企業兼大株主ファーストリテイリング東証プライム:9983】「小売業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 ファーストリテイリングは、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」を企業理念に掲げ、よい服をつくり、よい服を売ることで、世界をよい方向へ変えていくことをめざして、事業活動を続けています。「よい服」とは、シンプルで、上質で、長く使える性能をもち、あらゆる人の暮らしを豊かにできる服。自然との共生を考え、つくられる過程で革新的な技術を使い、地球に余計な負荷をかけない服。健康と安全と人権がきちんと守られた環境で、いきいきと働く多様な人々の手でつくり届けられる服です。こうした考えをカタチにしたのがLifeWearです。

 アパレル産業は、大量生産・大量消費による資源やエネルギー・水使用の増加、服のライフサイクルの短命化、大量の廃棄物問題などから環境負荷が大きく、また長く複雑なサプライチェーンにおいて労働環境に課題があることが指摘されてきました。当社では、2001年に社会貢献室(現、サスティナビリティ部)を立ち上げ、2004年の生産パートナー コードオブコンダクト制定や取引先工場の労働環境モニタリング導入、2006年の全商品リサイクル活動、難民支援など、早くからサステナビリティ活動に取り組んできました。我々は、LifeWearというコンセプトがサステナビリティそのものであると考えており、製品としての服だけではなく、服を生産する過程や販売方法、販売後の服にまで踏み込んだ「新しい産業」を創出し、これまでにないファッションのあり方を世界に提示することで、持続可能な社会への貢献と事業の成長を両立させていきます。

 以降、(1)サステナビリティ共通、(2)気候変動、(3)人的資本・多様性について、それぞれ①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標の項目で記載します。

(1) サステナビリティ共通

①ガバナンス

 当社では、事業と一体でサステナビリティ活動を推進していくために、サステナビリティ委員会を設置しています。代表取締役を含む社内取締役、社外取締役、監査役、社外有識者、関連する執行役員が出席し、サステナビリティの各種方針および施策について多様な観点から議論し、業務執行部門に対する助言・勧告・監督を行っています。当連結会計年度では4回開催し、気候変動・生物多様性・循環経済をはじめとするサステナビリティ活動について議論を重ねました。また、お客様などステークホルダーに社会貢献活動への参加を促すコミュニケーションのあり方などについても議論しました。

 また、リスクマネジメント委員会、人事委員会、人権委員会、コードオブコンダクト委員会、企業取引倫理委員会といった、社内外の取締役、監査役、社外有識者、執行役員などが出席する委員会においても、環境や人権などの重要課題におけるリスクなどについて議論・助言・監督を行っています。また、監査役会は、サステナビリティに関するさまざまな課題をリスクとして認識し、業務執行部門に適宜報告を求めています。

 なお、サステナビリティを担当する取締役、執行役員の報酬に関しては、変動報酬の評価基準に、担当領域に関連する定量または定性的な目標に対する成果を組み込んでいます。

 当社グループ全体でサステナビリティ活動を着実に遂行していくため、各事業部門・各社の経営が中心となって、サステナビリティ部と連携しながら取り組みを実行・推進しています。例えば、お客様が今求めているものをすぐに商品化し、ご提供することをめざし、全社的に改革を進める「有明プロジェクト」の中でも、サステナビリティ活動を重要課題として位置付けています。店舗・Eコマースでの販売、生産・物流を含むサプライチェーンマネジメントの各部署が、温室効果ガス排出量の削減や廃棄物の削減、リサイクル素材を使用した商品の開発、トレーサビリティの確立など、サステナビリティの各課題に対して責任者を任命のうえ、目標とKPIを設定し、取り組みを進めています。

②戦略

 当社では、経営戦略の一環として、サステナビリティ活動のなかで6つの重点領域(マテリアリティ)を定めています。特定にあたっては、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)やESG評価機関が求める指標などを参考に課題項目を洗い出し、自社における重要度やお客様などステークホルダーへの影響と期待を踏まえて重要度の高い要素を抽出、サステナビリティ委員会での議論を経ました。6つの重点領域(マテリアリティ)と主な取り組みは以下のとおりです。

重点領域(マテリアリティ)

主な取り組み

1. 商品と販売を通じた新たな価値創造

・LifeWearを服づくりのコンセプトに掲げ、企画の段階からタイムレスなデザインを追求し、シンプルで高品質、高い機能性をもち、長く愛用される完成された服をつくります。

