タツタ電線 【東証プライム:5809】「非鉄金属」 へ投稿
企業概要
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)会社の経営の基本方針」に記載しましたとおり、当社グループは、社会の持続的な発展が当社グループの持続的成長の大前提であるとの認識のもと、サステナビリティ経営に取り組んでいます。「ESG委員会規程」を制定し、「ESG」を事業活動の持続可能性(サステナビリティ) の観点における環境、社会、ガバナンスに関する事項と定義するとともに、当社グループ経営におけるサステナビリティ情報の認識や重要性を判断する機関としてESG委員会を設置・運営しています。2021年4月より、社会そして当社グループ事業が長期的に持続していくために重要と考えるグループのマテリアリティを「地球環境保全への貢献」「社会に役立つ先進的かつ高品質な製品・サービスの提供」「安全で働きがいのある職場の実現」「人権の尊重」「地域社会との共存共栄」「コーポレート・ガバナンスの徹底」と設定し、グループ全社で取組みを展開しております。
当社グループは、これらの活動を通じて、事業の持続的な成長を目指していくとともに、より良い社会の実現とその持続的な発展に、社会の一員として積極的な役割を果たしてまいります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
サステナビリティ経営を横断的に推進するため、2020年10月より、代表取締役社長が委員長、当社取締役および執行役員、グループ会社の取締役を委員とする「ESG委員会」を設置し、「経営役員会」「内部統制委員会」等と並ぶ社長執行役員直轄の会議体と位置づけ、年に2回(必要な場合は都度)開催をしております(2022年度は4回開催)。ESG委員会では、ESGに関する取組み状況をモニタリングするとともに、事業活動の持続可能性の観点からのESGに関連する重要事項に関する議論・協議をおこない、結果は経営役員会、取締役会に答申、報告をしております。
総務人事部・経営企画部が事務局を担当し、各事業部門と連携し、ESG全般に関する基本的な考え方および重要課題等をESG委員会に付議するとともに、サステナビリティに関する目標設定や進捗の取り纏め、達成内容の評価等の管理を行っております。
特に、気候変動対応については、ESG委員会の傘下に設備技術を管掌する執行役員がトップを務めるカーボンニュートラル推進分科会を設置し、2025年カーボンニュートラルにむけた取組みを監督し、ESG委員会に報告をしております。
(2)リスク管理
当社グループのマテリアリティの設定にあたっては、サステナビリティの方針に基づき、2020年度、総務人事部および経営企画部が、本社関連部門、事業部門と連携のうえ、社会的課題やステークホルダーの要請・期待などを勘案し、マテリアリティ、具体的取組事項、KPI案をまとめ、ESG委員会に付議、ESG委員会では事業活動の持続可能性の観点からリスクや機会について協議し、委員会で決定した内容を経営役員会、取締役会に諮問・報告をおこなっております。2021年度からは、ESG項目を事業計画の管理項目に加え、各部門のESGの取組みを管理しております。
ESG委員会では、ESGに関する取組みを全体総括するとともに、サステナビリティの観点から各マテリアリティに関するリスクや機会について議論、評価をおこない、必要な場合はマテリアリティ、具体的取組事項、KPIの見直し等を実施しております。確認されたリスク事項に関しては、経営役員会、取締役会に報告するとともに、リスク管理委員会と連携し、グループ全体のリスクマネジメントに統合しリスクを反映しております。
(3)戦略と目標指標
当社グループのサステナビリティに関するマテリアリティ、具体的取組み、KPIは以下のとおりです。
活動実績につきましては、当社ウェブサイト(https://www.tatsuta.co.jp/esg/sustainability_report/)にて公表しております。(2022年度実績は2023年9月に公表予定)
『環境』
気候変動対応は、温暖化による自然災害の増加、生態系への影響など、当社グループが事業活動を将来にわたっておこなう安定した社会基盤の前提を大きく変化させるものであり、特にCO2排出量の削減は当社経営戦略に影響を与える可能性のある喫緊の重要課題であると認識しております。
