住友電気工業 【東証プライム:5802】「非鉄金属」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、連綿と引き継がれる「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」のもと、公正な事業活動を通して社会に貢献していくことを不変の基本方針としています。
この基本方針を堅持し、「公益を重視し、ステークホルダーの皆様との共栄を図る」という「五方よし」*(マルチステークホルダーキャピタリズム)の考え方に基づいて、ステークホルダーとの適切な協働を通じ、適正な
コーポレートガバナンスに基づく経営の透明性・公正性を確保し、その充実に取り組むことにより、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上とともに、これらのゴーイングコンサーンとしての成果のステークホルダーの皆様への着実な還元を図ることとしています。
* 「五方よし」:当社経営における「分配」についての基本的な考え方を表現したもの(Goho Yoshi)。
[住友事業精神]
住友の事業は、今から約400年前、銅と銀を吹き分ける「南蛮吹き」と呼ばれる技術による銅精錬事業に遡り、その後別子銅山における鉱山業を中心に発展を遂げてきました。こうした事業の隆盛を支えてきた精神的基盤が「住友事業精神」であり、住友家初代・住友政友が後生に遺した商いの心得『文殊院旨意書』を礎とし、住友の先人により何代にもわたって深化・発展を遂げてきたものです。その要諦は、1891年に改訂された住友家法の中で「営業の要旨」として端的に示されています。
営業の要旨 ※ここでは、住友合資会社社則(1928年制定)より抜粋しました。
第一条 我が住友の営業は、信用を重んじ確実を旨とし、以てその鞏固隆盛を期すべし
第二条 我が住友の営業は、時勢の変遷、理財の得失を計り、弛張興廃することあるべしと雖も、
苟も浮利に趨り、軽進すべからず
この他にも、『技術の重視』、『人材の尊重』、『企画の遠大性』、『自利利他、公私一如』といった精神が今に至るまで脈々と受け継がれています。
[住友電工グループ経営理念] ※創業100周年を機に明文化(1997年6月)
住友電工グループは、
・顧客の要望に応え、最も優れた製品・サービスを提供します。
・技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます。
・社会的責任を自覚し、よりよい社会、環境づくりに貢献します。
・高い企業倫理を保持し、常に信頼される会社を目指します。
・自己実現を可能にする、生き生きとした企業風土を育みます。
(2) 経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
<住友電工グループ2030ビジョン>
当社グループは、様々な社会変革が起こりつつある中で当社グループの目指す姿を示すため、2030年を節目とする長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」を策定し、2022年5月に公表いたしました。ステークホルダーの皆様のご理解のもと、当社グループが一体となり企業価値向上に取り組み、「Glorious Excellent Company*」の企業像実現を目指してまいります。
* Glorious Excellent Company:”Glorious”は「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」という精神的基盤を具現化したあるべき姿、”Excellent”は具体的・定量的な事業目標達成の意を込めています。
住友電工グループ「2030ビジョン」 グリーンな地球と安心・快適な暮らし - その実現へ技術で挑戦し続けます - Connect with Innovation |
1.経営方針
「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」を堅持し、「事業を通じて公益に資する」という経営哲学のもと、常に公益を重視し、ステークホルダーの皆様との共栄を図っていくことを基本思想としています。そして、この基本思想のもと、これからも「トップテクノロジー」を追求し、グループの総合力とイノベーションにより、世界のインフラ・産業の発展を支えていきたいと考え、当社グループの存在価値(パーパス)を次のように定義しました。
住友電工グループの存在価値(パーパス) トップテクノロジーを追求し、つなぐ・ささえる技術をイノベーションで進化させ、 グループの総合力により、より良い社会の実現に貢献していく |
