日本製紙 【東証プライム:3863】「パルプ・紙」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであり、達成を保証するものではありません。
(1) 当社グループのサステナビリティ経営
当社は、2004年度に国連グローバル・コンパクトに署名・参加しました。「日本製紙グループは世界の人々の豊かな暮らしと文化の発展に貢献します」との企業グループ理念の実現を目指すと同時に、国連グローバル・コンパクトが定める4分野(人権、労働、環境、腐敗防止)の10原則に基づき、社会・環境の持続可能性と企業の将来にわたる成長の両立を追求する、サステナビリティ経営を推進しています。
(2) 企業グループ理念の実現に向けた経営の重要課題(マテリアリティ)
当社は2021年度に、取り巻く環境の変化に対応しながら企業グループ理念を実現するために、10年後に目指す姿を描き、その達成に向けた経営課題を「2030ビジョン」として策定しました。その策定の過程で、企業グループ理念の「目指す企業像」4要件に対応する経営の課題を議論し、ガイドライン等による検証、外部意見の確認や有識者との対話を経て、当社グループの重要課題(マテリアリティ)をまとめています。
さらに、2022年度には、2030ビジョンで取り組む「事業構造転換の推進」をマテリアリティに加えました。
(3) ガバナンス
当社は、取締役会の監督のもと、代表取締役社長の下にCSR本部を設置し、サステナビリティ経営の推進とリスクマネジメントの統括、企業広報を行う体制を構築しています。
CSR本部は定期的に取締役会にサステナビリティに関する報告を行っており、2022年度は人権尊重に関する活動などについて4回報告しています。
(4) リスク管理
当社は、取締役会の監督のもと、代表取締役社長を責任者とするリスクマネジメント委員会を設置し、年1回以上開催しています。当社グループのリスクの定期的な洗い出しと評価を行い、低減対策及び発現時の対策を検討・審議し、取締役会に報告します。2022年度は、当社の主要な事業リスクの中に、「ESG・SDGs等の社会的要求に関するリスク」を認識しています。
当社のリスクマネジメント体制を含む事業等のリスクにつきましては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
(5) 戦略
当社グループは、2030年に目指す姿・目標として2030ビジョンを策定しました。「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業として持続的な成長を遂げる」を目指す姿として、「成長事業への経営資源のシフト」「GHG削減、環境課題等への社会情勢激変への対応」を基本方針としています。
当社グループが有する経営資源を最大限活用し、3つの循環、『持続可能な森林資源の循環』、『技術力で多種多様に利用する木質資源の循環』、『積極的な製品リサイクル』を軸に、2030ビジョンの基本方針に基づいた事業活動を実践することで、当社グループの持続的成長の実現と木質資源を最大活用した循環型社会の構築をともに創出していきます。
(6) 指標
当社は、マテリアリティと2030ビジョンの基本方針で取り組むテーマを対応させて目標(KPI)を設定しています。2021年度は主な取り組みと進捗状況をまとめ、「日本製紙グループ統合報告書2022」に開示しました。
2022年度につきましては、2023年9月に発行する「日本製紙グループ統合報告書2023」に開示する予定です。
なお、「日本製紙グループ統合報告書2023」は発行後、当社グループウェブサイトにて公表される予定です。
(7) 気候変動問題への対応
① ガバナンス
当社グループは、気候変動問題への対応を経営課題として位置づけ、温室効果ガス(GHG)排出量削減を中心として緩和と適応に取り組んでいます。
当社の取締役会では、気候変動問題への対応を、企業グループ理念を実現するための重要課題と位置付け、GHG排出削減・環境経営担当役員(年2回以上)やリスクマネジメント委員会(年1回)から、GHG排出削減に関わる各プロジェクトの進捗、特定されたリスク・機会やシナリオ分析結果などの報告を受けて、その業務執行を監督しています。
② リスク管理
気候変動関連リスクの評価と対応は、当社グループのリスクマネジメント体制に統合され、リスクマネジメント委員会で管理すると同時に、GHG排出削減・環境経営担当役員の報告(年2回以上)で報告されるリスクは、優先度を選別・評価し、取締役会で迅速な意思決定を行っています。リスク評価については、気候変動戦略ワーキンググループにおいて、複数の気温上昇シナリオを設定し、分析・評価することで、重要なリスクを特定しています。
③ 指標と目標
指標 | 2030年度 | 2050年度 | |
