企業兼大株主日本郵政東証プライム:6178】「サービス業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 当社グループの経営理念及び経営方針

① グループ経営理念

 郵政ネットワークの安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性、効率性を最大限発揮しつつ、お客さま本位のサービスを提供し、地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。また、経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献します。

② グループ経営方針

・ お客さまの生活を最優先し、創造性を発揮しお客さまの人生のあらゆるステージで必要とされる商品・サービスを全国ネットワークで提供します。

 ・ 企業としてのガバナンス、監査・内部統制を確立しコンプライアンスを徹底します。

 ・ 適切な情報開示、グループ内取引の適正な推進などグループとしての経営の透明性を実現します。

 ・ グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。

・ 働く人、事業を支えるパートナー、社会と地域の人々、みんながお互い協力し、社員一人ひとりが成長できる機会を創出します。

(2) 経営環境

当連結会計年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の抑制からの持ち直しの動きが続いていましたが、資源価格をはじめとした物価上昇の影響など、引き続き、不確実性の高い状況下にありました。

世界経済においても、全体的には回復の動きが続いているものの、金融引締めや物価上昇、ウクライナ情勢の影響を受け、回復ペースの減速がみられました。

金融資本市場では、国内の10年国債利回りは、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策のもと、ゼロ%付近で推移しておりましたが、2022年12月には日本銀行が長短金利操作の運用見直しを決定したことを受け0.5%程度まで上昇しました。その後、2023年3月の米国シリコンバレーバンクの経営破綻等に端を発した金融システム不安等による一時的な下落がみられました。日経平均株価は、世界的な金融引締めを受け、2022年6月には一時25,000円台に下落しましたが、2022年8月には景気減速懸念が後退したことから一時29,000円台まで回復しました。その後は、日本銀行の長短金利操作の運用見直しを受けて一時落ち込んだものの、比較的底堅く、概ね26,000円から28,000円のレンジ圏内で推移しました。

物流業界においては、激しい競争が継続する中、最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加や物価高騰に伴う調達コストの増加に加え、集配運送等に係る協力会社との適切なパートナーシップの構築に向けた取組の推進や、2024年から施行されるドライバーの残業時間規制への対応を迫られる等、業界を取り巻く環境は極めて厳しい状況となっております。このような状況を踏まえ、物流業界においても、宅配運賃等の値上げを実施する動きがみられます。郵便事業においては、デジタル化の進展に伴う郵便物数の減少に加え、物流業界同様に、最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加や物価高騰に伴う調達コストの増加等、郵便事業を取り巻く環境は引き続き厳しい状況であります。

銀行業界においては、当連結会計年度の全国銀行における預金は24年連続で増加し、貸出金も12年連続で増加しました。金融システムは、米欧中央銀行の利上げや物価上昇の継続に伴う景気減速懸念などのストレスにさらされているものの、全体として安定性を維持しております。

生命保険業界においては、超高齢社会の進展、ライフスタイルの変化等を背景としたお客さまニーズの多様化や選別志向の高まりがみられます。

当社グループは、「郵便・物流」「貯金」「保険」の生活に必要な基礎的サービスや物販、提携金融サービス等を全国約2万4,000か所の郵便局ネットワークを通じて提供するほか、不動産事業など多数のサービスを展開しております。郵便・物流事業においては1日に約3,100万か所への郵便配達箇所数、銀行業においては約1億2,000万口座の通常貯金口座数、生命保険業においては約1,938万人のお客さま数(契約者さま及び被保険者さまを合わせた人数(個人保険及び個人年金保険を含み、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みます。)など、毎日の生活の中で多くのお客さまにご利用頂いており、お客さまとの接点の多さは当社グループの強みとなっております。

