マクニカホールディングス 【東証プライム:3132】「卸売業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサスティナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。本項では気候変動による環境課題と人材の育成及び社内環境整備に関して記載しております。その他の項目に関しては、第2 事業の状況「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
当社グループでは、サスティナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、2021年4月に代表取締役社長を長とする「サスティナビリティ推進委員会」を設置いたしました。具体的な取り組み施策については「サスティナビリティ推進委員会」で立案し、業務執行の最高意思決定機関である「グループ経営会議」で協議、決議しています。また、決議した施策の実行計画の策定と進捗モニタリングを「サスティナビリティ推進委員会」にて行っています。取締役会は「サスティナビリティ推進委員会」から報告を受け、当社グループの課題への対応方針・施策および実行計画等についての議論・監督を行っています。代表取締役社長は「グループ経営会議」の議長を担うと同時に、直轄の「サスティナビリティ推進委員会」の委員長も担っており、経営判断の最終責任を負っています。「サスティナビリティ推進委員会」にて立案し、「グループ経営会議」で協議、決議した内容は、最終的に取締役会へ報告を行っています。
(2) 戦略
① 環境課題に関する方針、戦略
当社グループでは、TCFDの提言に基づき、リスク及び機会を特定・評価し、気候関連問題が事業に与える中長期的なインパクトを把握するため、2030年における国内の主要3事業(注1)を想定し、シナリオ分析を実施しました。
分析においては、産業革命前と比べ2100年までに世界の平均気温が4℃前後上昇することを想定した4℃シナリオと、2℃前後上昇する2℃シナリオを採用し、各シナリオにおいて政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施しました。使用したシナリオのうち代表的なものは以下です。
a. 移行リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ
・4℃シナリオ:IEA(注2)によるStated Policy Scenario (STEPS) (注3)
・2℃シナリオ:IEAによるSustainable Development Scenario (SDS)(注4)
b. 物理リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ
・4℃シナリオ:IPCC(注5)によるPCP8.5(注6)
・2℃シナリオ:IPCCによるPCP2.6(注7)
分析の過程では各シナリオに対して、気候変動に関するインパクト要因を洗出し、約400の項目について事業への影響度を検証し、その中でも重要と思われるシナリオを特定いたしました。それらの特定したシナリオに関しては以下の通り、影響度を定量的、定性的に検証し、大・中・小の3段階で評価をいたしました。
| リスク・機会種類 | リスク・機会要因項目 | 事業インパクト | 評価 | 対応方針 | |
リスク | 移行 | 政策・法規制 | 炭素税導入 | 炭素税が製造・物流コストへ転嫁されることにより仕入れ価格が上昇する | 大 | DXによる収益力の確保 (中期経営計画) |
EV車(注8)への移行に伴う内燃機関自動車への規制強化 | EV市場の拡大に伴い、既存の内燃機関自動車部品の売上が減少する | 中 | EV市場への注力(中期経営計画) | |||
エネルギー・電力調達コストの増加 | 再生可能エネルギーの調達による追加的コストの発生 | 小 | 省エネ効果の高い設備の導入、切替え | |||
技術 | 設備投資及び燃料コストの増加 | オフィスへの低炭素技術導入により設備投資コストが増加する | 中 | 中長期的な損益中立でのGHG排出量削減 | ||
低GHG半導体製品の普及拡大 | 半導体製造過程における低GHG化に伴い、大量のEOL/PCN(注9)が発生し、対応コストが増加する | 小 | DXによる自動化を推進(中期経営計画) | |||
市場 | メーカー・顧客間での直販化が加速 | 物流におけるGHG削減のため、メーカーと顧客の直販化が進む | 大 | DXによる顧客接点強化と顧客への直接輸送の拡大 | ||
低炭素技術への移行 | 顧客の需要変化や市場変化への適応の遅れによるビジネス停滞や売上の減少 | 小 | 高効率なパワー半導体等環境性能に優れた取扱製品群へのシフト | |||
評判 | 投資家、顧客、当社応募者等ステークホルダーの行動変化 | 環境配慮への対応の遅れやレベルの低さによりビジネス機会の損失、企業価値・ブランド価値の毀損を招く | 小 | 気候変動対応への積極的且つ継続的な取り組み | ||
物理的 | 急性物理的 リスク | 洪水によるオフィス・物流拠点への影響 | 異常気象の増加、深刻化に伴い、従業員が就労できなくなることにより、事業活動が低下する | 小 | BCP対策マニュアルの整備 | |
