企業ジェイテックコーポレーション東証プライム:3446】「金属製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境、及び対処すべき課題は、以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業(電子科学株式会社を含む)」の3つの事業を有しております。

(1) 経営方針

 当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、各種産業分野の技術発展に寄与し、創薬や再生医療をはじめとした先端技術の研究及び実用化の促進に役立つことにより、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」ことを経営方針に定めております。

(2) 経営環境等

 当連結会計年度における世界経済は、各国において新型コロナウイルス感染症による経済活動への制約が解除され正常化が進んだものの、世界的にインフレが長期化する中、金融政策による景気減速への懸念や地政学リスクによる資源価格の高止まりなど、先行き不透明な状況が続いております。また、国内経済においては、自動車産業での品質不正問題発生による出荷停止の影響も緩和され、半導体などの成長産業や人手を補う省力化に向けた設備投資計画が旺盛で、製造業を中心とした景気回復のモメンタムは上昇傾向が続いております。一方で、中東情勢の更なる緊迫化や中国経済の先行き不透明感、世界的なインフレの長期化による国内経済への影響が懸念されております。

 このような経済環境のもと当社グループは、オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業及びその他事業(電子科学株式会社を含む)という独自の技術を利用した3つの事業によって、高品質な製品提供と研究開発活動の強化に取り組み、経営基盤拡充と企業価値向上に努めてまいりました。

 オプティカル事業においては、特にエネルギーや半導体といった市場規模の大きな分野の最先端研究が契機となり、各国で放射光施設や自由電子レーザー施設の新規設置あるいはアップグレードの計画、実行が盛んになっております。国内では、新設された第4世代放射光施設NanoTerasuの稼働開始とSpring-8のアップグレード計画が報告されましたが、国外では更に多くの計画が進行しております。特にアジアの放射光市場の躍進が目立ち、中国では上海市、北京市を筆頭に合肥市、深圳市で新設計画が現在進行中であり、台湾と韓国の各施設では大規模なリプレースが行われる見通しとなっております。また欧州では、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、フランスに点在する大中規模の多くの放射光施設でアップグレードの計画が明らかになっています。各々の施設がそれぞれの光源の特徴を活かした多種多様なミラーの設計を行っており、当社はすでに多くの引合いを受けております。良好な市場環境の中、当社は受注に向けた検討を進めております。

 ライフサイエンス・機器開発事業おいては、新規重点事業分野として掲げる、各半導体材料を主たる対象としたナノ表面加工技術(触媒基準エッチング法(CARE)、プラズマ援用研磨法(PAP)、プラズマ化学気相加工法(PCVM))を用いた加工プロセスの開発とその装置化、商品化を推進するとともに、セミコン等の展示会への出展や技術セミナーの開催などを通じて、市場への浸透、拡販活動を展開してまいりましたが、当社技術を高く評価いただいているユーザー数が徐々に拡大しております。特にEVの市場拡大のキーとなるパワーデバイスやポスト5G等次世代通信技術等に必要となる水晶デバイスやSAWデバイスに用いられるウェハの高精度表面創成技術として注目、期待されています。今後も各種半導体材料等の表面加工技術の高度化と実用化を図るとともに、国内外への販路拡大や大手企業やベンチャー企業とのコラボレーションを進め、製品展開を推進してまいります。

 ライフサイエンス関連事業を取巻く環境につきまして、昨今の長時間労働是正による労働環境改善、労働人口の低下が全ての業界の重要課題となっており、各医療機関や研究機関においても、昼夜、休日を問わない培養実験・開発への影響が顕著になりつつあります。その解決策の一つとして、自動培養装置による省人化、無人での連続運転化が期待されており、装置導入への意欲が高まっております。また東京医科歯科大学が、当社独自の3次元回転浮遊培養装置を用いて、iPS細胞由来のヒト腸管オルガノイド(HIO)の生成に成功されたこと、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構と進めている、脳梗塞治療に寄与する幹細胞分離機器(医療機器)の共同開発も計画通り進展したこと等を受けて、国内のみならず、海外のユーザーからも当社製品に関する引合いが拡大しております。

