企業兼大株主塩野義製薬東証プライム:4507】「医薬品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社、以下「SHIONOGI」という)が判断したものであります。

(1) 経営方針・経営戦略等

■経営の基本方針

SHIONOGIは、「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬(ヘルスケアソリューション)を提供する」ことを基本方針(SHIONOGI Group Heritage)としております。そのためには、益々よい薬を創り、かつ製造するとともに、益々多くの人々に知らせ使っていただかなければなりません。このことを成し遂げるために、SHIONOGIのあらゆる人々が日々技術を向上させることが、すべてのステークホルダー(顧客、株主・投資家、社会、従業員など)の利益の拡大につながるものと考えております。

■2030年に成し遂げたいビジョン

SHIONOGIは、「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」ことをSHIONOGI Group Visionとして掲げ、事業の変革を進めております。社会保障費の増加に対する懸念の高まりや医療ニーズの高度化、多様化が進む中で懸命にこれに対処し、人々の健康と持続可能な社会の実現に貢献し続けることがSHIONOGIの社会的使命であると認識しております。一方で医療用医薬品ビジネスには、主力製品の特許切れという事業のサステイナビリティに関わる課題が常に存在します。SHIONOGIは従来の医療用医薬品を中心に提供する「創薬型製薬企業」から、ヘルスケアサービスを提供する「HaaS(Healthcare as a Service)企業」へと自らを変革し、社会に対して新たな価値を提供し続けていくことで、患者さまや社会の抱える困り事をより包括的に解決したいと考えております。そのためには、創造力と専門性をベースとした創薬型製薬企業としての強みをさらに進化させ、ヘルスケア領域の新たなプラットフォーム構築に向けて、異なる強みを持つ他社・他産業から選ばれる「協創の核」とならねばなりません。

SHIONOGIは、変化を恐れず、多様性を受容し、既成概念を超えて自らを「Transform」することで、SHIONOGI Group Visionの実現に取り組んでまいります。


■経営環境及び経営戦略

 グローバルにおけるビジネス環境は複雑さを増し、将来の予測が困難な状態にあります。世界人口の増加と高中所得国における少子高齢化の進行、地球規模で起こる気候変動等の環境変化とそれらに伴う疾病構造やヘルスケアに求められるニーズの変化、人工知能の飛躍的な進化、人々の価値観の多様化、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックを契機とした創薬の研究開発の進め方やグローバル展開の考え方の変革等、ヘルスケア産業を取り巻く外部環境は急速に変化しております。また、医療保険財政のひっ迫に伴い、先進諸国で薬剤費抑制の圧力が強まる中、我が国においては医療用医薬品について2021年度より毎年薬価改定が実施されるなど、経営を取り巻く環境は厳しさを増しております。さらには、大国同士による技術・経済・安全保障などの分野における主導権争いや、ロシアによるウクライナへの侵略長期化・中東対立の拡大など、諸外国におけるビジネス展開や医薬品の原材料の調達・供給が停滞するリスクなども日々顕在化してきております。

 このような中でSHIONOGIは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の開発に取り組み、これまでにないスピードで創薬から臨床研究、承認申請へと進み、緊急承認を取得するなど、一定の成果を示すことができました。さらにHIVフランチャイズについては、長時間作用型のカボテグラビルを軸とした製品群へとシフトさせていくViiV Healthcare Ltd.(以下「ヴィーブ社」)の取り組みが順調に推移していることで、抗HIV薬ドルテグラビルの特許切れによるパテントクリフは、当初想定より大きく縮小し、速やかな再成長が期待できるまでにいたりました。

 当社グループは、2030年Visionを実現するために、2020年に中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)を発表し、取り組みを進めてまいりましたが、前述した外部環境の変化や、STS2030を策定してから2023年までの3年間の取り組みによる成果や学びから、STS2030達成に向けた道筋をより明確にするため2023年6月にSTS2030をアップデートし、STS2030 Revisionとして再策定しました。

■STS2030 Revisionの概要

STS2030 Revisionでは、2023年度から2025年度の3カ年を新たにSTS Phase2と位置付け、変革による成長を加速することとしました。また、2026年度から2030年度までをSTS Phase3として新たな計画を策定、実行していく予定です。


STS Phase1では、自社創製品の拡大と医療用医薬品以外の製品・サービスの進展、さらにガバナンスの強化を通じて主要KPIを概ね達成することができました。STS Phase2では「感染症領域を中心としたグローバルでのトップラインの成長」と「積極投資による成長ドライバーの育成を実現すること」を基本方針とし、3つの柱である「HIVビジネスの更なる成長」、「COVID-19治療薬の成長」、「新製品・新規事業拡大」を通じて、成長を加速させてまいります。