高潮によるオフィス・物流拠点への影響 | 高潮により、沿岸部に位置するオフィス・新子安ロジが被災することによる損失 | 小 | BCP対策マニュアルの整備 | |||
慢性物理的 リスク | 海面上昇 | 海面上昇により、新子安ロジの移転、または新しい物流拠点の構築 | 小 | 長期経営計画の中で継続して検討を実施 | ||
機会 | 市場 | ― | 新規ビジネス機会 | Foodtech、再生エネルギーなどの新規ビジネス機会が増大 | 大 | 関連市場への積極展開(中期経営計画) |
EV市場の拡大に伴う売り上げ拡大 | EV市場の拡大に伴い、EV向け半導体売上の増加 | 大 | EV市場への注力(中期経営計画) |
(注)1 対象とした国内の主要事業は半導体事業、ネットワーク事業、サービスソリューションモデルの3事業
2 国際エネルギー機関(International Energy Agency)。エネルギー安全保障の確保、経済成長、環境保護、世界的なエンゲージメントを目標に掲げる国際機関であり、エネルギー政策全般をカバーしている
3 現時点で各国が公表している環境政策は実現されるが、COP21パリ協定の長期目標は達成されず、2100年までの気候変動による気温上昇が産業革命以前に比べて4℃程度生じることを想定したシナリオ
4 COP21パリ協定の長期目標達成に向けて国際的な協調が進むことにより、2100年までの気候変動による気温上昇が産業革命以前に比べて2℃より低く保たれることを想定したシナリオ
5 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略称で、人為起源による気候変化、影響、適応および緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織
6 温室効果ガス排出量抑制の対策が取られず、産業革命時期比で2.6~4.8℃の気温上昇が生じることを想定したシナリオ
7 温室効果ガス排出量が抑制され、気温上昇は産業革命時期比で0.3~1.7℃程度に留まることを想定したシナリオ
8 EV車とはElectric Vehicle、電気自動車のこと。エンジンを搭載しておらず、電気を電動減にしてモーターで走行する自動車のこと。
9 EOL/PCN(End Of Life/Product Change Notice):製品の生産終了や販売終了、あるいは製造プロセスや生産工場変更・追加、製品仕様の変更等により、メーカーから顧客向けに発行される通知書のこと。
② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社グループは、人は財産(人財)という考えの下、人財を「Vision実現に向け、競争力を高め、サスティナブルに成長を続けていく原動力、価値を創造する重要な資本」と位置づけ、人財価値の最大化への投資を続けております。人材の育成に関する取り組みとして「多様な人財の確保・活用=ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)」を掲げており、多様な人財が活躍でき、人財価値の最大化を図るために、人財育成方針を定めています。
a. 多様性確保についての考え方(ダイバーシティ推進基本方針)
◎ DEI推進の目的:企業の競争力を高め経済的価値と社会的価値の最大化
・ 多様な経験を受け入れることによるイノベーションの創出と既存人財の成長
・ 異文化を取り入れることによる企業文化を進化
・ 将来の深刻な労働力不足(国内)などの課題の解決
◎ 人材活用:
・ 創業時より「フェア」「実力重視主義」「抜擢人事」「エンパワーメント」をポリシーとした人財の登用を重視
・ 性別、国籍、人種、宗教、年齢、障がい、性的指向に関係なく実力のある人を登用する文化・土壌
◎ 方針:
・ 多様性に対応した職場環境(ハード面・ソフト面)の改善を継続
・ 様々な社員が主体的・自律的に考え選択・判断でき、個々の能力を最大限発揮できる環境を構築
b. 人材育成方針
◎ 各個人のキャリアデザインをサポートし、キャリアオーナーシップを高める教育機会を提供
◎ 各個人を信頼し、任せる事で、個人の活躍と成長の加速を促す
◎ 年齢や経験に関係ない、実力重視の抜擢人事を実施
c. 社内環境整備への取り組み
◎ DEI推進
・ 性別、国籍、人種、宗教、年齢、障がい、性的指向、地位、立場にかかわらず活躍できる環境の整備
・ E-Learning等を活用した社員への継続啓蒙と経営陣による率先垂範
◎ 健康経営・Well-Being経営の促進
・ 健保組合と連携した健康促進施策の充実
・ 労務管理・残業対策の強化
◎ 働き方改革推進
・ 生産性が最も上がる方法や場所を、各組織・チームが主体的・自律的に判断する働き方の継続運用
◎ 従業員エンゲージメントの向上
・ 「経営計画発表会」の開催(年に1回、国内外のグループ社員が一堂に集まっての方針・戦略の共有、表彰の場)
・ 「行動テーマ」の設定(年度においてに社員が意識すべきスローガンを設定しベクトルを合わせる
・ 「強い組織づくりアンケート」の実施(従業員サーベイの結果をもとに、全部署が課題と対策を設定し、組織の改善を図る取り組みを10年以上継続)
◎ 人事制度・報酬体系の整備
・ 多様な人財が働きやすい制度への見直し
・ 安心して働くための報酬水準の見直し
(3) リスク管理
