住友電気工業 【東証プライム:5802】「非鉄金属」 へ投稿
企業概要
当社及び連結子会社は、「技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます」との経営理念の下、社会の変革・伸長分野に焦点を合わせ、オリジナリティがあり、かつ収益力のある新事業・新製品の開発に努めております。また、将来の社会ニーズを踏まえ、当社グループの次代の成長を担う研究テーマの発掘・育成にも積極的に取り組んでおります。
環境エネルギー関連事業、情報通信関連事業、自動車関連事業、エレクトロニクス関連事業、産業素材関連事業他の各事業分野及び共通基盤技術における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。
また、当連結会計年度における研究開発費の総額は141,992百万円であります。
(1) 環境エネルギー関連事業
超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池、電力ケーブルなどエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。
超電導の分野では、溶液塗布熱分解法による低コスト希土類系高温超電導線材の実用化に取り組んでおります。また、世界初の安定した超電導接続技術を開発し、永久電流で磁場を発生することが可能なコイルを実現いたしました。これらの技術により、高温超電導線材のNMR(核磁気共鳴装置)やMRI(磁気共鳴画像)への展開や小型核融合炉用マグネットへの応用が期待できます。
次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、レドックスフロー電池(蓄電池)について、大規模システムによる実証運転を実施しております。また、分散型電源を統合的に監視し最適な制御を行うためのエネルギーマネジメントシステム、送電線の増容量化と過負荷保護を実現する架空線ダイナミックレーティングシステムの開発にも注力しております。
HEV(ハイブリッド自動車)などの環境対応車に多用されるニッケル水素電池の集電体として上市しているニッケル製セルメットを各種燃料電池、水素製造電極向けに展開するため、高温耐久性を付与した耐熱セルメットや、耐強酸性を高めた耐食セルメットを開発しております。また、EV(電気自動車)やHEV等の環境対応車の分野では、固有の高分子材料の合成技術を駆使し、駆動モーター等に適用する高性能平角巻線の開発にも取り組んでおり、モーターの高性能化に貢献する薄肉皮膜で高度な電気絶縁性を発揮する次世代平角巻線の開発に注力しております。
電力ケーブルの技術開発では、長距離直流連系線、再生エネルギー関連の需要伸長に対応すべく、超高圧直流
ケーブル、洋上風力向けケーブルの開発や送電線路に用いられるシステム製品を開発しております。
住友電設㈱では、社会や顧客の多様化するニーズに応えるべく、脱炭素化社会実現に向けた技術、省エネルギー技術、IoTや5Gを活用した監視・エネルギー管理等のビルマネジメントシステム、工場向け統合セキュリティシステム、ローカル5Gシステム、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)による食品衛生管理をクラウドで一元管理するシステムなど、最新技術、情報化技術を活用し、新技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。
日新電機㈱では、電力システム改革の進展や環境配慮への要請の高まり、持続可能な社会に向けた動きに対応すべく、研究開発に取り組んでおります。
電力・環境システム分野では、コンパクト化及び環境負荷の低減を狙いとした製品開発と共に、多様な分散型電源が導入拡大される社会において電力供給を支えるための技術や製品、システムの開発、工場・水処理設備の進化に資する監視制御、蓄電池を含むエネルギー管理やIoT関連の技術や製品、システムの開発を進めております。
ビーム・プラズマ分野では、社会を支える材料・部品・デバイスの進化に資するべく、半導体製造用イオン注入装置や電子線照射装置、ファインコーティング装置の技術研究や製品開発を進めております。
また、送配電機器・エネルギーソリューション事業を強化すべく、日新電機㈱の研究開発部門を融合した新たな組織、日新住電エネルギーシステム開発センターを2024年4月1日に開設いたしました。
当事業に係る研究開発費は21,345百万円であります。
(2) 情報通信関連事業
光通信関連製品、デバイス関連製品、化合物半導体材料、ネットワーク・システム関連製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。
光通信関連製品では、光ファイバ・ケーブルの伝送容量向上や長距離化に向け、新タイプの細径光ファイバや高耐曲げ性・高耐側圧性の光ファイバの開発と製品化に取り組んでおります。また、伝送容量の飛躍的拡大に向けては、1本の光ファイバ中に複数のコアを有するマルチコア型光ファイバ及び関連光部品・接続技術の実用に向けた開発・実証を更に進めております。一方で、従来のテレコム光通信で培った技術の展開として、データセンターにおける情報機器内や情報機器間の高速大容量伝送に適した光配線製品を開発しております。特に、新型光コネクタや情報機器内の高密度光配線を実現する光部品などの製品開発と市場開拓を進めております。