 今後も大学、病院、製薬会社を問わず、幅広く共同開発先や顧客の裾野拡大を図り、事業拡大に努めてまいります。

 その他事業である子会社の電子科学株式会社においては、主力製品である昇温脱離分析装置(TDS)の需要が現在の半導体や液晶・カラーフィルター企業向けのみならず、鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等の様々な産業分野にも市場拡大が見込まれるため、既存製品の販売だけでなく、新しい製品の企画、創出に注力し、新たな市場に製品投入することで新規顧客の開拓を進め、収益力の拡大に努めてまいります。

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 事業活動に関わる課題

(オプティカル事業)

・放射光施設関連

 アジア市場を中心に進む積極的な施設の新規設置、アップグレード及びミラーリプレースにおいて、すでに多くのミラーの供給を行ってきましたが、受注後のより高い精度仕様への変更や、当社の高精度ミラーを基板とする付加加工期間の長期化のため、一部製品において生産計画が不測になることがありました。そのため、栃木生産技術センターの本格稼働により生産能力、生産総数が向上したにも関わらず、期ずれとなるケースが発生しました。今後は、社内製造と調達の双方の両観点で連携強化を図り、生産工期全体の短縮化を目指してまいります。また、第4世代放射光施設へのアップグレードにより光源性能の向上が伴うため、これまで以上に高い精度のミラーが要求されてまいります。中期的に控える各国施設のアップグレードの案件を取りこぼすことなく対応するため、更なる高精度化を迅速に進めるとともに、新たな光学系の積極的な開発・販売も推進してまいります。

・半導体・宇宙等に関連する光学部品への展開

 各種Ⅹ線ミラー(光学素子)は、従来技術では不可能であった表面形状の超高精度化を実現することができ、さまざまな産業分野においてビジネスを展開するための技術的ポテンシャルを有しております。

 宇宙や半導体といった産業において光学部品は必要不可欠な存在であり、これらに対し、当社がこれまで大阪大学との共同研究で開発を進めてきたナノ加工技術(EEM、プラズマCVM、CARE)とナノ計測技術(RADSI、MSI)が精度的に十分活用できるレベルにあるため、特に高性能化傾向が強く量産化速度の高い半導体分野に参入する上で重要な要素の技術となります。

 現在、宇宙ならびに半導体の露光、検査に関わる高精度光学部品の問い合わせを複数頂いており、テスト加工の受託や大手メーカーとの共同研究開発の締結なども進み、技術検討から開発・試作フェーズに進んでいる案件も多くあります。オプティカル事業の展開によって蓄積された光学素子に関連する知見と技術を活かし、半導体産業などでの利用が見込まれる光学素子製品を中心として、ミラー製品の需要に左右されない新たな事業の柱を構築してまいります。

<ライフサイエンス・機器開発事業>

(ライフサイエンス事業)

 新型コロナウイルス感染症が世界的に収束へ向かい、これまでの行動制限や様々な規制が緩和される中、生命科学の領域におきましても、働き方改革を実現するための長時間労働是正による労働環境の改善と景気回復に伴う人手不足の影響を受け、自動細胞培養装置を導入する機運が高まっております。そのような中、当社におきましては、低価格の汎用型自動細胞培養装置「MakCell®」及び当社独自の3次元回転浮遊培養装置「CELLFLOAT®」を中心に拡販活動を進めてまいりましたが、昨今は培養装置単体ではなく、前後の工程も含めた全自動培養システムとしての問合せが増加しております。このような顧客ニーズの多様化に対応できるよう設計対応力、生産技術力の向上を図るとともに、積極的な営業活動を展開することで収益確保に努めてまいります。

 また、2022年11月に東京医科歯科大学において、3次元回転浮遊培養技術「CELLFLOAT®」をベースにした「CellPet3D-iPS®」を用いて、iPS細胞由来のヒト腸管オルガノイド(HIO)の生成に成功され、再生医療に大きな期待が寄せられております。当該製品に関しましても、これを契機に国内のみならず、海外のユーザーからも問い合わせが拡大しております。対象マーケットの幅を広げ、顧客ニーズを細胞培養に関わる新たな商品開発につなげるとともに、対応可能な商材の拡大を図り、ライフサイエンス分野の成長を促すことで、人類、社会の健やかな発展に寄与してまいります。