(3) 当社グループの経営戦略等

① 中期経営計画等について

当社グループは、2021年5月に、中期経営計画「JPビジョン2025」(2021年度~2025年度)を発表しました。当社グループは、少子高齢化やデジタル化の進展等、グループを取り巻く社会環境の変化を踏まえ、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指し、DXの推進により、リアルの郵便局ネットワークとデジタル(「デジタル郵便局」)の融合に取り組んでおります。また、ユニバーサルサービスを含むコアビジネスの充実強化に加え、不動産事業の拡大や、新規ビジネス等の推進により、ビジネスポートフォリオを転換させることで、グループの新たな成長の実現に取り組んでおります。

※ DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することであります。

〔日本郵政グループが目指す姿〕


 当社は、収益性を明確にお示しする指標として、連結当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益及びROEを採用しております。また、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置付けております。

② 経営者の問題意識と今後の方針

当社グループは、中期経営計画「JPビジョン2025」において、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を、当社グループが目指す姿として掲げております。当社グループの最大の強みである郵便局ネットワークにより、グループ内で一体的なサービスを提供していくとともに、これまでになかったグループ外の多様な企業等との連携を行うことで、地域において生活するお客さまが、安全・安心で、快適で、豊かな生活・人生を実現することを支えてまいります。

「JPビジョン2025」の公表からおよそ2年の間にも、デジタル技術の進展やロシアによるウクライナ侵攻、世界的な金融引締め、物価や人件費の上昇など、当社グループの事業を取り巻く環境は大きく変化していることから、2024年度中における「JPビジョン2025」の見直しに向けて検討を進めます。

リアルの郵便局ネットワークとデジタル(「デジタル郵便局」)の融合に向けて、インターネット上で提供できるサービスの拡充やグループ全体でのデータ活用などの課題に対し、グループ横断的・一体的にDXに取り組んでまいります。

また、業務の適正を確保するため、コーポレートガバナンスのさらなる強化に向け、引き続き、グループ全体の内部統制の強化を推進し、コンプライアンス水準の向上を重点課題として、グループ各社に必要となる支援・指導を行います。特に、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題を受けた、業務改善計画の実行に、引き続き着実に取り組んでまいります。

あわせて、部内犯罪や社員の不正、不適正営業の防止、個人情報保護、マネー・ローンダリング対策等の取組を継続・強化してまいります。

そして、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保については、交付金・拠出金制度も活用しつつ、その責務を果たし、地域社会に貢献するとともに、郵便局ネットワークの一層の活用・維持による安定的なサービスの提供等を図るため、グループ各社の経営の基本方針を策定し、その実施に努めてまいります。

ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとするという郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。

ESGに関する取組については、「持続可能な開発目標(SDGs)」や政府が掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた動きを踏まえ、グループ全体として企業価値の向上を踏まえた取組を行ってまいります。具体的には、COの排出量削減に向けたグループ全体のEV車両の導入拡大、カーボン排出係数の低い電力への段階的な切り替え、より環境に配慮した郵便局の開設等により、事業サービスを通じた環境負荷軽減等に積極的に取り組みます。

そのほか、人的依存度の高いサービスを提供する当社グループにとって、人材は最も重要な経営資源との認識に立ち、お客さまへの最適なサービス及び商品の提供に向けた研修等の人材育成、女性管理職の登用拡大に向けた計画的な女性社員の育成、仕事と生活の両立ができる職場風土づくりなど、社員の多様な能力・個性を活かすダイバーシティ・マネジメントの推進に取り組んでまいります。

加えて、自然災害の発生、感染症の大流行等の危機へ備え、危機管理態勢を整備するとともに、危機発生時には迅速かつ的確な対応を行い、業務継続の確保に努めます。

当社は、資本効率の向上、株主還元の強化を目的として、自己株式の取得を実施しており、2021年10月6日付の取締役会決議に基づき、2021年11月1日から2022年4月7日の間、取引一任契約に基づく市場買付により当社普通株式110,072,500株を取得し、2022年4月25日付の取締役会決議に基づき、2022年5月20日付で保有自己株式のうち110,072,529株を消却いたしました。