2022年3月にTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)への賛同を表明し、TCFDの考え方に基づきシナリオ分析を行い事業活動に与えるリスクと機会を抽出、経営戦略へ盛り込む活動を実施しております。
<TCFD提言に対する当社の取組み>
(ガバナンス)
気候変動に対するリスク及び機会を監視、管理するガバナンスは、「(1)ガバナンス」に記載しております。
(リスク管理)
気候変動に関連するリスク及び機会を識別・評価・管理するプロセスは、「(2)リスク管理」に記載しております。
(戦略)
2050年における気候変動シナリオをもとに、当社グループへの影響を分析しました。結果、気候変動は当社グループに与える財務的なネガティブインパクトは限定的と分析しております。
当社グループ経営に少なからずマイナスの影響を与えうると想定されるものの、リスクへの対応が可能であることや、気候変動対策に貢献する製品の販売など事業機会の獲得が期待できるものと考えております。
気候変動シナリオは以下の世界観を前提に作成しております。気候変動に関するリスクはそれぞれのシナリオをもとに、各事業本部・関係部署が協働して抽出・分析しております。
1.5 ℃シナリオ (パリ協定の目標である産業革命前からの全世界の平均気温の上昇2℃未満に抑えることを想定したシナリオ) | 4℃ シナリオ (新たな投資・制度が導入されず、産業革命前からの全世界の平均気温の上昇を想定したシナリオ) |
・平均気温上昇により、自然災害が増加するものの一定レベルに留まる ・厳しい気候変動対策の導入により、各企業の事業コストが増加 ・低炭素・脱炭素対応のため、技術革新が進展 | ・平均気温が大きく上昇し、自然災害が頻発、激甚化 ・気候変動対策の導入により、各企業の事業コストが一定程度増加する ・海面上昇、洪水・豪雨により、沿岸域に大きな影響(生活様式・ BCP の見直しが必要、企業の事業コスト増加) |
■影響分析結果
・1.5℃シナリオ(機会・リスク)
機会/リスク | 種類 | 世の中の変化 | 想定されるシナリオ | 当社の対応方針 |
機会 | 市場 技術 評判 | ・エネルギーミックスによる電源構成の変化
| ・再生可能エネルギーの普及に伴う当社の太陽光発電所向け電力ケーブル、送配電網増強の需要増加 | マーケットの動向をモニタリングし需要が期待される分野への拡販活動を行います。 |
機会 | 市場 技術 評判 | ・脱炭素に向けた先端技術の開発・普及
| ・再生可能エネルギー生産設備の拡大・高効率化、省エネルギー技術の向上等に必要な先端電子機器の開発・普及に伴う当社機能性フィルム・機能性ペースト等の電子材料需要の拡大 | ・技術動向やマーケット情報をキャッチし、製品の開発および販売を行います。 |
リスク | 政策 法規制
| ・GHG排出量に関する環境規制強化 ・炭素税、排出権取引の導入 | ・再生可能エネルギー切り替えによる移行コストの発生 ・炭素税、排出権取引の導入コストの発生 | ・社会的要請・顧客企業の要望等を踏まえ、国内事業所・関係会社においては2025年度にカーボンニュートラル(Scope1および2)を達成する方針です。 ・電力・ガス・燃料の再生可能エネルギーへの切替・CO2クレジット取引による財務面での大きな影響は現時点ではありません。 ・省エネルギー対策を推進するとともに、より安価な条件で再生可能エネルギーを調達できるよう努めます。 ・自社で発電することにより電力の調達コスト増加の低減を図ります。 |
リスク | 市場 技術 評判
| ・低炭素、脱炭素移行の急進
| ・再生可能エネルギー発電施設、EV、グリーン燃料等への需要増が予想される銅等の金属価格の上昇(資源競争の激化) | ・製品価格への転嫁に努めるとともに、生産コストの低減に努めます。 |
リスク | 物理的リスク | ・気候変動対策により一定程度に抑えられるが、自然災害が増加 | ・自然災害が一定程度増加し、事業や、従業員の安全性の確保に影響が出る可能性がある
| ・自然災害の増加を想定したBCPを策定・構築します。従業員の健康・安全を確保するための対策を実施いたします。 |
・4℃シナリオ(機会・リスク)
機会/リスク | 種類 | 世の中の変化 | 想定されるシナリオ | 当社の対応方針 |
