住友ベークライト 【東証プライム:4203】「化学」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、基本方針である「我が社は、信用を重んじ確実を旨とし、事業を通じて社会の進運及び民生の向上に貢献することを期する。」に基づき事業活動を行っています。しかし、昨今、環境側面において、化石燃料を使うプラスチックに対するネガティブなイメージが抱かれやすいことは否めませんが、安全や安心、快適性を追求しながら、プラスチックを通じてしか発現できない実用的機能をもって社会課題を解決するという役割はこれからも重要であり続けると考えます。
当社グループが取り組むべきサステナビリティは、プラスチックの多様な機能を追求し、その可能性を更に広げながら、既存製品の環境負荷を最小化し、SDGs貢献度を高めると共に、新製品・新サービスを社会実装することにより、新たな環境的価値、社会的価値を創造していくことです。当社グループが提供するプラスチックのポジティブな本質的価値を世の中/お客様に認知いただくことで適正な経済的価値を生み出す、その総合的な取り組みを通じて、企業価値の持続的向上を図っていきます。
サステナビリティ経営の加速をはかるべく、グループ全体の取り組みの牽引をミッションとしたサステナビリティ推進部を、また全従業員がイノベーションに挑戦する企業カルチャー変革の基盤づくりを担うDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)推進室を2023年4月に新設しました。すべての事業活動において、これからも基本方針に基づき、環境的価値、社会的価値を要件とした製品・サービスの研究、開発、製造、販売を行い、サステナブルな社会の実現に貢献できるよう、全社一丸となって取り組んでまいります。
当社グループの経営に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスクおよび機会に対処するため、「SDGs貢献」、「気候変動対応」、「人的資本・多様性」に重点的に取り組んでいます。
(1)ガバナンス
当社グループのサステナビリティ関連のリスクおよび機会を監視、および管理するためのガバナンスの過程、統制および手続は、次に示すとおりで、この考え方は取締役会において決議しました内部統制システム構築の基本方針にも織り込まれています。
(2)リスク管理
サステナビリティ関連のリスクおよび機会の識別、評価、ならびに管理は、当社グループのリスクマネジメントプロセスに準拠し、実施しています。詳細については「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (1)当社グループのリスクマネジメント体制」をご参照ください。
SDGs貢献
(3)戦略
SDGsは社会ニーズそのものであり、当社グループの基本方針にも通じるものであると考えています。当社グループでは、SDGsの目標3、7、8、9、12、13、14を重点的に取り組むべきSDGs領域「6+1」として定めるとともに、SDGsに寄与する製品を「SDGs貢献製品」と認定し、その売上収益比率を増加させる取り組みをSDGs推進委員会で行っています。
(4)指標及び目標
指標 | 目標 | 実績 |
SDGs貢献製品の売上収益比率 | 2023年度末 50% 2030年度末 70% | 2021年度末 48% 2022年度末 53%(見込み) |
自動車の電動化に欠かせないモーター磁石固定用材料、化石燃料を使わない植物由来のフェノール樹脂、フードロス削減にも寄与するスキンパック用フィルム、環境に配慮したバイオマス樹脂を用いた医薬品包装用シートなど、新商品・新技術の中からもSDGs貢献製品が次々と生み出されており、将来の当社グループを支える主力商品に成長していくと期待しています。
気候変動対応
(3)戦略
当社グループは2021年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、再生可能エネルギー由来の電力への切り替えやSDGs貢献製品比率アップに取り組むとともに、同年、全社横断のTCFDタスクチームを編成し、TCFD提言に基づく情報開示に向けた活動を推進しています。同タスクチームを中心に、2040年を想定した「気候関連シナリオ分析」を実施し、気候変動に伴う潜在的なリスクと機会を抽出しました。その中で、比較的財務影響が大きくなるであろうと想定されるリスクと機会を「シナリオ分析表」のとおり特定しました。