また、2022年5月13日付の取締役会決議に基づき、2022年5月16日から2023年3月9日までの間、取引一任契約に基づく市場買付により当社普通株式196,748,200株を取得し、2023年3月29日付の取締役会決議に基づき、2023年4月20日付で保有自己株式のうち196,748,200株を消却いたしました。その結果、4月20日時点における発行済株式総数は3,461,049,500株となりました。

さらに、2023年5月15日付の取締役会において、当社普通株式346,000,000株、取得価額の総額3,000億円をそれぞれ上限として、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)及び立会市場における取引による当社自己株式の取得について決議いたしました(取得期間は未定であり、別途、取締役会で決議の上お知らせいたします。)。

(4) 対処すべき課題

① かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題について

2019年度において、かんぽ生命保険及び日本郵便では、お客さまのご意向に沿わず不利益が生じた契約乗換等に係る事案及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案(募集品質問題)が判明いたしました。

 これにより、2019年12月27日、当社は、総務大臣より日本郵政株式会社法第13条第2項に基づく業務改善命令、金融庁より保険業法第271条の29第1項に基づく業務改善命令を、日本郵便は、総務大臣より日本郵便株式会社法第15条第2項に基づく業務停止命令及び業務改善命令、金融庁より保険業法第307条第1項及び第306条に基づく業務停止命令及び業務改善命令を、かんぽ生命保険は、金融庁より保険業法第132条第1項に基づく業務停止命令及び業務改善命令を受けました。2019年7月以降、郵便局及びかんぽ生命保険の支店からの積極的なかんぽ生命保険商品のご提案を控えてまいりましたが、当該業務停止命令により、2020年1月1日から同年3月31日までの間、お客さまの自発的な意思表示を受けて行う保険募集及び保険契約の締結を除き、かんぽ生命保険商品に係る保険募集及び保険契約の締結を停止いたしました。また、当該業務改善命令を受けて、2020年1月31日付で、当社及び日本郵便は業務改善計画を総務大臣及び金融庁に、かんぽ生命保険は業務改善計画を金融庁に提出いたしましたが、その後も当該業務改善計画の進捗状況等について報告し協議を行っております。

業務改善計画に掲げたお客さまのご意向に沿わず不利益が発生した可能性が特定可能な類型のご契約の調査について、具体的にお客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかをご確認する特定事案調査及びお客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかを全てのご契約について確認する全ご契約調査は、お客さま都合によるもの等を除き、お客さま対応を完了しました。また、全ご契約調査の更なる深掘調査(多数回にわたって契約の消滅・新規契約が繰り返され、お客さまのご意向に沿ったものではない可能性がある事例を確認する多数契約調査等)に係るお客さま対応も、お客さま都合によるもの等を除き、完了しました。

 また、募集人調査について、特定事案調査における募集人調査は、2020年4月末までに、病休等で調査ができない事案を除き概ね完了しております。さらに、多数契約調査のうち2020年より実施している事案における募集人調査は、病休等で調査ができない事案を除き2020年10月末までに完了しております。加えて、深掘調査等の優先的に調査を行っている募集人調査は、2021年3月末までに、退職者等を除いて概ね完了しております。なお、特定事案調査及び多数契約調査のうち2020年より実施している事案の募集人資格に係る処分、募集人及び管理者等に対する人事上の処分、日本郵便及びかんぽ生命保険の本社・支社・エリア本部等の責任者の人事処分については2021年3月末までに、また、深掘調査等の優先的に調査を行っている募集人に対する人事処分については、2023年4月末までに休職等による長期休業者を除き完了しております。2021年3月からは、お客さまの申出内容などから問題があると考えられる募集人に対して募集人調査を実施しているほか、その他の募集人については、書面による募集実態調査を実施しております。