GHG排出量削減率 | 目標 | 実績 | カーボンニュートラル |
54%削減 (注) | 20%削減 | ||
非化石エネルギー使用比率 | 60%以上 | 46% | - |
(注)エネルギー事業分野を除く製造に関わるScope1及び2
④ 戦略
当社グループは、気候変動問題への対応を経営課題として位置づけ、GHG排出量の削減を中心とした緩和と適応に取り組んでいます。当社グループでは、気候変動問題に関わるリスクと機会に対応するために、シナリオ分析を行い、経営課題に取り込むことにより、リスクの低減と機会の拡大を図っています。
エネルギー多消費型である紙パルプ製造を主要事業とする当社グループは、脱炭素化の動きが急加速する状況において、その対応が遅れた場合、カーボンプライシングなどの規制リスクや顧客、投資家からのレピュテーションリスクにより財務影響を受ける可能性があります。一方で、今後、急速な拡大が予想される環境配慮型製品の市場において、当社グループは、森林資源を利用し、社会で必要とされる様々な製品・サービスを生み出し、資源循環できる蓄積を強みとして成長する機会があります。
当社グループは、シナリオ分析及びその他の情報を考慮し、2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画を策定しています。GHGの削減については、2021年度に、2030ビジョンにおいて、2030年度までに2013年度比で45%削減する目標を設定しましたが、政策導入、市場ニーズの変化等、主として移行リスク要因の変化が速くなっていること、またその影響も大きくなる可能性があると評価されたことから、生産体制再編成と連動させた石炭削減の追加対策を検討し、2023年5月に、2030年度の削減目標を45%削減から54%削減に引上げました。
日本製紙グループ カーボンニュートラル移行計画
⑤ 2030年時点における主要なリスク
(移行リスク)
紙パルプ産業は、エネルギー多消費型産業であり、カーボンプライシングなどの政策リスクにより大きな影響を受けますが、GHG削減を加速させ、早期に低炭素化への移行を進めることで、炭素価格上昇に関わるリスクの低減を図っていきます。また、環境配慮型製品市場の拡大等、市場ニーズの変化に対応するための開発・設備投資費用が増加する可能性がありますが、環境に配慮した高付加価値な製品を適切に市場に提供することで、変化する市場において、リスクを機会に変えて成長していきます。
要因 | 当社グループへの影響事象 | 財務影響 | |
1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||
政策導入 | ・炭素価格が上昇する | 大 (注) | 小 (注) |
・燃料転換・省エネルギー対策の設備投資費用が増加する | 大 | 小 | |
・エネルギー及び原材料調達コストが増加する | 大 | 小 | |
市場ニーズの変化 | ・認証材チップの調達コストが増加する | 中 | 中 |
・環境負荷低減のための開発コスト、設備投資費用等が増加する | 中 | 小~中 |
(注)炭素価格影響額 小:100億円未満、中:100億円以上500億円未満、大:500億円以上
「炭素価格」以外は定性評価
炭素価格:IEAによるNet Zero Emissionシナリオを採用
(物理的リスク)
台風や豪雨などの気象災害の激甚化は、生産拠点や物流網に被害をもたらしますが、事業継続のための綿密な体制の整備を図り、リスクの低減を図っていきます。また、気温の上昇や降水パターンの変化は、植物の生長を悪化させるため、木材チップの調達コストを増加させるリスクがありますが、複数国・地域にサプライヤーを分散することで、安定的な調達を図っていきます。
要因 | 当社グループへの影響事象 | 財務影響 | |
1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||
激甚災害の増加 | ・原材料調達・生産・製品輸送などの停止により生産量が減少し、納品の遅延・停止が発生する | 中~大 | 大 |
・調達・製造・物流コストが増加する | |||
気温上昇・降水パターンの | ・自社の植林資産に損失が生じる | 中 | 大 |
・原材料が調達困難となり、調達コストが増加する |
⑥ 2030年時点における主要な機会
政策導入や市場ニーズの変化により、バイオマス素材や省エネルギーに資する素材の需要が拡大すると同時に、資源自律を実現する国産材需要の増加やクレジット市場の拡大による森林吸収クレジット需要の増加などの機会に対して、森林管理、育種・増殖技術等の当社グループの強みを活用して成長していきます。
要因 | 当社グループへの影響事象 | 当社グループの強み | 市場成長 | |
1.5℃ | 4℃ | |||