機会 | 市場 技術 評判 | ・異常気象(台風、山火事、洪水、暴風雨)の激甚化および増加 | ・自然災害に備え、従来の電線から断線回避に優れた電線への転換需要が増加
| ・マーケットの動向をモニタリングし、需要が期待される分野への拡販活動を行います。
|
リスク
| 物理的リスク
| ・異常気象(台風、山火事、洪水、暴風雨)の激甚化および増加 ・降水、気象パターンの変化 (降雨量の増加、平均気温の上昇)
| ・自然災害により銅などの原材料の供給が停止 ・海抜の低いところにある事業所の水害や、自然災害により当社の事業が局所的に停止 ・降雨量増加による従業員の安全性の確保 ・感染症や熱中症等の増加に伴い、従業員の業務効率が低下 | ・異常気象の激甚化を想定したBCPを策定・構築します。 ・従業員の健康・安全を確保するための対策を実施いたします。 |
(目標と指標)
・カーボンニュートラルの推進
当社グループは、国内3工場に太陽光発電設備を増設・新設するなどの「創エネルギー」、省エネ設備への更新や職場等における省エネ活動等の「省エネルギー」に全社で取組み、CO2排出量の削減を積極的に推進しております。
カーボンニュートラルにつきましては、社会的要請に加え顧客企業の要望等を踏まえ、再生可能エネルギー由来電力やカーボンニュートラルLNGへの切り替えを計画的に進めております。機能性フィルム事業においては、CO2クレジットの購入も活用し、2022年4月より実質的にカーボンニュートラル(Scope1および2)を実現しております。その他の国内各事業所・関係会社においては2025年度カーボンニュートラル(Scope1および2)の達成を計画しております。
CO2の排出量(Scope1+Scope2)を評価指標としております。
国内連結グループ会社計
2020年度実績 | 2021年度実績 | 2022年度実績 |
20,297 tCO2 | 20,119 tCO2 | 6,365 tCO2 |
・省エネルギーの推進
電力・ガスの再生可能エネルギーへの切替えやCO2クレジットの購入は、コスト増となるため、指標として「製品原単位あたり使用エネルギー」を設定し、年1%以上削減を目標にしております。また、2022年度には、省エネ活動の見える化を企図し、新たに太陽光発電等の自家発電による再生可能エネルギーの導入や省エネ機器への更新等による省エネ効果を測る指標として、「エネルギー使用合理化期待効果」を加え、省エネルギーを徹底するとともに製品・サービスへの価格転嫁を推進しております。
・リサイクルの推進
廃棄物の削減のため、再資源化率95%以上を目標に掲げております。
2022年度、管理範囲を単体から国内グループ会社に拡大しました。グループ(国内)として再資源化率95%以上を達成しております。国内全事業所での目標達成を推進するとともに、推進対象範囲をグループ全体として海外子会社への展開を進めてまいります。
・環境配慮型製品・サービスの提供
環境負荷を低減するため、環境に配慮した新製品・改良品の開発に取り組んでおります。電線・ケーブル事業では、従来の塩化ビニルと同等の難燃性を保持しながら、ハロゲン元素や鉛などの重金属を含まず、リサイクル性の高い被覆材を使用したエコ電線・ケーブルを開発しております。電子材料事業ではハロゲンフリー、RoHS、UL、鉛フリーハンダリフローなどの環境適合性を考慮して製品開発を行っております。また、環境分析事業では、ダイオキシン類分析、作業環境測定等の環境分析や産業廃棄物分析を行っております。
『社会』
当社グループは、電線・電子材料関連のフロンティアを開拓し、独創的な先端部品・素材を供給するサプライヤーとして、消費者の新しい生活様式や社会課題、技術革新など事業を取り巻く変化を新しい製品・市場の創出の機会と捉え、市場対応力やBtoB顧客ニーズにこたえる製品開発力を磨くとともに、大学との技術交流による要素技術の拡充やスタートアップ企業等との協働を積極的に推進するなど、社会に役立つ先端的かつ高品質な製品・サービスの開発に取り組んでおります。