なお、2030年と2050年のGHG排出削減目標は、カーボンプライスの引き上げ、GHG排出規制の強化、化石燃料価格の変動等(これらは1.5/2℃または4℃シナリオにおいてリスクとして抽出)への対応策として取り組んでいます。それら取り組みの前倒しを図り、長期的な移行リスクを短・中期の事業機会へと転換し、売上拡大を図ります。
2022年度に引き続き、現中期経営計画の最終年度となる2023年度もサステナビリティ推進委員会が中心となって(本シナリオ分析結果からのバックキャストによる)短期的な施策の具体化を図り、社内関係部門へ展開、スピード感をもって実行・推進しています。
◆シナリオ分析表
<1.5℃/2℃シナリオ>
| ドライバー | 想定し得るシナリオ要素 (世の中の動き) | 当社影響 インパクト評価 | リスク 機会 |
政策および法規制 | カーボンプライスの引き上げ | ・カーボンプライスの上昇 <1.5℃シナリオにおけるカーボンプライス(先進国)> 2030年:140USD/t-CO2 2040年:205USD/t-CO2 2050年:250USD/t-CO2 (2022年 IEA World Energy Outlook) | ・製造にかかるエネルギーコストの増加による操業コストの増加 | リスク |
・輸送コストの増加 | リスク | |||
市場 | 低炭素技術の進展 | ・再生可能エネルギー由来の電力需要の高まりによる電力価格上昇 | ・操業コストの増加 | リスク |
・バイオマス由来原料の需要の高まりによる原料の価格上昇 | ・バイオマス原料の高騰 | リスク | ||
低炭素技術の進展に伴うガソリン需要の減少 | ・ナフサはこれまでの副産品でなく主産品としての地位を得る ・ガソリンやディーゼル油とともにナフサは安定的に供給されるものの、価格は上昇 | ・ナフサの価格上昇による仕入・調達コストの増加 | リスク | |
人やモノの移動のデジタル代替 | ・炭素税やGHG排出規制などの影響により人やモノが移動するための費用負担が大きくなる ・デジタルデバイスに搭載される半導体の需要増加 | ・半導体関連製品の販売拡大による売上増加 | 機会 | |
低炭素技術の進展 | ・顧客からの資源循環の要求 ・3R+Renewable(持続可能な資源)関連製品への切替加速 | ・3R+Renewable製品の早期上市による売上増加 | 機会 | |
低炭素技術製品の需要拡大 | ・低炭素社会へとシフト ・炭素税やGHG排出規制が強化 ・経済性を考慮したCO2輸送技術の開発やそのインフラ整備が進む | ・低炭素製品/サービスの販売拡大による売上増加 | 機会 | |
EV関連需要の拡大(電池用部材、自動車用軽量化素材) | ・自動車販売台数に占めるEV車の割合は着実に増加し、EV車の販売台数は増加 | ・EVを対象とした製品/サービスの販売拡大による売上増加 ・自動車用軽量化素材の売上増加 | 機会 |
<4℃シナリオ>
| ドライバー | 想定し得るシナリオ要素 (世の中の動き) | 当社影響 インパクト評価 | リスク 機会 |
市場 | 化石燃料価格の変動 | ・原油、天然ガスは価格が上昇 天然ガス 日本 2021年:10.2USD/MBtu* 日本は下落 他の地域は上昇 *MBtu:百万英熱量 | ・仕入・調達コストの増加による原料コストの増加 ・製造にかかるエネルギーコストの増加による操業コストの増加 | リスク |
物理リスク:急性 | サイクロンや洪水などの異常気象の重大性と頻度の上昇 | サイクロン、集中豪雨、洪水、干害などの激甚化、頻度上昇 ・主要原料サプライヤー:操業停止 ・自社製造拠点(国内外):操業停止 | ・操業の一時停止による売上減少 | リスク |
「レジリエントな都市づくり」が推進される →自然災害に強い建材、産業用資材の需要増 | ・建材向け各種シート製品、防水シート製品/サービスの売上増加 | 機会 | ||
・食肉用家畜の減少 → 長期保存用食品/加工品包装材の需要増 ・農作物の収穫量の減少 → 青果物包装材の需要増 | ・各種包装フィルム製品の売上増加 | 機会 | ||
感染症/気温上昇に伴う疾病・移動制限 | ・地域病院・自宅等での診断および遠隔診断の必要性増大 ・環境変化に敏感な幼児・高齢者に対する医療機会(診断・治療)の増大 →POCT(POCT:Point of Care Testing)/医療機器の需要増大 | ・ヘルスケア製品の販売拡大/売上増加 ・医薬品パッケージの需要増 | 機会 |
