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企業概要

 当社グループは、セキュリティソリューションサービス事業及び今後の新規事業の開拓のために次の研究テーマに取り組んでおります。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は271百万円であり、特定のセグメントに帰属しない全社費用として、報告セグメントには含まれておりません。

[Ⅰ]. サイバー・グリッド・ジャパン

a.研究開発体制

 当社グループでは、サイバーセキュリティ市場におけるリーディングカンパニーとして最新・最高の技術を維持向上するため、総勢27名体制で研究開発を行っております。

 2024年3月期は、従前から引き続き、分野別の3部門体制で活動を行いました。なお、2018年度から視覚障がい者のエンジニア採用を実施しており、引き続き、キャリア形成支援や活躍の場を広げる取り組みを推進しています。

b.研究開発方針

 サイバー・グリッド・ジャパンは、サイバーセキュリティに関する研究開発において他組織との連携強化をテーマとし、サイバー脅威インテリジェンス情報基盤の開発や、ナショナルセキュリティに関する研究を推進するとともに、啓発活動、産学官連携、情報発信の強化、グリッド・パートナー拡大など、セキュリティ業界にとどまらず、行政、教育、地域との連携の強化を進めてきました。

 個別の研究テーマとその具体的な内容につきましては以下のとおりです。

(1)サイバー脅威インテリジェンスに関する研究

A.プラットフォーム開発

 サイバー脅威インテリジェンスに関連する各種情報を、統合的に分析・管理するプラットフォームの研究をしており、情報の集積から共有・連携・活用までを研究対象として、情報基盤のプロトタイプの開発を進めております。その研究成果の1つとして組織間の脅威情報の共有・連携を行うための体制「SecureGRIDアライアンス」の運営活動を通じ、脅威情報の活用をテーマにした機能開発やデータの分析・評価に関わる研究開発を推進しています。

B.情報収集

 サイバーセキュリティに関連するオープンデータを自動的に収集し、攻撃者の痕跡情報などの抽出を実現するAI分析エンジンの研究やサイバー犯罪におけるテクニカルサポート詐欺の調査分析をしています。

C.データ分析手法研究

 情報源の異なる膨大な集積データを、検知・防御範囲が広く、より精度の高いサイバー脅威インテリジェンスに生成するための統合的な分析ロジックを研究しております。この独自の分析ロジックは、脅威情報提供サービス「JLIST」にも生かされています。

(2)ナショナルセキュリティに関する研究

 国防をテーマに、国家主導のサイバー攻撃の背景となる政策や能力について調査・研究を進めています。近年のサイバー攻撃は、インターネットやSNSの普及により、電磁的な攻撃だけでなく、人間が攻撃の標的となるケースが増加しています。2023年に発生したイスラエルとハマスの衝突では、多くの国や組織が偽情報を拡散し、真実が歪められて伝えられる事例が見られました。また、同年に本格的にサービスが開始された生成AI技術は、瞬く間に世界中に広がり、偽情報の作成と拡散を容易にしています。安全保障関連の三つの文書には、能動的サイバー防御の導入と、認知領域を含む情報戦の強化が求められています。こうした状況を現代の安全保障の正念場と捉え、我々は高度化・複雑化するサイバー攻撃に備えるため、産学官の連携を密にし、多角的な分析を行う広い視野での研究を推進しています。2023年12月には「情報戦、心理戦、そして認知戦」をテーマにした研究成果を出版しました。引き続き、「国を衛る」ための研究を進め、サイバーセキュリティに関する啓発活動を行ってまいります。

(3)啓発活動

A.産学官連携

 全国県警本部や地方自治体、教育委員会などとの産学官連携に積極的に参画しております。この産学官連携を通じ、それぞれの地域でのセキュリティ意識やICTリテラシーの向上のために、地域組織への支援と次世代を担うセキュリティ人材の育成に積極的に協力しております。

