日本取引所グループ 【東証プライム:8697】「その他金融業」 へ投稿
企業概要
(1)考え方・体制
当社グループは、企業理念で掲げる「市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献」に向け、我々を取り巻く環境や社会課題、それらとの関係に目を向け、企業価値の向上につながる取組を進めることが重要な経営課題の一つであると認識し、経営方針を定め、経営計画等を策定しています(第2 事業の状況-1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等参照)。
公正性・信頼性を備えた利便性・効率性及び透明性が高い市場と魅力的なサービスを提供するという当社グループのビジネスモデルを踏まえると、市場メカニズムを活用した取組を進めていくことが肝要と考え、長期ビジョンのもと、中期経営計画2024では3つのFocusの一つに「社会と経済をつなぐサステナビリティの推進」を掲げ、サステナビリティ関連情報の発信に係る機能強化や、関連指数算出・商品の上場、排出量市場創設の推進等に取り組んでいます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組については、当社ウェブサイトもご参照ください。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/index.html
[ガバナンス]
当社グループは、上記の考えのもと、グループCEOを本部長、グループCOOを副本部長とするサステナビリティ推進本部を設置して、サステナビリティ関連課題の事業への影響を分析し、対応を進めています。これらに係る基本方針や重要事項は、適宜取締役会に報告し、監督が適切に図られる体制を整えています(第4 提出会社の状況-4 コーポレート・ガバナンスの状況等参照)。
さらに、全社的なリスク管理における重要リスクとして「サステナビリティ推進への対応」を特定し、リスク管理の観点からも四半期ごとに取締役会に報告がなされる体制としています。また、サステナビリティ担当役員のもとで、サステナビリティ推進部が中心となり、サステナビリティ課題が当社グループの事業にもたらすリスクと機会を把握し、それらに適切に対応できるよう、分析・モニタリングしています。
加えて、執行役に対して支給する中長期インセンティブ(金銭報酬)を、中期経営計画2024において示す連結ROE及びサステナビリティ施策の達成度に連動させることとしています(第4 提出会社の状況-4 コーポレート・ガバナンスの状況等参照)。
[リスク管理]
当社グループは、様々なリスクに対応するため、社外取締役を委員長とする「リスクポリシー委員会」及びCEOを委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、「リスク管理方針」に従って、未然防止の観点からリスクの認識と対応策の整備・運用を行うとともに、リスクが顕在化あるいはそのおそれが生じた場合には、早期に適正な対応をとる体制を整えています。「リスク管理方針」では、当社が抱えるリスクを特定したうえで分類し、所管部署が管理することとしており、その運用評価・問題点に関する情報は「リスクポリシー委員会(半期毎)」及び「リスク管理委員会(四半期毎)」に定期的に集約し、その都度、取締役会に報告しています。サステナビリティ関連のリスクについては、「リスクポリシー委員会」において「事業環境・事業戦略リスク」に係る重要リスクに特定し、サステナビリティ推進部が管理しています(第2 事業の状況-3 事業等のリスク参照)。
(2)気候変動に関する取組
当社グループは、気候変動がリスクと機会の両面から当社グループの持続的な成長に影響を及ぼす可能性があることを認識し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言(以下、「TCFD提言」という。)に沿った情報開示を進めるとともに、提言内容を気候変動関連リスク・機会への対応を進める際の指針として活用することで、レジリエンスと持続的な成長性の向上に努めています。
[戦略]
当社グループは、気候変動がもたらすリスク・機会として想定される事項と、それらが当社グループの事業・戦略・財務計画に与える影響を検討し、リスク低減や企業価値向上に向けた施策を講じており、中期経営計画2024ではグリーン戦略として整理しています。
また、気候変動への対応は長期的で不確実性の高い課題であることから、戦略のレジリエンスを検討するため、TCFD提言の技術的補足文書等を参考に、シナリオ分析を実施しています。シナリオ分析にあたっては、短期(~2025年)、中期(~2030年)、長期(~2050年)の時間軸を設定し、気候変動に関する物理的リスク、移行リスク・機会として想定される事項を特定したうえで、複数の外部シナリオ下における戦略や財務計画への影響・対応方針等を評価しています。