当社グループでは代表取締役社長を委員長とする「コンプライアンス・リスクマネジメント委員会」にて、当社グループの業務運営におけるリスクマネジメント、コンプライアンス状況を把握、分析を行い取締役会・グループ経営会議への報告及び必要な施策の企画・立案を行っております。特に気候変動による環境課題に関しては、当社事業への影響を把握し、評価するためにシナリオ分析を行い、気候変動リスク・機会を特定していきます。特定したリスク・機会は「コンプライアンス・リスクマネジメント委員会」および「サスティナビリティ推進委員会」にて戦略策定・個別事業運営の両面で管理していきます。
(4) 指標及び目標
① 環境課題に関する方針に関する指標の内容の並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標
気候変動による環境課題に関しては、当社グループは温室効果ガス排出削減目標を設定し、事業活動におけるCO2排出削減の取り組みを推進しています。CO2削減目標はSBT(注1)に基づいた目標を設定し、環境負荷低減に積極的に取り組んでまいります。
項目 | 対象範囲 | 排出量実績(t-CO2) | ||
2021年度 | 2022年度 | 前年比 | ||
Scope1 | 海外連結子会社まで含む | 794.31 | 719.88 | -9.4% |
Scope2 | 同上 | 2,453.96 | 1,267.48 | -48.3% |
Scope3 | Category1~8までの合計 (国内拠点のみ) | 1,705,997.65 | 2,548,482.34 | +49.4% |
Category1~8までの合計 (海外連結子会社まで含む) | ――――― | 4,745,613.80 | 22年度分より初算定 | |
排出量合計 | 2021年度と同様の算定方法(対象範囲)による比較 | 1,709,245.92 | 2,550,469.70 | +49.2% |
Scope1~3(グローバル対応) | ――――― | 4,747,601.16 | 22年度分より初算定 |
(注)1 Science Based Targetsの略称で、気候変動などによる気温上昇を2℃未満に抑えるというCOP21パリ協定の長期目標達成に向けて、企業が科学的根拠に基づいて設定する温室効果ガス排出削減目標。
2 当社グループでは前連結会計年度よりGHG排出量の算定を実施しております。前連結会計年度(2021年度)においてはScope3(Category1-7の合計)を1,705,990 t-CO2としておりましたが、再集計の結果、Category8まで含め1,705,997 t-CO2となりました。(なお、当社ではCategory8は発生しておりません→0tとなります。)
3 当連結会計年度(2022年度)より、Scope3も海外連結子会社含むグローバル対応の算定。
4 当社グループでは前連結会計年度Scope2について、全オフィスの95%の面積を占めるオフィスまでを対象としてデータを取得、算出しておりましたが、当連結会計年度より全オフィスのデータを取得のうえ算定。また、自社オフィスへの水力発電による電気(再エネ)の導入やEV車への切替え等により、自社からのGHG排出量(Scope1,2)を大幅に削減。
5 Scope3 Category4(物流)においては、実態に即したデータの抽出、算定方法へと変更した結果、前連結会計年度よりもより適正な数値を算出。
前連結会計年度から当連結会計年度にかけての売上金額の大幅な伸長に伴い、「仕入金額×排出係数」で算定しているScope3 Category1(製品)に関する排出量が大幅に増加、結果として総排出量も大幅増となりました。当社では今後、サプライヤーから排出量の一次情報を入手することにより、サプライヤーの削減努力を反映できるScope3算定ロジックの見直し・適正化を図っていきたいと考えております。
指標 | 基準年 | 目標年 | 目標 |
Scope1,2削減率 | 2022年度(注1) | 2030年 | ▲42.0% |
2050年 | ▲100% | ||
Scope3削減率 | 2022年度(注1) | 2030年 | ▲25.0% |
(注)1 当社グループでは、当連結会計年度分より、Scope3のGHG排出量についてもScope1,2と同様に海外子会社含む連結対象で(グローバル対応として)算定することができましたので、今後の削減に向け、Scope1~3まで全ての基準年を前連結会計年度(2021年度)から当連結会計年度(2022年度)に変更致しました。
② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に係る指標については、当社においては、関連する指標データ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行なわれていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関連する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社の子会社である㈱マクニカのものを記載しております。
指標 | 目標 | 実績(当連結会計年度) |
管理職に占める女性労働者の割合 | 2030年度(2031年3月) までに9~10% | 5.2% |
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