セイコーエプソン 【東証プライム:6724】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
エプソンのあらゆる企業活動の中心にはパーパスがあります。エプソンが社会に対してどのような価値を提供する存在であるかを定めるとともに、エプソンならではの存在意義と志を社内外に示すため、2022年9月にパーパス「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」を制定しました。そして、エプソンは、グループの価値観・行動様式を定めた「エプソンウェイ」の普遍的な考え方である経営理念を礎とし、ビジョンによりパーパスを実現することで社会へと新しい価値を提供します。これにより、将来にわたって持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図ってまいります。
<理念構造>
(2)長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の考え方
エプソンは、将来にわたって追求するありたい姿として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、「Epson 25 Renewed」を策定しています。現在、気候変動をはじめ、人類はさまざまな社会課題に直面しています。また、物質的、経済的な豊かさだけでなく、もっと精神的な豊かさ、文化的な豊かさ、そういったさまざまな豊かさを含めた「こころの豊かさ」が望まれる時代となったと考えています。そのためには、持続可能な社会であることが大前提になります。このような背景のもと、エプソンは、常に社会課題を起点として、その解決に向けて私たちに何ができるか、私たちの技術を使ってどう課題解決し、社会に貢献できるか、という発想でビジネスを展開していきます。
①「Epson 25 Renewed」ビジョンステートメント
「Epson 25 Renewed」のビジョンステートメントとして、「『省・小・精の技術』とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する」と定めています。人・モノ・情報をスマートにつなげるソリューションを、個人の生活や、産業や製造の現場にまで広く社会へ提供し、ありたい姿の実現のために取り組みます。そこで重要となるのは、「環境」「DX」「共創」の3つの取り組みです。
(環境への取り組み)
●「脱炭素」と「資源循環」に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進する
(DXへの取り組み)
●強固なデジタルプラットフォームを構築し、人・モノ・情報をつなげ、お客様のニーズに寄り添い続けるソリューションを共創し、カスタマーサクセスに貢献する
(共創への取り組み)
●技術、製品群をベースとし、共創の場・人材交流、コアデバイスの提供、協業・出資を通して、さまざまなパートナーと社会課題の解決につなげる
②「Epson 25 Renewed」方針
不透明な社会環境の継続が予想されるなか、取り組みにメリハリをつけることにより、収益性を確保しながら将来成長を目指します。そして、すべての領域に必要な環境、DX、共創への取り組みも継続的に強化していきます。
領域区分 | 対象事業 | 方針 |
成長領域 | オフィスプリンティング、商業・産業プリンティング、プリントヘッド外販、生産システム | 環境変化を機会と捉えて経営資源投下 |
成熟領域 | ホームプリンティング、プロジェクション、ウオッチ、マイクロデバイス | 構造改革や効率化などにより、収益性重視 |
新領域 | センシング、環境ビジネス | 新たな技術・ビジネス開発に取り組む |
(3)「環境ビジョン2050」の考え方
エプソンは、以下のとおり持続可能な社会の前提である環境への取り組みに関するビジョン「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に達成する目標と、その実現に向けた取り組みを定めています。
項目 | 内容 |
ビジョン ステートメント | 2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ(※1)」を達成し、持続可能でこころ豊かな社会を実現する |
達成目標 | 2030年:1.5℃シナリオ(※2)に沿った総排出量削減 2050年:「カーボンマイナス」、「地下資源消費ゼロ(※1)」 |
アクション | ●商品・サービスやサプライチェーンにおける環境負荷の低減 ●オープンで独創的なイノベーションによる循環型経済の牽引と産業構造の革新 ●国際的な環境保全活動への貢献 |
※1 原油、金属などの枯渇性資源
※2 SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)のクライテリアに基づく科学的な知見と整合した温室
効果ガスの削減目標
(4)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
①イノベーション戦略の方針と進捗、今後の取り組み
目指す姿の実現に向けた戦略を実行するために、お客様価値や社会課題の軸で5つのイノベーション領域を設定しています。そして、それらのイノベーションを支えるマイクロデバイス事業においては、「省・小・精の技術」を極めた水晶・半導体ソリューションにより、スマート化する社会の実現に貢献していきます。
<オフィス・ホームプリンティングイノベーション>
当領域では、インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、分散化に対応した印刷の進化を主導することを目指しています。
オフィスプリンティングでは、中速帯のラインインクジェット複合機が伸長しました。今後は、利便性・価格への顧客要望に対応しコストダウンを継続していきます。また、地域・パートナー戦略を見直し、インクジェットプリンターの価値訴求を強化します。ホームプリンティングでは、アンバサダーを起用したプロモーションにより、大容量インクタンクプリンターの価値訴求や、販売チャネルのサポート強化を続けていきます。
<商業・産業プリンティングイノベーション>