 かんぽ生命保険商品の販売については、2019年7月以降、2020年1月から同年3月までの業務停止命令期間を含め、郵便局及びかんぽ生命保険支店におけるかんぽ生命保険商品の積極的な営業活動を控えておりましたが、JP改革実行委員会より、当社、日本郵便及びかんぽ生命保険にて設定した営業再開条件について概ね充足したとの評価を受けるとともに、信頼回復に向けた業務運営の趣旨が、社員へ共有・徹底されていること等が確認できたことから、2020年10月5日より、お客さまへのお詫びを第一とした信頼回復に向けた業務運営を行っておりました。

 これらの信頼回復に向けた業務運営の活動やかんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応が進捗し、お客さまからこれらの活動に対する理解を得られてきたこと等を踏まえ、2021年4月より、郵便局及びかんぽ生命保険支店において、お客さまのニーズに応じた保険商品やサービスの情報提供やご提案を全てのお客さまに対し実施することとし、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しました。

 また、毎年10月に一斉に発送していた「ご契約内容のお知らせ」を、2021年5月より、ご契約者さまの誕生月の前月に合わせて送付することとしております。引き続き、ご契約者さまへの確認・説明等、ご契約内容確認活動を進めてまいります。

 さらに、2022年4月1日から、新しいかんぽ営業体制の構築として、お客さま担当制を導入しました。日本郵便の訪問営業を行う社員はかんぽ生命保険に兼務出向して、かんぽ生命保険商品及びがん保険商品の提案とアフターフォローに専念することとし、貯金業務・投資信託及び一部の提携金融商品は郵便局の窓口が担当することとなりました。多様化するお客さまニーズにきめ細やかに対応するため、お客さまへの専門性を持った対応を充実してまいります。そして、同年4月1日から、新契約と契約継続の両面を評価する保有契約の純増を観点とした目標を導入するとともに、アフターフォローや募集品質の維持などの活動を評価する目標をバランスよく設定し、結果に至るまでのプロセスも重視してまいりました。

 今後とも、業務改善計画に掲げる各種施策については、着実に進捗管理を実施し、当社グループの全役職員が一丸となって推進してまいります。

② かんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応について

 かんぽ生命保険商品と投資信託にまたがるお客さまの苦情を受け、お客さま本位でない営業による苦情のお客さま及び同苦情の懸念のある取引に係るお客さまに対するご意向確認、及び関連社員へのヒアリングを実施し、契約無効措置等のご要望を頂いたお客さまには、順次必要な対応を実施してまいりました。

 引き続き、お客さま本位の業務運営の観点から改善に向け、お客さま本位でない営業を防止するために、社内ルールの徹底及び金融商品間の横断的な取引についてモニタリングによる取引内容の精査等を行っております。

各事業セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。

③ 郵便・物流事業

 日本郵便の郵便・物流事業において、郵便物の減少や荷物需要の増加に対応するため、以下の取組を行います。

(a) 商品・サービスの見直しとサービスの高付加価値化

引き続き、「手紙の書き方体験授業」支援の展開、スマートフォンを活用した年賀状サービスの提供、手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便利用の維持に取り組んでまいります。また、成長するEC市場やフリマ市場を確実に取り込むため、差出・受取利便性の高いサービスを提供するとともに、営業倉庫を活用した物流ソリューションの拡大、企業間物流の強化等により、収益の拡大を図ってまいります。

なお、過去5事業年度の郵便、ゆうメール、ゆうパック及びゆうパケットの取扱物数の推移は以下のとおりとなります。

 

 

 

 

(単位:百万通・百万個)

 

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

郵便

16,781

16,350

15,244

14,858

14,445

ゆうメール

3,650

3,569

3,299

3,346

3,113

ゆうパック

(含 ゆうパケット)

942

974

1,091

989

980

(再掲)

