セブン&アイ・ホールディングス 【東証プライム:3382】「小売業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものになります。
(1)経営の基本方針
当社は、2005年9月1日に設立された純粋持株会社です。流通業を中心として傘下に160の連結子会社を擁する当社は、創業時より重んじる「信頼と誠実」の社是を不変の礎として、「変化への対応と基本の徹底」を基本方針に掲げ、お客様ニーズ、マーケット、そして急速な社会の変化に迅速に対応し、業務改革、事業構造の改革を不断に進め、流通サービスにおけるイノベーションの推進と新たな体験価値の提供に努めてまいります。また、グローバルに展開するグループのネットワーク、情報力とともに、「食」の強みを軸としコンビニエンスストア事業を中心に、スーパーストア事業、金融関連事業などお客様の様々な生活シーンのニーズに応える世界に類を見ないグローバルリテールグループとして、総合的にシナジーを追求してまいります。加えて、当社は、ガバナンスの強化とグループシナジーの追求によりグループ企業価値の最大化に努めるとともに、グループを代表する上場会社としてステークホルダーに対する説明責任を果たしてまいります。合わせて、サステナビリティの取り組みを経営の根幹に据えて、2019年に環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』を策定し、CO₂排出量削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達の4つのテーマで、2050年をゴールとする目標を設定し、その達成に向けて環境課題や外部不経済の解決に向けた行動を推進しています。
また、各事業会社は与えられた事業範囲における責任を全うし、各々の自立性を発揮しながら、利益の成長及び資産効率の向上を追求してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社は、持続的に企業価値を向上させるため、資本コストを上回るリターン(利益)を拡大するとともに、キャッシュ・フローの創出力を高めることを基本方針として財務目標を設定しております。当社では2021年7月1日に発表いたしました「中期経営計画2021-2025」の目標値について、2023年3月9日「中期経営計画のアップデート並びにグループ戦略再評価の結果について」(以下、「グループ戦略再評価」という)を公表し、以下のとおりアップデートいたしました。
(2025年度 主要連結財務数値目標)
| 2025年度 当初目標 | 2025年度 アップデート目標 | 当初差 | |||
EBITDA | 1 | 兆円以上 | 1.1 | 兆円以上 | +1,000 | 億円 |
営業キャッシュ・フロー(除く金融) | 8,000 | 億円以上 | 9,000 | 億円以上 | +1,000 | 億円 |
フリーキャッシュ・フロー水準(除く金融) | 4,000 | 億円以上 | 5,000 | 億円以上 | +1,000 | 億円 |
ROE | 10 | %以上 | 11.5 | %以上 | +1.5 | % |
ROIC(除く金融) | 7 | %以上 | 8.0 | %以上 | +1.0 | % |
Debt/EBITDA倍率 | 2.0 | 倍未満 | 1.8 | 倍未満 | △0.2 | 倍 |
調整後Debt/EBITDA倍率 | 2.2 | 倍未満 | 2.0 | 倍未満 | △0.2 | 倍 |
EPS成長率(CAGR) | 15 | %以上 | 18 | %以上 | +3 | % |
※営業キャッシュ・フロー(除く金融)は、金融事業を除くNOPATをベースとした管理会計数値。
フリーキャッシュ・フロー水準(除く金融)は、金融事業を除く管理会計ベース数値。
なお、M&Aは戦略投資として投資キャッシュ・フローからは除外して算出。
ROIC(除く金融)は、{純利益+支払利息×(1-実効税率)}/{自己資本+有利子負債(ともに期首期末平均)}にて算出。
調整後Debt/EBITDA倍率は、金融事業を除く管理会計ベース数値。
Net Debt / EBITDAR (Net Debt:有利子負債+オンバランスリース-現預金等調整)
EPS成長率(CAGR)は、2020年度に対してのCAGR(年平均成長率)にて試算。
(3)中長期的な経営戦略