・服の機能性や品質だけでなく、社会の課題、環境問題などを解決することで、新しい価値を想像していくことをめざします。

・リサイクル素材を使用した循環型商品の開発や、RE.UNIQLO STUDIOでの補修、リメイクなどを通じて、服を長く着続ける楽しさを提案するとともに、環境負荷低減を図っています。

2. サプライチェーンの人権・労働環境の尊重

・サプライチェーンで働くすべての人の人権を尊重、労働環境の整備を最重要な責務と考え、トレーサビリティの追求と透明性の向上に取り組んでいます。

・取引先工場に対し、「生産パートナー コードオブコンダクト」の遵守を要請し、それに基づく定期的な労働環境モニタリングを実施しています。

3. 環境への配慮

・「気候変動への対応」「エネルギー効率の向上」「生物多様性への対応」「水資源の管理」「化学物質管理」「廃棄物管理と資源効率の向上」を重点領域とし、各領域の目標を設定し、取り組みを進めています。

・主要縫製工場、素材工場では、サステナブル・アパレル連合の環境評価ツール(Higgインデックス)を活用し、エネルギー、水、廃棄物など7つの分野で、環境負荷やリスクを把握し、工場と共に環境負荷低減に取り組んでいます。

・気候変動に関する取り組みについては、(2)気候変動をご参照ください。

4. コミュニティとの共存・共栄

・難民などの困難な状況に置かれた世界中の人々に、服の寄贈や雇用、自立支援のサポートを継続しています。

・平和を願うチャリティTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」では、利益の全額を人道的支援を行っている国際的な団体に寄付しています。

・未来を担う子どもや若者のエンパワーメントを後押しするための教育支援、社会進出支援を行っています。

5. 従業員の幸せ

・ジェンダー平等、人種・民族・国籍の多様性、障がい者の活躍推進、多様な性(LGBTQ+)への理解促進を軸に、ダイバーシティ&インクルージョンをグローバルで推進しています。

・すべての従業員に成長機会を与え、グローバルに活躍する人材の育成に取り組んでいます。

・人的資本に関する取り組みについては、(3)人的資本・多様性をご参照ください。

6. 正しい経営

・取締役会の過半数を社外取締役にすることで、その独立性と監督機能を強化しています。

・取締役会の機能を補完する各種委員会を設け、オープンで活発な討議を行っています。

・詳細は第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 をご参照ください。

③リスク管理

 当社は、リスクマネジメント委員会を設置し、事業活動に潜むリスクを定期的に洗い出し、重要リスクの特定とその管理体制の強化を行っています。個別のリスクを含むリスクマネジメントの詳細は3 事業等のリスク をご参照ください。

④指標及び目標

 当社では、サステナビリティの主要領域で2030年度目標とアクションプランを策定しています。目標および主な取り組みの進捗は以下のとおりです。

項目

目標

主な取り組みの進捗

環境に配慮した服づくり

温室効果ガス排出量削減

自社領域:

・2030年度までに温室効果ガス排出量を2019年度比で90%削減

・2030年度までに、全世界の店舗と主要オフィスにおける再生可能エネルギーの割合を100%とする

・2022年8月期では温室効果ガス排出量を2019年度比で45.7%削減*1

・2022年8月期の再生可能エネルギーの割合は42.4%。欧州(一部の国を除く)、北米、ベトナムのユニクロで実質再生可能エネルギー100%を達成*1

サプライチェーン領域:

2030年度までに温室効果ガス排出量を2019年度比で20%削減

・2022年8月期では温室効果ガス排出量を2019年度比で6.2%削減*1

商品領域:

2030年度までに全使用素材の約50%について、リサイクル素材など温室効果ガス排出量の少ない素材に切り替え

・全使用素材に対するリサイクル素材など温室効果ガス排出量の少ない素材の使用割合は2023年企画商品全体で8.5%に上昇。ポリエステルについては全使用量の30.0%でリサイクルポリエステルを採用

