住友ファーマ 【東証プライム:4506】「医薬品」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
1.サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
(1)ガバナンス
当社グループは、「人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する」という理念の実践により、持続可能な社会実現に貢献し持続的な企業価値向上につなげることを、サステナビリティ経営と定義しています。このサステナビリティ経営を推進するにあたっては、多様かつ変容する社会からの期待・要請に対して当社グループの持つ資本(強み)を活用し、当社グループならではの価値を創出することが不可欠であり、そのために取り組む重要課題を「マテリアルイシュー」として、2023年3月に取締役会で承認を受けました。
マテリアルイシュー特定のプロセスは以下の通りです。
STEP1 社会課題/ニーズおよび住友ファーマグループの資本(強み)のリストアップ
SDGs、グローバルリスクレポート、各種フレームワーク(GRIスタンダード、SASBスタンダード、ISO26000、国連グローバル・コンパクト10原則)、ESG調査の評価項目(DJSI、FTSE、MSCI)などを参考に、社会課題/ニーズのリストアップを行いました。
また、当社グループの資本(強み)については社内ヒアリングをベースに、機関投資家から提供された情報も加味した上でリストアップを行いました。
STEP2 イシューの評価
リストアップした社会課題/ニーズの中から、当社グループの資本(強み)に関連するものをイシューとして抽出しました。これらのイシューに対して、「社会からの期待」と「企業価値向上への影響度」の2軸を設定し、それぞれ3段階で評価することで、優先的に取り組むべきイシューをマテリアルイシューとして特定しました。
STEP3 マテリアルイシュー最終化
マテリアルイシューは、代表取締役社長の意思決定のための諮問機関である経営会議にて審議の上、取締役会による承認を受けました。
それぞれのマテリアルイシューの目標およびKPIについては、次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/assets/pdf/material_issues_kpi_ja.pdf
また、当社グループでは上記のマテリアルイシューへの取組状況を定期的に取締役会へ報告し、中長期的な企業価値の向上の観点から、積極的な議論を行なっています。
(2)リスク管理
当社グループとしての基本的な考え方を定めた「SMP Group Risk Management Policy」を制定し、当社が当社グループのリスクマネジメントを適切に推進する体制を構築しています。(※1)この推進体制では、リスクごとの特性に応じて、グループ横断的に取り組むリスク(グループ横断リスク)とグループ各社が自らの責任において取り組むリスク(業務活動リスク(※2))に分類しています。それぞれのリスクについて、当社がグループ各社から報告を受けることによって、グループ全体のリスクマネジメントを当社が把握し、必要に応じて、指導・助言等の対応を行っています。
当社では、事業活動に影響を及ぼすリスクに対応するため「リスクマネジメント規則」を制定し、代表取締役社長がリスクマネジメントを統括することを明確にするとともに、リスクごとにリスクマネジメントを推進する体制を整備しています。各推進体制の運用状況については、定期的に取締役会に報告しています。具体的な取組の一つとして、年度ごとに国内外のグループ会社を含めた全部門にリスクアセスメントを実施し、その結果を踏まえた対策の策定・実施・評価を行い、全社各部門が課題解決に向け計画的に取り組んでいます。
※1 次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/corporate_governance/risk_management.html
※2 地震、台風・豪雨、伝染病・感染症などの災害や、調達・生産・在庫管理、人材管理などグループ各社が自らの責任において取り組む業務活動上のリスク
2.重要なサステナビリティ項目
上記のとおり、当社グループでは「社会からの期待」と「企業価値向上への影響度」の観点から「革新的な医薬品と医療ソリューションの創出」をはじめとするマテリアルイシューを特定していますが、当社グループがこれらのマテリアルイシューに取り組み、社会の持続可能性への貢献と当社グループの持続的成長の実現を目指すにあたって重要なサステナビリティ項目となる「人的資本と多様性」、「環境への取組」についての考え方及び取組は以下のとおりです。
