一正蒲鉾 【東証スタンダード:2904】「食品業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の方針
当社グループの社是「人生はやまびこである」のもと、全従業員は「正しきことは正しく報われる」という創業者野崎正平の信念を受け継ぎ、「誠実」「謙虚」「感謝」の心で行動することとしています。また、経営理念「安全・安心を基本として、ユーザーに信頼され、愛され、感動される商品・サービスを提供することで、社会になくてはならない企業として貢献します。」のもと、水産練製品・惣菜の製造販売及びきのこの生産販売を主体とした事業を展開し、常に「安全・安心な品質」と「お客さまに愛されるおいしさ」を追求することで事業の永続的な発展を図っています。
事業の展開に当たっては、法令の遵守、人権の尊重、公正な取引及び商品・サービスの安全・安心に取り組むとともにお客さま、お取引先さま、株主・投資家の皆さま及び従業員並びに地域社会から満足していただけるよう次の基本方針のもと企業価値の向上に努め、当社グループの一層の発展を目指していきます。
① すべての事業分野において品質保証体制の強化を図り、お客さまに安全で安心な商品・サービスの提供を行っていきます。
② 水産練製品・惣菜事業のマーケティング機能を強化することにより、お客さまに信頼され、愛され、感動される商品を開発、提供しブランド価値の向上を図っていきます。
・魚肉たんぱく製品のおいしさや健康機能を追求した「安全・安心で高品質な商品」を国内外に拡販し、水産
練製品業界のトップブランドを目指す。
・DXによる工場の合理化・少人化を実現し、付加価値や生産性の向上に結びつけ、収益の最大化を図る。
・原材料の持続可能性を実現する新たな価値を持った食の提供により、一正ブランドの向上を図る。
③ きのこ事業の技術研究並びに商品開発を強化し、事業規模及び事業領域の拡大を目指していきます。
・栽培技術の更なる進化による安定栽培の維持と最大収穫量の実現を通し、拡販による収益の最大化を図る。
・おいしさや栄養機能等の調査・研究を進め、付加価値の向上と一正まいたけブランドの確立を実現する。
・AI・IoTにより管理、最適化されたスマートファクトリーのもとで、環境に配慮した省エネ・循環型ビジネ
スモデルの構築を目指す。
(2)超長期ビジョン
当社グループでは、30年後のありたい姿で ある“ICHIMASA30ビジョン” (2016~2045 年度)を次のとおり制定し、30年後のありたい姿から今を変革していくというバックキャスティング思考をもとにグループ経営を行っています。 ①「“安全・安心”に“健康・環境”と “心の豊かさ”をプラスして世界中に日 本の“食”で貢献するグローバル企 業」 ②「常に技術を探求し、未来に向けてあ らゆる“食”の情報を発信する食品バ イオ企業」 ③「あらゆるステークホルダーの皆さま に“食”を中心に“幸せ”と“喜び” をお届けするあたたかい企業」 |
(3)第二次中期経営計画の総括
当社グループでは、2021年7月から2026年6月までの5か年を第二次中期経営計画「成長軌道への5年」と位置づけ、引き続き収益力、財務基盤の強化に取り組むとともに、海外事業の更なる拡大を図っていきます。
1)経営基本方針
「国内外のマーケットへの果敢なチャレンジを通じ、事業の成長力・収益力基盤を確立し、ファーストステー ジ「成長軌道」を確実に実現する。」
・国内マーケットは少子高齢化のもと縮小が予想されるが、商品力、生産力、販売力に磨きをかけ、競争優位性を確立しシェア拡大を目指す。
・海外マーケットでは成長マーケットを分析し、水産練製品・惣菜事業、きのこ事業ともに拡販を推進する。
2)全社戦略と主な戦術・施策
上記の経営基本方針のもと、5つの重要戦略キーワードから全社戦略を設定し、全従業員が戦略実行に向けた戦術を策定し、施策を実行していきます。
全社戦略 | 主な戦術・施策 |
①「変革」と「創造」 持続的成長と働きがい向上のために人財投資を積極的に行うとともに、「変革」と「創造」を基軸とした考動を通じ経営環境の変化を克服する。