デバイス関連分野では、光通信用デバイス及び無線通信用電子デバイス関連の新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。光通信用デバイス関連製品では、データセンター用機器等に搭載される支線系対応製品や、長距離幹線機器に対応したコヒーレント伝送用デバイスを開発しております。無線通信デバイス関連製品では、高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しておりますが、5G及び次世代通信用にさらなる効率改善、高周波/広帯域化に取り組んでおります。また、これらデバイス技術の蓄積を活かし、多様な分野への応用が期待できる近赤外、中赤外領域の製品開発も進めております。
化合物半導体材料では、高速通信用の光デバイスや無線通信用電子デバイスなどに用いられるInP(インジウムリン)及びGaAs(ガリウムヒ素)系エピタキシャルウエハの新製品開発を進めております。
ネットワーク・システム関連分野では、持続可能で強靭な社会を支える情報通信機器・システムの研究開発を推進しております。光・無線技術及びその融合技術を活用し、5G/Beyond 5G向けネットワークやオール光ネットワークを支える光伝送システム、無線伝送システム及びそのコアとなる部品の研究開発に、通信事業者とも連携しながら取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は21,656百万円であります。
(3) 自動車関連事業
モビリティ分野の主要製品である自動車関連製品においては、顧客目線の開発・提案が求められており、マーケティング機能を強化し、車の進化に対応した新技術をタイムリーに製品化することが重要となります。そこでマーケティングから製品開発までを一貫体制で実施することによる方針決定のスピードアップや重複機能の解消による効率化、及びループシナジーの更なる推進を目的に、2023年10月に当社のCAS-EV開発推進部が担当してきた自動車関連製品のマーケティングと先行開発に係る事業を㈱オートネットワーク技術研究所へ承継し、新たな研究開発体制を整備いたしました。新体制の㈱オートネットワーク技術研究所では、CASEやSDGsなどの社会の大きな流れに対応すべく顧客とのパートナー活動を深化させ、得意とする情報通信やエネルギー関連技術を活かしたワイヤーハーネス及びエレクトロニクス機器などの新製品の開発を行っております。
ワイヤーハーネスに関しては、次世代車載システムにパワー供給や情報伝送するためのネットワークアーキテクチャを顧客と共に構想し、システム設計を行うと共に、それに必要な要素技術の開発を進めております。例えば自動運転や安全運転支援などで必要になる高速通信用ハーネス・コネクタの開発を進めております。また本格普及が進んでいるEV・HEV向けの高圧ハーネス・コネクタ、バッテリー内配線モジュールなどの開発にも取り組んでおります。
エレクトロニクス機器に関しては、給電・分配・変換・蓄電に関わる車載電源機器や、車内の情報配線のハブ機能となる車載ゲートウェイなどの開発を進めております。さらに当社事業であるエネルギーや通信の社会基盤と車が繋がる変革に対応した新しいシステムやサービスの開発にも取り組んでおります。
一方、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術など基盤技術の開発を推進しております。環境試験装置や分析装置等の評価設備の充実を図るとともに、DX化を推し進めCAE(Computer-Aided Engineering)技術を用いたシミュレーション技術も充実させており、強度、発熱などを予測し製品開発を効率化しております。またAIを活用した材料の選定、性能予測、最適化などを行うことで、大幅な工数削減を実現しております。
また、交通インフラ関連では、車両・歩行者等のセンサの開発、コネクティッドカー管理やEVを含むエネマネ需給最適化に資するクラウド技術の開発を行っております。
住友理工㈱では、自動車分野でCASEをはじめとした技術革新に対応した製品や関連技術などについて、研究開発・技術確立を進めております。また、DX推進の一つとして独自の加硫シミュレーション技術の確立に取り組んでおります。
新商品開発センターでは、圧力の検知により、バイタルデータ(呼吸成分や心拍成分などの生体情報)を推定することが可能な独自開発の「スマートラバー(SR)センサ」を応用し、ドライバーモニタリングシステムを開発中であります。国立研究開発法人産業技術総合研究所との連携研究室を2020年10月に設立し、実証実験を継続しております。さらに、EVで注目される熱マネジメントへの対応製品として、車室内の断熱効果を高める薄膜高断熱材「ファインシュライト™ 」は、その断熱性能が認められ令和4年度愛知発明表彰「愛知発明賞」を受賞したほか、冷却系ホースや電池用の断熱材、バッテリー冷却板などの開発も進めており、省エネや環境負荷軽減に貢献できる製品でさらなる技術開発を進めます。
