企業ランサーズ東証グロース:4484】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは「個のエンパワーメント」をミッション、「すべてのビジネスを『ランサーの力』で前進させる」、「誰もが自分らしく才能を発揮し、『誰かのプロ』になれる社会をつくる」をビジョンに、インターネットを通じてクライアントとランサー双方への価値提供を行っております。インターネットの力で、仕事を依頼したいクライアントにはプロフェッショナルな人材をフリーランスという柔軟な形で提供し、また仕事をしたい個人には時間や場所に依存しない新しい働き方を提供することで、「個」がより活躍できる新たな社会の仕組みを構築しています。

(2)目標とする経営指標

当社グループは、当社グループのサービス経由で取引される金額の総額である流通総額と、クライアント及びランサーへ提供される付加価値を示す売上総利益(流通総額にテイクレート(注)1を乗じて算出されるもの)の最大化を重視した経営を行っております。クライアント及びランサーの利用促進をすべく機能拡充等を行うことでテイクレートを高めることを目指しております。なお、過去5年間における流通総額及び売上総利益の推移は以下のとおりであります。

回次

第12期

第13期

第14期

第15期

第16期

流通総額(億円)(注)2

81

92

103

113

108

売上総利益額(億円)

17

19

20

22

21

(注)1.テイクレートとは流通総額に対して課される手数料率になります。

(注)2.「Lancers AREA PARTNER」、「シェアフル」等の事業は含まれておりません。

(3)経営戦略

①当社グループの強みとプラットフォームの特徴

 当社グループでは、運営するプラットフォームをより信頼性の高いものとするため、主に3つの取り組みを実施しております。

(ⅰ)信頼を可視化するテクノロジー

当社グループは実名、顔写真の入力を推奨しております。クライアントが、プラットフォームで得られるランサー情報は多岐にわたりますが、実名・顔写真が見えることで、信頼性の高いランサーが多数在籍していることを認識いただけると考えております。当社グループではこのように実名や顔写真を登録し、更にプロジェクト完了率や評価等を含めた一定の基準をクリアしたランサーを「信頼ランサー」(注)と呼んでおり、当社グループ独自のアルゴリズムを用いてスコアの高いランサーからクライアントに候補者として表示される仕組みを構築しております。

(注)「Lancers」では、2018年8月よりランク制度を設けております。こちらのブロンズランク~認定ランサーランクまでを信頼ランサーと定義し、当社グループでは当該信頼ランサー数の拡大に注力しております。

(ⅱ)信頼を活かすマッチングアルゴリズム

クライアントがプラットフォーム上で依頼を行うと、AIによって依頼内容と金額を過去の類似案件データの成約率や独自に調査した市場データ等の情報から査定され、適正な価格の案件を識別できるようになっております。またランサーに関しても、上述した仕組みに則り、信頼ランサーでかつスキルがクライアントのニーズに合致したランサーが上位に表示される設定になっております。このように適正な依頼と適正なランサーとの効率的なマッチングをすることがプラットフォームにおける継続的な利用に繋がると考えており、現に、初めて「Lancers」で依頼するクライアントに信頼ランサーをマッチングさせることにより、信頼ランサー以外にマッチングした場合と比較して、該当クライアントの成約率や依頼金額は増加することが確認されております。

(ⅲ)信頼できるランサーを増加・定着させる仕組み

 ランサーの中でも特に信頼ランサーを増加・定着させる仕組みとして、「MENTA」、「新しい働き方LAB」、「Lancer of the Year」等のサービス及び取り組みがあります。2020年10月にグループ化したイリテク株式会社(現MENTA株式会社)が運営している「MENTA」は、教えたい人と学びたい人を繋ぐオンラインメンターサービスであり、更に国内外に18拠点を持つランサー向けのコミュニティ「新しい働き方LAB」ではフリーランス同士のコミュニティの活性化や教育機会の提供を行っております。このように「MENTA」や「新しい働き方LAB」を通じてスキルを習得し、そのスキルを活かして「Lancers」にて仕事を獲得するというサイクルを確立し、信頼できるランサーを育成・確保しております。また2015年から毎年開催しているランサーを表彰するイベント「Lancer of the Year」では、ランサーのモチベーション向上を図り、ランサーが「Lancers」のプラットフォームを通じて仕事を獲得できる知見の共有を行っております。このような取り組みを通じて、フリーランスになって一定以上収入を得るようになった場合でも継続的に当社グループのプラットフォームをご利用頂ける動機付けをしております。