(1)人的資本と多様性
ア.戦略
当社は人材の多様性の確保を含む人材育成や社内環境整備の方針について、取締役(社外取締役を除く)と執行役員が参加する人材戦略会議にて議論を行っています。各方針は以下のとおりです。
(人材育成方針)
当社は、個人の成長と事業の成長は車の両輪であるとの考え方の下、経営戦略と連動した人材戦略により、個人と事業の成長を実現し、社会に対して継続的に価値を提供することを目指しています。
そのため当社では、「住友ファーマが求める社員像」(※3)を設定し、各種研修やジョブローテーションなどを通じて、社員の成長をサポートしています。各種研修に関しては、2016年度に人材育成体系(※4)を再構築し、専門性に加え、経営の知識を兼ね備えた人材も積極的に育成しています。
今後は、北米事業体制の再編を契機に、グループが緊密に連携、一体となって目標を達成するための当社グループ(日本、北米、アジアなど)全体における人材ポートフォリオを構築し、それにより効果的・効率的な採用・育成・配置を行っていきます。
※3 住友ファーマが求める社員像
※4 詳細は、次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/social/education.html
当社での主な取り組みについて
(ア)選抜型研修SMP Academyの実施
未来のリーダーや経営者を育成するため、選抜型教育研修プログラムSMP Academyを2016年7月に設立しました。若手から中堅、管理職の各層において、向上心があり潜在的能力の高い社員を毎年80人を目安に選抜し、2016~2021年度の6年間で482人が受講しました。約1年にわたる研修プログラムにおいては、外部講師に加えて経営陣自らも講師を務め、高い視点から事業全体を俯瞰し、新たな価値創造のための構想力を養成しています。現在では、部門長以上の約半数がSMP Academyの修了者です。今後は当社グループ全体における人材ポートフォリオを意識し、グローバルマネジメント要素を含めた内容への変更を検討・実施していきます。
(イ)グローバル人材の育成
当社では、海外子会社や海外アカデミア・研究機関に人材を派遣するなど、グローバル人材の育成に取り組んでいます。
また、各本部推薦による選抜型の英語力強化研修に加え、全社的な英語力の底上げという観点から、2020年度以降、全社員を対象としたe-learningプログラムを導入するとともに、TOEIC受験機会を年4回会社が提供しています。今後は、グローバル人材のプールをさらに増やすべく、SMP Academyとの連携や各種英語力強化プログラムのブラッシュアップおよび新規プログラムを検討・実施していきます。
(ウ)新たな価値創造とオペレーション改革をDXで実践する人材の育成
当社は、2021年8月から新たな価値創造とオペレーション改革をDXで実践する人材を育成するため、DX研修をスタートしました。全社員向け、管理職向けのe-learningをはじめ、さらにハイレベルなデータサイエンスの実践知識習得を目指すコースを設定しています。2024年度までにシチズン・データサイエンティスト(※5)100人の育成に加え、2027年度までにシチズン・デベロッパー(※6)150人を育成します。各種のデータを積極的に活用し、さまざまな課題を解決できるデジタル人材の早期育成を目指しています。
※5 データ利活用による価値創出の起点となる人材
※6 職場での業務効率化を自律推進できる人材
(エ)タレントマネジメントによる戦略的人員配置と採用
当社は、タレントマネジメントシステムを導入・運用し、人材(タレント)が、どのようなスキルや能力を持っているのかを一元的に把握・管理しています。今後は、将来の事業を見据え、求められる能力を特定し、タレントマネジメントシステムのデータを利用することで、計画的な人材育成と最適な人材配置を行い、経営目標を達成します。
また、2021年度からは蓄積した情報を基にピープルアナリティクスを実践し、人事領域における施策の意思決定を加速化し、社員の成長を促す因子やエンゲージメントに寄与する因子の探索を行っています。
今後は、解析したデータを活用することで社員の成長を加速し、組織成果を最大化する人事施策の実現を目指した取組を進めていきます。
(オ)研究プロジェクト制導入による人材育成
