日本取引所グループ 【東証プライム:8697】「その他金融業」 へ投稿
企業概要
記載事項のうち将来に関する事項は、提出日現在において入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、公共性及び信頼性の確保、利便性、効率性及び透明性の高い市場基盤の構築並びに創造的かつ魅力的なサービスの提供により、市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献します。また、これらを通じて、投資者を始めとする市場利用者の支持及び信頼の増大が図られ、その結果として、利益がもたらされるものと考えます。
この企業理念の下、中期経営計画において、中長期の将来像を見据えた経営の基本方針、事業戦略及び経営目標を策定しています。当社グループは、2030年までに実現を目指す長期ビジョンを、Target 2030として「幅広い社会課題に、資金調達・資金循環機能をはじめとしたソリューションを提供する、グローバルな総合金融・情報プラットフォームへと進化し、持続可能な社会と経済発展の実現に貢献する」と定めました。
この長期ビジョンを実現していくための第Ⅰステージとして位置づける、2022年度から2024年度の3か年を対象とした「中期経営計画2024」(2022年3月策定)においては、安定的な市場運営という伝統的な取引所としての機能を強化しながら、同時に、その枠組みに過度にとらわれず新たな領域へも進んでいく意思を「Exchange & beyond」と表し、グローバルな総合金融・情報プラットフォームの基盤を築くために積極的に取り組むことを基本方針としています。
中期経営計画を着実に実行するとともに、投資家・利用者のニーズや事業環境の変化、技術の進展や規制の枠組みの見直しに応じて、的確な対応を進めることにより、日本国内のみならず、アジア太平洋地域のタイムゾーンにおける機軸マーケットとして、世界でも枢要な市場の一つであり続けることを目指していきます。
(2)中期経営計画、経営環境及び対処すべき課題等
① 中期経営計画2024 2年目の振返り
当社グループは、安定的市場運営という伝統的な取引所としての機能を強化しながら、同時に、その枠組みに過度にとらわれず新たな領域へも進んでいく意思を込めたExchange & beyondというスローガンの下、グローバルな市場間競争における日本の金融・資本市場全体の魅力向上に貢献するため、以下の3つのFocusに掲げる各施策を着実に実施しました。
| 主な施策や成果 |
Focus 1 企業のイノベーション・成長と資産形成の循環促進 | ・投資者の視点を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営」のポイントと事例の公表 ・中流動性銘柄(TOPIX Mid400構成銘柄)における呼値の単位の適正化 ・望ましい投資単位の下限(5万円以上)の水準を撤廃 ・IPOのサポートを推進し、95件のIPOを実現(TOKYO PRO Marketは除く) ・アクティブETFの上場実現 ・TOPIXの段階的ウエイト低減銘柄の再評価結果を公表。TOPIXの見直しを推進 ・JPXプライム150指数の算出開始 |
Focus 2 マーケット・トランスフォーメーション(MX)の実現 | ・日経225マイクロ先物、日経225ミニオプション、TONA3か月金利先物等のデリバティブ新商品の取引開始 ・金利スワップ取引清算業務におけるクロスマージン制度の対象に金利先物取引を追加 ・上場デリバティブ取引に係る証拠金の計算方法においてVaR方式を導入 ・「J-Quants」をはじめとする新規データサービスの提供開始 ・TOPIX Micro Cap等の新指数の算出開始 |
Focus 3 社会と経済をつなぐ サステナビリティの推進 | ・「JPX ESG Link」(旧「JPX上場会社ESG情報WEB」)の正式稼働 ・ESG関連指数先物の上場 ・電力先物に係る週間物取引を取引開始 ・カーボン・クレジット市場の創設 |
② 経営・事業環境及び課題
当社グループは、有価証券やデリバティブの上場から、取引の場の提供、清算・決済サービスから指数・情報サービスに至るまで、我が国の市場に関する一連のサービスをグループ一丸となって提供しています(当社の企業構造については「第1企業の概況 3事業の内容」の事業系統図をご覧ください。)。当社グループが運営する市場は、企業等に対しては資金調達機会を、投資家に対しては資産運用機会を、社会全体に対しては価格発見機能を提供しています。我が国においては、国内の他の取引所や私設取引システム(PTS)が市場を提供していますが、当社グループは、証券会社等の取引参加者を通じて、国内外の投資家からの大量の需給を集約することにより日本国内において確固たる地位を確立しています。