| ・IWS(いちまさワークスタイル)、新しい働き方の確立 ・働きやすい・働きがいのある・多様な人財が活躍する会社づくり ・風通しが良く誰もが自由に発想し、創造的な意見が飛び交う組織風土への変革 ・成長する意志ある誰もが成長できる能力開発環境の構築 ・すり身原料にとらわれない商品の研究開発 ・魚肉たんぱく、まいたけの機能性共同研究 |
②「選択」と「集中」 水産練製品・惣菜事業は商品・市場・生産等の「選択」と「集中」を徹底し、魚肉たんぱく製品の強みを活かした攻めの販売施策を通じ国内において圧倒的な基盤をつくる。
| ・魚肉たんぱく製品の強みを活かした主力商品のリニューアル継続やサステナブルな商品の開発強化 ・主力商品である「サラダスティック」の販売強化と新設する本社第二工場の合理化・省人化・量産体制の確立 ・販売・廃止の生産アイテム選択を着実に実施し、生産効率化・生産性向上と販売の強化・効率化の両立を実現 ・販売地域の「選択」と「集中」による海外拡販強化 ・多様な国際ニーズに対応した商品開発と市場開拓 |
③「デジタルトランスフォーメーション(DX)」 全社で「DX」の推進に取り組み、ニューノーマルでの競争優位性を確立し、事業収益の最大化を実現する。
| (顧客価値の創出) ・DXを活用した市場データの深度ある収集、分析と提供 ・フードテックによる応用、実現の可能性の探求 (生産性向上・働き方改革) ・全社業務プロセスの見直しによるデータのデジタル化、業務の自動化・省人化推進 ・DXによる新しい製造方法の研究開発 ・スマートファクトリーを目指した生産データのデジタル化とデータの有効活用による生産性向上 ・生産管理システムによる品質向上と効率化推進 ・SFA・CRM、オンライン商談などによる営業活動の効率化 ・ゼロトラストモデルによるサイバーセキュリティ対策構築 |
④「新規事業」 「新規事業」への取組みは、第二次中期経営計画 期間中に探索を行い事業化に着手する。 | ・水産練製品・惣菜事業+きのこ事業+「第3の事業」の主力3事業の構築を指向 ・新規専担部署の設置 |
⑤「アライアンス」 お取引先さまと強固かつ高品質な「アライアンス」体制を構築し、ともに環境・経済・社会等の変化に対応する | ・品質向上の技術・知的サポート実施 ・「一正やまびこ会」等を通じたアライアンス活動の実施 ・「いちまさ通信」による情報提供の継続 ・運行管理システムの構築・運営 |
3)第二次中期経営計画最終年度数値目標(連結ベース)
項目 | 2026年6月期数値目標 |
売上高 | 400億円 |
営業利益 | 26億円 |
自己資本利益率(ROE) | 10% |
投下資本利益率(ROIC) | 9% |
自己資本比率 | 60%台 |
当社グループの経営上の目標の達成を判断するための客観的な指標は上記のとおりですが、各数値については有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
(4)経営環境
① 国内外の市場環境
2023年の国内出生数は8年連続で減少し過去最少となる72万人台となり、政府の少子化対策の効果はなかなか表れないなか、高齢化の進展等とともに、国内市場はこれまで以上に厳しい経営環境が予想されます。
世界的な食料需要の拡大、気候変動を要因とする天候不順、政治的な不安定性や紛争といった地政学的な要因の影響等により、原材料やエネルギー等の価格は、当面、現在の水準に高止まりするものと想定しています。
また、アメリカを中心とする世界経済の動きは円ドル等の為替や金利、株式市場に大きく影響を与えており、原材料やエネルギー等の価格の商品への価格転嫁による国内の物価上昇により、2024年5月まで実質賃金が26か月連続マイナスとなるなど、消費者の生活防衛意識は日増しに強まっています。
一方、海外では、健康志向が高まっている米国や西欧諸国などの先進国、そして成長を続ける東南アジア諸国などの新興国において、水産練製品の需要が拡大しており、市場の成長余地は大きいと考えられます。
また、CO2排出量や食品ロスの削減など、持続可能な社会を実現するために、ESG経営の実践やSDGs目標の達成に向けた社会的な要請は日増しに強まっています。
新型コロナウイルスは2023年5月には5類感染症に移行し、その影響が小さくなるなか、2024年6月の訪日外客数は313万5千人となり、円安を背景に前年同月比51.2%増となるなど、国内経済はインバウンド効果による経済の活性化を期待する声が広がっています。一方、観光客数の急回復が「オーバーツーリズム」として住民生活に悪影響を及ぼす懸念も報道されています。