水使用量削減

水消費量の上位80%を占める縫製・素材工場について、取引先ごとに目標を設定し、2025年年末までに、各工場の単位当たり水使用量を2020年比で10%削減

2021年実績では、対象工場のうち32%の工場が目標を達成*2

廃棄物削減

お客様へ商品をお届けする過程で使用する資材の削減・切り替え・再利用・リサイクルを通して、早期に「廃棄物ゼロ」を実現

・商品輸送時に商品を梱包するプラスチック袋を削減し、かつリサイクルするプロジェクトを推進

・ハンガーなどプラスチック資材については、紙などの代替素材への切り替えに向けた検討に着手するなど、プラスチック使用量削減をめざした取り組みを推進

有害化学物質の排出撲滅

2030年末までに、商品や生産プロセスにおける、排水基準の遵守による有害化学物質汚染ゼロ達成

2022年末時点では、主要な縫製・素材工場におけるZDHC排水基準の遵守率は99.9%

人と社会に配慮した服づくり

サプライチェーンの透明性向上とトレーサビリティの確立

・サプライチェーンの透明性を高め、原材料レベルまでトレーサビリティを確立

・サプライチェーン全体における人権、労働環境、環境の問題を特定し、確実に是正

・2025年までに、お客様が正しく商品を選択するために必要な情報を特定し、順次開示

・2017年から主要縫製工場のリストを公開し、2018年からは主要素材工場に開示を拡大。2022年3月には継続取引のある全縫製工場を開示

・商品ごとのサプライチェーン計画と実績を把握・確認する仕組みを構築し、2022年秋冬シーズンから、工場と連携してシステム上で運用を開始。2023年春夏シーズンから、ユニクロの全商品について原材料レベルまでの商流を把握

・縫製工場と素材工場だけではなく、主要な紡績工場ともコードオブコンダクトを締結し、定期的な労働環境監査とトレーサビリティ情報の確認を推進

・2023年8月から、ユニクロ(日本、米国)およびジーユー(日本)のオンラインストアの個別商品ページで「地球・社会への影響」のコーナーを設け、製品原産地を掲載

倫理的かつ責任ある方法による原材料の調達

植物系素材、動物系素材それぞれに調達方針を定め、倫理的かつ責任ある方法による原材料の調達を推進

原材料調達ガイドラインにおいて、植物系および動物系それぞれの素材について素材別に推奨素材や禁止素材を定義。今後はガイドラインの遵守状況確認手順の明確化に着手

社会貢献活動のグローバル推進

・当社グループと、一般財団法人ファーストリテイリング財団、公益財団法人柳井正財団との協働により、服の事業を通じた社会貢献活動をグローバル規模でさらに拡大

・2025年度までに、100億円規模で社会貢献活動に投資。グローバル全店舗で地域貢献活動を実施、難民や社会的に脆弱な立場の人々、次世代、文化芸術、スポーツの領域で1,000万人を支援。衣料支援も年間1,000万着に拡充

・2023年8月期では、社会貢献活動に54億円*を拠出、113万着の衣料支援実施。受益者は182万人

*当社グループ、FR財団、柳井正財団、個人による活動を含む

・ユニクロの「PEACE FOR ALL」の活動による収益金は、2022年6月の開始から2023年8月末までで総額6億97百万円

ダイバーシティ&インクルージョンの促進

2030年度までにグローバルで全管理職における女性比率を50%に引き上げ

グループ全体の女性管理職比率は2023年8月末時点で44.7%に上昇

*1 2023年8月期の実績は2024年4月頃に当社サステナビリティウェブサイトにおいて公表する予定です。

*2 2022年の実績は2023年12月頃に当社サステナビリティウェブサイトにおいて公表する予定です。

https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/environment/

(2) 気候変動(TCFD提言への取組)

 気候変動と生物多様性への影響を軽減するため、商品の生産から廃棄までを含む、事業活動全般における温室効果ガス排出量の把握と削減に取り組んでいます。取り組みの推進にあたっては、気候変動枠組条約に基づいて策定された長期目標(パリ協定)における2050年までの温室効果ガス排出量削減目標を尊重し、具体的な目標を掲げ、目標達成に向けた活動を推進しています。

①ガバナンス、③リスク管理

(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス、③リスク管理をご参照ください。

②戦略

 パリ協定の達成に向けて、世界の平均気温上昇を抑えるための取り組みを強化しています。また、気候関連のリスクと機会がもたらす事業への影響を把握し、戦略の策定、実行を進めています。

 Ⅰ温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組み>

有明プロジェクトの推進

・有明プロジェクトを推進し、より高いレベルで実行することで、「無駄なものをつくらない、運ばない、売らない」を実現し、お客様満足の向上と、環境負荷の低減につなげていきます。

・世界中の店舗やEコマースを通じて集まるお客様のご要望など、膨大な情報を分析することで、お客様のニーズを起点にした商品づくりを行っています。エアリズム、ウルトラライトダウン、ヒートテックなどの機能性のある服により、お客様が日々の生活を快適に過ごせるだけでなく、冷暖房の過度なご使用を控えることで、お客様のエネルギー使用量削減への貢献も期待されます。

