マクセル 【東証プライム:6810】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループでは、独自の強みである「混合分散(まぜる)」「精密塗布(ぬる)」「高精度成形(かためる)」を柱とする「アナログコア技術」に立脚した事業を成長の主軸と位置付け、事業ポートフォリオ改革を進めるとともに、すべてのステークホルダーに最高の価値を提供する「価値創出企業」となることをめざしています。
また、以下を経営の基本方針としています。
a.経営理念
当社グループは、その創業の精神である“和協一致”、“仕事に魂を打ち込み”、“社会に奉仕したい”を継承しつつ、「和協一致 仕事に魂を打ち込み 社会に貢献する」を社是とし、今後もマクセル人としての誇りを堅持し、優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献することを基本理念とします。
あわせて、企業が社会の一員であることを深く認識し、公正かつ透明な企業行動に徹するとともに、環境との調和、積極的な社会貢献活動を通じ、良識ある市民として真に豊かな社会の実現に尽力します。
b.ミッション
当社グループは、優れた技術や製品の開発を通じて持続可能な社会に貢献することをめざし、「独創技術のイノベーション追求を通じて持続可能な社会に貢献する」をミッションとします。
c.ビジョン
当社グループは、すべてのステークホルダーにとってのMaximum Excellence(最高の価値)を創造する「価値創出企業」となることをめざし、「独自のアナログコア技術で、社員・顧客・社会にとってのMaximum Excellenceを創造する」をビジョンとします。
d.バリュー
当社グループがステークホルダーに対して提供し続けるべき価値や強みを、Technological Value(技術価値)、Customer Value(顧客価値)、Social Value(社会価値)の3点とします。ミッションとビジョンの実現に向け、これらの価値を大切にしていきます。
e.スローガン
当社グループ共通のブランドスローガン(合言葉)を「Within, the Future」-未来のなかに、いつもいる-、とします。
f.マクセルグループ行動規範
当社グループの事業活動における共通の規範であるマクセルグループ行動規範を、今後も当社グループの経営に当たって遵守していきます。
g.コーポレートガバナンス・ガイドライン
当社グループの内部統制システムを構築するための基本方針であるコーポレートガバナンス・ガイドラインに従い、今後もコーポレートガバナンス体制の強化を図り、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をめざします。
上記の経営の基本方針に関わるキーワードとした、ミッション、ビジョン、バリュー、スピリット、スローガン(MVVSS)の5項目は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
MISSION (ミッション:当社グループが果たすべき使命) | 「独創技術のイノベーション追求を通じて持続可能な社会に貢献する」 |
VISION (ビジョン:当社グループが実現したい未来) | 「独自のアナログコア技術で、社員・顧客・社会にとっての Maximum Excellenceを創造する」 |
VALUE (バリュー:当社グループが約束する価値・強み) | 当社グループは、3つの価値創出を通じて、すべてのステークホルダーに企業価値の最大化を約束します。 ・Technological Value (技術価値) 独創性と技術力を誠実に追求し、新たな価値を生みつづけます。 ・Customer Value (顧客価値) お客様のニーズに応え、安心・安全な製品を提供するため、期待を超えるモノづくりをつづけます。 ・Social Value (社会価値) 豊かで持続可能な社会の実現のため、世の中の変化をとらえながら、あらゆる課題に挑戦しつづけます。 |
SPIRIT (スピリット:当社グループが大切にする精神) | 社是 「和協一致 仕事に魂を打ち込み 社会に貢献する」 |
SLOGAN (スローガン:当社グループ共通のスローガン) | ブランドスローガン 「Within, the Future」-未来の中に、いつもいる- |
なお、本経営の基本方針については、2021年3月期以降、経営トップによるタウンホールミーティングを主要拠点において順次開催し従業員に直接説明を行ったほか、社内報や社内ホームページも活用し、当社グループ全体への浸透を図っています。
(2) 経営環境