(5)対処すべき課題
① 国内水産練製品・惣菜事業
国内では、少子高齢化の進展、未婚率や核家族化による単身世帯の増加、食の多様化とグローバル化などの要因により、水産練製品市場は概ね横ばいで推移しており、国内各メーカーにとって新たな需要を創出するための商品開発が共通の課題となっています。
このような市場の状況に対応するために、水産練製品・惣菜事業においては、お客さまのニーズやライフスタイルの変化に迅速に対応し、新商品を開発するとともに、常に付加価値向上を図るための主力商品のリニューアルを継続し、競争優位性の確立を目指していきます。
特に、地球環境の維持をはじめとする社会的価値の視点で商品を選択するお客さまが今後も増えていくと考えており、これらの状況を踏まえ、当社はサステナビリティへの取組みを強化し、変化するお客さまのニーズに応え、美味しさと社会的価値を兼ね備えた付加価値の高い商品の開発を進めます。
また、原材料であるすり身の価格は世界的な需要拡大による品薄傾向等を背景に高止まっており、そのほか副材料、エネルギー等の価格も高い状況が続いています。
さらに、生産年齢人口の減少による労働力不足は一層深刻になると予想されており、安定した生産を継続し商品供給責任を果たすためにも、生産アイテムの削減を行うことで生産効率化を進め、収益及び競争優位性の確立を図ることとしています。加えて、ファクトリーオートメーションによる省人化が急務であるとの認識のもと、FAシステム部において工場でのAI 、IoT活用を急ピッチで進めています。
商品開発・リニューアルに当たっては、安全・安心・健康・おいしさの観点から、減塩商品のラインナップの充実や簡単に食べられる高たんぱく商品、国産原材料にこだわった商品、すり身を使用した代替シーフードの“ネクストシーフード”シリーズなど、新しい発想による、これまでにない商品開発も行っています。健康長寿社会の進展にあわせ、安全・安心・健康へのニーズは引続き根強く推移することが予想され、さらなる健康機能の付加についても検討していきます。
また、2024年7月にマーケティング開発本部を設置し、お客さま視点に基づき、マーケティング・技術研究・商品開発を一気通貫させ、持続可能な成長企業に必要である「お客さま視点での全社連動」を行うことで、これまで以上に、ニーズの変化や新たなトレンドを迅速に把握し、商品力の向上に結び付け、配荷の増加を目指していきます。
② 海外水産練製品・惣菜事業
国内市場は市場縮小が避けられない一方で、健康志向の高まりから海外での水産練製品需要はカニ風味かまぼこを中心に伸長しており、欧米諸国のほか、アジア各国への輸出量も増加しています。また、冷蔵環境が未整備な地域でも手軽にタンパク質を摂取できる常温商品もラインアップに追加しました。当社グループでは、2015年8月にインドネシアに合弁会社を設立し、水産練製品の製造販売を開始しており、成長が続く東南アジアを中心に、合弁会社から北米、中東等への輸出を強化していきます。しかしながら、2023年から続く中国による日本産水産物の全面輸入停止及び香港の新潟県産品の輸入停止措置は、当社商品の輸出に少なからず影響を及ぼしており、今後も中国政府の動向に注視が必要な状況にあります。
③ 国内きのこ事業
当社グループを含めた大手メーカーによる大量生産・大量販売の仕組みが確立し、お客さまの健康志向の高まりによる需要増加もありますが、少子高齢化、人口減少等の影響により市場は全体的に横ばい傾向となっています。
これまでは素材そのものとしての提供が主でしたが、今後はお客さまのニーズが高まっている健康訴求による販促強化を行うとともにデリカ惣菜用の食材として業務用需要も取り込んでいくなど、販売チャネルの拡大も重要であると考えています。また、収益体質をより強化するために、まいたけ包装効率化ラインの設置や省エネルギーの推進により収益の向上を図るとともに、新たに技術研究並びに商品開発対象を拡げ、事業領域の拡大を目指していきます。
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