自社領域(店舗と主要オフィス)

・店舗では、電力の使用そのものを減らす省エネルギーと、自ら電気を生み出す創エネルギーに取り組んでいます。さまざまな省エネ技術による消費電力の削減や、太陽光パネルによる発電など、エネルギー効率を高める工夫を採用したロードサイド店舗(ユニクロ 前橋南インター店)をオープンするなど、今後も検証を進めながら、省エネルギーの店舗を増やしていきます。

・再生可能エネルギー100%の目標達成に向けて、太陽光発電設備の設置や電力会社の提供する再エネメニューの購入、再エネ電力証書の購入などを進めています。

サプライチェーン領域

・ユニクロ・ジーユーの生産量の約9割を占める主要工場を対象に、国や地域、工場の特性によって異なる個別の課題を把握し、丁寧に対応して解決に取り組むことで、省エネルギー施策、脱石炭の推進、再生可能エネルギーの導入を着実に推進しています。

商品領域

・リサイクル素材など温室効果ガス排出量の少ない素材への切り替えを進めています。化学繊維はリサイクル技術が比較的発達しているため、リサイクル素材への切り替えが進めやすく、現在では特にポリエステルにおいて取り組みが進んでいます。コットン・ウールなどの天然素材については、研究開発を取引先パートナーと進めており、既存商品と同等の品質、着心地のよさを実現できる素材の開発に取り組んでいます。

・回収ペットボトルからつくられたリサイクルポリエステルを使用したフリースやポロシャツ、回収したダウン商品からダウン・フェザーを取り出し再利用したリサイクルダウンジャケットなど、新技術やリサイクル原材料を採用した商品の開発にも力を入れています。

RE.UNIQLOの推進

・ユニクロでは、お客様のもとで不要になった服を回収し、服に新しい価値を与えて次へと活かす、お客様参加型の取り組み「RE.UNIQLO」を行っています。

・難民・国内避難民への衣料支援(REUSE)に加え、回収した服を新しい服や資材としてよみがえらせるリサイクル(RECYCLE)を進めています。また、商品のライフサイクルを通じて余分な廃棄物、温室効果ガス排出量、資源使用量の削減(REDUCE)につなげています。

・さらに、ユニクロの「RE.UNIQLO STUDIO」では、愛着ある服を大切に着続けていただくため、リペア(REPAIRE)やリメイク(REMAKE)などのカスタマイズサービスを提供しています。

 Ⅱ気候変動に関するリスク・機会のシナリオ分析

 当社は、事業に対する顕在的・潜在的なリスクを想定したうえで、リスクを予防し、適切に管理および対応することが、事業の持続的な成長に不可欠だと考えています。売上の約80%を占める主力事業のユニクロ事業に関して、以下の2つのシナリオを参照し、2100年までの平均気温の上昇が2℃未満の場合と、4℃の場合について、2030年までを対象期間として、気候変動が自社およびサプライチェーンにもたらすリスクと機会、対応策を検討しました。

・国際エネルギー機関(IEA)の「持続可能な開発シナリオ」および「2℃未満シナリオ(B2DS)」

・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「第5次報告書(RCP8.5)」

 Ⅲ気候変動に関するリスク・機会

項目

リスク

機会

2℃未満の場合

規制

炭素税・カーボンプライシング、排ガス規制

炭素税などの税制または規制強化により、サプライチェーンにおいてコストが上昇し、その結果生産コストが上昇するリスク

省エネルギー推進や再生可能エネルギー導入などにより、サプライチェーンにおけるコスト上昇を抑制し、生産コストの低下につながる

炭素税などの税制または規制強化により、自社の店舗のコストが上昇するリスク

・再生可能エネルギーの導入・省エネルギー推進により、自社の店舗のコスト上昇を抑制し、コスト削減につながる

・お客様の評判の向上によるブランドイメージの向上

EUの燃費・排ガス規制など、中国、ベトナム、バングラデシュ、インドネシアの拠点を中心とする生産国や、日本、東南アジア、EUなどの販売国における規制強化により、物流費が上昇するリスク