 ゆうパケット

357

428

497

420

426

(b) 先端技術の積極的な活用による利便性・生産性向上

郵便物の減少傾向が継続する中、成長市場である荷物分野へのリソースシフトを進めるとともに、業務量に応じたコストコントロールの取組の深化やDXの推進等を通じて、生産性の向上に努めてまいります。

 具体的には、集配社員が携帯している端末機をスマートフォン化するほか、テレマティクス技術を用いて取得するデータを活用した、社員の安全確保や配達の相互応援、郵便物の配達順路や配達エリアの見直し、AIによる配送ルートの自動作成等によるゆうパック等の集配業務の効率化等を進めてまいります。また、輸送テレマティクスの導入や輸送ダイヤグラムの最適化等の輸送DXの推進、AGV(無人搬送車)の導入等による局内作業の省人化・スリム化にも取り組んでいくほか、他企業との連携により、効率の良い配送システムの構築や利便性の高い受け取りサービスの提供等を実現する新たな物流プラットフォームの構築に取り組んでまいります。

なお、燃料価格をはじめとする物価や人件費等のコストの上昇は、日本郵便の経営にも大きな影響を与えております。日本郵便においては、引き続き、デジタル技術も活用しつつ、業務の効率化等を進め、生産性の向上に取り組んでまいりますが、郵便物数が減少する中、ユニバーサルサービスである郵便サービスの安定的な提供及びお客さまへのサービス向上を実現するためには、将来的には、郵便料金の見直しは避けられないと考えており、2023年度においては、2022年度の業務区分別収支の状況も踏まえつつ、郵便料金の見直しについて検討を進めてまいります。また、将来にわたって、安定的かつ高品質の物流サービスを展開するためには、ゆうパック運賃の改定も必要だと考えており、2023年度においては、持続的な成長に向けて、届出運賃の改定等を行うとともに、設備投資や人的資本投資を進め、お客さまサービスの向上に取り組んでまいります。

④ 郵便局窓口事業

日本郵便の郵便局窓口事業において、以下の取組を行います。

(a) お客さま本位のコンサルティング営業の取組

当連結会計年度に引き続き、業務改善計画を着実に実行するとともに、「お客さま本位の営業活動」を徹底し、各商品の特長を踏まえ、お客さまのニーズに沿ったご提案を行う、お客さま本位のコンサルティング営業に取り組んでまいります。そのため、お客さまとの接点の中でニーズに応じた金融商品をご提案するための研修や資格取得支援等を進めてまいります。

また、お客さまとの接点を強化・拡充すべく、青壮年層開拓のための法人・職域営業の拡大、コンサルティングアプリを含めた営業ツールの整備や来局誘致等に取り組むほか、金融コンタクトセンターによる受付商品の説明・申込代行の体制構築や、データ化したお客さまとの折衝記録の活用、オンライン面談の体制整備等、効果的・効率的な営業活動を実行するための環境整備を進めてまいります。

(b) リアルな存在としての郵便局を活かした、郵便局ネットワークの価値向上

郵便局ネットワークの価値を向上させ、持続的な成長を実現するためには、デジタル化を進めつつ、リアルな存在としての郵便局を活かし、郵便局ネットワークの価値を向上させる必要があると考えております。こうした認識のもと、様々な地方公共団体事務の受託に取り組んでいくほか、地域金融機関等との連携強化や郵便局窓口と駅窓口の一体運営等、他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた多種多様な商品・サービスを展開してまいります。

加えて、お客さまの利便性を踏まえた店舗の最適配置や、地域ニーズを踏まえた窓口営業時間の弾力化にも取り組んでまいります。

(c) 不動産事業の拡大に向けた取組

JPタワー等の賃貸事業を行うとともに、住宅地に所在する土地の有効活用事業として、住宅、保育所及び高齢者施設の賃貸事業を行います。また、新たな収益機会の拡大や保有不動産の有効活用の観点から、虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業及び梅田3丁目計画等を推進し、不動産事業が収益の柱の一つとなるよう取り組んでまいります。