当領域では、インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上の実現を目指しています。
完成品ビジネスでは、従来取り組んできたプラットフォーム設計により、効率的に製品ラインアップ拡充を進めました。また、お客様の生産現場の課題を解決し、業務の効率化を実現する「Epson Cloud Solution PORT」の加入数は順調に増加しています。プリントヘッド外販ビジネスでは、最大市場である中国を中心に販売が順調に拡大しています。今後もエプソンは、商業・産業分野において環境性能と生産性を両立した製品・サービスを展開し、アナログ印刷からデジタル印刷への転換を主導していきます。
<マニュファクチャリングイノベーション>
当領域では、環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新することを目指しています。
マニュファクチャリングソリューションズ事業は、世界経済の減速に伴う顧客の投資抑制や中国メーカー台頭の影響を受け、厳しい環境が継続しました。今後は、製品コスト競争力の継続強化に加え、センサーなどを活用した自動化のハードルを下げるソリューション開発・提供や、生産拠点移管が進む東南アジア・インドでの販売強化により、成長を目指します。
<ビジュアルイノベーション>
当領域では、感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援することを目指しています。
プロジェクション事業は構造改革を進めてきており、既に効率的に利益を上げる体制を整えています。2023年度は各国の教育需要を確実に獲得しました。また、高光束プロジェクター領域においては戦略製品を投入し、シェアを拡大しました。今後は、拡大するホーム向けスマートプロジェクター市場に対応すべく新製品を投入するほか、デジタルを活用した顧客との接点強化や共創による価値創造の取り組みを拡大していきます。
<ライフスタイルイノベーション>
当領域は、匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩ることを目指しています。
ウオッチ事業はラインアップの整理や製造ラインの自動化などの構造改革により、収益性が改善しつつあります。引き続き、変化に強い事業体質の実現に向け改革を進めます。2023年度は、自社ブランドであるオリエントスターにおいて付加価値の高い製品を市場投入しました。今後、特に海外においてオリエントブランドの認知向上を進めます。センシング事業では、中長期を見据えセンサーを活用した新規ビジネスの育成に取り組んでいきます。
②経営基盤強化の取り組み
上述の各イノベーションの実現に向けて、以下のとおり経営基盤強化に取り組んでいます。
<営業戦略>
● デジタルを活用した顧客支援型営業
CRM(顧客関係管理システム)を導入し、グループ内の全販売会社の営業活動を標準化・見える化することで、顧客接点を強化しています。今後はさらに、サービス領域を中心にデータを活用した営業プロセス改革(コンサルティング・付加価値ソリューションや保守サービスなど)により顧客価値を向上していきます。
● 地域別、領域別の重点的な組織強化
成長領域への要員配置の強化、成熟領域でのオペレーション効率化を進めてきており、今後も取り組みを継続していきます。また、中東・アフリカ地域を担当する新会社(Epson Middle East FZCO)を設立しました。今後もこれらの地域での販売強化に取り組みます。
<生産戦略>
● 自動化・デジタル化によるものづくりの革新
大容量インクタンクプリンターなどの主力製品において、組み立て・検査作業の自動化を進めています。今後も導入効果の高い工程を中心とした自動化や装置保守人材の育成、デジタル技術を活用した効率化を進め、さらなる生産性向上に取り組みます。
● 分散生産体制の確立
リスクに強くレジリエンスの高いサプライチェーン構築に向けて生産の分散化を進めており、複数拠点で生産する本体製品数は大幅に増加しています。今後もさらに分散生産を進めていきます。
<技術開発戦略>
● イノベーションを支える技術開発
各事業領域のイノベーションを支えるために、材料開発や、ものづくり現場へのAI・デジタル技術の導入を強化しています。材料開発では、シミュレーション技術を活用して資源循環や脱炭素社会に貢献する要素開発を行っています。また、ものづくり現場では、検査工程などでのAI活用を進めています。今後は競争力の強化に向けて、技術開発・生産現場などでAI活用を広範に検討していきます。
<人材戦略>
詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性 」に記載しています。
③財務目標
「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、収益性重視の経営へとシフトし、過度な売上成長を追わず、取り組みにメリハリをつけ、収益性の確保と将来成長を目指します。この方針に則り、ROIC、ROEおよびROSを財務目標として設定しています。
今後も収益性・資本効率を重視した経営を推進することに変わりはないものの、外部環境変化を踏まえ、2025年度の業績目標を見直しました。成長領域は、課題に対する施策を着実に実行し、エプソンの事業ポートフォリオ変革を進めます。また、マクロ環境や売上成長を保守的に見積もった上で、業績目標の達成に向け、固定費を中心としたコスト削減活動を実施し、収益性の改善をさらに進めていきます。
全社業績目標 | 2020年度 (実績) | 2021年度 (実績) | 2022年度 (実績) | 2023年度 (実績) | 2025年度 (新目標) |
ROIC(※3) | 5.6% | 7.3% | 7.1% | 4.6% | 7%以上 |
ROE | 5.9% | 15.2% | 10.8% | 6.8% | 8%以上 |
ROS | 6.2% | 7.9% | 7.1% | 4.9% | 7%以上 |
※3 ROIC=税引後事業利益/(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債)
④キャッシュ・アロケーション
創出したキャッシュは、成長戦略に基づく投資をした上で、積極的な利益還元、財務体質強化を実施していきます。
- 検索
- 業種別業績ランキング