 さらに、医療機器の開発につきましては、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの競争的資金を受け、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構と進めている、脳梗塞治療に寄与する幹細胞分離機器(医療機器)の共同開発も計画通り成果を上げることができ、そのベースとなる単核球分離装置「MK-1000」を商品化いたしました。この装置は脳梗塞治療のみならず、認知症治療等幅広い用途への展開を期待しており、今後、さらに市場ニーズ等の情報を収集し、装置・システムならびに消耗品の販売ビジネスや新規支援ビジネス等の事業展開につなげてまいります。

(機器開発事業)

 当社設立当初より各種自動細胞培養装置を開発してまいりましたが、その自動化設計技術を活かし、当社の高精度KB型集光ミラーを用いた集光装置や各種OEM製品の製品開発を手掛けてまいりました。

 創業以来の装置開発で培った技術を活かし、新たな事業の柱として、独自の表面加工・研磨技術及び装置の開発推進、実用化による半導体装置事業への参入を図ってまいりました。昨年度はプラズマ化学気相加工装置(PCVM)とプラズマ援用研磨装置(PAP)の小型試作機の販売実績に繋がりましたが、当連結会計年度におきましては、PCVMで昨年度小型機を納入したお客様からのリピートとして大型自動装置の受注、新規のお客様からの小型機の受注をいただき、第4四半期に納入・売上計上し、事業展開に一定の成果が得られました。

PCVM、PAP両装置にナノ表面加工技術の触媒基準エッチング装置(CARE)、電気化学機械研磨装置(ECMP)を加えた次世代研磨装置を4つの柱として、半導体製造装置、半導体デバイスメーカー、次世代に向けた基礎研究開発分野への展開を図ることで、半導体ビジネスへの進出に注力し、中長期的な成長を支える技術基盤の強化を実現してまいります。

 当連結会計年度の第2四半期末には「SEMICOM Japan 2023」へ出展をした結果、複数企業からテスト加工の依頼を受けております。展示会への出展だけでなく、自社セミナーの開催やホームページの見直しと活用などによって営業の展開力を高め、販路拡大や大手企業との共同開発契約締結に繋げるなど、各種半導体材料等の表面加工技術の実用化と高度化を図り、製品展開を推進してまいります。

 ライフサイエンス・機器開発事業においては、ライフサイエンス分野や半導体分野における独自の製品開発を積極的に進めて顧客を獲得するとともに、市場の拡大に備えるために優秀な技術者の確保と育成、生産技術力の強化、協力会社を含めた生産体制や保守サービスの構築が重要課題であると認識しております。

 このため当社では、ライフサイエンスや半導体開発の経験者や装置ビジネスの管理経験者等優秀な人材の確保のために積極的な中途採用活動を実施する一方で、国内外の商社、生産協力会社との新たなパートナシップを構築し、事業拡大への礎を作っていきます。

<電子科学株式会社>

 電子科学株式会社は、超高真空環境下で試料を加熱することで放出される微量の気体成分(主に水素、水)を高精度に分析する昇温脱離分析装置(TDS)を製造・販売しており、半導体や液晶業界を中心に材料の研究や、製造工程の評価と品質管理において高い評価を得ておりますが、これまでの顧客層のみならず、鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等の様々な産業分野にも市場拡大が見込まれております。

 今後は、電子科学株式会社の分析技術と当社の自動化技術との連携を行い、新しい製品の企画、創出に注力し、新たな市場に製品投入することで新規顧客の開拓を進め、収益力の拡大に努めてまいります。営業活動地域についても、対象マーケットの幅を広げ、当社のオプティカル事業の海外チャネルを活用して積極的に営業活動を推進し、新規顧客の開拓を進め、収益力の拡大を図ってまいります。

