シキボウ 【東証プライム:3109】「繊維製品」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
(経営理念)
「わたしたちは、シキボウグループのものづくり技術・ものづくり文化で新しい価値を創造します。」-安心・安全・快適な暮らしと環境にやさしい社会の実現へ-という経営理念のもと、「繊維」「産業材」「不動産・サービス」の各事業分野において、他社には真似の出来ない独自の機能や技術力を活かした商品づくりを追求すると共に、顧客ニーズに沿った商品提案やサービスの向上に取り組んでおります。
(長期ビジョン)
当社グループは、上記の経営理念のもと、これまで培ってきたものづくり技術・文化によって、環境や社会課題の解決に貢献してまいりました。現在の当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響で働き方・生活・価値観が大きく変わり、その中でデジタル化が一段と加速するなど変化の激しい時代となっております。また、ESG、サステナビリティ、環境問題が一気に進み、脱炭素社会の進展など不確実で先が読みにくい状況が続くものと考えられます。
このような事業環境において、更なる成長を続けていくためには、当社グループの方向性、価値観、存在価値などを長期ビジョン(ありたい姿)に描き、そのありたい姿からバックキャスト思考で、その実現に向けた経営計画を策定することが不可欠であると考え、当社創立150年である2042年に向けた長期ビジョン「Mermaid 2042」を策定いたしました。
「Mermaid 2042」
あなたにもっと寄り添い、愛されるシキボウグループへ
・従業員にもっと寄り添い、笑顔あふれる心豊かな人生の実現に貢献します
・お客様にもっと寄り添い、まだ見ぬ世界を当たり前にする技術で貢献します
・地球にもっと寄り添い、持続可能な社会に貢献します
(中期経営計画の概要)
本中期経営計画においては、コロナ禍からの復活を目指すこと、長期ビジョンの実現に向けた成長のレベルをさらに加速させることとし、新たに創ること、新たに取り組むことに挑戦してまいります。新しい取組みや施策を従業員一人一人のアクション単位にまで分解し、全員参加で取り組んでまいります。それぞれが行動を起こし、成すべきことを成すことで計画達成につなげる意味を込めて、名称は「ACTION22-24」といたしました。
〈 全体イメージ 〉
〈 基本方針 〉
①経営基盤の強化
◆新中核事業と位置付ける化成品事業・複合材料事業のさらなる事業規模の拡大
◆新たな市場展開に向けた設備投資(化成品事業(主として食品分野)、リネンサプライ事業)
◆新規用途・新規市場開拓による顧客の増大
◆国内・海外のグローバルネットワークの連携強化による海外市場の開拓
◆資本効率を重視した既存事業の稼ぐ力の向上と事業ポートフォリオの見直し
◆さらなる財務基盤の強化
◆従業員の計画的育成による人的資本の充実
◆生産性・業務効率向上のためのデジタル投資
②次の革新的成長に向けた取組
◆新中核事業に続く新たな成長の芽の育成と研究開発の推進
◆グローバル展開、成長領域への展開を支えるための多様な人材の確保と育成
③サステナビリティ経営への取組
◆地球環境に配慮した製品や社会課題を解決する製品のさらなる開発と販売強化
◆カーボンニュートラル社会実現に寄与する設備投資
◆従業員のエンゲージメントの向上にむけた、やりがいや働きがいのある職場・制度づくり
本中期経営計画「ACTION22-24」では、新中核事業と位置付ける化成品事業を次のステージに成長させるため、主力の食品用増粘安定剤の販売拡大に向けた設備投資、新中核事業に続く新たな成長の芽の育成と研究開発を推進するなど企業価値向上に向けた積極的投資を実施いたします。加えて、事業管理指標ROICを導入し、資本効率を重視した既存事業の稼ぐ力の向上と事業ポートフォリオの見直しに注力し、経営基盤を強化いたします。また、多様な人材の確保と育成により人的資本の充実を図り、グローバル展開、成長領域への展開を進めてまいります。
また、サステナビリティ経営への取組みについては、持続可能な社会の実現と持続的な企業価値の向上へ向け、長期ビジョン「Mermaid 2042」の策定にあたり、これを議論してまいりました。当社グループの事業領域は多岐にわたっており、サステナビリティ経営の根幹を成すESG課題も多様かつ広範なことから、次代を担う各事業部門の若手従業員も参画したESG分科会において、当社グループへの影響度とステークホルダーへの影響度を軸としたマテリアリティマップを作成し、当社グループが取り組むべきマテリアリティを特定いたしました。これを経営会議及び取締役会に答申し、さらに議論を進めた結果、優先的に取り組むべき6つのマテリアリティを特定いたしました。