<気候変動がもたらすリスク・機会として想定される事項と関連取組>
分類 | 気候変動がもたらすリスク・機会として 想定される事項 | 時間軸 | 主な関連取組 | |
物理的リスク | 急性 | 自然災害の激甚化により、操業停止や物的損害が発生した場合、短期的な収益減少、中長期的な投資家の離反につながる可能性 | 短期~長期 | ・「緊急時事業継続計画(BCP)」策定 ・業務・システム両面のバックアップ態勢強化 ・「コンティンジェンシー・プラン」策定 |
慢性 | 長期的気候パターンの変化により、操業停止や関連対応の増加等、取引所の事業運営が妨げられる可能性 | 長期 | ||
移行リスク | 法・規制 | 温室効果ガス排出量削減に係る政策・規制の強化により、事業活動に伴う排出コスト及び排出削減のための投資に伴うコストが増加する可能性 | 中期~長期 | ・省エネ化推進 ・カーボン・ニュートラル目標設定 |
ESG情報開示や関連商品・サービスに関する法規制等の強化により、商品、市場、及び当社グループの事業運営に様々な影響が生じる可能性 | 短期~長期 | ・法規制動向の把握、規制当局等との連携強化 ・上場会社等のESG情報開示に対する理解促進 | ||
技術 | 脱炭素化関連技術のイノベーション創出に伴い、ITシステム等への新技術導入に係るコストが増加する可能性 | 中期~長期 | ・ITシステム関連設備における最新技術活用 | |
市場 | 当社グループの運営する市場に上場する会社や商品の気候変動に関する取組や情報開示に対する投資家の要求水準が高まり、需要の減少、収益への影響が生じる可能性 | 短期~長期 | ・市場利用者のニーズ把握、提供サービスの拡充 ・上場会社のサステナビリティ関連取組促進 | |
評判 | 当社グループの市場運営やその姿勢、または日本企業の経営姿勢において、気候変動対策への取組が不足していると解されることにより、当社グループ及び日本市場全体への評価・信頼が低下し、ビジネス機会の縮小、資金調達コストの上昇につながる可能性 | 短期~長期 | ・情報開示・発信、ステークホルダーとの対話強化 ・国内外の議論への参加 |
分類 | 気候変動がもたらすリスク・機会として 想定される事項 | 時間軸 | 主な関連取組 | |
機会 | 製品およびサービス | ESG投資の拡大を踏まえ、気候変動を含むESG課題に関連した商品・サービスの提供を拡大し、関連収入が増加する可能性 | 短期~中期 | ・中期経営計画2024のもと、「社会と経済をつなぐサステナビリティの推進」関連施策の推進 |
サステナブルファイナンスの活用により、資金調達コストを低減できる可能性 | 短期~中期 | ・グリーン・デジタル・トラック・ボンド発行 | ||
エネルギー源 | エネルギー調達手段の多様化により、エネルギー調達に係る価格変動や潜在的なコスト増加への耐性が向上する可能性 | 短期~中期 | ・再生可能エネルギー自己創出 |
※ 物理的リスクとは、気候変動に起因する自然災害等による資産や事業活動への直接的な損傷等に関するリスクをいう
※ 移行リスクとは、低炭素社会への移行に伴って発生する政策・法務・技術革新・市場嗜好の変化等に起因するリスクのことをいう
シナリオ分析の詳細については、当社ウェブサイトをご覧ください。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/jpx-esg/environment/01.html
[指標及び目標]
当社グループは、気候変動への対応として、主な温室効果ガス(以下、「GHG」という。)の排出要因である電力の調達方法を見直し、2024年度までに当社グループ全体で消費する電力の100%を再生可能エネルギーに切り替え、Scope2排出量をゼロにすること、同時期までにJPXグループ全体でのカーボン・ニュートラル(Scope1、2)を達成すること目指しています。また、Scope3(注1)についても算出し、バリューチェーン全体の適切な排出量管理を行いつつ、GHG排出を抑えるべく取り組みます。
<当社グループのGHG排出量(Scope 1、2)>
| 2019年度 (t-CO2) | 2020年度 (t-CO2) | 2021年度 (t-CO2) | 2022年度 (t-CO2) |
Scope1(直接的なCO2排出量) | 738 | 688 | 774 | 824 |
Scope2(間接的なCO2排出量) | 13,708 | 13,500 | 11,751 | 9,041 |
合計(Scope1+2) | 14,446 | 14,188 | 12,525 | 9,865 |