政策導入 | ・蓄電池が普及し、蓄電池用原材料の需要が増加する | ・CMC技術・生産設備 | 大きく | 拡大 |
・自動車の軽量化ニーズにより、CNFの需要が増加する | ||||
・森林吸収クレジットの需要が増加する | ・国内社有林 | 大きく | 維持 | |
・カーボンニュートラルCO₂を利用した化学原料の需要が高まる | ・バイオマス由来CO₂供給インフラ(回収ボイラー) ・化学的CO₂固定・利用技術 | 大きく | 維持 | |
市場ニーズの変化 | ・脱石化により紙化ニーズが高まるなど、バイオマス素材・リグニン製品の需要が増加する | ・木質バイオマス素材開発技術(CNF、紙製包装材料、液体容器、機能性段ボール、バイオコンポジットなど) ・リグニン抽出・活用技術 | 大きく | 拡大 |
・国産材の需要が増加する ・国内の再造林面積増によりエリートツリー苗の需要が増加する | ・国内社有林 | 拡大 | 大きく | |
・持続可能な航空燃料の需要が増加する | ・パルプ・セルロースの製造技術 | 拡大 | 拡大 | |
激甚災害の増加 | ・長期保存可能なアセプ紙パックの需要が増加する | ・トータルシステムサプライヤー | 拡大 | 拡大 |
気温上昇・降水パターンの変化 | ・環境ストレス耐性樹木の需要が増加する | ・森林管理・育種・増殖技術 | 拡大 | 拡大 |
(8) 人材の活用
① 基本的な考え方
当社は、企業グループ理念の中で、目指す企業像の要件の一つに「社員が誇りを持って明るく仕事に取り組む」ことを掲げています。誇りとは、「事業活動の推進を通じて得る社会貢献の実感」、「キャリアを通じた個々人のスキル向上・成長実感」、「職場での働き甲斐や報酬・処遇への充実感」を享受することで培われるものと考えています。また、明るく仕事に取り組むとは、外部環境の激しい変化に対して臆することなく、社員が前向きに働くことであり、そのための企業風土づくりが必要です。この要件を満たすためには社員のエンゲージメント向上が必要であることから、各種の施策に取り組んでいます。
② 社員のエンゲージメント向上のための人材戦略
当社は、あるべき社員とのエンゲージメントを「社員と企業の双方が成長していける関係」であると定義しています。当社グループは、2030ビジョンの実現に向け策定された中期経営計画 2025において「事業構造転換の加速」を基本戦略に掲げていますが、これを実現するため、人材の育成、確保・定着に力を入れるとともに、成長事業への人材のシフトをはじめとした人材の活用を進め、社員と企業の双方が成長することを促していきます。また、多様な働き方の実現と、多様な人材が能力を最大限に発揮できる組織づくりを推進し、社員のエンゲージメント向上を図り、「社員が誇りを持って明るく仕事に取り組む」ことを実現していきます。
そのために、人材育成・社内環境整備の方針も含めた人材戦略として、下図のとおり3つの柱を据えて各種の施策に取り組んでいます。
3つの柱はいずれも重要かつ、相互に連動・循環する要素を含んでいますが、特に「変化にチャレンジする人材づくり」は、現時点における最重要課題と捉えています。労働力人口の減少・人材の流動化に伴い人材確保が難しい状況においては、既存事業の工場で高い操業スキルを蓄積した優秀な人材の職務領域をさらに拡張させ、新規事業の立ち上げや新製品の量産化に適応する人材として再育成・再配置することを加速していきます。
③ 人材育成及び人材確保・定着(社内環境整備)の方針に関する指標
当社は、人材育成や人材確保・定着(社内環境整備)の進捗状況をモニタリングするために、下表の通り指標を設定しています。今後は、進捗状況や外部環境の変化を踏まえながら、各方針の進捗状況をモニタリングするうえでより相応しい指標への見直し・追加等を、必要に応じて検討していきます。
人材育成及び社内環境整備に係る指標
指標 | 目標 | 実績 |
入社10年後の在籍率〔%〕 | 80%以上 | 2012年度に入社した |
女性総合職採用比率〔%〕 | 40%以上(2025年度まで) | 2023年度 新卒総合職における |
年間総労働時間〔時間〕 | 1,850時間/年以下 | 2022年度 1,884時間/年 |
年次有給休暇取得率〔%〕 | 70%以上 | 2022年度 78.4% |
ダイバーシティ推進制度利用率〔%〕(注)2 | 70%以上 | 2022年度 93.2% |
(注)1.指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しています。
2.ダイバーシティを推進する制度(フレックスタイム制度、時間単位年休制度及び在宅勤務制度)を当年度中に利用したことがある本社部門従業員の比率です。
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