〈 当社グループのマテリアリティ(重要課題)〉
今後、各マテリアリティと重点活動項目について具体的な対処方針と目標を定め、それらを事業戦略に組み込みます。加えてシキボウグループにおけるサステナビリティ経営に向けた取組みを統括し、定期的に取締役会に報告、提案を行うための取締役会直轄の機関を設置し、サステナビリティ経営への取組みを推進してまいります。
本中期経営計画「ACTION22-24」の遂行により、最終年度2024年度の最終目標は、連結売上高420億円、営業利益25億円、経常利益22億円、親会社株主に帰属する当期純利益15億円を計画しております。
(2) 目標とする経営指標
シキボウグループは、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目的として、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を、財務の健全性の確保を目的として、D/Eレシオ、自己資本比率を、資本の効率性の向上を目的として、ROE、ROA及びROICを、それぞれ経営指標としております。
(経営指標)
| 2024年3月期 | 2025年3月期 |
有利子負債 | 243億円 | 242億円 |
D/Eレシオ | 0.72倍 | 0.71倍 |
自己資本比率 | 40.9% | 40.6% |
ROA | 1.6% | 2.6% |
ROE | 2.4% | 4.5% |
ROIC | 1.6% | 2.7% |
(3) 経営環境及び対処すべき課題
わが国経済の見通しについては、緩やかな回復が続く中、世界的な金融引き締めや中国経済の先行き懸念、国際情勢の不安定化により、原材料やエネルギー価格の高止まり、円安の継続や物価上昇等、不透明な状況は継続するものと思われます。
このような経営環境の中、当社グループでは、コーポレートガバナンスの基本指針として、ステークホルダーへの社会的責任を果たすとともに、当社の持続的な成長と企業価値向上の実現を目的とし、中期経営計画「ACTION22-24」において3つの基本方針「経営基盤の強化」、「次の革新的成長に向けた取組」、「サステナビリティ経営への取組」を掲げ、取組みを進めております。
「経営基盤の強化」としては、資本効率を重視した既存事業の稼ぐ力の向上と事業ポートフォリオの見直しを挙げており、資本コストを意識した経営の実現を取締役会が取り扱うべき本年度の重要な議題の一つと位置付け、事業管理指標ROICを導入し、資本効率を重視した事業評価の仕組みを整備する等、現状分析を進めております。新中核事業と位置付ける化成品事業のさらなる事業規模の拡大としては、新たな市場展開に向けた設備投資として、㈱シキボウ堺において新工場建設を進めております。また、リネンサプライ事業では、大阪・関西万博を見据えた設備投資が終わり、事業拡大に取り組んでおります。新規顧客・市場開拓に向けた取組みといたしましては、ファッションブランドである株式会社アンリアレイジ様への出資を含めた業務提携の強化を進め、2023年10月に、繊維セグメント内に「ブランド戦略プロジェクト」を立ち上げ、取組みを進めております。ユニチカトレーディング株式会社様との企業間連携は3年目を迎え、共同開発商品の販売及び生産拠点の相互活用が進んでおり、今後は独自商品の開発・販売、技術の相互活用等を進めてまいります。
「次の革新的成長に向けた取組」としては、複合材料事業において、当社が有する設備や多様な製造技術を生かし、省エネルギーや軽量化が求められる航空機等の輸送機器関連をはじめとする様々な分野において、研究開発及び市場開拓に取り組んでおります。
「サステナビリティ経営への取組」としては、持続可能な社会の実現と持続的な企業価値の向上を目指しており、サステナビリティ経営を推進しております。2023年1月に「サステナビリティ推進委員会」を設置し、同年3月には「サステナビリティ基本方針」を定め、サステナビリティ経営の推進体制を整備いたしました。また、当社グループへの影響度、ステークホルダーへの影響度を軸としたマテリアリティマップを作成し、取り組むべきマテリアリティを特定しております。マテリアリティの一つである「気候変動対策及びその緩和」については、温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1、2)の削減目標を2030年度に46%以上の削減(2013年度基準)と定め、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、排出量削減の取組みを強化しております。