当社は、革新的新薬の創出を加速するために研究プロジェクト制を導入しています。これは研究テーマを発案した熱意ある研究者を研究プロジェクトリーダーとして任命し、研究プロジェクトリーダーがチームメンバーとともに研究の前期から後期まで一貫して研究プロジェクトを中心的に推進するというものです。研究プロジェクトリーダーには年齢や経験を問わず、予算執行や人事評価の権限を与え、裁量権を持って研究プロジェクトをマネジメントすることで成果創出、人材育成に繋げています。これまでに研究プロジェクト制のもとで創出された8剤の臨床移行を達成し、現在も15以上の研究プロジェクトが進行中です。本制度開始以来、約30人の研究プロジェクトリーダーを輩出しています。
(カ)セルフ・キャリアドックの推進
当社では、社員のキャリア自律を支援するため、2021年1月からセルフ・キャリアドックの運用を開始しました。セルフ・キャリアドックでは、キャリアに関する情報提供のほか、自己の経験の棚卸やキャリアを考えるためのキャリアデザイン研修を実施しています。また、社員がいつでも自身のキャリアについて相談できるよう、社内のキャリアコンサルタント(国家資格保有者)がキャリア面談に対応しており、2022年度は約200件のキャリア相談がありました。今後もセルフ・キャリアドックを通じて、キャリアを学び、考え、相談できる環境を社員に提供し続けます。
(社内環境整備方針)
当社では、社員一人ひとりが持てる能力を十分に発揮することが理念の実現に不可欠であると捉えています。そのため、性別や国籍などの属性にとらわれることなく、能力を発揮したいと望むすべての人に活躍の機会を提供していくことが重要と考え、多様な人材の活躍を推進し、多様な働き方を選択できる制度を整えています。
当社での主な取り組みについて
(ア)挑戦する風土づくり
当社では、社員の主体性に基づいた仕事への挑戦を促すため、自己申告制度と公募による異動を導入しています。自己申告制度では、自己申告書に基づき、上司は部下一人ひとりとキャリア面談を実施し、社員の個別の状況やキャリア志向を把握することにより、長期的な育成計画を立案し、能力の向上を図っています。また、公募による異動については、自らの希望が公募で叶うことにより仕事への高いモチベーションの維持や意欲ある社員の異動による組織の活性化などの成果があがっています。
また、2022年4月に人事評価制度を見直し、特に勇気を持って挑戦をした人を評価できる仕組みとして、高い目標を掲げて挑戦する姿勢や挑戦するプロセスを評価軸として、各部門が支給対象者と支給額を決定できる部門賞与を従来の賞与に加えて導入しました。
(イ)多様な人材の活躍の推進
(女性活躍推進)
当社では、性別に関わらず活躍できる環境の整備を推進しています。女性のキャリアアップのための研修等を実施するとともに、女性の就労継続や育児休業からの早期復職を目的に育児短時間制度や認可外保育所利用補助、MR地域選択制度などを導入し、仕事と育児の両立支援をサポートしています。また、「女性は育児、男性は仕事」といった無意識の固定観念・無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)を解消し、性別に関わらず仕事と育児を両立させ、互いに助け合う風土を醸成することを目的に男性の育児休業の取得や男性の育児への参画を促進しています。育児休業の10日間有給化や男性社員に向けた育児休業説明会を開催するなどの取組を実施し、2022年度の男性の育児休業取得率は130.1%となりました。引き続き男女ともに育児休業取得率100%の継続を目指します。
また、2027年度までに女性管理職比率を20%以上(2023年4月1日時点:女性管理職比率14.4%)にすることを目標とし、女性リーダーの育成にも注力してまいります。将来的には、社員構成に占める男女割合と管理職に占める男女割合が同程度になることを一つの目安として考えています。
(性の多様性に関連する理解促進)
当社は、性的指向、性自認に関する差別的言動を行わないことをコンプライアンス行動基準に明記し、LGBTQなどの性の多様性に関連する理解促進をすすめています。全社員を対象とした研修やセミナーを開催するとともに、多様なセクシュアリティに関する相談窓口の設置や2020年4月からは社宅や慶弔などの各種制度で同性パートナーを配偶者と同等に扱う同性パートナーシップ制度を導入しています。
(障がい者の活躍推進)
当社では、障がいの特性に配慮しつつ、個人の能力を活かす人員配置を行うことを基本としており、様々な部門で障がいのある社員が活躍しています。また、精神障がい者の自立を支援するために設立した特例子会社「ココワーク」では、葉物野菜の太陽光型水耕栽培に取り組んでいます。2023年6月1日時点の障がい者雇用率は2.58%となっています。