グローバルの経済環境は、当連結会計年度において新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かい、景気回復が期待されましたが、米国、欧州の金融引き締め策の継続や不動産不況に起因した中国経済の減速に加え、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化といった地政学的リスクが高まるなど、不安定な状況となりました。また、自動車市場の回復や円安の進行が好要因となった一方で、半導体製造装置市場の低迷や一部地域の経済停滞、電動力費の高騰などにより、当社を取り巻く事業環境は厳しい状況が続きました。2025年3月期以降は、自動車市場は引き続き堅調に推移し、半導体市場も回復に向かうと予想されますが、欧州や中国の景気低迷の継続、中東情勢の悪化によるエネルギー価格の高騰や物流面の停滞が懸念されます。
当社グループは、2025年3月期以降も事業ポートフォリオ改革や徹底した原価低減策を継続するとともに、企業価値向上に向けた諸施策を進めていくこととしています。
(3) 当社グループが対処すべき課題及び経営戦略
当社グループは、「アナログコア技術」に立脚した競争力のある製品・サービスを強化し、成長が期待される分野において販売を拡大し、当社グループの事業の柱としていくことを基本戦略としています。
a. 中期経営計画「MEX26」の概要
MEX23に続く2025年3月期から2027年3月期までの3年間の中期経営計画MEX26の策定にあたっては、MEX23と同様に当社グループが2030年に実現したい姿である「独自のアナログコア技術で、社員・顧客・社会にとってのMaximum Excellence(最高の価値)を創造する」の実現に向け、世界経済や社会におけるメガトレンドを捉え、注力3分野を定義しました。各注力分野における成長事業を定め、先行開発の推進や新市場の開拓活動強化、積極的な設備投資など経営資源を重点的に配分することで成長戦略の柱とするとともに、事業ポートフォリオ改革の加速による事業基盤の強化、さらには人財育成の強化やサステナビリティ経営の推進など経営基盤の強化にも取り組んでいきます。
MEX26の最終年度である2027年3月期の経営目標は以下のとおりです。
MEX26 2027年3月期経営目標:
連結売上高 150,000百万円
連結営業利益 12,000百万円
連結営業利益率 8%
なお、MEX26の基本方針はMEX23に引き続き「価値(企業価値・利益成長)にこだわる」としています。PBR1.0倍超の実現も念頭に置き、MEX26の期間においては総還元性向を重視し、株主還元策を強化していきます。
b. 注力3分野及び成長戦略
当社グループは、MEX26の策定にあたり、モビリティ革命、ICT/AI革命、人/社会インフラ高度化といったメガトレンドの中での「アナログコア技術」による人、生活、社会の品質向上への貢献を念頭に置き、「モビリティ」「ICT/AI」「人/社会インフラ」を新たな注力3分野としました。
上記の注力3分野に関わる市場環境は以下のとおりです。
(モビリティ)
モビリティ分野では、ADAS (Advanced Driver Assistance System)、CASE (Connected、Autonomous、Shared、Electric)、MaaS(Mobility as a Service)など、安全運転支援機能の拡充、自動運転化や電動化、移動手段の革新などが予想され、関連した部品・材料などの需要が中長期的に増加していくと考えています。なかでも、自動車を中心とした移動体の「安心・安全」が普遍的価値として求められています。当社グループは、自動運転、カーボンニュートラル、死亡事故ゼロなどの実現に向け、タイヤセンシング用の耐熱コイン形リチウム電池、自動運転センシング用の車載カメラ用レンズユニットやLEDヘッドランプレンズ、車載用リチウムイオン電池の材料である塗布型セパレーターを成長事業と位置づけ、先行開発と積極的な投資により事業拡大を図ります。
なお、当社グループは、技術革新に合わせて競争力のある製品開発を行い市場に投入していきますが、自動車市場が安定して成長することが極めて重要です。世界の自動車生産台数は、新型コロナウイルスの感染拡大や半導体の供給不足の影響もあり、2020年から2022年は年間約80百万台の推移となり低迷しましたが、2023年は約86百万台と回復に向かいました。今後も緩やかな成長が続き、2024年は約90百万台、2027年には約100百万台に到達し、2030年には約109百万台となると考えています。
(ICT/AI)
ICT/AI分野では、人が直接使用する機器のデジタル化の進展、クラウドサービス、SNSや言語・画像生成AIの普及拡大やこれに伴う通信データ量の急増、自動車の電動化などを各種半導体が支えており、半導体市場は今後も拡大すると予想されます。当社グループは、半導体製造装置向け組込みシステム、半導体の製造工程で使用される電鋳製品や半導体製造工程用テープを成長事業と位置づけ、既存市場におけるポジションをより強固にするとともに海外も含めた新市場・新顧客への事業拡大を図ります。