今後も様々なリスクに的確に対応しながら、世界で活躍する当社グループ28万人(2022年3月末現在)の従業員による新たな価値の創造を通じ、グローバル市場の多様なニーズに応え、永続的な企業価値向上に取り組んでいきたいと考えています。
2.2030年の社会像と事業領域
当社グループは「安心」「快適」な社会への貢献に加え、「グリーン」な環境社会の実現に、グループの総力を挙げて取り組みます。そして、この目指す社会像の実現に向けて、これからも幅広く「インフラや産業を支える製品・サービス」を提供します。
3.事業の方向性
「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」を3つの注力分野と位置づけ、取り組んでいきます。
また、これらの注力3分野を支える高機能製品の提供や、グリーン化に向けた様々な取組みを展開します。
4.経営基盤と目標
ビジョンの実現に向けて、「的確・迅速・柔軟」に変化に対応できる強い組織づくりを進めるため、3つのグループ共有資本(人的資本・知的資本・財務資本)の充実を図るとともに、3つの推進力(研究開発・サプライチェーン・モノづくり)の強化に取り組み、中長期的な企業価値向上を目指します。
<中期経営計画2025>
上記の「2030ビジョン」を踏まえ、2023年度から2025年度の3カ年の実行計画として「中期経営計画2025」を策定し、2023年5月に公表しました。
「中期経営計画2025」の具体的な内容は、以下のとおりです。
1.基本方針
「中期経営計画2025」は、「つなぐ・ささえる技術でグリーン社会の未来を拓く」をスローガンに、「脱炭素社会の進展」や「情報化社会の進化」に伴うグローバルな事業機会を確実に捉え、グループの総合力で成長戦略を推進するとともに経営基盤の強化に取り組み、その成長の成果を適切にマルチステークホルダーの皆様へ分配していくことを基本方針としています。
2.マルチステークホルダーキャピタリズム(「五方よし」)
当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上には、マルチステークホルダーの皆様との協働が不可欠であり、成長の成果を着実にマルチステークホルダーの皆様に還元していくこととしています。このことを「マルチステークホルダーキャピタリズム(「五方よし」)」の実践として、具体的には、以下のそれぞれの指標・目標の実現に向けて取り組んでまいります。
3.成長戦略
成長を牽引する「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」の注力3分野において、「脱炭素社会」「情報化社会」で広がる事業機会を捉えたグループ横断的な9つのテーマを「成長テーマ」として位置づけ、それらへの取組みを通して技術で新たな価値を創造し、「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現へ貢献してまいります。
また、5つの事業セグメントにおける売上高・営業利益の目標及び成長戦略については以下の通りです。
(単位:億円)
| 売上高 | 営業利益 | ||
| 2022年度実績 | 2025年度目標 | 2022年度実績 | 2025年度目標 |
環境エネルギー | 9,282 | 10,200 | 379 | 500 |
情報通信 | 2,503 | 2,800 | 219 | 250 |
自動車 | 21,868 | 25,000 | 557 | 1,100 |
エレクトロニクス | 3,660 | 3,600 | 383 | 300 |
産業素材他 | 3,633 | 3,900 | 240 | 350 |
全社 計 | 40,056 | 44,000 | 1,774 | 2,500 |
・環境エネルギー
2030への方針 | グリーン社会の未来に向けて、脱炭素に資する製品・サービスを提供することで、 次世代のエネルギーインフラをグローバルにささえます |
2025成長戦略 事業環境 | 世界各国で再生可能エネルギーの大量導入に向けた大型投資が本格化し、遠隔地を 結ぶ長距離送電や電力需給のバランス調整が求められる中、高電圧技術を進化させ、 電力系統の更なる強化・効率化に貢献します |
2025成長戦略 取組方針 | ①大型連系線向け超高圧直流ケーブル ・国内外での製造能力・施工力の大幅な増強 ・環境に優しい高性能絶縁材料の開発 ・プロジェクトリスク管理力の向上 ・戦略的パートナーとの連携強化
②再生可能エネルギー向け製品・サービス ・グループ会社(日新電機、住友電設)との連携強化によるソリューションの提案 ・洋上風力用アレイケーブル、エクスポートケーブルの大容量化と拡販 ・レドックスフロー電池の大型案件獲得・地産地消推進、家庭用蓄電池のEV連携 機能を搭載した新製品投入