有明プロジェクトの推進を通じて、物流の効率化を実現

市場

お客様の価値観の変化

お客様が環境負荷の低い素材、商品やサービスを好まれるようになり、変化するニーズに対応できない場合、売上が減少、評判が低下するリスク

温室効果ガス排出量の少ない素材を開発することで、新たな需要の創造、お客様の評判の向上

環境変化に対応した商品の需要増加

リサイクル活動の加速により、需要の創造、お客様の評判の向上

サステナビリティ活動の強化によるお客様の評判の向上

4℃の場合

急性・慢性

自然災害の増加

自然災害による原材料への影響、生産施設の被害やサプライチェーン寸断による生産停止

・素材調達・企画・生産・物流・販売・在庫管理など、すべての過程を一貫して行うSPA(アパレル製造小売業)であるため、高い対応力を有しており、リスクの最小化・低減が可能であり、需要の維持・創造につなげることができる

・調達先・取引先と強固なパートナーシップを築いていることに加え、適応策の強化を図っていることで、災害発生時の被害を最小化(レジリエントなビジネスの構築)

気温の上昇

気温の変化に対応しない商品構成による売上低下

新しい機能性素材で新しい需要を創造

 Ⅳ気候変動に関するリスク・機会への対応戦略

・2℃未満に気温の上昇が抑えられた場合と、4℃まで気温が上昇した場合、どちらのシナリオが実現した場合でも、服、特にLifeWearへの需要は変わらないと考えています。温室効果ガス排出量がより少ない素材や、循環型の商品、気候変動に対応した商品(例えば、ヒートテックやエアリズム)といったお客様のニーズに合った商品を開発することで、市場優位性が増し、売上は拡大すると考えています。

・2℃未満の場合、サプライチェーンへの影響としては、炭素税などの税制、規制強化、電気料金の上昇など、生産や店舗におけるコストが上昇するリスクがありますが、省エネ推進や再エネ導入で、リスクを低減させることができます。自動車やトラックの燃費・排ガス規制など、EUをはじめ世界各国で規制強化が進む場合、物流費が上昇するリスクがありますが、ハイブリッド車・EV車への移行を促進することや、有明プロジェクトを通じた物流効率の向上などを行うことで、リスクの低減が可能です。

・4℃の場合は、干ばつや大雨など異常気象の多発や、水不足などの物理的リスクにより、生産、物流、販売のサプライチェーン全体に甚大な影響を及ぼすことが想定されますが、原材料、生産工場などの調達先の分散や、長期的な契約・パートナーシップにより、リスクを低減することが可能です。物流や店舗についても、地域の分散や、BCPの観点からの立地などの選定、災害訓練により、物理的なリスクを最小限に抑えることができます。

・当社はSPAであるため、潜在的、顕在的なリスクに対し、柔軟に対応を行うことが可能です。お客様のニーズの変化に対応した服づくりや、原材料、生産工場などの調達先の分散化、輸送形態の多様化、物流拠点の選定、販売店舗の立地の選定にBCPの視点を取り入れるなど、気候変動への対策が進まず、気温上昇が抑えられなかった場合を想定した対応策を講じています。

・これらの戦略の妥当性と進捗については、適切な情報開示を行い、機関投資家をはじめステークホルダーの皆様との対話や、各種ESG評価の指標への対応を行うことにより、持続的な企業価値向上につながると考えています。

④指標及び目標

 当社は、気候変動について、以下の2030年度目標とアクションプランを策定しています。

・2030年度までに、店舗と主要オフィスなど、自社運営施設におけるエネルギー使用由来(スコープ1、スコープ2)の温室効果ガス排出量を90%削減(2019年度比)

・2030年度までに、ユニクロ・ジーユー商品の原材料生産・素材生産・縫製に関わる温室効果ガス排出量(スコープ3、カテゴリ1)を20%削減(2019年度比)

 この目標は、国際機関SBTイニシアティブより、パリ協定の目標に基づいた温室効果ガス排出量の削減目標であるSBT(Science-Based Targets)として認定されました。さらに、2050年の温室効果ガスの排出量実質ゼロに向けて、取り組みを強化していきます。

 温室効果ガス排出量は「GHGプロトコル」に準じて算定しており、2022年度8月期までの実績は以下のとおりです。

2023年8月期の実績は、2024年4月頃に当社サステナビリティウェブサイトにおいて公表する予定です。

https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/environment/climatechange.html

 Ⅰ 自社(店舗、オフィスなど)

 単位:t-CO2e、範囲:ファーストリテイリンググループ

スコープ

項目

2019年度

(2018年9月-

2019年8月)

2020年度

(2019年9月-

2020年8月)

2021年度

(2020年9月-

2021年8月)

2022年度

(2021年9月-

2022年8月)

スコープ1

(自社直接排出)

ガス

12,295

13,026

10,029

9,738

スコープ2

(自社間接排出)

