企業ビーアールホールディングス東証プライム:1726】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当連結会計年度における研究開発費総額は71百万円であり、全額が建設事業に係るものであります。なお、主な内容は次のとおりであります。

(1)亜硝酸リチウムを活用したコンクリート構造物の長寿命化技術

 我が国の社会資本を支えるコンクリート構造物は老朽化の一途を辿っており、特に、塩害や中性化による鉄筋腐食やASRによるコンクリートの異常膨張など、深刻なコンクリート構造物の劣化に対する効果的な補修技術の開発が急務とされてきました。そのような社会状況の中、当グループでは鉄筋防錆効果およびASR膨張抑制効果を有する「亜硝酸リチウム」という材料の性質に一早く着目し、京都大学をはじめ多数の大学との共同研究により「ASRリチウム工法」および「リハビリカプセル工法」というコンクリート補修技術を開発、実用化し、技術の普及に努めています。「ASRリチウム工法」は、ASRにより劣化したコンクリート構造物全体に亜硝酸リチウムを内部圧入することで、これまで不可能とされてきたASRの劣化進行を根本的に抑制することができます。現時点で本工法に対抗し得る類似技術は実用化されていないため、今後もこの分野において高いシェアを維持できると考えます。「リハビリカプセル工法」は、塩害や中性化により劣化したコンクリート内部の鉄筋付近に亜硝酸リチウムを内部圧入することで、コンクリート中の鉄筋をはつり出すことなく確実に鉄筋防錆処理することができます。これまで塩害補修の決め手は電気防食工法と言われてきましたが、本工法を使えば電気防食工法より安価に補修することが可能となります。さらに,老朽化した道路橋床版の補修では、床版下側からの施工が可能であるため,道路規制等の社会的な影響を抑えながら構造物の長寿命化が可能となります。近年では港湾分野での大規模補修工事、NEXCOや阪神高速道路での大規模更新事業にも採用され、さらなる販路拡大が期待されています。今後は、施工方法の合理化を図るとともに、当技術を応用し劣化したコンクリートの強度回復に繋がる技術開発に着手していきます。

(2)既設構造物の内部補強技術

 我が国の社会インフラは、高度経済成長期に大量に建設されたことから、供用年数が一般的な耐用年数の50年を超過し、老朽化した構造物が今後益々増加することが懸念されています。また供用されるなかで、ニーズの変化により更新や改築・増築の必要に迫られた構造物や、頻発する地震に対する補強が必要な構造物が数多く存在します。しかし、それらの構造物を全て更新するためには多額の費用を必要とするため、既存構造物を使いながら補強や増改築が可能な技術への需要が高まっています。そこで当グループは、得意分野であるプレストレストコンクリート技術のノウハウを応用して、既存構造物の部材内部に追加配置した緊張材によりプレストレスを与えて外観を変えることなく補強する「K-PREX工法」を開発し実用化しました。本工法は、コンクリートのひび割れを抑制できるため構造物の耐久性を向上できます。また、本工法を適用することで、従来の補強工法の課題である既設部材の増厚・重量増加や土中構造物での大規模な掘削を最少化でき、経済性向上(約11%)や工程短縮(約28%)が見込めます。今後は、床版等の薄肉部材や厳しい腐食環境下での構造物の機能と耐久性を向上等に適用するために、非鉄緊張材の適用検討を進め、さらなる販路拡大を目指します。

(3)老朽化した橋梁床版の更新技術

 近年、社会インフラの老朽化に伴い、高速道路橋の鉄筋コンクリート床版をプレキャストプレストレストコンクリート床版へ取り替える事業(大規模更新事業)が本格化しています。この事業においては、供用中の道路の交通規制を伴うことから、急速施工が求められます。このような社会ニーズに対応するため、当グループでは、日鉄エンジニアリング社との共同開発により、更新工事(既設橋梁の床版取替)における交通規制期間の短縮や施工の合理化・省力化が図れるプレキャスト床版の接合工法「ELSS Joint」を実用化しました。本工法は、従来のような鉄筋を用いた継手工法とは異なり、プレキャスト床版同士の接合部に専用材料を充てんするだけで鉄筋配置を省略した世界初の画期的な工法であり、従来工法と比較して、労働生産性は14%程度向上し、交通規制期間を1割以上短縮することが可能となります。近年では、床版取替工事での採用も進み,2023年度は1橋に適用され,2024年度以降は5橋で適用が予定されており、さらなる販路拡大が期待されています。また、ずれ止めが多数配置される鋼合成桁橋の床版更新では、既設床版の撤去において、従来手はつりやウォータージェットによるコンクリートはつりを伴うことが多く、工程の長期化や高コストが課題となっていました。これに対して、当グループでは、コンクリートカッターを使用した合理的な工法「K-SLASH工法」を開発しました。本工法では、施工の合理化により、従来方法と比較して工事期間を20%程度短縮することが可能となります。2023年度は1橋に適用され,その効果を発揮しました。今後も高速道路の大規模更新事業での採用に向けた取組みを推進し、社会的ニーズに応えていきます。

(4)コンクリート二次製品を活用した防災・災害復旧技術

 近年、我が国では大地震、豪雨、土砂災害などの自然災害が全国的に激甚化、頻発化している傾向にあり、これに対する社会インフラの整備、維持、早期復旧への対応が急務となっています。このような社会ニーズに対応するため、当グループの得意分野であるコンクリート製品の製造技術を生かし、キッコウ・ジャパン社との共同開発により、簡易施工の土留め壁「ロックフレーム工法(S型)」を実用化しました。「ロックフレーム工法(S型)」は、コンクリート二次製品の格子状フレームに石材を密に詰め、フレームと石材を一体化した「もたれ式擁壁」です。従来工法と比較して、技能者の減少が著しい石積みの技能に左右されることのない空石積みの特長を活かし、排水性にすぐれ、環境にやさしい、擁壁や護岸を簡易に構築する技術であり、施工が簡易なことから、法面・斜面の災害復旧等にも適した工法です。本工法を適用することで、従来技術と比較し現場工程の短縮(約40%)に加えて、コンクリート使用量の削減に伴うCO2削減(約54%)に貢献できます。今後、フレームのラインナップ拡充による工法の適用拡大を図り、販路拡大を目指します。

(5)建設工事における生産性向上技術・環境負荷低減

 建設業では、他の産業に比べて技能者の高齢化が急速に進行しており、将来的に社会資本を維持するために必要な担い手の確保や生産性の向上が喫緊の課題となっています。このような現状に対応するため、ICT(情報通信技術)や規格の標準化等で建設現場のプロセスの最適化を図る活動「i-Construction」(アイ・コンストラクション)が国土交通省で推進される等、官民をあげた取組みが活発になっており、当グループにおいても、建設工事の省力化やプレキャスト製品の合理化といった生産性向上に資する技術導入や新規開発を進めています。その一例として、コンピュータ上で作成した橋梁の三次元モデルを施工計画・施工管理に利用するCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)と呼ばれる情報管理技術、コンクリート工事におけるGPS(全地球測位システム)方式の生コン運搬管理システムやICTを活用したコンクリート打設管理およびプレストレス導入管理システム等、様々な建設ICTを橋梁工事に導入し、施工管理業務の高度化・省力化を進めています。また、政府において2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことが宣言され、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を抑制することが世界的に求められています。当グループでは、セメント製造時に多くの二酸化炭素が排出されることに着目し、副産物である高炉スラグ微粉末でセメントを置換した二酸化炭素排出量低減コンクリートを使用した土木製品を実用化しています。今後、置換率の増加等、さらなる環境負荷低減に向けた研究を進めてまいります。

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