なお、当社グループの事業においては、半導体や半導体を使用する情報通信機器や自動車などの需要動向が影響します。当連結会計年度においては、半導体市場の低迷に伴い半導体関連製品の一部で顧客の在庫調整の影響による減収がありましたが、2025年3月期以降は半導体製造装置も含む半導体市場は年平均10%程度の成長が続き、2023年の約5,200億ドルから、2030年には約1兆ドルとなると考えています。
(人/社会インフラ)
人/社会インフラ分野では、QOL(Quality of Life)の向上や健康寿命の引き上げ、労働生産性の向上や人手不足への対応、社会インフラの適切な更新やメンテナンス、省エネ化や再生エネルギーへの転換など、人、生活、社会の持続可能性が求められています。当社グループは、医療機器用一次電池、筒形リチウム電池、建築・建材用テープ、電設工具を成長事業と位置づけ、人、生活、社会に関連した広範な市場における今後の需要拡大に合わせて事業拡大を図ります。また、新事業である全固体電池については、FA機器やインフラ・プラント設備向けで市場導入を開始します。
当社グループは、上記の成長戦略を柱として、2027年3月期の経営目標の達成をめざしていきます。
MEX26における注力分野別の成長事業とその基本戦略及び強み、は以下のとおりです。
(モビリティ)
成長事業 | |||
事業 | セグメント | 基本戦略 | 強み |
耐熱コイン形リチウム電池 (耐熱CR) | エネルギー | ・世界トップシェア(*)維持 ・アナログコア技術の活用による安全性に対する信頼獲得(差別化実現) ・TPMSモジュール小型化需要に合わせた高付加価値製品の生産拡大(技術優位性発揮) ・法制化による市場拡大への対応 ・路面センシング需要拡大に合わせた先行開発(Tier1との共同開発) | ・厳しい環境での動作 温度: 加速度: ・トップメーカーとしての市場実績 |
車載カメラ用レンズユニット | 光学・システム | ・日系メーカートップレベルのシェア(*)維持 ・全天候対応レンズ(クリーニング機能)・オールプラスチックレンズユニットによる差別化 ・拠点別の生産機種最適化 ・自動化による生産効率向上 | ・非球面ガラス・プラスチックレンズの組み合わせによる高精度・高耐久性・低コストの実現 |
LEDヘッドランプレンズ | 光学・システム | ・世界トップシェア(*)維持 ・複合レンズ/ADB用レンズの受注獲得 | ・自由曲面光学設計・高精度成形技術 ・金型設計から成形まで一貫生産の品質実績 |
塗布型セパレーター | 機能性部材料 | ・xEV市場の拡大に向けた生産設備の増強 ・アナログコア技術の活用による安全性に対する信頼獲得(差別化実現) ・国内OEMを中心とした新規採用車種の拡大 ・UBE㈱との連携強化による製品開発・販路拡大 ・車載用途以外の新規需要獲得 | ・電池メーカーとしての経験値の活用(競争優位性) ・高速均一塗布技術による製造力 |
* 当社による推計
(ICT/AI)
成長事業 | |||
事業 | セグメント | 基本戦略 | 強み |
半導体製造工程用テープ | 機能性部材料 | ・アジアを中心とした高付加価値製品の販売拡大 ・技術営業強化による新規半導体メーカー・OSATへの展開加速 ・材料メーカーとの協力による基材・粘着剤の開発力強化 | ・薄膜・平滑塗布技術による安定・高品質製品の製造力 ・高い初期粘着力と優れた剥離性の両立 ・特殊粘着剤の設計技術力によるウェハ・パッケージ表面の低汚染性 |
電鋳製品(EF2) | 光学・システム | ・複雑化・微細化など顧客ニーズへの対応 ・コスト対応力強化による中国・台湾・東南アジア市場でのシェア拡大・新規開拓 ・超高精細化に対応した技術確立 | ・独自の電気鋳造技術により、小孔形成、高精度の孔寸法、高硬度などを実現可能 |
半導体関連組込みシステム(半導体DMS) | 光学・システム | ・世界シェアの高い半導体製造装置メーカーとの長期取引による信頼構築と技術力蓄積(競争優位性) ・半導体市場の拡大に合わせた生産能力増強 | ・半導体製造装置メー |
(人/社会インフラ)
成長事業 | |||
事業 | セグメント | 基本戦略 | 強み |
医療機器向け一次電池 | エネルギー | ・アナログコア技術の活用による高い信頼性獲得(差別化実現) ・CGM(連続式血糖値モニタリング)機器の小型化に対応した製品開発と早期量産立ち上げ ・需要拡大に合わせた増産体制構築 | ・耐熱CRで培った封止技術、長寿命技術による医療用電池としての高い安全性・信頼性 ・幅広い製品ラインアップによる医療機器の小型化への対応 |
筒形リチウム電池 | エネルギー | ・ガス、水道スマートメーター用途での事業拡大 ・IoT関連顧客のマーケティング強化 ・市場拡大に対応した増産体制構築 | ・独自の電極技術と耐熱CRで培った長寿命技術で高容量と長期信頼性を実現 |