②短期的な成長戦略

 当連結会計年度においては、規律ある投資や生産性向上施策の浸透、2024年1月に実施した子会社である株式会社ワークスタイルラボの吸収合併等の構造改革を通じて、75百万円の通期営業黒字を達成しました。事業については、組織体制を強化することで1人当たり売上総利益は増加し、併せて販管費の継続的な見直しにより、収益性を更に大きく改善しました。今後に向けては、生産性は維持・改善しつつ、環境変化に併せて提供価値を拡大し、ユーザー体験を大きく改善することで利用ユーザー数・クライアント数の拡大を図ります。 また、セールスやマーケティング等の成長投資の再開や、既存事業における新領域を中心とした売上成長の再加速を図ってまいります。

③中長期的な成長戦略

 当社グループのサービス利用を通じて獲得したランサー及びクライアントの仕事の実績データを活かして、クライアント・ランサーともに対象顧客を広げ、提供価値の拡大を図ってまいります。具体的にはフリーランスだけでない広がる市場・顧客に対する新しい提供価値の開発や、マッチング以外の隣接する周辺領域への拡大を行いたいと考えております。これらの成長を実現すべく、自前だけでなくM&Aやアライアンスも積極的に活用してまいります。

 将来的には、「労働人口の減少」、「IT人材不足」、「企業生産性の低迷」という日本の社会課題を、自社の強みや事業活動を通じて解決することで、更なる価値創造を目指していきたいと考えております。

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、更なる事業拡大と収益基盤安定化のために、以下の事項を重要な課題として認識し、対処してまいります。

①広義のフリーランス市場の拡大と業界の健全な発展

「新・フリーランス実態調査2021‐2022年版」(注)1によると、広義のフリーランス(注)2人口は1,577万人、その経済規模は24兆円となりました。新型コロナウイルス感染症流行前の2020年2月に実施した調査と比較すると広義のフリーランス人口は約515万人、経済規模は約6兆円増加しております。国策としての働き方改革や、企業における新しい働き方に関する制度導入、新型コロナウイルス感染症流行による在宅勤務の増加等により、個人の働き方に関する価値観が変容してまいりました。隙間時間を活用して本業以外の仕事に取り組む人や働き方そのものを見直して独立を選択した人が増加し、フリーランス市場が拡大したと推察しております。こうした潮流を受け、2023年4月にはフリーランス保護を目的としたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が成立する等、今後も市場拡大が見込まれることと想定しております。

 このような市場の中で、当社グループは国内における主要企業として、各種の業界団体での活動やフリーランスを支援する取り組み、品質向上委員会の活動等、市場の認知度拡大・啓蒙活動や業界の健全な発展に引き続き努めてまいります。

(注)1.「新・フリーランス実態調査2021-2022年版」は、当社グループが株式会社マクロミルに依頼した、過去12ヶ月に仕事の対価として報酬を得た全国の20歳以上の成人男女を対象にして2021年9月から10月にかけて実施した調査であり、3,094人から回答を得てまとめたものです。

(注)2.「広義のフリーランス」とは、特定の会社に属さずに報酬を得ている「専業フリーランス」に加え、専業フリーランスではないが直近1年間にフリーランスとしての報酬を得たことがある人(副業をしている一般の会社員等)を含んだグループを示します。「新・フリーランス実態調査2021-2022年版」ではフリーランスを①副業系すきまワーカー、②複業系パラレルワーカー、③自由業系フリーワーカー、④自営業系独立オーナーの4つに分類しており、広義のフリーランスにはこの4タイプのフリーランスが含まれます。

②事業の継続的な成長と発展

当社グループが継続的に成長していくためには、既存クライアント利用社数及び1クライアント当たりの利用額を拡大すると同時に、新規事業や新市場の開拓にも取り組んでいく必要があると考えております。昨今、生成AIの台頭により、文章作成や画像制作等一部のカテゴリを中心に個人顧客を中心としたニーズの変化が生じていることや、フリーランスのキャリアも多様化する中で、当社グループでは、フリーランスの安定的な案件獲得と報酬単価の増加を継続的に支援を続けるべく、市場の変化に合わせて顧客価値を再定義し、対象市場・顧客を拡張していく動きが求められております。当社グループは更なる発展に向けて、業界の主要企業としての実績を軸とした強固な顧客基盤やブランドの確立に努めつつ、これまでに蓄積された仕事実績のデータ資産やプラットフォーム運営ノウハウを活かした新規事業領域の開拓に積極的に取り組んでまいります。