2030年Vision実現に向けた成長


   HIVビジネスの更なる伸長

 HIVビジネスは、ヴィーブ社による経口2剤合剤や長時間作用型製剤の販売が好調なことにより、売上及び市場シェアが順調に伸長しております。今後は長時間作用型の治療薬「Cabenuva」及び予防薬「Apretude」の市場浸透を推進するとともに、4ヵ月に1回の投与で治療または予防が完結する超長時間作用型製剤などの開発により、HIVビジネスの継続的な成長を実現してまいります。

   COVID-19治療薬の成長

 COVID-19は、今なお世界中の多くの人々の健康や生活に影響を与え続けております。今後も新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら免疫を回避し、流行が継続することが予想されることから、治療薬へのニーズは引き続き存在すると考えられます。SHIONOGIは感染症のリーディングカンパニーとして、「エンシトレルビル」の新たなエビデンスを集積しグローバルでの提供を目指すとともに、より多くの方にご使用いただけるよう、さらに優れた新規治療薬の創出にも注力することでCOVID-19に対する取り組みを継続し、持続的な成長を実現してまいります。

   新製品・新規事業の拡大

 新製品については、現在の開発パイプラインの中から2030年度までに10製品以上の上市を目指しており、既存アセットの成長や積極投資による製品導入などを合わせて、グローバルでの成長を実現します。ワクチン事業については、着実に実績を積み上げ、競争力を獲得しながら2030年には売上収益1,000億円への成長を目指してまいります。

■SHIONOGIの重要課題(マテリアリティ)とSTS2030 Revisionとの関係

SHIONOGIは事業活動を通じて社会課題や医療ニーズに応え、社会に必要とされる企業として成長し、その成果をステークホルダーと共有することを目指しております。その実現のため、SHIONOGIを取り巻く環境を捉え、環境変化に対する機会と脅威の評価及びSHIONOGIの現状や課題などの分析を通じて重要課題(マテリアリティ)を特定しております。これらマテリアリティのうち、2030年までのSHIONOGIの成長や社会からの要請を考慮し、特に欠かせない要素をSTS2030 Revisionの戦略に組み入れております。

■マテリアリティ特定のプロセス  

STEP1:機会と脅威の評価

・ 社内外の環境変化に対する認識をもとに機会と脅威を整理

・ 整理した機会と脅威を社会、事業、社内の3つの観点から評価

STEP2:抽出された事項の優先順位づけ

・ 機会と脅威の意味合いから、新たな価値の創出、持続可能な社会への貢献、経営基盤の3要素に分類

・ 経営企画部、サステイナビリティ推進部が中心となり3つの要素ごとに影響度と発生・実現可能性の2軸で評価

STEP3:ステークホルダーへのヒアリング

・ 作成したマテリアリティマップについて、投資家や有識者などの社外ステークホルダーおよび社内関連部署にヒアリングを行い、妥当性を確認

STEP4:マテリアリティの特定とモニタリング

・ 経営会議、取締役会においてマテリアリティの妥当性を検討の上、マテリアリティの特定ならびにマテリアリティに基づき実施するサステイナビリティ活動の年度計画は経営会議での審議を経て承認

・ 環境変化及び社内での進捗状況に基づき、定期的に経営会議にてマテリアリティ見直し要否を検討、見直しが必要な場合は取締役会に上程

・ 取締役会は定期的に活動の報告を受け、活動の推進に向けた助言及び提案に基づく審議を実施


(2) STS2030 Revision で優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 マテリアリティの中で特に重視している課題は「感染症の脅威からの解放」であり、その実現こそが感染症のリーディングカンパニーとしてのSHIONOGIの使命であると考え、STS2030 Revisionでは感染症領域における種々のヘルスケア課題の解決と持続可能なビジネスモデル構築を目指しております。また、「健やかで豊かな人生への貢献」についても特に重視するマテリアリティの1つに据え、従来注力領域に掲げていた「精神・神経疾患」と「疼痛」にこだわらず「認知症」や「肥満症」といったアンメットニーズの高い領域にニーズ/疾患単位でフォーカスし、誰もが自分らしく生き生きとした生活を送ることができる社会の実現に貢献いたします。

■社会課題の解決を通じた価値創造

①感染症の脅威からの解放

SHIONOGIは、60年以上にわたって感染症の研究・開発を続けており、これまで多くの感染症治療薬を社会に提供してまいりました。長い活動で培われた感染症領域への深い理解、化合物や病原体のライブラリなどの強みをベースに、今後もアンメットニーズの充足に貢献するソリューションを提供することが出来ると考えております。