(多様な働き方を選択できる制度の整備)
当社は、社員一人ひとりの自律・自立を前提とした多様な働き方を選択できる制度を整備しています。
2022年度改定・導入制度 事例;
・在宅勤務制度:月12回まで在宅勤務ができるように制度を改定し、出社または在宅勤務どちらかに偏るのではなく、両方のメリットを取り入れながらさらなる生産性向上を目指したハイブリッド勤務を進めています。
・時差出勤制度:1カ月単位で許可していた時差出勤を1日単位に変更するとともに始業時刻の繰り上げ・繰り下げを最長2時間まで拡大することで柔軟な勤務が可能な制度へ改定しました。
・みなし所定制度:固定の所定就業時間の適用を受ける社員が効率的に業務を終えた場合、上司の許可を得た上で給与の減額なしに終業時刻を待たずに退社できる制度を導入しました。この制度により、これまで以上に社員の仕事と生活の充実に繋がることを期待しています。
(ウ)健康経営
当社が理念を達成するためには、一人ひとりが心身ともに健康で、いきいきと仕事に取り組める職場づくりが大切です。また、社員自らが、自身とその家族の健康維持・増進に努めることで、仕事と仕事以外の生活の充実を図ることが重要であると考えています。
当社は、2017年10月に健康宣言“Health Innovation”を策定し、2021年8月には健康宣言の取組状況を見える化した健康白書を発刊、2022年12月には健康白書をリニューアルして公表しています。当社は、すべての社員とその家族の健康で豊かな生活の実現に組織一丸となって取り組んでおり、2023年3月には7年連続となる「健康経営優良法人2023(大規模法人部門(ホワイト500))」の認定を受けています。
詳細は、次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/social/workplace_environment.html
イ.指標と目標
「ア.戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いています。当該指標に関する目標と実績は、次のとおりです。
人的資本と多様性に関する目標及びKPI
指標 | KPI目標値 | 実績値 | 関連取組 |
選抜型研修受講者数 | 毎年80名※ | 86人(2021年度) | 人材育成方針(ア) |
デジタル人材・データサイエンティスト数 | 2024年度までにシチズン・データサイエンティスト100名 | 54人 | 人材育成方針(ウ) |
2027年度までにシチズン・デベロッパー150名 | 0人 | ||
キャリア・コンサルティング相談件数 | 毎年200件(※) | 200件以上(2022年度) | 人材育成方針(カ) |
女性管理職比率 | 2027年度までに20%以上(※) | 14.4% | 社内環境整備方針(イ) |
※ 住友ファーマ単体としてのKPI目標
(2)環境への取組
当社は、2021年11月にTCFD提言への賛同を表明し(※1)、気候変動に関するリスクと機会について、TCFD提言に沿った取り組みを進め、2022年4月に情報開示を行いました。2022年度は、取り組みの深化を図り、気候変動への備えを確かなものとすべく、開示情報に基づくステークホルダーとの対話を推進しました。今後もステークホルダーとの対話を大切にし、様々な視点から気候変動によるリスクと機会を見つめなおし、「緩和」と「適応」の両面から考えることで、より一層のリスク低減を図るとともに、的確に機会を捉えていきます。当社のマテリアルイシューの一つである「環境への取組の推進」には、気候変動対応の推進も含みます。当社は気候変動が当社事業に与える財務インパクトを意識し、リスク・機会への対応を経営戦略に反映します。
※1 次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20211102.html
ア.ガバナンス
上記、「1.サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理」に記載した内容に加え、GHG(温室効果ガス)排出量削減のような当社グループまたは部門横断的な取組が必要な気候変動に関連する課題については、環境管理体制(※2)のもと、環境安全委員会において議論を行い、中長期環境目標(※3)に落とし込んでいます。また、中期経営計画に基づいて、GHG排出量削減に資する設備投資(カーボンニュートラル投資)等を計画的に実施しています。環境管理体制における気候変動への取組は、サステナビリティに関する取組の一つとして取締役会に報告され(年1回以上)、必要な場合、社内外専門家による説明機会を設けます。