当社グループの運営する市場は、内外の経済情勢や金融政策、地政学リスクの動向など外部環境の変化によって大きな影響を受けるため、内外の経済動向や市場環境を注視しながら、市場運営を行っていく必要があります。当社グループとしては、環境の不透明性・不確実性から生じる様々なリスクに的確に対処しながら、常に安定的に利用者の満足度が高い市場インフラを提供することを最大の経営課題と認識しております。当社グループが、我が国におけるセントラル・マーケットの運営者として、引き続き安定的に市場運営を行っていくためには、取引参加者・上場会社・システムベンダーをはじめとする市場関係者との一層の連携を図っていくことが重要と認識しています。また、政府において"資産運用立国"が策定され、2024年からは新NISAがスタートするなど、「成長と分配の好循環」の実現に向けて当社グループが果たすべき役割はこれまで以上に高まってきております。国内外から日本のマーケットへの関心が高まる中、その魅力をグローバルに発信し、様々なステークホルダーからの期待に応えることで、更なる成長へと歩を進めていくことが重要です。
③ 中期経営計画2024 最終年度アップデート
こうした認識の下、計画最終年度においては、計画の大枠を維持しつつ、以下の3つのFocusに掲げる重点施策を着実に実行してまいります。また、"資産運用立国"に関連する政府施策の実現と金融資本市場の活性化に向けて、関連する施策の拡充を図ってまいります。加えて、長期ビジョンの実現を目指す第Ⅱステージ(2025年度以降の次期計画)に向けた準備期間としても、次期計画での発展を見据えた各種検討や体制整備、投資等を強化してまいります。
Focus 1 企業のイノベーション・成長と資産形成の循環促進
・企業の持続的成長を支援する環境の整備
・資産形成に資する商品・制度の発展
・市場インフラとしての利便性・レジリエンスの更なる向上
Focus 2 マーケット・トランスフォーメーション(MX)の実現
・金利関連市場の機能強化
・デリバティブ市場の活性化
・デジタル化・情報利用の高度化
Focus 3 社会と経済をつなぐサステナビリティの推進
・サステナビリティ関連情報の発信に係る機能強化
・ESGに関連した指数の算出、関連ETF・先物等の上場
・エネルギー関連市場の活性化、排出量市場創設の推進
また、当社グループの取組みに関して、皆様のご理解を深めていただけるよう、国内外を問わず情報発信を強化してまいります。
なお、当社グループは、3つのFocusに掲げる施策の達成状況を判断するための客観的な指標として、主要目標を以下のとおり定めております。
項目 | 主要目標 |
Focus 1 企業のイノベーション・成長と資産形成の循環促進 | ・2024年度のETF等の1日平均売買代金及び純資産 2021年度比30%増(※) ・計画3か年で、クロスボーダー企業の上場20件 ・2024年度後半に現物売買システム更改実現、更改時の立会時間延伸実現 |
Focus 2 マーケット・トランスフォーメーション(MX)の実現 | ・2024年度末までにデジタル証券市場創設、当該市場での新商品取扱い開始 ・計画3か年で、デジタル技術を活用した社内外向け新規サービスの開発3件(達成) ・計画3か年で、情報サービスの新規顧客数280社、 新規情報サ-ビスの構築及び既存情報サービス・制度の改善12件(達成) |
Focus 3 社会と経済をつなぐ サステナビリティの推進 | ・2022年度に公募ESG債情報プラットフォームの運営開始(達成) ・2022年度に新たなESG関連指数算出開始(達成)、ESG関連指数先物上場(達成) ・2024年度の電力先物取引高を2021年度比5倍程度に拡大 ・2024年度までにLNG先物本上場 |
※1日平均売買代金はレバレッジ型・インバース型商品除く。純資産は日銀買入分除く
④ 中期経営計画2024(2022年度-2024年度)の経営財務数値及び資本政策
市場の利便性・レジリエンスの更なる向上に加え、グローバルな総合金融・情報プラットフォームの基盤を築くための投資を実施し、3つのFocusに掲げる施策を着実に遂行することにより、当社グループの収益基盤である取引量などの中長期的な拡大とあわせて、新たなサービスを創出することで収益の安定化を図っていくことを経営財務方針としています。また、安定的な市場運営のための財務の安全性と株主還元のバランスをとりつつ、継続的な投資により、市場の持続的な発展・進化を支えることを資本政策の基本方針とし、市況にかかわらず資本コストを上回るROE10%を中長期的に維持することを目指します。当該経営財務方針及び資本政策に基づき、計画最終年度の経営財務数値と計画期間中の設備投資金額の目安となる水準を以下のとおり設定しております。
こうしたなか、2023年度において当社グループは、営業収益1,528億円、当期利益(親会社の所有者帰属分)608億円、ROE19.0%(注)と、最終年度を待たずに経営財務数値を達成しました。
(注)営業収益及び当期利益(親会社の所有者帰属分)については表示単位未満を切捨て、ROEについては小数第2位を四捨五入。
2024年度においては、引き続き、案件の優先順位付け等により費用を適切にコントロールしつつ、市場の安定的運営と今後の成長に向けた投資を継続してまいります。
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