電気

ロケーションベース

308,691

298,205

291,190

286,113

マーケットベース

298,566

279,281

275,419

159,047

2019年度比(スコープ1とスコープ2マーケットベース値合計の削減進捗)

-

-6.0%

-8.2%

-45.7%

 スコープ1、スコープ2について、信頼性向上のため、SGSジャパン株式会社による第三者検証を受けています。

 検証範囲:2020年度までは国内主要オフィスと国内ユニクロ・ジーユーの店舗のみ、2021年度以降はファーストリテイリンググループ

 Ⅱ自社以外(サプライチェーンほか)

 単位:t-CO2e、範囲:ファーストリテイリンググループ

スコープ3におけるカテゴリ

2019年度

(2018年9月-2019年8月)

2020年度

(2019年9月-2020年8月)

2021年度

(2020年9月-2021年8月)

2022年度

(2021年9月-2022年8月)

1 購入した製品・サービス

4,694,117

4,373,497

4,161,926

4,243,676

カテゴリ1のうち、商品の原材料生産・素材生産・縫製に関わる排出量(ユニクロ・ジーユー、2030年度目標対象範囲)

4,165,738

3,944,349

3,883,960

3,906,500

2019年度比

-

-5.3%

-6.8%

-6.2%

2 資本財(対象外)

-

-

-

-

3 燃料・エネルギー関連の活動

(スコープ1またはスコープ2に含まれないもの)

43,836

41,613

42,546

24,815

4 上流の輸送・流通

355,654

379,042

378,114

552,711

5 事業において発生した廃棄物

120,006

109,636

107,578

83,335*

6 出張

6,655

7,139

7,060

14,822*

7 従業員の通勤

61,120

65,314

56,402

54,554

8 上流のリース資産(スコープ1・2で計上)

-

-

-

-

9 下流の輸送・流通

-

-

-

-

10 販売した製品の加工(対象外)

-

-

-

-

11 販売した製品の使用(対象外)

-

-

-

-

12 販売した製品の使用後処理

438,926

463,751

429,219

764,228*

13 下流のリース資産(対象外)

-

-

-

-

14 フランチャイズ

10,086

5,655

3,405

2,731

15 投資(対象外)

-

-

-

-

*排出原単位または活動量のバウンダリの変更を行いました。

 スコープ3について、信頼性向上のため、SGSジャパン株式会社による第三者検証を受けています。

 検証範囲:2021年度まではカテゴリ1のユニクロ・ジーユー商品の原材料生産・素材生産・縫製に関わる排出量のみ、2022年度はファーストリテイリンググループのすべての対象カテゴリ

(3) 人的資本・多様性

①ガバナンス③リスク管理

(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス、③リスク管理をご参照ください。

②戦略

 当社は、「グローバルワン 全員経営」の方針の下、全ての従業員に対し、性別、国籍、宗教、人種、年齢、所属、在籍期間などの属性に関わらず成長機会を与え、多様な人材が主役となって能力を発揮する環境をつくることで、企業理念である「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」を実現し、広く社会に貢献していきます。

Ⅰ人材確保・育成の重点領域

 当社の成長の原動力は、世界中で活躍する従業員です。「真・善・美」や「お客様志向」という共通の価値観に基づき、高い基準や理想をもって自ら考え、実行できる人材が、挑戦、実行、達成を続けることで、世界中のお客様に最も愛されるNo.1ブランドになるという目標の達成を実現できると考えています。そのために、特に以下の3分野での人材獲得と育成を重点領域とし、取り組みを強化します。

<お客様の真のニーズに応える店舗販売員>

 地域の実情やお客様の真のニーズに合わせ、本当に心地よいサービスを提供するため、自ら考え、行動する店舗販売員

<グローバル経営人材>

 国・地域、事業領域を超え、グローバルでリーダーシップを発揮することで、具体的な成果を上げ、社会に貢献する、店長をはじめとするグローバル経営人材

<世界水準の高度専門人材>

 デジタル、IT、クリエイティブ、グローバルサプライチェーンマネジメントなど、世界水準の専門性をもち合わせると同時に、既存の概念にとらわれず、未来を創るための新しい機能・仕組みを世界水準で構築できる人材

Ⅱ人材確保の取り組み

<ダイバーシティの推進>

・あらゆる人の生活に寄り添うLifeWearを作り続けるために、豊かな個性と才能が融合された多様性あふれる組織の構築を推進します。グループの経営幹部となれる女性や外国人を積極的に採用し、国籍や経験に関わらず挑戦心や新しい発想をもつ人材を経営層や要職に抜擢し、適正な評価と必要な支援を行うことで、成長を積極的にサポートします。