(注1)2022年度の当社グループのGHG排出量Scope3は、27,916t-CO2。Scope3に属する15の報告カテゴリを算定対象としており、当該数値には、資本財、燃料及びエネルギー関連活動、購入した製品・サービス、出張、雇用者の通勤、下流リース資産、事業から出る廃棄物が含まれています。
GHG排出量を含む環境関連データについては、当社ウェブサイトをご覧ください。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/jpx-esg/environment/02.html
(3)人的資本経営の取組
① 人材戦略の考え方
「私たちは、公共性及び信頼性の確保、利便性、効率性及び透明性の高い市場基盤の構築並びに創造的かつ魅力的なサービスの提供により、市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献します。私たちは、これらを通じて、投資者を始めとする市場利用者の支持及び信頼の増大が図られ、その結果として、利益がもたらされるものと考えます。」
当社グループでは上記の企業理念を掲げており、信頼性の高い市場基盤の構築や魅力的なサービスの提供により、豊かな社会の実現に貢献することを第一のミッションとし、市場のニーズに応えていくことが結果として利益の最大化にもつながると考えています。こうした公益性・社会貢献性は、当社グループの事業の大きな特徴の一つであり、当社グループの採用競争力や当社社員のエンゲージメントの源泉となっています。当社グループの採用活動においても、本企業理念への共感を重視しています。
また、本企業理念の下、2030年までに実現を目指す長期ビジョンをTarget2030として、「幅広い社会課題に、資金調達・資金循環機能をはじめとしたソリューションを提供するグローバルな総合金融・情報プラットフォームへと進化し、持続可能な社会と経済発展の実現に貢献する」と定めており、この長期ビジョンを実現していくための第Ⅰステージである中期経営計画2024においては、安定的な市場運営という伝統的な取引所としての機能を強化しながら、同時に、その枠組みに過度にとらわれず新たな領域へも進んでいく意思を「Exchange & beyond」と表しています。こうした中長期の将来像を実現していくために、「伝統的な取引所業務の更なる安定・高度化を支える」人材に加え、「新たな分野・領域を切り拓く」人材を採用・育成し、全ての人材の能力発揮のための環境を整備することを人材戦略の基本的な考え方としています。
※ 人的資本経営に係る個別の施策及び人的資本に関する各種のデータについては、当社及び中核子会社を対象としています。
② 伝統的な取引所業務の更なる安定・高度化を支える人材の採用・育成について
企業理念に掲げているとおり、信頼性の高い市場基盤の構築や魅力的なサービスの提供が当社グループにおける中核的なミッションであり、安定的な市場運営はその根幹をなしています。そのため、伝統的な取引所業務の更なる安定化に向けて、当社グループの公共的使命に共感し、高い使命感・責任感を持って市場の安定運営のために必要な業務に誠実に取り組むことのできる人材や、高いコミュニケーション能力を発揮し、多様なステークホルダーの結束点となる意識を有する人材、現状に満足せず、より高い次元を目指そうとする人材を積極的に採用しています。
加えて、デジタル技術が進展し、マーケットニーズが多様化する現代においては、市場の安定運営という守りにも「革新」が求められます。こうした背景や、特定の分野で高い専門性を武器にキャリアを築いていきたいという多様な働き方のニーズも踏まえ、担当業務を基幹システム及び情報系システムの開発・運用を始めとするデジタル・ネットワーク分野に特定した「デジタル・ソリューションコース」を新たに設置し、採用を開始しています。
また、採用後の人材育成(キャリアパス)の方針として、取引所業務をはじめとする当社グループ全体の機能強化のため、以下の理由からジョブローテーション(人事異動・担当替え)による人材育成が重要であると考えています。
・独自性のある取引所業務における社員個々人の適性の発見
・上場から売買・清算・決済までの一連のバリューチェーンを俯瞰できる能力の獲得
・不測の事態が発生した際の業務継続のための臨機応変な対応力の獲得
キャリアの前半(若手~中堅社員)は適性発見のための部門横断的なローテーション、その後は専門分野を意識したローテーションを実施することで、多様な業務経験機会の提供を通じて、社員の能力伸長や適性発見を図り、俯瞰的な視点と強みとなる専門分野を兼ね備えた人材を育成しています。
人材育成(能力開発)に関しては、業務経験を通じた能力開発の機会である「実務経験」、上司・先輩社員の指導や体験共有からの学びの機会である「知の共有」、研修等の教育による学びの機会である「研修」の3つを柱とし、当社グループの業務に必要な技術や知識等をバランス良く習得できるようサポートする能力開発プログラムを提供しています。
