創造技術研究所)と各事業部門との連携をより一層強化しており、市場直結型の技術開発を推進すると共に、オンリーワンの高機能材料ならびにその生産プロセスの開発に取り組んでおります。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は、1,667百万円であり、セグメント別の研究開発費は、ライフライン事業372百万円、機械システム事業262百万円、産業建設資材事業180百万円であります。主な研究概要とその成果については次のとおりであります。なお、研究開発費については、コーポレート研究開発部門で行っている新規分野開発と基盤技術研究の費用850百万円が含まれております。

~主要研究開発活動~

(社会インフラ関連)

①  水道管路耐震化に向けた製品開発ならびに製造プロセスにおける環境負荷低減技術開発

 地震が頻発するわが国において、管路の耐震性を高めることは重要課題でありますが、現状耐震性を有する管路比率は42.3%程度に留まっております。ところが管路更新が捗らず、管路の老朽化は年々進んでいるため耐用年数を超過した管路の比率(管路経年化率)は既に22.1%を超えています。そのような状況を踏まえ、管路更新・耐震化促進に資するため、長寿命を特長とする耐震管GX形のラインナップを拡充(全口径75mm~450mm)し、拡販に努めており、全国の政令指定都市をはじめ多くの事業体様にご採用いただいております。また、GX形に加え、さらに低コストで軽量化を実現したNS形E種管(全口径75mm~150mm)のラインナップ並びに中大口径管路の更新事業においても当社独自工法となる「ハイブリッドシステム工法」、さらには類似工法となる「DSW(ディ・エス・ダブリュ)工法」もラインナップし、事業体様からの多様な要望に応えるとともに、市場での拡販を精力的に進めてまいります。

 また、カーボンニュートラルやゼロエミッション実現に向けた取り組みが必須である状況下、気候変動対策も進めております。ダクタイル鉄管製造プロセスの中でも特にCO2排出量の多い溶解プロセスにおいては、燃料として使用している石炭コークスの代替としてバイオマス原料からなるバイオコークスを導入すると共に、地域のゼロエミッションにも貢献すべく廃棄物を有効活用した新たなバイオ燃料開発を進めております。また、水道管路の更新工事にて発生する使用済み撤去管については、ダクタイル鉄管製造時の鉄源材料として有効にリサイクルすることで、資源循環に貢献する技術開発を進めております。今後も、社会の環境負荷低減やサーキュラーエコノミー実現に貢献する技術開発に注力してまいります。

②橋梁補修分野の商材拡充ならびにFRP(M)材の再利用に関する研究

 当社は連続FW成形技術、連続引抜成形技術をコア技術として、水輸送管および電力ケーブル保護管など、インフラ市場向けにFRP製品の製造ならびに販売を行ってきました。近年、橋梁補修分野において上記連続引抜成形技術を活用したFRP製検査路は、既存の鋼製検査路よりも、軽量であるため施工が早く、沿岸部の潮風や道路の凍結防止剤等による塩害の影響を受けにくいことから、採用実績も増加傾向にあります。また、緩み止め機能を保持したワンサイドで施工可能なFRPボルトを市場投入し、施工性の向上を図ることができました。今後も当該分野で新商材の開発を進めると共に、橋梁補修技術の発展に努めてまいります。併せて、連続引抜成形法は他の成形法と比較して電気使用量が少ない、あるいは成形時に発生する端材が減少できるなど、現代社会の要求に合致した特長があり、本成形法による商材開発ならびに技術革新を積極的に進めてまいります。

 また、インフラで使用されてきたFRP(M)材は販売から50年が経過し、今後、更新事業の発注拡大に伴って廃材が増加すると予想されています。加えて、生産活動で排出される端材や副資材を含め、FRP(M)材の再利用に関する研究開発を加速し、新たに設備導入を進めることでプラスチック資源の有効利用に努めてまいります。

(産業設備関連)

①  二次電池向けプロセス設備の開発

 自動車メーカが掲げるEV化への展望を始めとする世界的な二次電池市場の拡大を見据え、二次電池関連の製造設備市場へ装置・システム・プラントで積極的に参入すべく2011年より試験研究、販売活動を推進しています。営業活動、PR効果促進はもとより日進月歩で開発される各種電池材料に対する技術ノウハウの獲得・構築およびコストダウンを加味した各装置の改良・改善に取り組んでおり、販売実績も得られてまいりました。2021年度には粉体機器の組立専用工場も開設しております。また当社住吉工場内テストセンターに、長年の粉体装置事業で培った技術を活かした電池スラリーの混練設備(ドライルーム)、電池原料の乾燥・焼成・粉砕設備を設置し、顧客対応実証実験と自主実験による研究開発を進め、さらに創意工夫を重ねて改良・改善を行い、国内外に営業展開を進めてまいります。また、近年ではエネルギー負荷の低い、次世代型電極製造プロセスにも採用いただいています。

