トーホー 【東証プライム:8142】「卸売業」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
トーホーグループは1947年の創業以来、「食を通して社会に貢献する」の経営理念のもと、「美味しさ」そして「安心・安全、健康、環境」を経営のキーワードに「食」の様々なシーンを支え続ける企業グループとして、外食事業者の皆様のお役に立つ商品やサービスの提供に努め、「外食ビジネスをトータルにサポート」できる国内でも稀有な企業グループとして事業を拡大しております。
人と食との関わりの中で、経営理念、経営のキーワードを基本とした価値ある商品やサービスを提供し、お客様満足度を高めていくこと、さらには株主様、お客様、取引先様、社員・従業員、そして地域社会といったあらゆるステークホルダーから信頼され必要とされる経営を実践することが企業価値を高めていくものと考えております。
当社グループではこうした基本的な考え方のもと、持続的成長と収益力の向上、組織の活性化と人材の活性化、顧客・現場視点の経営、コンプライアンスと適時情報開示、スピード経営を経営方針とし、企業価値を高める経営を進めてまいる所存であります。
(2) 経営環境
2020年からの新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、一時期は大恐慌以来最悪と言われる景気の落ち込みを記録したものの、現在は世界中でアフターコロナの社会経済活動の正常化が進む中、景気は緩やかな回復基調で推移しております。一方、不安定な国際情勢、食品・エネルギー価格の高騰など、景気減退への懸念は予断を許さない状況が継続しております。
日本経済においても、アフターコロナに向けた動きが本格化し、足元ではコロナ禍以前の社会経済活動に戻りつつあります。一方、中長期的には、人口の減少や高齢化の進行による経済成長の停滞など、日本経済を取り巻く環境の厳しさは継続しております。
このような状況のなか、当社グループの主な販売先である外食産業においては、コロナ禍に伴う行動規制の解除後は人流が大きく回復し、当社グループの業績も堅調に推移しております。
ディストリビューター(業務用食品卸売)事業は、業務用食品専業卸の業界最大手として、外食産業のお客様に貢献しております。事業活動の歴史が長く基盤が充実している西日本に対し、関東地区と海外は新たな成長領域として事業基盤の強化を推進しております。そのための戦略として、近年はM&Aに注力し、関東地区は13社、海外は3ヵ国11社がグループ入りいたしました。今後も関東地区と海外の事業基盤の強化を進めるとともに、M&Aやアライアンスを活用した未開拓エリアへの進出も検討してまいります。
キャッシュアンドキャリー(業務用食品現金卸売)事業は、中小飲食店の毎日の仕入れにお役立ていただく、プロの食材の店「A-プライス」などの業務用食品を販売する店舗を関東以西に95店舗展開しております。顧客ニーズに対応した食材提案や店舗の出店・改装などを通し、引き続き中小飲食店の発展に貢献いたします。一方、近年は「A-プライスオンラインショップ」やフランチャイズ2号店を開店するなど、新たな収益の柱の育成を図っております。
食品スーパー事業は、兵庫県南部で地域密着型の食品スーパー「トーホーストア」を18店舗展開(提出日現在)しております。なお、同事業は2025年1月末までに株式会社バローホールディングスの連結子会社3社、株式会社三杉屋およびゴダイ株式会社へ一部店舗を事業譲渡し、残りの店舗については閉鎖し、食品スーパー事業から撤退を予定しております。譲渡理由につきまして、近年は競争激化に伴い業績の低迷が続くなかで、今後も当社グループで事業を継続することは困難と判断する一方、従業員の雇用の維持、地域の食のインフラである店舗の存続を実現できる先に事業を譲渡することが最善であると判断した結果となります。
フードソリューション事業は品質管理、業務支援システム、業務用調理機器、店舗内装設計・施工など「外食ビジネスをトータルにサポートする」様々なソリューションの提供を引き続き強化しております。特に近年は飲食店運営の深刻な課題である人手不足解決のため、省力化や時短が図れる業務用調理機器や、受注や損益管理などの店舗運営の効率化を図る業務支援システムの提案に注力しております。