 世界を新型コロナウイルス感染症パンデミックから一日でも早く解放することを最優先に、COVID-19治療薬の開発に加え、今後出現する可能性のある変異株、さらにはコロナウイルスによる次のパンデミックに対しても有効なユニバーサルワクチンの創製にも取り組んでおります。さらに、島津製作所との合弁会社である株式会社AdvanSentinelによる下水疫学調査サービスの提供、診療体制支援を目的とした株式会社アルムとの業務提携、COVID-19診断薬の開発や供給など、感染症のトータルケア(治療のみではなく未病、予防、診断、予後なども含めた疾患全体のケア)の実現に向けた製品・サービスの整備を行いました。引き続き、エンシトレルビルのエビデンス構築、小児や予防などの適応拡大により、満たされていないニーズの充足に貢献するとともに、感染症のトータルケアをグローバルに展開することで、トップラインの成長、持続可能なビジネスモデルの構築の実現を目指してまいります。

 また、世界三大感染症についても、HIVのみならず、結核やマラリアなどの治療に長期間を要する感染症にコミットすることで、感染症のリーディングカンパニーとしての使命を果たしてまいります。

 さらに、SHIONOGI単独では対応が難しい感染症の課題に対しても、社会とともに解決するための仕組みの構築に取り組んでまいります。薬剤耐性(AMR)はサイレント・パンデミックと称され、喫緊かつグローバルな脅威として徐々に認知が高まっておりますが、将来的な脅威の拡大が危惧されているにもかかわらず、創薬の難易度や投資が回収できないといったビジネスリスクの為に世界的に新規治療薬の開発が停滞している現状があります。SHIONOGIは、AMRに対する有望な治療選択肢として、世界で初めてのシデロフォアセファロスポリン抗菌薬であるセフィデロコルを創出するとともに、Qpex Biopharma, Inc.(以下「Qpex社」)を完全子会社化することで広域阻害スペクトラムを有するβ-ラクタマーゼ阻害剤を獲得し、抗菌薬研究開発のケイパビリティと米国でのネットワーク強化に取り組んでおります。加えて、低中所得国を含めた世界中の国々の感染症治療薬へのアクセスの改善を目的に、SHIONOGIはMPP(Medicines Patent Pool)とパートナーシップを形成し、GARDP(Global Antibiotic Research and Development Partnership)、CHAI(Clinton Health Access Initiative)との間でも提携契約を締結しております。

②健やかで豊かな人生への貢献

SHIONOGIは、誰もが自分らしく生き生きとした生活を送ることができる社会の実現を目指し、STS2030 Revisionでは注力する領域として社会的影響度の高いQOL疾患を掲げ、すでに研究開発を進めていた精神・神経疾患、疼痛だけでなく、肥満症や睡眠障害などの特にアンメットニーズの高い領域のパイプラインの開発を進めております。

 また、HaaS企業としての更なる成長を実現するため、医療用医薬品を軸としたSolutionプラットフォームを提供し、より多くの患者さまのより多くのニーズに深く応えるための取り組みを進めております。これまでに、サスメドの不眠障害用アプリやAkiliのADHD治療用デジタルアプリSDT-001(米国では承認済み)の開発などにも取り組み、患者さまのニーズに寄り添うHaaS構想の具現化を進めております。また、一人ひとりの児童生徒に合致した適切な教育プランを教員に提案する教育支援サービスを提供するYui Connection株式会社の設立、ピクシーダストテクノロジーズとの連携による音刺激を活用した認知症機能改善に向けた取り組みの推進など、HaaS実現に向けた環境整備を進展することができました。今後も、治療薬の提供にとどまらず、革新的な治療選択肢やサービスの開発・提供を通じて患者さまとそのご家族、さらには周囲で支援する皆さまの困りごとを解決し、QOLや社会の生産性の向上に貢献してまいります。

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

STS2030 Revisionでは、達成すべき財務経営指標として3つの成長性指標と3つの株主還元指標を設定しております。成長性指標については、トップラインの成長を優先して進めていくことから売上収益、またその成長をグローバルに成し遂げていくことから海外売上高 CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)、そして成長に向けた積極的な投資を行っていくことと稼ぐ力を測るためにEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:利払い・税引き・償却前利益、コア営業利益に減価償却費を加えた利益)の3つを設定しております。また、株主還元指標として、事業成長と財務施策の観点からEPS、DOE、ROEの3つを継続して設定しております。

 エンシトレルビルなどの感染症薬を中心にグローバルでのトップラインの成長を実現することで、各年度の売上収益及び海外売上高 CAGR目標を達成するとともに、さらなる収益ドライバーを確立するためのM&Aや導入、アライアンスなどの事業開発機会の探索を継続し、価値に見合った投資を強固な財務基盤を活かして積極的に実行していくことで、経営指標の達成を目指してまいります。

業績評価指標(KPI)

2025年度
 目標

2030年度
目標

成長性

売上収益

5,500億円

8,000億円

海外売上高 CAGR

(ロイヤリティー収入を除く)

50%

(2022年度を起点とする)

15%

(2025年度を起点とする)

EBITDA

2,000億円

株主還元

EPS

600円以上

DOE

4%

ROE

14%以上

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