・多様な人材が安心して働くためにさまざまな施策を推進しています。

■女性活躍推進の取り組みとして、女性人材開発会議、女性役員・役職者とのキャリアセッションを定期的に実施

■全ての従業員が、ライフステージに合わせた働き方を選択しキャリア形成が図れるように、ベビーシッター補助制度や託児支援制度などの人事制度、施策を実施

■東京本部に所属する外国籍社員のキャリア構築を支援するために、メンター制度や、執行役員と少人数で対話する場としてのラウンドテーブルディスカッションを実施

■性的指向や性自認における多様性を尊重するために、2019年にパートナーシップ登録制度を導入、LGBTQ+ネットワーク組織「Symphony」の結成や、理解促進のために社内誌を発行

■障がい者雇用を積極的に行い、2023年の国内グループ会社の障がい者雇用率は4.89%(日本法定比率は2.3%)。現在は東南アジアや欧州など、グローバルに雇用が広がり、グループ全体で約1500名(2023年8月現在)の障がいのあるスタッフが勤務

<新卒採用の高度化・多様化>

・ブランド別・営業部門別の採用体制から、グループ一括採用に変更することで、当社が求める水準の人材を、ブランドを超えて確保します。また、デジタル、IT、クリエイティブ、グローバルサプライチェーンマネジメントなどの高度専門人材も、新卒から採用し、国を超えて育成していきます。

・グローバルで、店舗で活躍する意欲のある優秀な人材の採用を促進します。世界中の大学と連携し、インターンシップやワークショップなどを実施することで、当社のビジネスモデルや商売の本質への理解と共感を深めます。こうした施策を通して現場で活躍できる優秀な人材を発掘し、経営幹部候補として育成していきます。

<高度専門人材の中途採用の強化>

 世界水準の高度専門人材の採用を強化します。デジタル、IT、クリエイティブ、グローバルサプライチェーンマネジメントなど、新しい機能を構築し、事業拡大をリードする経営幹部人材を全世界から獲得します。

<優秀な店舗販売員の確保>

 お客様とつながり、お客様の声を商品化し、最適な形でお届けすることをめざす「情報製造小売業」を現場で体現できる優秀な販売員の確保に取り組みます。報酬水準を引き上げ、優秀で意欲ある人材を惹きつけると同時に、実力、成長に応じた多様なキャリアパスを準備することで、優秀人材の定着を図ります。

Ⅲ人材育成と公正な評価の取り組み

<グローバルで成長機会を提供し、人材配置の最適化と、組織の多様性を推進>

・グローバルジョブローテーション

 グローバルに経営幹部人材の配置を最適化することで、各国・各地域の経営体制の強化を図っています。さらに、各国の優秀人材に対し、所属事業、所属国を超えたグローバルでの成長機会を戦略的に与え、成果を出した人は、各国の経営幹部へと抜擢します。

・グローバル社内公募

 これまで各国で運営していた公募制度を、グループ・グローバルに拡大します。グループ・グローバルで必要なポジションを明示し、ブランドや所属国、所属部署を超えたポジションに、応募できるグローバル公募制度を設置することで、グローバルを舞台に自らキャリアを切り拓く機会を拡充しています。

・日本への育成派遣の拡充

 世界各地の店舗で活躍する意欲ある海外の優秀な人材は、入社後に日本への育成派遣を行い、日本の店長や販売員が実現するお客様満足の基準、その背景にあるファーストリテイリングの理念や日本の文化を肌で感じることで、当社のグローバル経営人材候補として育成します。

<ダイナミックで公正な人事評価と抜擢>

 当社では、職種階層別に求められる能力や要件を定義したグレード制度を採用し、その人の属性によらない、個人の能力に基づく評価・登用を半年ごとに実施しています。従業員の成長に応じて、グレードの飛び級を含めた大胆な抜擢を行うことで、成長を後押しします。また、評価の公正性、透明性を確保するために、直属の上司の評価だけでなく、部門単位で人事の担当者も含めた、評価会議と、一定のグレード以上の従業員については、グループ全執行役員で構成するグローバル評価会議で審査を行います。