② 技術開発体制の構築

 当社グループの顧客の多くは基礎研究に取り組んでいる研究機関・大学・企業の研究者であり、この基礎研究の分野で成長するためには、最先端の技術動向のキャッチアップと継続的な技術開発を行う体制を構築し、継続的に付加価値を提供することが重要であると考えております。

 このような認識のもと、オプティカル事業では国内外で開催される国際学会での企業展示だけでなく、当社の製品や最新の技術紹介等を積極的に発信してまいります。また、ライフサイエンス・機器開発事業においては細胞培養センターを活用し、オープンイノベーションの拠点として、最先端の技術開発に取り組んでいる研究機関や大学との共同研究や企業との事業連携を積極的に推進してまいります。

 半導体事業では、大学との共同開発で得られた成果(新たな加工原理や基本加工プロセス)と当社独自の装置技術を両輪として、開発を進めてまいります。また、展示会、ホームページによる製品紹介、当社装置による加工事例の紹介等を積極的に発信するとともに、お客様の実基材を用いた試作・評価や、お客様との共同開発や受託開発を加速することで、事業拡大を図っていきます。

 ライフサイエンス事業においては細胞培養センターを活用し、オープンイノベーションの拠点として、最先端の技術開発に取り組んでいる研究機関や大学との共同研究や企業との事業連携を積極的に推進してまいります。

③ 営業力の強化

 オプティカル事業においては、事業規模を拡大させるためには営業力の強化が重要であると考えております。しかしながら、取り扱う製品はコンサルティング営業ができるような技術知識が必要となるため、即戦力となる営業人材の確保が難しく、継続的な営業人材の確保と強化が重要な課題であると考えております。具体的には、技術者の社内ローテーションや物理学等の基礎学力を有している人材の採用活動によって営業人材を確保し、入社後は教育を担当する上司による継続的なOJTの推進によって営業力の強化に注力してまいります。

 各国施設の研究者とは、施設への直接訪問、放射光関連の国際学会や、光学全般の国際展示会において対面会話を主としており、それ以外ではウェブ会議により適時に商談、議論をしています。また最近では研究者の訪日の機会も増え、これまで以上に建設的な議論と密接な関係づくりが行えるようになっています。

 ライフサイエンス・機器開発事業及び電子科学株式会社においても、訪問とWEB会議を組み合わせて有効に営業活動を進めていますが、さらに関連業界に強い新たな商社、代理店とのコラボレーションを進め、潜在顧客の取り込み、市場への浸透を図ってまいります。また、最近は台湾、韓国、中国からの問合せが増加しており、よりニーズの高い地域を選定した海外への展開を徐々に進めており、有力地域での販売網の確立に努めてまいります。

④ 生産管理体制の強化

 オプティカル事業において、需要が拡大しグローバルな競争に生き残っていくためには、生産管理の役割が大きくなっており、組織力強化が重要であると考えております。

 一方、ライフサイエンス・機器開発事業及び電子科学株式会社は、新規事業を含めて、ファブレスによる柔軟な生産体制にて事業を展開しており、そのために協力企業との緊密な連携体制が重要であると考えております。今後の生産台数の増加や短納期化への要求に応えるためには、既存の協力企業だけでは不十分であり、新たな協力企業の発掘と育成が必要であると考えており、そのための準備を進めています。

 さらに今後、より信頼度の高い製品供給や顧客満足度の向上に向けて、それぞれの製造工程における生産管理や品質管理等、最適なチェック体制を構築し、安定した品質の製品を提供する仕組みが必要不可欠となるため、それらを総合した生産管理体制を強化してまいります。

⑤ 内部管理体制の強化

 当社グループの規模が徐々に拡大するに伴い、内部管理に関係する業務が多岐にわたって発生しておりますが、今後のさらなる成長のためには内部管理体制の一層の強化を図る必要があると認識しております。そのためには、内部管理の重要性に対する全社的な認識の強化を図り、また、法務・財務・経理・人事・広報・情報システム等に精通した人材も積極的に登用することによって、業務の有効性と効率性を高めてまいります。

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