③サイトの安全性と健全性の確保

当社グループのサイトにおいては、取引のプロセスにおいて、発注側の企業(クライアント)と受注側の個人(ランサー)の間で直接コミュニケーションが発生するため、双方のユーザーが安心して当社グループのサービスを利用できるように、サイトの安全性と健全性を確保する必要があります。そのため、専任の監視チームが24時間365日で全ての仕事依頼内容を確認しており、不適切な内容は非表示対応や修正していただくよう依頼をしております。また、当社グループは第三者機関によるシステム監査(ペネトレーションテスト)を実施し、脆弱性の是正・監視体制を強化しております。今後もこの取り組みを維持・継続し、サイトの安全性と健全性の確保に努めてまいります。

④システムの安定性強化と運用管理体制の構築

 当社グループはインターネット上で重要な個人情報に係るサービスを展開しているため、サーバーレスポンスの観点のみならず、セキュリティの観点からも安定的なシステム体制を構築し運用していくことが重要であると考えております。そのため突発的なアクセス増加にも耐えられるサーバー設備強化を行っていくとともに、セキュリティ関連の規程・マニュアルを制定し、社員に対するセキュリティ研修を実施して、セキュリティ管理体制を強化しております。更に、個人情報関連法を厳格に遵守する体制を構築しております。なお、当社は、2017年4月に一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)からプライバシーマーク制度の認証を受けており、2023年4月に更新を行っております。このようにシステムの安定性強化と運用管理体制の構築と改善に努めてまいります。

⑤新技術への対応

 当社グループが属するIT業界では技術革新が絶え間なく行われております。特に昨今では生成AIの台頭を受けて、文章作成や画像制作等一部のカテゴリを中心に個人顧客を中心としたニーズの変化が生じつつあり、このような中、生成AIを活用する依頼カテゴリの新設や、生成AI等の技術を活用した新機能の実装、AI技術を活用したプラットフォーム上でのマッチング精度向上、生成AIを活用した制作物を可視化する機能の実装等、新技術を積極的に取り入れた開発と各サービスの付加価値向上を目指しております。それらを実現するべくエンジニアの採用・育成・技術投資等を継続的に行ってまいります。

⑥優秀な人材の採用と企業文化の醸成

 事業の継続的な成長を実現するためには、優秀な人材を採用すると同時に、全従業員が経営方針を理解して、強い企業文化を醸成していくことが重要であると考えております。当社グループは、「すべてはユーザーのために」「101をやり切る」「あるべきで考え、大胆に行動する」「アクション・アジャイル」「チームクリエイター」という行動指針を掲げ、ユニークな企業文化をグループ全体で更に浸透・発展させるべく、時代に沿った新たな人事制度の構築を行ってまいりました。今後も優秀な人材を確保すべく当社グループのブランド向上と企業文化の浸透に努めると同時に、次期連結会計年度においては収益性を向上させ、恒常的な黒字化と筋肉質な組織基盤を構築してまいります。

⑦経営管理と内部管理体制の強化

 当社グループは、事業の継続的な成長を実現していくために、経営管理体制の更なる強化・充実が必要不可欠であると考えております。事業成長に伴って組織が拡大していく中で、経営指標のモニタリングや会議体の設計・運用等を通して、組織の健全かつ効率的なマネジメントを推進してまいります。また、今後更なる事業拡大を図るために、事業基盤を盤石にさせることが重要な課題であると認識しております。今後も継続してM&A等を実施しながら事業拡大を実施していくため、子会社管理体制の強化、連結グループとしての財務報告の信頼性確保並びにコンプライアンス体制や内部管理体制の強化を図ってまいります。そのために、従業員に対して業務フローやコンプライアンス、情報管理等を徹底認知させ、内部管理体制強化を図るとともに業務の効率化を行ってまいります。

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