※2 次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/environment/environment.html
※3 次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/environment/goals_performance.html
図1 気候変動リスク/機会の「ガバナンス」体制図
イ.戦略
当社は、気候変動によるリスクと機会について一次評価として影響度(※4)と可能性(※5)の2つの側面から評価し、その組み合わせによって、重要度のランクをⅠからⅤの5段階に分類しています(図2)。その際、「影響度」については対策の進捗度合いを考慮して評価しています。一次評価によってランクが「Ⅲ」以上となったリスクと機会については、2℃シナリオ(※6)および4℃シナリオ(※6)を参考に作成した当社の評価用シナリオ(2℃および4℃)(※7)を用いて、より詳細な二次評価を行い、二次評価によって特定された重要なリスクと機会については、できるだけ具体的な内容を想定して財務インパクトを推定し、対策を推進しています。なお、評価用シナリオは2023年度から1.5℃および4℃に更新します。
※4 影響度は、経済的影響、人身への影響、風評信用等、事業への影響のいずれかの観点で評価。
※5 可能性は、1年(短期)、3年(中期)、10年(長期)を時間軸として発生頻度で評価。
※6 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)AR6<RCP2.6およびRCP8.5>、
IEA (International Energy Agency) World Energy Outlook 2021<APSおよびSTEPS>、
環境省等による各種予測値および周辺情報
※7 2℃シナリオは、「サステナビリティが重視され、脱化石燃料化に向けた法規制や技術開発が進んだ世界」を、4℃シナリオは、「利便性や効率性が重視され、水害などの気候関連リスクがより高まった世界」を想定。
図2 リスクマップ
表 <気候変動によるリスクと機会>
シナリオ | リスクの分類 | リスクの内容 | 財務 インパクト | 対策 | ||
2℃/ 共通 | 物理的 リスク | 急性 | 台風や豪雨に起因する洪水、浸水、土砂災害等によって、原材料や購入品の供給および当社製品の販売や供給が途絶する。 | ―(※8) | 適応 | ・BCPの策定により、安定供給体制を強化する。 ・製品在庫の適正化により、供給途絶を回避する。 ・調達先の複数化により、安定調達に貢献する。 |
2℃ | 移行 リスク | 政策・ 法規制 | 炭素税の導入により、CO2排出量に応じた税負担が生じる。 | 約11億円/年 | 緩和 | 2050年度目標(※3)の達成に向けた諸施策の実施 ・長期目標の達成に向けて2030年度目標(※3)を強化する。 ・計画的なカーボンニュートラル設備投資を継続する。 ・省エネ対策を継続するとともに燃料転換を検討する。 |
市場 | 炭素税の導入により、調達や配送等の費用およびエネルギー関連費用が上昇する。 | 約59億円/年 | 緩和 | ・GHG削減に向けて、サプライヤーを含むビジネスパートナーに働きかける。 ・技術開発や業務効率化による省資源や省エネに継続的に取り組む。 |
シナリオ | 機会の分類 | 機会の内容 | 財務 | 対策 | ||
2℃/ 共通 | 機会 | 資源 | 水使用量の削減によってコスト削減できる。また、上水の供給過程や排水の処理過程で発生するGHGの削減や、取水源の保護による生態系維持等に間接的に寄与できる。 | 小(※11) | 緩和 | 2030年度目標(※3)の達成に向けた諸施策の実施 ・一部設備の蛇口への節水ノズル設置などを実施済み。今後も積極的に取り組みを進める。 |
※8 災害規模および影響を受ける品目により異なる。
※9 IEAによる2030年の先進国炭素価格仮定値約135USD/t-CO2(以下「炭素価格仮定値」)を採用し、2021年度のCO2排出量約62,000t(一部の連結子会社を含むScope1+2の排出量)(*1)に乗じて算出。なお、為替レートを130円/USDと仮定。
*1 集計対象は、次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/environment/goals_performance.html