一点目の「実務経験」は人材育成の中核となる要素であり、独自性の高い当社グループでの業務の各部署における導入研修やOJTに加え、自身の希望するキャリアを歩めることがエンゲージメントの観点からも重要であることから、自己申告制度・社内公募制度・社内FA制度により継続的に社員のキャリアに関する希望を把握し、本人の希望や適性に応じたジョブローテーション及び国内外の専門機関への派遣を実施しています。
二点目の「知の共有」について、上司・部下間での指導については、評価プロセスの中で定期的に実施している1on1面談等を活用しながら、社員自身による目標の設定、取り組んだ課題・業務に対する成果の振返り、フィードバックによる自己の更なる改善や成長の促進、といったプロセスを機能させることで、社員一人ひとりの成長を後押ししています。更に、グループ内で知識・経験の共有を図りつつ、その過程で社員同士が部署横断的な関係性を築いていくことが組織力の向上につながるという考えのもと「JPXカレッジ」という枠組みを用意し、キャリアサポート研修・メンター制度・私塾サポート制度(社内講師による研修)・相談コミュニティの設置など様々な取組を行っています。
三点目の「研修」について、社員個々人のキャリアの段階に応じた内容を学ぶ階層別研修や、社内外での様々な研修、資格取得支援の制度等を用意しています。これに加え、キャリアデザイン支援制度により、当社グループの業務に必要な技術・知識等を習得するための研修等の費用を社員一人につき年間30万円まで補助する取組を行っており、2022年度は延べ227人の利用がありました。本支援制度の利用者数を増加させることにより、社員が自らの意思で積極的に専門的な知識や最新の情報を吸収し、広い視野や自由な発想力を獲得することのできる環境の整備を更に推進してまいります。
③ 新たな分野・領域を切り拓く人材の採用・育成について
グローバルな市場間競争における日本の金融・資本市場全体の魅力向上に貢献するためには、これまでの取引所の常識にとらわれない攻めの挑戦、「革新」が強く求められます。こうした次世代の新しい取引所の姿を模索し実現するための核となるのは、自ら課題を考え抜き、その実現に向かって積極的に取り組んでいく一人ひとりの社員であり、当社グループでは②で挙げた資質に加え、新規領域を開拓し、牽引していく力・タフさも有する人材も重視しています。
また、新たな分野・領域を切り拓いていくためには、ビジネスとデジタルテクノロジーの両方に精通し、その知識・経験をベースに事業に変革をもたらす人材や、新たな分野・領域の開拓に人的リソースを充当していくための事業の自動化及びプロセス改革などを推進する人材が必要です。新たに設置した「デジタル・ソリューションコース」により、基幹システム及び情報系システムの開発・運用を中心とするIT部門でのキャリア形成を希望する人材を拡充することで、業務・IT部門間のジョブローテーションを活性化させ、ビジネスとデジタルテクノロジーの両面に精通し変革をもたらす人材の育成強化を企図しており、急速な技術の進展に対応できる高度専門人材の採用・育成にもつなげていきたいと考えています。
前述の人材育成(能力開発)は伝統的な取引所業務の更なる安定・高度化だけではなく、新たな分野・領域を切り拓く人材の育成においても非常に重要な役割を担っています。特に、社内公募制度により国内外の教育機関や専門機関等への派遣を行っておりますが、当社グループがグローバルな総合金融・情報プラットフォームへと進化していくため、今後は海外駐在員事務所等(ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、北京、香港)への駐在経験、海外大学院(MBA、ロースクールなど)への留学や海外専門機関への派遣等をこれまで以上に積極的に行うことで、海外経験を有する社員を増やし、グローバルビジネスを牽引する人材の育成を推進してまいります。
更に、「Exchange & beyond」の実現のためには、テクノロジーの進化やそれに伴うマーケットニーズの変化を見据え、顕在化していない課題を探し出し、その解決策をいち早く考案し、実行する組織力が必要となります。取引所業務に限定されない幅広い知識や新しい技術を能動的に吸収し成長するマインド、挑戦するマインド、そういった取組を行おうとする者をサポートするマインドが求められることから、社員の評価のプロセスにもそうした要素を取り入れることで新たな分野・領域を切り拓く人材の育成を推進してまいります。
④ 全ての人材の能力発揮のための環境整備等について
(a)多様な人材の活躍推進