当社は、2021年7月に公表した「中期経営計画2021-2025」において、すべてのステークホルダーから信頼される誠実な企業でありたいという創業以来の社是、「常にお客様の立場に立って、新たな体験価値を提供することで、国内外の地域社会に貢献したい」という基本姿勢と2030年の目指すグループ像として、「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する世界トップクラスのグローバル流通グループ」を掲げ、様々な社会構造の変化を背景としたお客様の購買行動の変化に着実かつスピーディーに対応してまいりましたが、2022年度に実施したグループ戦略の再評価を踏まえて、2030年に目指すグループ像を「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、「食」を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」といたしました。今後もこの新たな2030年に目指すグループ像の達成に向けて、各種施策を着実に遂行してまいります。
(4)経営環境及び経営課題
当社グループを取り巻く環境は、大きく変化しており、またその変化のスピードも加速しております。現下、日本国内においては、高齢化・単身化・共働き化等の社会構造の変化の加速により、ご自宅の近くでの生鮮食品・惣菜等の購買ニーズが更に高まっており、また、世界的なパンデミックを経て、お客様の行動様式・価値観が変化し食品に対するニーズも一層多様化しております。一方、最低賃金の上昇や社会保険加入の拡大を受け、雇用環境は引き続き厳しい状況が続くことも想定されます。
米国においては、新鮮で健康的な美味しい食品ニーズを満たすことのできるコンビニエンスストアへの期待が高まっており、世界全体においても、各地域の特性に合わせた安全・安心で高い品質の日常の「食」を提供する領域には大きなチャンスがあり、これを可能とするための事業インフラの構築が重要な状況になってきております。加えて、国内外を問わず、気候変動、海洋汚染、フードロス、持続可能な調達等、社会課題が深刻化しており、企業も社会を構成する一員として、その解決に対してこれまで以上に真剣に向き合う時代を迎えております。
当社スーパーストア事業は、食品の品揃え・調達力・サプライヤーネットワーク・イノベーティブな商品開発力・プライベートブランド(セブンプレミアム)といったグループの競争力を支える「食」の強みを有しておりますが、上記のような今後のマクロトレンド・マーケットトレンドの予測の観点からも、この「食」の強みが当社グループにおける国内外コンビニエンスストア事業の成長を支える競争力の源泉としてますます重要になってくるものと考えられます。なお、グループ食品戦略を推進するにあたり、プロセスセンターやセントラルキッチンなどグループ共通インフラの整備・稼働の取り組みを推進する具体的施策として、セブン&アイグループ初の共通インフラとして、惣菜・ミールキット等の製造を行うセントラルキッチンと精肉の加工を行うプロセスセンターの機能を併せ持つ食品製造工場「Peace Deli千葉キッチン」の稼働を開始しております。
戦略委員会による提言と当社の中長期的な企業価値・株主価値の最大化を実現するためのアクションプラン
当社は、2023年3月9日に「グループ戦略再評価」を公表し、当社の中長期的な企業価値・株主価値の最大化を目的に独立社外取締役のみで構成される戦略委員会を設立いたしました。この度、戦略委員会から当社取締役会に対して、戦略委員会における討議の内容を纏めた提言が提出されたことを受け、当社取締役会において真摯に検討してまいりました。その結果、当社グループの今後の具体的なアクションプランについて以下のとおり公表することを決定し、これらのアクションプランの実行に向け、明確なタイムラインの策定を既に開始しております。
・当社の戦略委員会は、発足以来、委員会前の膨大な分析、13回にわたる委員会及び数多くの非公式討議を通じ、多大な時間と労力を費やして運営されてきました。
・戦略委員会からの提言は、取締役会においても十分に議論され、今回公表されたアクションプランに反映されております。なお、取締役会は、戦略委員会からこれまでも継続的に助言を受け、既に多くの戦略的施策を実行してまいりました。下記の各項目についても、具体的な計画及び明確なアクションプランに沿って着実に実行されるように監督してまいります。