建築・建材用 テープ | 機能性部材料 | ・大手住宅メーカーへの参入・OEM獲得に向けた活動強化 ・東南アジアは世帯数の多いインドネシア市場に注力 ・北米気密住宅向けに売上拡大 ・物量増加に伴う増産体制構築 | ・さまざまな施工環境下で課題解決ができる気密・防水部材ラインアップ ・各国の住環境に合わせたカスタマイズ製品対応 |
電設工具 | ライフソリューション | ・国内トップシェア(*)維持 ・小型・軽量工具市場や海外向けODMへの製品投入による世界シェア拡大 ・異業種市場(建築・配管・交通)への展開 ・電力各社との新工法共同研究、工具認証取得 | ・高出力工具を小型・軽量化する超高油圧技術 ・市場要求に対応した機種拡充(汎用電池パック対応) |
新規事業 | |||
事業 | セグメント | 基本戦略 | 強み |
全固体電池 | エネルギー | ・FA機器やインフラ・プラント設備向けで市場導入を開始 ・セラミックパッケージ型全固体電池の用途展開 ・全固体電池モジュールの適用拡大 ・中型全固体電池の製品化(大容量化) ・耐熱・長寿命特性の向上 ・受注増や新規開発完了に合わせた逐次投資 | ・混合分散・高密度成形・気密封止の各技術による高耐熱・長寿命・絶対的な安全性と信頼性 ・材料開発、保護回路開発など上下流企業との協力関係 |
* 当社による推計
c. 経営体制の強化
当社は、業務執行に係る迅速な意思決定及び経営の効率化を図るため、執行役員制度を採用しております。2025年3月期より、取締役4名が執行役員を兼務することも含め執行役員体制を強化しており、業務執行責任を明確化するとともに、コーポレートガバナンスのさらなる強化を図っています。
d. コーポレートブランドの構築
多様なステークホルダーとのコミュニケーションに対する投資を継続してブランド価値の向上を図ります。特に若年層を中心とした消費者にマクセルブランドを浸透させることが、中長期的な成長に向けた重要なテーマであると考えています。マクセルユニーク追求による脱コモディティへのブランディング、パブリシティ、SNSの活用強化、CSV(Creating Shared Value 共通価値創造)の推進、株主・投資家等との積極的な対話を基本施策としてコーポレートブランドの構築に取り組みます。
e. 資本効率性の向上
当社グループは、資本効率性の向上を経営課題に掲げています。株主の皆様からの投資に対するリターンを高めるべく、資本効率性を向上する経営の実践に取り組みます。成長のための投資を十分に確保する一方、投資案件を厳選することによって、投資額に対する収益率を高めていきます。このため、すべての事業部門においてROICを重要経営指標として認識し、その向上に向け運用を強化するとともに、資本効率性を踏まえた株主還元策を実施していきます。
また、中期的な経営戦略の実践のために当社グループが対処すべきその他の課題は次のとおりです。
人財育成の強化
当社グループは、人財の育成と活用を企業経営における最優先事項のひとつであると認識しています。経営環境の変化を捉えた効率的な人財配置の実践、公正で透明性のある人事評価制度の運用により価値に貢献した従業員に報いていくとともに、ダイバーシティ&インクルージョンをさらに深化させ、従業員のエンゲージメントの向上を図り、元気で活力のある企業をめざしていきます。当社グループの人的資本などのサステナビリティに関する考え方や取り組みの詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
サステナビリティを意識した企業経営
当社グループは、中長期的な企業価値の向上に向け、すべてのステークホルダーの視点に立った経営施策を実施していくことが重要であると考えています。特に、サステナビリティを意識して企業価値を向上させることは、企業経営における最重要課題のひとつであると認識しています。当社グループの気候変動対応などのサステナビリティに関する考え方や取り組みの詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
また、リスク管理体制の強化や内部統制システムの整備によりコンプライアンス経営の徹底を推進します。特に、独占禁止法をはじめとする法令遵守の徹底につきましては、日本だけでなく欧米・アジアにおいても強力に推進していきます。当社グループは、これらの施策を通じて、すべてのステークホルダーから信頼される企業グループをめざしていきます。
コーポレートガバナンスの強化
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的に2015年10月に「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定しており、適正な情報開示と透明性の確保に努め、取締役会の役割・責務を適切に果たすとともに、株主及び投資家との建設的な対話(エンゲージメント)をさらに活性化させていきます。
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