<販売員の育成と、多様なキャリアパスの整備>

 販売員は、公正な評価の下、能力に応じた昇進昇給制度やキャリアパスを設けています。また、販売員として成長していくために「ファーストリテイリングの理念・価値観教育」、「既存の商品知識を超えお客様のニーズに寄り添った商品提案力を培うための教育」など、必要な教育を適時適切に提供することで、長期で働き、成長できる環境を整備しています。さらに、意欲と能力があれば、販売員から店長、さらには経営人材へとキャリアを進めることができる多様なキャリアパスは、当社の創業以来の強みとして、さらに充実させていく方針です。

Ⅳ社内環境整備

<FR Management & Innovation Center>

 当社の社内人材育成機関(FR Management & Innovation Center)では、多様な人材が、ファーストリテイリングの経営理念や商売の原理・原則を理解し、それに基づいて、日々の商売のなかで能力を発揮できるような組織づくりを推進しています。具体的には、代表取締役会長兼社長である柳井正が著した「経営者になるためのノート」、「FRの精神と実行」、「FRは何を変えたのか」を使用した教育研修の実施や、柳井を含む各国のCEOなど、執行役員とのダイレクトセッションの機会、各種教育研修プログラムを展開しています。さらに、年2回、グローバルの全店長や本部社員および優秀な店舗販売員を集めた「FRコンベンション」を開催し、全社戦略や重要な経営メッセージの浸透を図っています。

<グローバルヘッドクオーター機能の世界拡大>

 グローバルヘッドクオーター機能を日本のほか、米国などにも拡大し、多様な人材が、最適な場所で、当社の基幹機能と世界でつながって仕事を進める体制を構築します。

<従業員エンゲージメント調査の実施>

 従業員一人ひとりが意欲的に業務に取り組み、スピード感をもって成長する環境づくりを推進するために、グローバルの従業員を対象としたエンゲージメントサーベイを毎年実施しています。調査結果は、事業別、部署別に分析し、課題を特定することで、改善策のKPIを設定し、環境改善に向けた取り組みを推進しています。また、その進捗と効果の測定を行い、改善につなげています。

<従業員一人ひとりが健康で安全に活躍できる職場環境づくり>

・ファーストリテイリンググループ 安全衛生宣言

 世界一「安全で健康に働ける会社」になることをめざし、安全衛生の基本方針および行動指針8カ条を定めています(ファーストリテイリンググループ 安全衛生宣言)

・労働安全衛生管理体制

「ファーストリテイリング ウェルネスセンター」を設置し、産業医や、保健師、産業カウンセラー、関連部門とともに、さまざまな安全衛生施策、メンタルヘルスケア、その他の従業員支援を推進しています。当該機能のグローバルへの拡大を図ると同時に、事業の経営とは切り離して、管理、運営することで、適切な運営と統制を図っています。

・労働時間削減

 労働時間や休憩時間、休暇に関する国際基準と現地法令を遵守し、残業を前提としない働き方を推進しています。各部門の管理職者が従業員の労働時間を毎月管理するほか、各国、各事業の人事部門による部署横断的な労働時間の管理・監督を強化することで、長時間労働の撲滅を図っています。

④指標及び目標

 上記方針の進捗を測る主な指標(2030年度目標と実績)は次の通りです。

Ⅰ女性管理職比率(2023年8月末時点)

 

女性比率

実績の内訳

 

目標

実績

就任者合計

うち女性

管理職(Global)*

50%

44.7%

2,144名

958名

うち執行役員(Global)

30%

9.6%

52名

5名

*管理職は、営業部ではブロックリーダー、エリアマネージャー、一定グレード以上の店長、本部では執行役員、部長、リーダーを指しています

Ⅱ日本国籍以外の管理職比率(2023年8月末時点)

 

外国人比率

実績の内訳

 

目標

実績

就任者合計

うち日本国籍以外

管理職(Global)*

80%

56.4%

2,144名

1,210名

うち執行役員(Global)

40%

19.2%

52名

10名

*管理職は、営業部ではブロックリーダー、エリアマネージャー、一定グレード以上の店長、本部では執行役員、部長、リーダーを指しています

ⅢFRグループエンゲージメントサーベイスコア(2023年実施分)

2023年8月期の調査結果では総合指数74.3%(対象人数はグローバルで35,058名、回答人数32,115名、回答率92%)となりました。この結果を踏まえ、エンゲージメントの観点で課題調査とその改善活動に取り組んでいます。今後も調査を継続する予定です。

対象人数

35,058名

回答人数

32,115名

回答率

92%

総合指数(*)

74.3%

*エンゲージメントに関する設問の内、肯定的な回答をしている社員の割合です

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