〈成長加速に向けた具体的アクションプラン〉
当社グループ全体の成長戦略を推進するために、より機動的且つ柔軟な財務規律をもって(財務レバレッジのターゲット:Debt/EBITDA倍率1.8~2.5倍を目安に)コンビニエンスストア事業における積極的な戦略投資を実行すると同時に、グループ資本効率の改善に取り組みます。
・成長余地の大きな北米コンビニエンスストア市場における成長加速と収益性・資本効率の改善
・グローバルコンビニエンスストア事業におけるより意欲的な事業計画の策定・投資の実行
・グローバル成長の礎となるIT/DX戦略とコスト競争力を高めるIT/DXガバナンス構築
・首都圏スーパーストア(以下、「首都圏SST」という)事業(注)1の変革完遂と成長に向けたモニタリングと実行支援
・グループにおける小売×金融のシナジー最大化
〈長期的成長と企業価値を高めるグループ構造への移行〉
戦略委員会の提言を受け、当社取締役会では、コンビニエンスストア事業を含めた当社各事業の事業価値、各事業に携わる従業員、当社株主の長期的な利益の最大化を実現し得るグループ構造について、主要事業会社と連携を図りつつ、更に議論を重ねました。
その結果、コンビニエンスストア事業においては、日本・北米を含むグローバルコンビニエンスストア事業の一体運営を実現するために、今後、コンビニエンスストア事業のリーダーシップ体制・マネジメント体制の統合に取り組んでまいります。スーパーストア(以下、「SST」という)事業(注)2においては、変革を通じて、自立的な再成長フェーズが見渡し得る経営体制の確立、独立した企業体として独自の財務規律をもって成長の方向性を自ら定め、従業員が事業の成長に強く関与できるグループ事業構造の実現を目指します。具体的には、当社によるSST事業の一部持分の継続保持及びコンビニエンスストア事業とSST事業の間の食品開発領域における協働体制の維持を前提に、抜本的変革の先にあるSST事業の持続的成長のための有力な選択肢の一つとして、現実的に最速のタイミングでのSST事業のIPO実現に向けた検討を開始します。
〈投資家エンゲージメントの強化〉
当社のミッションひいては株主価値の向上に向けた取り組みが明快かつ透明性をもってお伝えできるよう、投資家 を重視し、エンゲージメントを行ってまいります。当社の具体的な戦略、成長の道筋、進捗状況に関する投資家とのコミュニケーション体制について、課題の検証や強化に向けた取り組みを継続してまいります。
当社は、引き続き当社株主をはじめステークホルダーの皆様の声に傾聴しつつ、「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、『食』を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」の構築を通じたグループの持続的な成長と企業価値向上を実現すべく、この3つの領域におけるアクションプランを速やかに推進し、次期中期経営計画においてもその進捗を適切に反映してまいります。
(注) 1.首都圏SST事業:株式会社イトーヨーカ堂、株式会社シェルガーデン
2.SST事業 :SST事業セグメントに含まれるすべての事業会社を含む
戦略を支える確かな経営基盤
① 持続可能な社会の実現に向けて
当社グループでは、これまでも社会課題解決と企業価値向上の両立を経営の基本におき、積極的に取り組んでまいりました。当社グループの事業領域と特に親和性の高い社会課題を「7つの重点課題(マテリアリティ)」と特定し、SDGs(国連「持続可能な開発目標」)の17の目標と関連づけながら、課題解決に向けて取り組みを進めております。これらにより、本業を通じての社会課題及び重点課題を起点とした新たなビジネスモデルの創出に取り組んでおります。
「7つの重点課題(マテリアリティ)」
・お客様とのあらゆる接点を通じて、地域・コミュニティとともに住みやすい社会を実現する
・安全・安心で健康に配慮した商品・サービスを提供する
・地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する
・多様な人々が活躍できる社会を実現する
・グループ事業を担う人々の働きがい・働きやすさを向上する
・お客様との対話と協働を通じてエシカルな社会を実現する
・パートナーシップを通じて持続可能な社会を実現する