⑤ 国際物流事業

日本郵便において、トール社に対する経営管理を強化・徹底してまいります。

 同社の業績不振の主要因となっていたエクスプレス事業※1について、2021年8月に譲渡が完了しました。今後は、人員配置の合理化等により、残るロジスティクス事業・フォワーディング事業の採算性を向上させるとともに、特に成長が見込まれるアジア域内においてトール社が得意とする業種にフォーカスした事業展開を行うこと等により、豪州に依存した事業構造から脱却し、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成長へ向けた取組を加速させてまいります。

さらに、海外のBtoB事業※2を中心に事業展開するトール社と、国内に顧客基盤を有する日本郵便のシナジーを強化し、コントラクトロジスティクス※3を中心に国内のBtoB事業の拡大を進め、国内外での総合物流事業展開による一貫したソリューションの提供を推進してまいります。また、トール社を親会社とする連結グループは、2022年12月末現在で826億円の債務超過となっておりましたが、日本郵便からの2,000百万豪ドル(約1,800億円)の追加出資により、2023年1月末時点で債務超過は解消しております。

※1 エクスプレス事業とは豪州及びニュージーランド国内におけるネットワークを活用して道路、鉄道、海上及び航空貨物輸送サービスを提供する事業のことであります。

※2 BtoB事業とは、Business-to-Businessの略語で、企業間の商取引、企業が企業向けに行う事業のことであります。

※3 コントラクトロジスティクスとは、売買に関与しない第三者が特定の荷主顧客と契約を結び、輸送や在庫・配送業務の効率運営を図るサービスのことであります。

⑥ 銀行業

 ゆうちょ銀行は、中期経営計画の3年目にあたる2023年度においては、不確実性の高い市場環境の中、収益の最大の源泉である「マーケットビジネス」で着実に利益の確保に努めるとともに、安定性の高い強固な事業基盤の構築に向けて、「リテールビジネス」のさらなる強化と、新たな成長エンジンと考えている「投資を通じたゆうちょ銀行らしい新しい法人ビジネス(Σ(シグマ)ビジネス)」の基盤構築に注力してまいります。

(a) 第1のエンジン「リテールビジネス」

第1のエンジン「リテールビジネス」については、「リアルとデジタルの相互補完」という基本方針のもと、店舗ネットワークは維持しつつ、セルフ型営業店端末「Madotab」やATMの高機能化、通帳アプリ・家計簿アプリの機能拡充など、セルフ取引チャネルやデジタルチャネルの充実を図るとともに、お客さまがより「かんたん・べんり」に取引を行えるよう、お客さまのニーズに応じて丁寧なご案内を行います。また、新しいリテールビジネス戦略として、多様な事業者と連携し、通帳アプリや家計簿アプリ経由で、お客さまのニーズに合った最適な商品・サービスのご案内を行う「共創プラットフォーム戦略」に段階的に着手します。さらに、資産形成サポートビジネスについては、2024年からのNISA制度(少額投資非課税制度)の拡充も踏まえ、つみたてNISAをはじめ、お客さまへの提案力強化を図ります。

(b) 第2のエンジン「マーケットビジネス」

 第2のエンジン「マーケットビジネス」については、長らく低位で推移してきた国内金利が上昇に転じる可能性も見据え、円金利ポートフォリオを機動的に再構築してまいります。また、リスク耐性強化の観点から、クレジット資産については引き続き投資適格領域を中心に投資するほか、戦略投資領域※1については市場変動への耐性が相対的に高いデット(債券)系商品を中心に、優良ファンドへの選別的な投資を実行し、安定的な収益確保に努めます。

(c) 第3のエンジン「Σビジネス」

第3のエンジン「Σビジネス」については、2026年度以降の本格展開に向けて、2022年10月から2024年9月末までの2年間をパイロット期間と位置づけ、推進基盤整備に取り組むとともに、GP※2業務の本格化に向けた国内GP関連投資の強化やマーケティング支援先の着実な拡充に努めてまいります。