一方で、社会変容が引き起こす流動性や不確実性といったリスクに備え、企業のレジリエンスを高めることも重要と認識しております。顧客の期待に応える安定品質、安定供給に向けては、当社は1994年よりISO9001(品質マネジメントシステム)、1999年よりISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を受け、品質・環境マネジメントシステムを維持し各事業所において継続的な改善活動を実施しております。さらに、機能性フィルム事業では、2016年よりISO22301(事業継続マネジメントシステム(BCMS))の認証を取得し、2022年にはISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を受けるなど、大規模災害やサプライチェーンの断絶、サイバー攻撃等による情報システム障害など、不測の事態を想定したBCPを策定し、継続的に演習、見直し、改善を通じ、サプライチェーンの強靭化に向けた取組みを進めております。
<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針>
当社は、人材育成方針を定め、意欲・能力のある者が積極的にチャレンジし、イノベーションの創出や事業のグローバル成長をけん引するプロフェッショナルな人材の育成に取り組んでおります。
[人材育成方針]
(1)基本的考え方
経営理念、企業行動規範の遵守を基本とし、企業の持続的発展と中長期的な企業価値向上の実現を担う人材を
育成いたします。
(2)人事制度との連動
人事制度上の役割等級定義表に基づき、各階層に必要とされる役割、スキルに応じた人材を育成いたします。
(3)当社が求める人材像
①グローバルな視点から全社経営レベルでの的確な現状認識と将来見通しを踏まえ、将来構想を策定できる人材
②多様性を受容し、他部門との円滑な調整を図りながら組織や部門、職場を統率できる人材
③社会情勢変化や技術革新等に対し、スピード感を持ってチャレンジし、自律的に対応することができる人材
④大志と高い倫理観を持ち、生涯にわたって学び、自己研鑽できる人材
多様なキャリアパス・自律的な働き方を促し、社員の多様性を事業の推進や製品開発に活かし、持続的な成長発展につなげていくための人事施策を進めるため、2022年4月には、人事諸制度の見直しを実施いたしました。
また、当社は、企業行動規範において「従業員の人格・個性を尊重し、安全で働きやすい多様性に富んだ職場環境を確保します」を掲げ、多様な人材が相互に人権を尊重し、適材適所で生き生きと力を発揮する活力ある職場環境の実現に推進しております。
日本での少子化に伴う労働人口の減少、就業に対する価値観の多様化等、社会が変化するなか、ダイバーシティ&インクルージョン、働き方改革、健康経営といったワークライフ・マネジメントを推進し、女性、障がい者、高齢者、外国人、様々な職歴をもつキャリア採用者など、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行いながら、各種休暇制度やテレワークの導入など、さまざまなライフステージにおいて、それぞれの特性や能力を最大限活かせる社内環境の整備、およびマネジメント層の教育など従業員の意識改革に取り組んでおります。
多様性に関する指標2022年度実績(単体) (障がい者雇用率は、2021年7月1日から2022年6月30日)
年休取得率:75.0%、 障がい者雇用率:*3.1%、 女性従業員の採用比率:18.2%
なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、男女賃金格差は「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しております。
『ガバナンス』
「4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり、当社は、創意工夫を凝らし社会的に信用される有用で優れた製品・サービスを提供することが使命であり、その実現に当たっては、国内外の法令及び社内規程を遵守し、社会規範や倫理に則って公正な企業活動を行うとともに、情報を適切かつ公正に開示することが必須であると認識しております。
かかる認識に基づき、当社は、事業環境が大きく変動する中にあって、経営の迅速な意思決定と健全性・透明性を確保しつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の実現には、継続的なコーポレートガバナンスの徹底をはかっていくことが重要と考えております。
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