当社グループでは、性別・国籍・年齢などにかかわらず、多様な人材が活躍できるよう、人事部内に「ダイバーシティ推進グループ」を設置し、各種取組を実施しています。育児期の社員のために法定を上回る両立支援制度を整備しているほか、男性の育児参加が増えていくことが、社会全体の女性活躍の推進につながるという考えに基づき、男性育休セミナーを開催するなど男性社員の育児支援制度の利用を積極的に推奨しており、2022年度においては、20名の男性社員が育休を取得し、平均取得日数は21.3日となりました。
分類 | 項目 | 2022年度 |
男性社員の育休取得の状況 | 育休取得率 (取得者数) | 66.7% (20人) |
平均取得日数 | 21.3日 |
※育休とは、育児休業、産後パパ育休、育児休暇(有給)を取得した合計数
また、女性社員については、出産・育児等のライフイベントに伴い、キャリアのブランク期間が発生しやすいことから、特に会社のサポートが重要であると考えています。そのため、育休からの復職前面談などによるスムーズな復職をサポートする取組や育児との両立支援制度を充実させることで、過去5年の育休からの復職率は98%と高水準を維持しています。このように、女性社員がキャリアを中断することなく、働き続けられる環境を整備するとともに、女性管理職の登用目標についても設定しています。これらの取組の結果、2022年度には当社グループで初の内部昇格による女性執行役が誕生しました。部長級にも女性社員4名を登用しており、女性管理職は近年着実に増加しています。2023年3月末時点の女性管理職は41人、女性管理職比率は8.2%と、目標としていた「2022年4月時点で女性管理職比率8%以上」を達成しています。現在は新たな登用目標を設け、女性管理職を2025年度までに50名(2021年度の約1.5倍)以上、2030年度までに70名(2021年度の約2倍)以上とすることを目標としております。当該目標を達成した場合、女性管理職登用の目標設定を開始した2016年度と比較して、管理職以上の女性社員は2025年度までに3.3倍以上、2030年度までに4.6倍以上となる予定で、女性管理職比率は2025年度までに10%以上、2030年度までに14%以上となる見込みです。
なお、2023年3月末時点で、中途採用社員の比率は31.8%、中途採用社員管理職の比率は33.3%となっており、外国人社員の比率は1.4%、外国人管理職の比率は0.8%となっております。引き続き、国籍に関わらず、法律・会計・金融・ITなどの業務経験や専門的なスキルを持つ人材を中心に中途採用を実施していくとともに、外国人については業務経験のない新卒採用も行い、優秀な人材を登用していくことで、中途採用管理職および外国人管理職数の維持・向上に努めてまいります。
(参考)当社グループにおける外国人社員・中途採用者の登用状況(2023年3月末時点)
項目 | 全体 | 中途社員 | 外国人社員 |
従業員数 (比率) | 1,224名 (100%) | 389名 (31.8%) | 17名 (1.4%) |
管理職数 (比率) | 501名 (100%) | 167名 (33.3%) | 4名 (0.8%) |
そのほか、シニア社員のより一層の活躍を促進するため、2023年4月より、定年年齢をそれまでの60歳から65歳に変更する定年延長を実施しています。従来においても、60歳で定年退職したのち、再雇用制度に基づいて65歳まで働くことは可能でしたが、定年延長を実施して、60歳以降に期待する役割や処遇について見直しを行ったことにより、社員が60歳で一度退職するという意識を持つことなく、65歳まで高い使命感や責任感を保ったまま、安心して業務に取り組むことができる環境を整備しました。シニア社員の持つ豊富な業務経験や知見を活かして、安定的な市場運営という伝統的な取引所としての機能の更なる安定・高度化を推進していきたいと考えています。
(b)ウェルビーイング
全ての社員が能力を最大限に発揮するためには、心身が健康であるとともに、熱意や活力をもって働くことを通じて、社会的にも満たされた状態(well-being)になることが重要です。当社グループでは、社員のエンゲージメントの把握及び人事施策の改善へとつなげるためにエンゲージメントサーベイを実施しており、2022年度の結果は、仕事に対する活力・熱意・没頭に関するワークエンゲージメント・スコアが75%となり、会社に対する愛着・帰属意識に関する組織エンゲージメント・スコアが78%(※いずれも肯定的な回答の割合)という高い水準となりました。今後は組織エンゲージメント・スコアの維持及び、相対的に向上の余地が大きいワークエンゲージメント・スコアの向上に努めてまいります。
また、健康経営の推進に向けた取組については、これまで傷病者への適切なケア・早期復職に向けた支援など、産業医と連携した取組を中心に行い、2022年度の傷病者数は1名、ストレスチェックにおける総合健康リスクは81という結果につながっています。2022年度には保健師を採用し、心と身体の健康に関する相談や面談、教育、情報提供等をより行いやすい体制を整備しており、今後は健康経営の推進体制の更なる強化及び傷病等の未然防止に向けた活動にも注力し、当社グループで働く全ての社員が最大限に能力を発揮できる環境を整備してまいります。