③電動車用駆動モータ平角巻線 ・電動車の高電圧化に対応する次世代品・差別化製品の上市 ・電動車の普及拡大に対応した製造能力の増強、生産性の改善 ・グローバルな供給体制の構築 |
・情報通信
2030への方針 | AIや仮想空間の活用などに必要な大容量・低遅延通信を低消費電力にて実現する オール光ネットワークやBeyond5Gの発展に、オリジナリティのある多彩な製品を 提供していきます |
2025成長戦略 事業環境 | データドリブン社会の進展により通信データ量は年率約30%で増加、通信ネット ワークの大容量・低遅延化がますます求められる中、多彩な製品・サービスで ソリューションを提案し、低消費電力型通信ネットワークの実現に貢献します |
2025成長戦略 取組方針 | ①データセンタ内・間の光通信関連製品 ・圧送用高密度光ケーブルの展開 ・極低損失光コネクタにより、低消費電力化 ・光通信用InP(インジウムリン)デバイスの高速化・省エネ性能向上とInP基板 品質向上
②大容量光通信向け高機能・高付加価値製品 ・マルチコア光ファイバを大陸間海底光通信で実用化 ・光ファイバ融着接続機にAI/DX機能を搭載し、施工業務を高度化 ・光ファイバの高性能化(極低損失・耐曲げ性能向上)
③大容量携帯無線通信(5G/Beyond5G)向けデバイス・機器 ・携帯無線基地局用GaN(窒化ガリウム)デバイスの広帯域化と省エネ性能向上、 生産能力の増強 ・工場/交通向けなどの産業用5G端末、5Gアクセス光伝送装置供給開始 |
・自動車
2030への方針 | ワイヤーハーネスの更なる進化と、電動化・高速通信化への対応で、モビリティの 「つなげる」パートナーとして「つながる」ビジネスを拡大します |
2025成長戦略 事業環境 | 2025年には、電動車(BEV、Full-HEV、PHEV、FCV)が世界の自動車生産台数の 約30%を占め、自動運転技術や安全支援機能がますます高度化する中、従来ハーネスの進化に加え、電動化・高速通信・インフラ連携の技術を進化させ、モビリティの発展に貢献します |
2025成長戦略 取組方針 | ①ワイヤーハーネスのグローバル供給体制 ・軽量化に寄与するアルミハーネスの更なる拡販 ・地産地消など、グローバル最適地生産体制の再構築 ・ワイヤーハーネスの新設計、新工法の実現 ・DXによるサプライチェーンの見える化
②拡大するCASE*市場をとらえた新製品 ・電動化の進展に高圧製品や電池関連部品の供給を拡大 ・通信機能の増加/高速化に対応した新製品開発加速 ・既存顧客とのパートナー関係強化・協業推進 ・欧米及び新興EVメーカーへの参入
③モビリティの新時代へ、グループ内連携 ・高分子材料を用いた次世代モビリティ向け新製品の開発強化、既存事業である 防振ゴムやホースの製造拠点再編や事業体質強化(住友理工) ・交通システムや電力システムとの連携による、コネクティッド事業とEVエネル ギーマネジメント事業の拡大 |
* CASE:自動車業界のトレンドを表す言葉で、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared
(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの。
・エレクトロニクス
2030への方針 | 情報化社会やCASEの進展に求められる新しいニーズをとらえ、高機能配線材を開発・提供するとともに、環境や医療に役立つ製品の拡販も進めます |
2025成長戦略 事業環境 | GX(グリーントランスフォーメーション)、DX、CASEに代表されるさまざまな社会・産業の変革が加速する中、当社独自技術の高機能素材・配線技術を幅広い分野に提供し、快適で環境に優しい社会の実現に貢献します |
2025成長戦略 取組方針 | ①次世代情報端末をささえる高機能FPC ・超微細回路形成技術と多層化による更なる差別化 ・高速伝送パフォーマンスに優れたフッ素樹脂・高周波対応FPCの開発を推進 ・電動化をはじめとするCASE対応FPCの事業規模拡大
②電動化など幅広い用途で使われる高機能電線 ・EV用バッテリー電極リード線の需要増に対応する増産体制構築 ・情報電線及び車載・航空機用高圧ケーブルの開発・能力増強 ・人工衛星やロボットまで幅広い用途に高機能電線を供給
③環境や医療に貢献する高機能部材 ・半導体製造装置用精密ろ過膜の生産能力増強 ・水処理膜モジュールの高性能化、高付加価値膜の開発 ・カテーテル用など医療分野における高機能材の開発・拡販 |
・産業素材他
2030への方針 | 材料加工技術を更に進化させ、グリーン社会に役立つ高精度・高強度な製品でインフラ・産業の発展を幅広くささえます |
2025成長戦略 事業環境 | さまざまな産業が転換期を迎え、モノづくりやモノの使われ方が変化していく中、 これまで培ってきた高度な素材加工技術を電動車やグリーン関連施設などの幅広い 分野に展開し、グリーン社会の実現に貢献します |