「対処すべき課題」に対するセグメント別の取組みとしては次のとおりです。
「繊維セグメント」は依然として製造コストの高騰により苦戦を強いられておりますが、市況の回復や価格改定等により、業績は回復傾向にあります。今後は、注力すべき市場、分野への経営資源の集中を図りつつ、国内・海外のグローバルネットワークの連携強化により、海外市場への販売拡大を目指してまいります。また、「健康快服」をコンセプトに当社オリジナルの環境に配慮したサステナブル商材の開発強化を進め、さらには、中長期を見据えて分野にとらわれない新たな事業開発も進めてまいります。
原糸販売事業は、当社連結子会社である現地法人、シキボウベトナム有限会社との連携によりベトナムでの差別化糸生産拡大を進め、杢糸に強みのある当社連結子会社の新内外綿㈱との協業強化により、国内外の商圏拡大に努めてまいります。
輸出衣料事業は、中東民族衣装用生地の市場活況が継続する中、当社連結子会社である㈱シキボウ江南での加工品の販売拡大に加え、民族衣装以外の衣料品の販売構築も進めます。また、引き続き欧米及びアセアン向け販売の市場開拓を進めてまいります。
ユニフォーム事業は、引き続き生産の効率化と価格改定を継続し、既存製品に加えて長繊維素材及びニット素材の販売拡大に努めます。また、展示会の拡充等により、顧客提案を再強化いたします。
ニット製品分野はシキボウベトナム有限会社との連携によりベトナムでの生産拡大を進めつつ、他のアセアン諸国に加え、バングラデシュ等での協力工場も開拓し、国内外の商圏拡大に努めてまいります。
生活資材事業は、主要取引先との取組みを拡大しつつ、当社オリジナルの開発商品を活用し、新規市場を構築・拡大してまいります。
メディカル分野は、臭気対策剤「デオマジック®」の海外市場販売と女性が抱える心と体の課題を解決するフェムテック素材を含む衛生商材の国内外への販売拡大を推し進めてまいります。
「産業材セグメント」では、産業資材部門は、紙需要減少による国内製紙会社の生産設備停止に加え、官公需におけるクロス未使用型脱水機の普及や個別空調設備の普及等、厳しい環境が続くものと予想されます。しかし、引き続きシェアの拡大や生産性の向上に努め、段ボール製造用コルゲーターベルトや緻密クロス、空気清浄装置等の新規開発商品の販売拡大等、売上・利益拡大施策に取り組み、国内トップポジションを堅持してまいります。加えて、海外市場での商圏拡大を図ってまいります。
機能材料部門は、中期経営計画「ACTION22-24」において、新中核事業に位置付けている化成品事業・複合材料事業について、さらなる事業の拡大に向けた取り組みを進めてまいります。
化成品事業は、食品用増粘安定剤(食品添加物)を配合するブレンド製品(粉体の混合)の生産能力増強及び品質向上の実現を目的として、当社連結子会社である㈱シキボウ堺において、2025年1月操業開始に向け、新工場の建設を進めております。食品用増粘安定剤は、国内の人口減少が進む中でも「健康志向」や高齢者向けの機能性食品の用途において新たなニーズがあり、当社が取り扱う食品用増粘安定剤は、サステナブルな植物由来の原料を使用しております。年々高まる「健康志向」や、食の多様化における機能性・利便性等の「高付加価値」ニーズを取り込むべく、需要の拡大に努めてまいります。また、新工場ではクリーン度の高い室内環境と製造ラインへの洗浄装置の導入により、これまで以上に高度な品質要求に対応できることから、取扱いの難しいアレルゲンを含む原材料も含めた新商品の開発により、新規顧客の獲得を図ります。さらに、食品用増粘安定剤の滅菌や脱臭加工の分野においても新商品開発に取り組み、新たな市場の獲得、さらなる事業規模の拡大に努めます。
複合材料事業は、航空機部品用途で需要が回復してきており、安定した生産体制を維持することに加えて、設備の自動化や多能工化に注力することで、生産技術力・コスト競争力を高め、新たな需要の取り込みを図ります。また省エネルギーや軽量化が求められるインフラ用途等の分野では、当社が有する設備の活用と多様な製造技術を駆使することにより、市場開拓に取り組みます。
「不動産・サービスセグメント」では、引き続き安定的収益基盤の維持拡充を目指します。不動産賃貸事業、リネンサプライ事業、物流配送事業を安定的に運営するほか、リネンサプライ事業では、大阪・関西万博を見据えて更新し、増強した設備を効率的に運用し、事業拡大に取り組みます。
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