②  サーボプレスの応用技術開発

 当社は近年、湿式クラッチブレーキの開発、サーボプレスの開発を行い、納入実績を積み重ねております。サーボプレスにおいては油圧装置と組み合わせた複合成形にも取り組み、鍛造技術の開発を進めております。更に、数年前に開発済みのM2M(遠隔監視装置)に加えて、プレスの状態が把握でき、保全性が高まる「見える化」の開発も進めており、両輪により営業活動を強めていく予定であります。

(コンポジットプロジェクト関連)

 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のハイサイクル成形システムおよび成形品の開発

 繊維強化プラスチックは軽くて強いという性質を持つ優れた部材であり、近年では金属製部品の代替としてインフラ、モビリティなど様々な分野への適用の検討が進んでおります。FRP材料を構造部材に適用する社会ニーズに応えるためには、製造コストの低減や生産サイクルの短縮、品質管理の強化など様々な課題を克服する必要があります。

 当社は、混練装置やプレス機などの設備製造技術と国内有数のFRP成形実績を基盤として、独自のCFRP量産テクノロジーの開発を進めてまいりました。2019年にお客様との共創の場として開設したクリモトコンポジットセンターには、LFTDシステム*1、ハイサイクルRTMシステム*2および構造材料向け引抜成形システムを完備し、大型試作から小量産まで対応できる体制を構築しております。

 近年では、国土強靱化施策を見据え、従来鉄やアルミ製に依存していたインフラ構造部材に対してFRP構造部材の適用に向けた新たな引抜き成形技術を開発いたしました。成形時の属人化要素を低減し、安定した品質管理を実現するDXの開発にも取り組んでおります。また低コストで部品を製造できるCarbon-LFTDシステムについては、サーキュラリティを念頭にしたリサイクル繊維や樹脂、成形端材などを活用したSDGs市場向けシステムの開発に取り組んでおります。

 当社が保有する設備事業の基盤と成形事業の基盤のシナジー化による新しい価値の提案活動を進めながら、成形設備および成形品分野での事業展開を目指します。

*1 LFTDシステム:原材料である炭素・ガラス繊維ロービングと熱可塑性樹脂を直接混練してプレス成形するCFRTP成形システム。

*2 ハイサイクルRTMシステム:積層された炭素・ガラス繊維シートに、熱硬化性樹脂を注入・含浸させ、加熱硬化させて成形するシステム。

(クリモト創造技術研究所関連)

 磁気粘性流体(MRF)の開発

 磁気粘性流体とは、オイルの中に鉄微粒子を分散させた機能性流体であります。流体に磁力を与えると急激に粘性が増して半固体状態になり、磁力を取り除くと流動性のある液体状態に戻るという特徴があります。これを利用して、自動車用ダンパー等に実用化されております。当社では、鉄微粒子を今までより小さいナノサイズにしたMRF(商標名:SoftMRFⓇ)を新たに開発し、従来適用例が少なかった回転系高性能デバイスの創製と感触技術分野での用途開発に取り組んでおります。鉄微粒子のナノサイズ化によって、流体の再分散性および耐久性が向上しました。また、この流体を用いたデバイスは俊敏な磁気変化に対する応答性能が優れていることから、リアルな触感を発現できます。

 これらの特長を活かしたSoftMRFⓇの製品として下肢装具関節部への適用やVR(バーチャル・リアリティ)アクティビティおよびeスポーツの部品への採用が実現しました。また、本デバイスを用いた感触提示用ユニットを開発し、感触提示用アプリと組み合わせて、クラウドファンディングの実施などにより国内ニーズの調査を実施いたしました。さらに、米国ラスベガスで開催されている世界最大級のテクノロジー見本市「CESⓇ2024」に出展し、「Innovation Awards」(Gaming & eSports部門)を受賞いたしました。

 今後、これらの採用実績や市場調査結果をベースにエンターテイメント業界での採用拡大を促進すると共に、産業分野での実用化など適用範囲を拡げ、市場拡大が予想されるハプティクス*3市場における優位性確立とブランド力アップを目指します。また、競争力アップのためコストダウンと品質向上に取り組んでSoftMRFⓇ使用のハプティクスデバイスの標準化と販売を進めていく予定であります。

*3 ハプティクス:人間が手などを使って得る触覚や力覚を情報として扱う学問分野のことであり、ここではSoftMRFⓇを使って主に力覚を人工的に与えられる装置をハプティクスデバイスと称しています。

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