2025成長戦略 取組方針 | ①差別化と生産体制強化をすすめる切削工具 ・次世代CBNや新材種で電動車や風力発電、航空機部品の切削用途に需要を開拓 ・加工の改善点や工具寿命を予測するセンシング技術とデータ活用で差別化を図り 新たな需要を発掘 ・切削加工全般のグローバルなサービス体制強化
②技術進化と伸長市場への展開を図る超硬材料 ・電動車向け磁石用切断ダイヤ砥石や電子部品用高精度カッターを拡販 ・革新技術・生産能力増により車載・医療用途でヒートシンクを拡販 ・核融合市場向けに超硬耐熱機能を有するタングステンモノブロックを供給
③インフラ強化や環境へ貢献する高精度・高強度材 ・需要増が見込まれる北米・アジア地域で高耐久・高付加価値PC鋼線を拡販 ・インフラ構造物やのり面地盤を見守る光ファイバ組込み式PC鋼材の開発・拡販 ・焼結部品のEV用製品の拡充、非車載分野への展開 |
4.基盤強化
経営基盤(研究開発・モノづくり・サプライチェーン・財務資本・人的資本・知的資本)を更に強化し、変化に強い企業体質を構築してまいります。
特に、「研究開発」において、顧客ニーズを捉えた現行事業の進化や未来社会ニーズを捉えた新規テーマへの挑戦に取り組むとともに、世界最高水準を実現する「モノづくり力」や構造的変化と急激な変動に対応できる「強靭なサプライチェーン」の構築に向けた取組みを進めてまいります。
(3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の経済情勢は、政治的・地政学的リスクの一層の高まりや、物価上昇の継続に伴う金融引締めの長期化により、世界経済に減速感が生まれることが懸念され、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続くものと予想されます。
このような情勢のもと、当社グループは、ありたい将来像「Glorious Excellent Company」の実現を目指して、長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」で掲げている「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現に向けて、グループが一体となり企業価値向上に取り組み、その成果をステークホルダー、すなわち、「従業員」「お客様」「お取引先」「地域社会」「株主・投資家」に着実に分配していくというマルチステークホルダーキャピタリズム(「五方よし」)に基づく経営を実践してまいります。
具体的には、製造業の基本であるS(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)の更なるレベルアップに取り組むとともに、資産効率向上については、重要指標としているROIC*の改善に向けて、棚卸資産残高や営業債権・債務残高の適正化、設備投資案件の厳選実施、高付加価値品へのシフトなどの取り組みを一層強化してまいります。長期ビジョンの実現に向けたマイルストーンとして2023年度からスタートした「中期経営計画2025」の達成に向け、グループの総合力で成長戦略を推進するとともに経営基盤の強化に取り組み、各事業においては次の施策を進めてまいります。
* ROIC:Return on Invested Capital(投下資産利益率)の略。
環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルにおいては、国内の設備更新需要等の捕捉に加え、脱炭素化に貢献する国家・地域間連系線や再生可能エネルギー関連の受注に努めるとともに、生産能力増強、コスト低減、品質向上、新製品開発、プロジェクトマネジメント強化にも注力してまいります。電動車向けのモーター用平角巻線においては、コスト低減による収益力の向上と、電動車の高電圧化に対応する次世代品の開発、グローバルな供給体制の構築を進めてまいります。さらに、2023年5月に完全子会社化した日新電機㈱とのさらなるシナジー創出に取り組むとともに、住友電設㈱も含めたグループ総合力を活かして、一層の受注拡大に努めてまいります。
情報通信関連事業では、顧客の投資抑制や在庫調整による一時的な需要停滞が一部継続するものの、第5世代移動通信システム(5G)の世界的な展開、クラウドサービス*市場の着実な成長に加え、生成AI*の急速な普及によるデータセンター関連市場の一層の拡大など、当社の技術力をより発揮できる市場環境への変化が見えつつあります。これらの需要を確実に捕捉すべく、光ケーブルや光配線機器、光デバイスの新製品、海底ケーブル用の極低損失・大容量光ファイバ、世界で初めて量産を開始したマルチコアファイバ、5G基地局用の高効率な電子デバイス、新方式採用が進むアクセス系ネットワーク機器など、低消費電力等耐環境性能を含めた高機能製品の開発・拡販を継続・加速するとともに、徹底したコスト削減による収益性の改善に努めてまいります。