B.啓発活動

 ICT利用環境啓発支援室では、全国各地における講演会での登壇や、外部団体活動への参画を通して、利用者における情報セキュリティ・情報モラルの重要性を発信しており、啓発講座の開催、研修講師・シンポジウム登壇時の講師の派遣、インターネット安全環境整備会議出席などの活動は200件を超えます。これらの活動により蓄積した知見に加え法学、教育学、社会学などの研究者の監修を受け発刊した「情報リテラシー啓発のための羅針盤(コンパス)」は全国の啓発・教育の現場において活用されております。また、GIGAスクール構想ならびに学習指導要領に謳われる「主体的・対話的で深い学び」をICT利活用の視点から支援し、デジタル社会の学びに資する活動も推進しております。

C.人材育成支援

 小・中学生を含む未成年の技術者を目指す人材における技術力の向上、知識の習得、交流の促進を支援すべく「すごうで」を実施し、若年技術者の発掘と技術・資金提供を行っています。また「サイバーセキュリティ仕事ファイル」の発刊を通して次世代を担うセキュリティ人材の育成を支援しております。さらにセキュリティ対策に関する団体の事務局運営を通じ、啓発活動に関わる様々な組織や個人の連携を推進しております。

(4)情報発信

 情報誌「サイバー・グリッド・ジャーナル」やオンラインでの成果報告発表会等を通じて、広くセキュリティ専門家から一般のICT利用者までを対象としたセキュリティ関連情報を提供しております。また、セキュリティに関する安全保障やセキュリティに関する事件やトラブルに関する取材や執筆活動について専門的な立場で積極的に対応しております。

(5)知的財産

A.知的財産開発

 研究開発により創出した技術の特許を国内外で取得しております。

B.技術動向調査

 技術動向を把握し、研究開発テーマの方向性を確認するため、特許情報を含めた先行技術調査を行っております。

 2025年3月期は、引き続き自社独自の技術を創出する研究を推進しつつ、研究成果を活用したオープンイノベーションを推進してまいります。

[Ⅱ]. 新規事業開発

a.研究開発体制

 セキュリティソリューションサービス事業、システムインテグレーションサービス事業を中核としつつ、第3軸の事業を創出するための研究開発、実証実験活動を15名体制で行っております。

 2025年3月期は、2025年4月以降の事業化に関連し、分析手法と機能実装を進めていきます。

b.研究開発方針

 スマートシティ(スーパーシティ)及び国内各地域活性化を市場として捉え、その都市の安全を守るための仕組み作りを目指し、サイバーセキュリティに留まらず、「セーフティ」に関わるサービス・プロダクトの創出に必要な技術・プロダクト、主に分析のための研究開発を進めております。また、分析対象となる製品、サービスについては、その研究を行いながら技術情報を把握するとともに、該当する事業会社との連携あるいは事業会社の創出に取り組みます。それらの実現のためには国内の地方公共団体との連携・協力は必須であるため、地方公共団体(及び地域住民)との連携強化も並行して進めます。

(1)協賛・実証実験活動

A.地域での実証実験

 北海道旭川市、福岡県北九州市、長崎県長与町の3か所にて各種IoTデバイス及びデータ取得、分析の実証実験を継続し、段階的に機能リリースを進めてきました。機能の実証は北海道旭川市に集中し、サービスの実証を長崎県長与町、山形県庄内町で行います。福岡県北九州市は後述Bに目的を変更して取り組んでいます。

B.官民連携・産学連携による地域活性化

 地方公共団体及び教育機関(大学等)と連携し、スマートシティ(スーパーシティ)に必要となる各種機能・サービスの創出活動を進めます。東京理科大学との共同研究による認証機能の実装、長崎県立大学との共同研究によるスマートシティ向けのプラットフォームサービスのアーキテクチャ検討、芝浦工業大学との共同研究による地域から取得したデータのシミュレーションへの利活用及び機能実装の検討、九州工業大学が保有する知財の事業化の検討を継続して実施しています。

(2)技術開発

 スマートシティ(スーパーシティ)における「分析」「制御」技術に集中して技術開発を進めます。従来のサイバーセキュリティでは、不正アクセスに関わるデータの検知・分析・対処を行ってきました。今後重要になってくる技術要素は「正常状態のデータの蓄積・検知からリアルタイムに異常事情を検知し、デバイスを制御する」ことと捉え、その検知・分析手法の開発を元に、IoT機器の運用に関わるソフトパッケージ化に取り組んでおります。

 また、位置情報と距離情報を元にした多要素認証に関わる保有知財を活用した機能実装を進めていきます。

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