分類 | 項目 | 2022年度 |
エンゲージメント サーベイ | ワークエンゲージメント・スコア | 75% |
組織エンゲージメント・スコア | 78% | |
健康経営の推進 | 傷病者数(注1) | 1名 |
ストレスチェック・スコア(総合健康リスク(注2)) | 81 |
(注)1.疾病により長期欠勤(1ヶ月以上の欠勤)又は休職を経験した者の数
2.平均値が100で値が低いほど望ましく、80以下が良好とされる。
加えて、当社グループでは、社員の長期的な資産形成を支援する観点から、福利厚生制度として従業員持株会制度及び職場つみたてNISA制度を導入し、また、企業型確定拠出年金のマッチング拠出制度を導入しています。従業員持株会は社員の60%以上が加入し、職場つみたてNISAは30%以上の社員が利用をしています。また、マッチング拠出は60%以上の社員が行っています。当社グループでは、国民の金融リテラシー向上・投資家層の拡大に向けて、公正・中立な立場から、学校・職場への講師派遣など金融経済教育活動に力を入れており、その担い手となる社員自身が正しい金融知識を身に付け、行動していく必要があるとの考えから、若手社員に対して金融知識や資産形成に関する研修を実施しています。今後は社員の金融リテラシーを一層高める教育をより充実させ、自律的な資産形成を促進してまいります。
⑤ 人的資本に関するデータ
項目 | 分類 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
社員数(人) *うち数は重複する場合がある。 | 全社員 | 1,208 | 1,197 | 1,193 | 1,224 |
うち男性 (比率) | 875 (72.4%) | 859 (71.8%) | 843 (70.7%) | 861 (70.3%) | |
うち女性 (比率) | 333 (27.6%) | 338 (28.2%) | 350 (29.3%) | 363 (29.7%) | |
うち外国人 (比率) | 16 (1.3%) | 19 (1.6%) | 18 (1.5%) | 17 (1.4%) | |
うち中途採用 (比率) | 331 (27.4%) | 336 (28.1%) | 393 (32.9%) | 389 (31.8%) | |
採用数(人) | 新卒採用 | 26 | 25 | 25 | 27 |
うち女性 | 12 | 11 | 11 | 12 | |
うち外国人 | 1 | 1 | 0 | 0 | |
中途採用 | 15 | 13 | 18 | 25 | |
うち女性 | 3 | 0 | 4 | 10 | |
うち外国人 | 2 | 0 | 0 | 0 | |
自己都合退職 者数(人) | 全退職者 (離職率) | 11 (0.9%) | 10 (0.8%) | 18 (1.5%) | 9 (0.7%) |
うち男性 | 7 | 8 | 14 | 7 | |
うち女性 | 4 | 2 | 4 | 2 | |
平均勤続年数(年) | 全社員 | 17.1 | 17.4 | 17.4 | 17.6 |
男性社員 | 16.4 | 16.9 | 16.9 | 17.3 | |
女性社員 | 18.4 | 18.7 | 18.6 | 18.3 | |
定期健康診断受診率 | 80.2% | 65.1% | 92.3% | 96.5% | |
運動習慣割合 | 76.4% | 75.7% | 78.6% | 80.0% | |
喫煙率 | 12.1% | 11.9% | 9.8% | 10.6% | |
ストレスチェック受検率 | 91.4% | 91.1% | 90.6% | 95.2% | |
傷病者数 | 6名 | 6名 | 3名 | 1名 | |
平均所定外残業時間 | 23時間52分 | 27時間35分 | 28時間15分 | 27時間46分 | |
平均有給休暇取得日数(比率) | 14.4日(72%) | 12.0日(60%) | 12.2日(61%) | 12.6日(63%) |
(参考)
当社グループの人事施策の様々な取組については、JPXウェブサイト及び統合報告書(JPXレポート)も併せてご参照ください。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/jpx-esg/employee/index.html
https://www.jpx.co.jp/corporate/investor-relations/ir-library/integrated-report/index.html
- 検索
- 業種別業績ランキング