(3) 経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的成長と収益力の向上を通じて、企業価値を継続的に高めていくことを経営目標の一つとしております。具体的には事業の成長を示す「売上高」と収益力を示す「営業利益」、また最終的に事業のリスクを負担する株主様からお預かりしている資金に対しそのリスクに見合う利回りが確保されているかという観点から「ROE」を中長期的な指標としております。
<売上高>
回次 | 第67期 | 第68期 | 第69期 | 第70期 | 第71期 |
決算年月 | 2020年1月 | 2021年1月 | 2022年1月 | 2023年1月 | 2024年1月 |
売上高前期比(%) | +6.2 | △19.5 | +1.3 | +14.3 | +13.6 |
<営業利益>
回次 | 第67期 | 第68期 | 第69期 | 第70期 | 第71期 |
決算年月 | 2020年1月 | 2021年1月 | 2022年1月 | 2023年1月 | 2024年1月 |
営業利益前期比(%) | △12.5 | ― | ― | ― | +114.2 |
売上高営業利益率(%) | 0.6 | ― | ― | 1.7 | 3.2 |
(注)売上高営業利益率 =(営業利益)÷(売上高)
(注)第68期、第69期および第70期の営業利益前期比並びに第68期および第69期の売上高営業利益率は、営業損失を計上しているため記載しておりません。
<ROE(自己資本当期純利益率)>
回次 | 第67期 | 第68期 | 第69期 | 第70期 | 第71期 |
決算年月 | 2020年1月 | 2021年1月 | 2022年1月 | 2023年1月 | 2024年1月 |
ROE(%) | 2.0 | ― | 1.7 | 4.8 | 14.5 |
(注)ROE =(親会社株主に帰属する当期純利益)÷((期首自己資本+期末自己資本)÷2)
自己資本 = 純資産合計-新株予約権-非支配株主持分
(注)第68期のROEは、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため記載しておりません。
(4) 中期経営計画
コロナ禍が落ち着くとともに、社会経済活動が活発になり、加えてインバウンドが一部戻ってくるなどで外食市場は順調に回復しており、当社グループの業績も再び成長軌道に戻りつつあります。一方で、人手不足、原材料費や物流費の上昇などは当面続くものと考えられます。加えて少子高齢化に伴う国内外食市場の変化も予測されます。
このような環境下において、当社グループは次期中期経営計画SHIFT-UP 2027において、持続的な成長を力強く実現するための「新たな成長ステージへの変革」を実行するとともに、持続可能な社会の実現への貢献と自社の持続的な成長を実現する「サステナビリティ経営の推進」等に取り組み、中長期的な企業価値向上を目指してまいります。
[新たな成長ステージへの変革]
1.エリア毎の市場環境に沿った事業展開へのシフト
・首都圏再編
・沖縄再編
2.新たな市場の開拓
・プライベートブランド商品強化
・キャッシュアンドキャリー(C&C)事業拡大
・海外事業拡大
3.外食ビジネスをトータルにサポートする機能の拡充
・外食企業向け業務支援システム刷新
・フードソリューション(FSL)事業拡充
4.情報技術の最大活用による生産性の向上
・IT/DX戦略の推進
5.M&A、アライアンスの活用
・M&Aの継続
[サステナビリティ経営の推進]
1.美味しくて、安心・安全な食の提供
・グループに起因する食品事故ゼロ
・サステナビリティフード開発強化
2.持続可能な経営の継続
・ガバナンスの更なる強化
3.未来へ繋げるための環境対策の取り組み
・2030年度のCO2排出量を2013年度比で46%削減(Scope1,2)
4.個性の尊重と能力を発揮できる組織の構築
・従業員エンゲージメント向上
・健康経営の深化
・ダイバーシティの推進
・自律的なキャリア形成支援の継続・充実
5.地域社会発展への貢献