(4)指標及び目標
指標 | 目標 | 実績 |
CO2排出量削減 (Scope1+Scope2) | 2030年度 46%以上削減 (2013年度比) | 2022年度 40%削減見込み (2013年度比) |
化学産業界の一員として、SDGsの中でも気候変動への対応は特に重要であると考えており、2020年3月に策定した「環境ビジョン2050(ネットゼロ)」をもとに、省エネ活動、太陽光発電等の取り組みを進め、2022年1月からは国内全事業所へ再生可能エネルギー由来の電力を導入しています。
住友ベークライトグループCO2排出量
(Scope1+Scope2)(国内+海外)
(注)表および図のデータには、Vaupell Holdings, Inc.(2014年6月より連結子会社化)、SBカワスミ株式会社(2020年10月より連結子会社化)の連結子会社化前のCO2データも加えております。
人材育成および社内環境整備に関する方針
当社グループは、人的資本・多様性に関して、「DE&Iの推進」および「人材育成の充実化」に重点的に取り組んでいます。
(3)戦略
DE&Iの推進
当社は、経営として取り組む重要課題の一つとして「DE&I」を掲げ、2022年10月に策定した「DE&Iの実現に向けた基本方針」に基づき、多様な人材が個性や能力を発揮し、一人ひとりの状況に応じた公正な機会が提供され、相互の理解と尊重のもとでいきいきと活躍できる会社の実現に向けて取り組んでおります。
まずは、女性の活躍推進を第一歩として、女性社員が自身のライフイベントとキャリアを両立できるよう、女性社員が次の3点を実現できることを目標に掲げて各種施策に取り組んでおります。
・安定的、長期的に働き続けることができる
・高いパフォーマンスを発揮することができる
・高い職位を目指すことができる
2022年度は女性の活躍を後押しする風土作りのために、経営層を対象としたダイバーシティ推進教育と、女性を部下に持つライン長を対象としたダイバーシティ・マネジメント教育を実施いたしました。
また、2023年4月に本活動を推進するための専任部署として、DE&I推進室を設置いたしました。女性活躍をはじめとして、シニア層の活躍、介護者の支援、外国人材の採用、障がい者雇用の拡大、LGBTQへの理解等の更なる推進に取り組みます。
人材育成の充実化
<人材教育(SBスクール)>
当社では人材育成に関わる教育研修や仕組みの体系を“SBスクール”と銘打ち、当社グループ事業の持続的成長に必要な多くのことを学び、体験する場を提供しております。事業活動に関わる全部門・全階層に対して、必要な教育プログラムを企画し、体系的かつ計画的に実施することにより、事業に有為な人材の育成をおこない、当社グループ事業の持続的成長と企業価値の向上を目指しております。
“SBスクール”は、従業員一人ひとりの成長こそが、事業の持続的成長の源泉になると考え、在籍する全ての従業員を受講対象者としており、在学期間は従業員が当社に入社してから退職するまでの全ての期間です。
求める人材・育てたい人材 |
住友ベークライト流自立的人材像 |
■仕事に必要な新知識・新技能の習得に意欲的な、成長志向型人材 |
■今が最悪、絶えずもっとよい仕事を考える、変革志向型人材 |
■より高い仕事の成果のため、自身の力と周囲の力の和が発想できる、チーム型人材 |
■知識と技能に優れ、国内・外の仕事において通用し成果を生み出す、プロフェッショナル人材 |
<DX推進/データサイエンティストの育成>
当社は、データサイエンスを活用したイノベーションを推進し、持続的な成長を実現するために、DX推進やマテリアルズ・インフォマティクス(MI*)技術の社内実装にむけて2021年から高度なデジタルスキルを有する人材の社内育成に注力しています。これまでに累計200名超にリテラシー等に関する基礎教育を、45名に対してデータサイエンティストとしてのスキルを磨くための長期研修を実施してまいりました。彼らの活躍により、データ科学技術を取り入れた研究・開発業務の効率化や省コスト化、製品機能の向上など、多くの成果が生まれています。
今後データサイエンスの活用および全社的なDXをさらに推進するため、2023年度から新たに関連する教育講座を増設するとともに、褒賞制度も含めたデータサイエンティスト社内認定制度を新規導入します。この制度は、当社におけるデータサイエンティストの役割や立ち位置を明確化し、スキルを磨き実践的な成果を上げた社員を社内認定することで、継続的に高い成果を生み出す体制を構築するものです。