自動車分野以外でも、エレクトロニクス分野、インフラ・住環境分野、ヘルスケア分野などにおいて、材料技術・センサ技術等を活かした新製品・新サービスの研究開発を進めており、ヘルスケア分野では、SRセンサを応用した「モニライフシリーズ」が令和5年度中部地方発明表彰「文部科学大臣賞」と、令和5年度愛知発明表彰「発明奨励賞」を受賞いたしました。
当事業に係る研究開発費は84,970百万円であります。
(4) エレクトロニクス関連事業
当社固有の材料技術、マイクロ・ナノテクノロジーをベースに、FPC、電子ワイヤー製品、照射架橋製品、多孔質フッ素樹脂膜製品など広範な新材料や部品の開発を行っております。FPCでは、携帯機器や医療機器等向けの次世代微細回路製品、車載向けの高耐熱性電子回路製品、5Gやミリ波など高周波用途向け部材の開発に取り組んでおります。また、電子デバイス用の低線膨張率の高放熱素材、独自の多孔化技術を適用した半導体用途向けの微小孔径の多孔質フッ素樹脂膜の開発にも注力しております。
当事業に係る研究開発費は5,312百万円であります。
(5) 産業素材関連事業他
超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、鉄系焼結部品やセラミックスに関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具・研削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品、機能部品等の開発を進めております。
切削用工具・研削用工具開発においては、今後、市場が伸長していく航空機分野及び半導体分野を重点ターゲットとし、計算科学を活用した硬質材料の開発、コーティング技術開発を進めております。
ダイヤモンドでは、超精密加工や高品位加工用工具素材として使用することを目的として、独自の原料技術や超高圧技術で単結晶ダイヤモンド素材や新材料開発及び精密加工技術開発に注力しております。また、量子センサ用ダイヤモンド素材開発にも取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は8,710百万円であります。
今後の成長を担う新規分野への挑戦として、水素エネルギー社会を実現する技術開発を行っております。また次世代の電線や高強度材料として期待されるカーボンナノチューブの長尺化にも独自製法で取り組んでおります。
そのほか、脱炭素社会実現のキーデバイスとして期待されているSiCパワーデバイスでは、エピ基板及びデバイスの製品化を進めております。当社SiCエピ基板は高品質が好評で、生産能力増強を進めております。デバイスでは、当社独自構造のV溝型トランジスタを開発し、車載分野や産業機械分野への製品展開を進めております。
以上の各事業分野の研究開発及び生産、品質などを支える解析技術の分野では、電子顕微鏡による原子構造の観察や、ポリマーの分子構造解析など、最先端技術により、モノづくりの品質強化を行っております。これに加え、公益財団法人佐賀県産業振興機構・九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを保有し、放射光による世界トップ水準の原子スケール解析を常時利用することで、製品開発の加速や知的財産権の強化などを進めております。また、大規模計算や計算科学など高度な計算機シミュレーション技術の開発に加え、計算処理能力向上にも注力しており、生産プロセスの改善、新製品設計最適化により、製品の信頼性向上を推進しております。その他、中国・蘇州市に中国解析センターを設置し、当社グループのグローバル展開を支えております。
モノづくり力を更に強化するために、IoTやAIを精度よく、かつ効率よく活用する技術開発を進めるとともに、改善事例をパターン化し、当社グループの様々な工場に対し、迅速に横展開するシステムの開発を進めてまいります。
また、新材料の研究開発を加速するために、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)や、PI(プロセス・インフォマティクス)の研究開発を組織的に進めてまいります。
2020年度に伊丹製作所内に「CRystal Lab.」を開所し、部門横断的な研究開発の加速に取り組んでおります。大阪製作所内の研究本館「WinDLab」を研究・開発活動の中核とし、横浜製作所に情報通信分野の研究開発拠点を置き、米国カリフォルニア州のICS(Innovation Core SEI,Inc.)の他、欧州・中国等の海外の研究拠点を活用して、広い視野で事業の成長を目指します。
また、当社グループ全体として、これらの研究開発の成果を早期に収穫すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、先進情報通信インフラ構築、省エネ、省資源、環境保護を一層前進させる研究にも注力してまいります。
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