 ゆうちょ銀行は、「リテールビジネス」「マーケットビジネス」「Σビジネス」という3つのビジネス・エンジンを通じて、お客さまとの信頼を深めるとともに金融革新に挑戦し、中長期的にサステナブルな収益基盤の構築を目指してまいります。

※1 戦略投資領域とは、プライベートエクイティファンド(成長が見込まれる未上場企業等へ投資するファンド)、不動産ファンド等からなる戦略的な投資領域のことであります。

※2 GPとは、General Partner(ジェネラルパートナー)の略語。投資ファンドにおいて投資先企業の選定、投資判断等を担うファンドの運営主体のことであります。

⑦ 生命保険業

かんぽ生命保険は、生命保険会社としての社会的使命に応えるために、以下の取組を実施してまいります。

(a) 再生に向けた取組

 かんぽ生命保険は、専門性と幅広さを兼ね備えた新しいかんぽ営業体制を構築し、当社グループ一体での総合的なコンサルティングサービスを実施しております。2023年度は、新しいかんぽ営業体制構築の意義を踏まえ、2023年度の営業目標の達成と、向こう3年間を見据えて営業の底力を築いていくことを目指し、取組を進めてまいります。具体的には、営業社員の育成について、中長期的な視点で一人ひとりの能力を伸ばすため、一人ひとりの能力の伸びを定量的に評価する仕組みを構築します。加えて、経営課題である営業推進に会社を挙げて取り組むため、本社・フロントラインが一体で営業を推進する体制へと改革します。その上で、目標達成に向けた手段を本社から示すとともに、積極的に意思疎通を図ることで、本社とフロントラインの情報・考え方を常に一致させ、全社を挙げて営業推進に取り組んでまいります。今後も、以上の取組を通じて、新しいかんぽ営業体制を定着させ、お客さまのご意向に沿った提案をさらに増やすことにより、新契約の回復を通じて保有契約の確保を目指してまいります。

事業基盤の強化については、「保険サービスの充実」、「資産運用の深化・高度化」、「事業運営の効率化・高度化」に取り組んでまいります。

人生100年時代における、あらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えする保険サービスの開発を進め、保険サービスの充実に取り組んでまいります。

具体的には、2023年4月より、「はじめのかんぽ」の商品改定を実施しており、より魅力的な商品をお客さまに提供することで、青壮年層のお客さまの利用拡大につなげるとともに、学資保険を起点に、ご加入いただいたお客さま等から、そのご家族や知人へかんぽ生命保険商品をお勧めいただくことで、お客さま数を広げてまいりたいと考えております。今後も、継続的にお客さまニーズに応える保険サービスの開発に取り組んでまいります。

資産運用においては、ERM※1のフレームワークのもと、ALM※2運用を基本として、安定的な資産運用収益の確保を目指すとともに、2025年予定の経済価値ベースの新資本規制導入の動きに適切に対処しつつ、オルタナティブ※3等の投資領域ごととポートフォリオ構築の両面から資産運用を深化・高度化してまいります。

収益追求資産への投資については、直近の市場環境の変化に適切に対応するため、ポートフォリオを見直したことにより、中期経営計画期間において、総資産に占める収益追求資産の比率が16%程度となることを見込んでおります。引き続き、リスク許容量と投資機会に応じてオルタナティブ等の収益追求資産への投資を継続してまいります。

ESG※4投資については、温室効果ガス削減目標達成に向けた投資先に対する目的を持った対話(エンゲージメント)の強化、中期経営計画期間中のKPIに設定した、投融資先再生可能エネルギー施設の総発電出力の目標達成に向けた投融資の積極化、インパクト志向の投融資を拡大するため、「インパクト“K”プロジェクト」※5を通じた社会課題解決に向けたインパクト志向の投資※6の推進を進めてまいります。