さらに認定者以外にも、各種教育を通じてプログラミングやデータ分析技術に精通し、課題解決が可能な「データ活用人材」の輩出を目指します。
*MIとは…データ科学と物質・材料に関するデータとを駆使して新規材料の発見や高機能化など材料科学の諸問題を解明するための科学技術的手法
(4)指標及び目標
DE&Iの推進
「戦略」において記載した多様な人材の確保と活躍に関する方針および社内環境整備に関する方針に係る指標について、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、必ずしも連結グループに属する全ての会社において行われているわけではないため、連結グループにおける記載は困難であります。このため、次の指標に関する目標および実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
<連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のデータ>
指標 | 目標 | 実績(当事業年度) |
女性管理職比率 | 2025年4月までに5% | 3.8% |
男性の育児休業取得率 | 2024年3月までに50% | 25.9% |
障がい者雇用率 | 2025年3月までに2.7% | 2.7% |
・女性管理職比率の向上
これまでも性差なく管理職への登用を行ってきましたが、積極的な女性採用と離職の防止などの施策に加え、今後推進するDE&I活動を通じた各種施策により、同比率の向上を目指していきます。
●管理社員における女性比率の推移
(注)1 執行役員を除く管理社員を対象としています。
2 管理社員の資格を有した出向者を含みます。
3 比率は各年度末の値です。
4 住友ベークライト単体の数値です。
・男性の育児休業取得率の向上
当社では育児目的休暇として「妻の出産休暇」を設けており、出産日を基準に3日前から2週間後までの間に断続的に5日(有給)の休暇を取得することを可能としています。また、2023年10月の法改正により新たに創設された「出生時育児休業」については、男性従業員の育児休業取得の妨げとならないよう、取得期間の初めの5日を有給(100%)としております。その結果、妻の出産休暇との合計で10労働日について有給での休暇取得が可能となっております。
これらの育児に関する制度を周知するとともに、男性従業員が育児に参加するために柔軟に休暇が取得できる職場環境を整備し男性育児休業取得率の更なる向上に取り組んでまいります。
・男女の賃金の差異の低減
男性従業員の支払い賃金を100とした場合の女性従業員の賃金割合は、全労働者69.5%、正規雇用労働者70.1%、パート・有期労働者84.7%となります。
当社の賃金(例月の基準内賃金、諸手当、賞与)において、性別により支給条件が異なる賃金項目はありませんが、正規雇用労働者については管理社員の平均勤続年数が男性と女性で差があること(男性は女性の1.4倍)、非正規労働者については再雇用嘱託社員の賃金水準が採用区分で異なっており現時点で定年を迎えている賃金水準の高い本社採用社員のほとんどが男性であることから賃金差異が生じております。これらの要因に対して、積極的な女性採用と離職の防止、管理社員への登用拡大等により、男女の賃金差異の低減に取り組んでまいります。
・障がい者雇用率の維持・向上
当社は法令に定めるとおり障がい者を雇用していくことを、企業の社会的な使命の一つと捉えております。障がいがありながら仕事をしていくために必要な配慮を行いつつ、ほかの従業員と同様に安全・安心な職場で、その能力を継続的に発揮・育成できる環境づくりに努めております。
また、障がいのある学生をインターンシップとして受け入れるなど、個人にあった仕事や働き方を見つける機会を提供するとともに、継続的な採用活動に取り組んでおります。
●最近5年間の障がい者雇用率推移
(注)各年度の障がい者雇用率は、各月1日時点の障がい者数の合計値を、同時点の常用雇用者数の合計値で除して算定しています。
人材育成の充実化
DX推進/データサイエンティストの育成に関わる指標および目標は下表のとおりです。
指標 | 目標 |
データサイエンティスト認定者の輩出 | 2023年度末 40名 2026年度末 90名 |
データ活用人材 | 2023年度末 95名 2026年度末 250名 |
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