・食を通して豊かな地域づくりに貢献する活動の継続
(5) 優先的に対処すべき事業上、財務上の課題
次期(2024年2月1日から2025年1月31日まで)の見通しにつきましては、企業業績の回復とともに賃上げによる消費の回復も期待され景気は緩やかに上向くと思われ、当社グループの得意先が属します外食市場も引き続き拡大することが期待されます。一方で人件費上昇等による物流費や諸物価の上昇、原材料の高騰に伴う調達コストの上昇は今後も続くものと思われ、依然として先行き不透明な状況が想定されます。
このような状況の中、当社グループは次期から始まる新たな中期経営計画(3カ年計画)「SHIFT-UP 2027」をスタートさせ、業容拡大と収益力向上を実現するとともに、持続可能な社会に貢献できる企業グループの実現を目指した様々な施策を開始いたします。
主力事業の一つでありますディストリビューター事業では、更なるシェア拡大に向けセールスを増員し、重点エリアでの新規得意先獲得を進めてまいります。また、営業補助業務の強化に加え、庫内作業の効率化を推進し、セールスが営業活動に専念できる体制を一層拡充してまいります。一方で既存外食事業者の満足を高めるため、商品や当社グループが持つサービスの提案を一層強化してまいります。特に顧客ニーズに添って開発されたプライベートブランド商品や厨房内での作業の効率化が図れる商品などの提案を強化してまいります。また中食(なかしょく)市場や病院・介護施設給食は引き続き重要業態として取り組んでまいります。
次期中期経営計画での成長戦略の一つである「エリア毎の市場環境に沿った事業展開へのシフト」では、当期に株式会社トーホー沖縄を設立したことに続き、来期は首都圏において「マザー&フロント体制」の構築をスタートさせ、大市場である首都圏の配送網を充実させることで、顧客へのサービス向上に努めシェア拡大を図ってまいります。「マザー&フロント体制」は既存の支店網をベースにスタートさせますが、2024年12月には横浜に統合拠点を設置し、本格稼働させる計画であります。
一方のキャッシュアンドキャリー事業は、新規出店(3店舗計画)、既存店舗の改装(7店舗計画)を計画的に進め、顧客サービスの充実を図り、業容を拡大してまいります。品揃え面では自社焙煎コーヒーをはじめとするプライベートブランド商品を一層充実させる一方で、地域特性に応じた商品の品揃えを充実させ、地域に根ざした店舗作りを更に進めてまいります。A-プライスアプリは会員である顧客に対しそれぞれのニーズに合った最適な提案ができるように機能強化してまいります。また、店舗運営の省力化と顧客満足度の向上を目指して電子棚札を試験導入し、全店舗導入に向けた検討を開始いたします。当事業のフランチャイズ店舗は今期末時点で2店舗でありますが、ノウハウの蓄積を進め、来期は新たに2店舗の新規加盟を目指して取り組んでまいります。ECビジネスにつきましては、顧客獲得に向け、新たなECサイトへの出店、宣伝広告の試験運用なども試みながら業務用食材専門サイトとしての成長を図ってまいります。
フードソリューション事業では、品質・衛生管理サービス、外食企業向け業務支援システム提供、業務用調理機器販売、店舗内装設計・施工等、外食事業者のあらゆるニーズに当社グループが一体となって対応できる体制を一層充実させてまいります。
以上のような取り組みはディストリビューター事業、キャッシュアンドキャリー事業の各社が主要地域で開催する大規模展示商談会や各支店・店舗で開催するエリア別・テーマ別展示会を通じてきめ細かく情報発信をしてまいります。
食品スーパー事業につきましては、2025年1月末までに事業を終えるべく、店舗の譲渡や閉鎖を計画的に進めております。
以上により、次期の連結業績見通しといたしましては、売上高2,460億円(前期比0.4%増)、営業利益は物流費等の上昇も見込み73億円(前期比6.6%減)、経常利益73億円(前期比8.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益40億円(前期比11.0%増)を予想しております。
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