2019年5月に公表した環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』の達成に向け、CO₂排出量削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達の4つのテーマで、お客様・地域社会・お取引先様等のステークホルダーとも連携しながら、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでおります。グローバル展開の強化に合わせ、世界のセブン‐イレブンライセンシーとの共同によるCO₂の排出削減、プラスチック対策なども推進しております。
また、企業活動のグローバル化が進み、企業の人権への取り組みに対して、社会からの関心が高まっております。当社グループでは企業行動指針をベースに人権を守る活動を行っており、国際人権章典(世界人権宣言と国際人権規約)、労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関の宣言、国連グローバル・コンパクトの10原則、及び「国連ビジネスと人権に関する指導原則」などをもとに、「セブン&アイグループ人権方針」を定めております。これからも従業員やサプライチェーン、地域社会に対する働きかけを行うなど、人権尊重の取り組みを一層強化してまいります。
② コーポレートガバナンスの更なる強化
当社グループでは、これまでも、コーポレートガバナンスについて、すべてのステークホルダーの皆様との対話に基づき、常にその改善と拡充に努めてまいりました。2030年の目指すグループ像としてグローバルリテールグループを目指すにあたり、これにふさわしいガバナンス体制を構築すべく、取締役会の多様性を更に向上させるとともに、2022年度より独立社外取締役を増員し、過半数とする体制に変更いたしました。
更に2023年度には、ガバナンス体制の強化・安定化を図るために当社の代表取締役を追加選任し計3名とするとともに、各コーポレート機能には最高責任者(CxO)を任命し、各事業セグメント・事業領域には統括責任者を任命いたしました。また、当社グループの中長期的な企業価値向上のための助言を取締役会に対して行うことを目的として、独立社外取締役のみで構成される戦略委員会を設置し、グループ重点戦略に関する進捗状況のモニタリング及び戦略実現のための最適なグループ事業構造等に関する包括的かつ客観的な分析・検証を行ってまいりました。
今後も、グローバルマーケットにおける持続的な成長と中長期的なグループ企業価値向上を実現すべく、適切な意思決定を行うとともに実効性の高い監督を実施し、取締役会としての役割・責務を適切に果たし、コーポレートガバナンスの更なる強化を図ってまいります。
③ 経営戦略と連動した人財政策
当社の成長力の源泉は人財です。とりわけ、DX及びグローバル戦略の推進や社会価値と企業価値の両立を追求するうえで、経営戦略と人財戦略は不可分であると考えております。当社では経営戦略の推進と一体となった人財戦略に取り組み、専門的な知見や技能を有する人財を社外から求めるだけでなく、グループ内でも積極的に育成してまいります。人財育成にあたっては、「人財とともに成長する企業」という考え方に立ち、積極的に社員に成長機会を提供することで、自ら学び続け、常にスキルアップを図り続ける人財の育成を図り、社員と会社の相互成長を目指してまいります。
また、働き方改革や生産性の向上を図ることで、誰もが働きやすい職場づくりを推進してまいります。働く人々の多様性や違いを認め合う環境づくりや柔軟な働き方を支援する体制を整え、多様な人財が活躍できる組織・企業文化の育成に注力してまいります。
更に当社グループでは各社社長のもと「エンゲージメント向上委員会」を設置し、従業員エンゲージメント向上に向けた行動計画の策定とモニタリングを実施しております。従業員のエンゲージメントや貢献意欲が高まることが組織の活性化につながり、企業の競争力強化につながると考え、今後も活動を推進してまいります。
中長期的な企業価値向上による持続的成長に向け、今後とも当社グループでは、グループシナジーを強化して当社グループの強みを一層拡大し、すべてのステークホルダーの皆様の声を真摯に受け止めながら、更なる価値提供と適正な利益還元を進めてまいります。
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