(「環境目標およびパフォーマンス」)
※10 炭素価格仮定値を採用し、2021年度のScope3カテゴリ1「購入した製品・サービス」およびカテゴリ4「輸送、配送(上流)」のCO2排出量約334,000t(*2)に乗じて算出。
*2 集計対象は、次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/environment/global_warming.html
(「低炭素社会構築への貢献」)
※11 間接的な寄与についての試算が困難なため、定性的に記載。
ウ.リスクと機会の管理
(ア)気候変動リスクと機会を識別、評価するプロセスおよび総合的リスク管理への統合
当社は、気候変動によるリスクと機会を識別・評価するプロセスをリスクマネジメント推進体制による総合的リスク管理に統合しています。リスクマネジメント推進体制では、年度ごとに国内外のグループ会社を含めた全部門にリスクアセスメントを実施、その結果を集約して重要なリスクを特定しています。気候変動についても、このアセスメントでリスクと機会の抽出及び評価を行い、中長期的に当社に影響を与え得るリスクの一つと捉えています。ただし、気候変動によるリスクと機会については海外グループ会社のアセスメントが未実施のため、早期に展開を図りたいと考えています。
(イ)気候変動リスクと機会を管理するプロセス
気候変動リスクと機会については、リスクマネジメント推進体制と環境管理体制が連携して対策を立案、年度計画を立てて取り組み、進捗を毎年評価しています。例えば、物理的リスク「急性」に該当する自然災害(台風・豪雨・洪水)についてはリスクマネジメント推進体制が中心となってBCP(事業継続計画)の策定などを推進し、移行リスク「政策・法規制」に該当する炭素税の導入に備えたGHG排出量削減については環境管理体制が中心となって中長期環境目標を立案、目標管理を行っています。
エ.指標と目標
当社は、個々のリスクと機会について、上記の表<気候変動によるリスクと機会>に示した通り、「緩和」と「適応」の両面から考え、適切に対策を講じることを目指しています。移行リスク「政策・法規制」に該当する炭素税のリスクについては「緩和」の面から、定量目標を設定してGHG排出量の削減に取り組んでいます。Scope1+2については2022年度に目標を引き上げ、「2030年度までにGHG排出量(Scope1+2)を、2020年度比で42%削減する」としました(※12)。また、当社のGHG排出量の約90%を占めるScope3についても「2030年度までにGHG排出量(Scope3カテゴリ1(原材料調達))を、2020年度比で25%削減する」目標を設定しました(※13)。なお、2023年1月にSBTi(Science Based Targets initiative)にコミットし、これらのGHG排出削減目標がパリ協定の求める水準と整合する科学的に妥当な目標となるよう、鋭意取り組んでいます。一方、物理的リスク「急性」に該当する自然災害(台風・豪雨・洪水)については「適応」の側面から、BCPの策定(※14)、製品在庫の適正化、調達先の複数化を推進し、一部は完了しています。また、BCPについては年1回の訓練を通じて課題抽出・改善を行って、実効性を高める取組を実施しています。機会については、中長期目標に沿った水使用量の削減(※15)に継続して取り組むとともに、当社の研究領域の一つである感染症領域への気候変動による影響を引き続き注視していきます。
※12,13 GHG削減目標の進捗およびScope3排出量については、次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/environment/global_warming.html
(「低炭素社会構築への貢献」)
※14 BCPの策定等については、次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/corporate_governance/risk_management.html
(「リスクマネジメント」)
※15 水使用量削減目標の進捗については、次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/environment/resource_saving.html
(「省資源の取組」)
図3 GHG削減のロードマップ
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