* クラウドサービス:従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するもの。
* 生成AI :質問や作業指示等に応え、画像や文章、音楽、映像、プログラム等の多様なコンテンツを生成するAI(人工知能:Artificial Intelligence)。
自動車関連事業では、モビリティの「つなげる」パートナーとして「つながる」ビジネスの拡大を目指し、一層のコスト低減と資産効率化の徹底、軽量化ニーズに対応したアルミハーネスのさらなる拡販、生産自動化やコスト低減に繋がる新設計・新工法の拡充など従来ハーネスの進化に取り組んでまいります。また、グループ内連携や顧客とのパートナー関係の強化・協業により、電動車向けの高電圧ハーネス、高速通信用のコネクタなど今後も拡大が見込まれるCASE市場をとらえた新製品創出・拡販にも努めてまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴム及びホースなどの分野において、既存事業の効率化を図りつつ、次世代モビリティ向けの新製品開発に重点を置き、事業の成長と収益力の向上に一層取り組んでまいります。
エレクトロニクス関連事業では、FPCにおいては、微細回路形成技術を活かした高機能品の拡販や、徹底したコスト低減、さらなる高機能化に取り組むとともに、CASE対応製品や医療用製品の拡販、高周波化に対応した新製品の開発を加速してまいります。照射架橋技術を活用した電動車の電池端子用リード線(タブリード)、電動パーキングブレーキ用電線、熱収縮チューブ、さらにはフッ素樹脂加工技術を活かした多孔質水処理膜製品においても、多様な客先ニーズを捕捉して事業の拡大を図ってまいります。また、2023年5月に完全子会社化した㈱テクノアソシエとのさらなるシナジー創出にも取り組んでまいります。
産業素材関連事業では、超硬工具においては、グローバルな営業力の強化により、主力の自動車分野に加えて、建設機械、農業機械、エレクトロニクス分野等での需要を確実に捕捉するとともに、電動車、航空機、半導体、再生可能エネルギー関連などの新規開拓も進め、市場シェアの拡大に努めてまいります。焼結部品は、電動車や非車載向けの新製品開発・拡販とコスト競争力の一段の強化を図ってまいります。PC鋼材やばね用鋼線は、グローバルな製造販売体制の強化と新製品開発による収益力の向上に取り組んでまいります。
研究開発では、多様な技術創出の「要」となる研究開発の活性化・スピードアップを目指し、社会課題からの
バックキャスティングやプロセスの高度化・効率化、オープンイノベーションや社外との連携強化に取り組んでまいります。具体的な取り組みとしては、現行事業の進化として、事業部門・営業部門との密な関係や顧客とのパートナー関係を活かし、注力事業分野を中心に、送電網強化と再生可能エネルギーの安定供給、通信ネットワークの大容量・低遅延化、モビリティにおける電動化などのテーマに取り組んでまいります。また新規テーマの挑戦として、「地球」「暮らし」「ヒト」の3つを新たな価値領域として定め、「地球」の持続可能性のため、省エネル
ギー、再生エネルギー、材料循環等の研究を推進するとともに、安心で安全な「暮らし」、「ヒト」の可能性の拡大を目指す研究を推進してまいります。
最後に、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。今後とも、住友事業精神の「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」*という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。また、住友事業精神と住友電工グループ経営理念の基本的な価値軸はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも相通ずるものであると考えており、サステナビリティを巡る課題である、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等の危機管理を通じて、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。
* 萬事入精:まず一人の人間として、何事にも誠心誠意を尽くすべきとの考え。
信用確実:何よりも信用を重んじること。
不趨浮利:常に公共の利益との一致を求め、一時的な目先の利益、不当な利益の追求を厳に戒めること。
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