また、DX推進により、お客さまサービス向上と業務の効率化及び経費の削減に取り組んでいくほか、かんぽ生命保険のフロントラインにおける内務事務の見直しや効率化の推進に取り組んでまいります。

 ERMとは、Enterprise Risk Managementの略語で、会社が直面するリスクに関して、潜在的に重要なリスクを含めて総体的に捉え、会社全体の自己資本などと比較・対照することによって、事業全体として行うリスク管理のことであります。

※2 ALMとは、Asset Liability Managementの略語で、資産負債の総合管理のことであります。

※3 オルタナティブとは、債券や上場株式などの相対的に歴史の長い金融商品(伝統的資産)以外の新しい投資対象や投資手法の総称であります。

※4 ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉であります。

※5 「インパクト“K”プロジェクト」とは、かんぽ生命保険が独自に定める投資のフレームワークを用いることで、同社の実現したい未来の社会及びそれに繋がる社会課題解決に向け、各アセットの特性に応じてインパクト志向の投資を推進する取組であります。

※6 インパクト志向の投資とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動を指します。

(b) 持続的成長に向けた取組

お客さま体験価値(CX)の向上の観点から、保険サービスを抜本的に見直し、お客さまの利便性や募集品質を向上させることで、「かんぽ生命に入っていてよかった」と感動いただけるよう取り組みます。また、その体験価値をご評価いただいたお客さまから、そのご家族や知人、さらには地域・社会全体へかんぽ生命をお勧めいただくことで、お客さま数を広げてまいります。

具体的には、「お客さま一人ひとりに寄り添う最適なご提案」、「その場で完結する簡便な手続きの提供」、「チーム一体でのきめ細やかなサポート」、「お客さまとのつながりを重視したアフターフォロー」に取り組んでまいります。

「お客さま一人ひとりに寄り添う最適なご提案」を行うため、お客さまのニーズや必要な保障内容などについてデジタルを活用したツールにより可視化するとともに、遠方にお住いのご家族等にも同席いただけるシステムを導入します。また、「その場で完結する簡便な手続きの提供」では、デジタル技術の活用により、お客さまのニーズに応じて、オンライン、対面等様々なお申込み・ご請求形態を選択できるようにしてまいります。2023年度には、契約者さま向けWebサービス(マイページ)において、貸付の一部弁済や、ご契約者さまと被保険者さまが別人の保険契約における、貸付を可能とする機能等を拡充するとともに、ご家族でもマイページの閲覧ができるようにしてまいります。「チーム一体でのきめ細やかなサポート」では、コンサルタント、郵便局窓口に加えて、カスタマーセンタースタッフなど、お客さまにご対応するすべての社員がチーム一体で、きめ細やかなあたたかみのあるサポートを提供できる環境を整備してまいります。そして、「お客さまとのつながりを重視したアフターフォロー」のため、訪問による対面の対応に加えて、オンラインなど様々な方法による手厚いアフターフォローや、メール等によるお客さまごとに最適なタイミングでの情報提供を行い、お客さまのニーズに幅広くお応えし、お客さまの周囲の方々も含めた信頼の獲得を目指してまいります。

※ お客さま体験価値(CX)とは、Customer Experienceの略語で、商品やサービスの価格や性能といった機能的な価値だけではなく、保険加入前から加入後のアフターフォロー、保険金支払までのプロセスすべてを通じてもたらされる満足感などの感情的・心理的な価値も含めた、お客さまが体験されるすべての価値のことであります。

(参考)

 過去の新契約、保有契約の件数の推移は下記のようになります。

 

 

 

 

 

(単位:万件)

契約の種類

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

新契約(個人保険)

171

64

12

17

31

簡易生命保険

1,104

990

894

806

726

かんぽ生命保険

1,809

1,716

1,589

1,474

1,372

(注) 2007年10月1日の民営化時の簡易生命保険契約は5,517万件でした。

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