企業コニカミノルタ東証プライム:4902】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは、経営理念である「新しい価値の創造」及び経営ビジョンとして「Imaging to the People」を掲げ、創業以来150年にわたりこだわり続けてきた材料・光学・微細加工・画像の4つのコア技術を高度化・融合するとともに、ICT・AI技術を組み合わせることで“見えないものをみえる化する”技術として発展させました。そして、この独自技術を活用することで顧客の課題を解決する新たな製品・サービスを各事業セグメントで開発しております。

 当連結会計年度(以下「当期」)より開始された、新たな中期経営計画に基づいた基本方針に対応して、「強化領域への技術資源シフト」、「エキスパート・DX人財活用」、「成長領域への技術の仕込み」の3つを技術戦略の基本方針と定め、その初年度として推進してまいりました。

「強化領域への技術資源シフト」においては、確かな成長基盤を確立するため、強化領域であるインダストリー事業、ヘルスケア事業、プロフェッショナルプリント事業の領域に対し、技術資源投入を増強しております。

 インダストリー領域における技術資源シフトの一例として、コーポレート開発で蓄積を進めるマテリアルズインフォマティクス及びプロセスインフォマティクスのノウハウをディスプレイフィルム生産工場に適応しております。生産工程に設置されたセンサーデバイスにより生産状態がモニタリングされ、製品の高品質化や生産の安定化で効果が得られております。またヘルスケア事業に対しては、次世代の超音波トランスデューサ開発にコーポレート開発の技術資源を投入し、事業拡大の加速を行っております。この開発により、超音波診断装置の感度が飛躍的に向上し、これまで超音波診断装置では見ることができなかった早期の癌を発見することが可能になると期待されます。

「エキスパート・DX人財活用」では、管理職制度を複線化して技術やビジネスで高い専門性によって変革をリードする人財として新設した「エキスパート」と、AIやデータサイエンス、ITスキル等の社内教育・認定により1,000名まで増強した「DX人財」の活躍により各事業の変革を進めています。全社の各事業が、従来の事業モデルからデータを活用した新たなビジネス創出に取り組み、全社横断で生成AI活用を推進することで業務効率化が進む等の成果が出ています。今後も各事業が成長のための必須人財として、エキスパート・DX人財の更なる育成強化と活用促進を進めてまいります。

「成長領域への技術の仕込み」においては、持続的成長に向けた技術開発テーマに投資を行い、イノベーションの加速を実施しております。特に当社では2030年に想定される社会課題からのバックキャストから5つのマテリアリティ(1.働きがい向上及び企業活性化、2.健康で質の高い生活の実現、3.社会における安全・安心確保、4.気候変動への対応、5.有限な資源の有効利用)を制定しており、環境負荷低減への貢献は技術開発のスコープの一つです。例えば、カーボンニュートラルの実現を目指した取り組みの一例としては、産業技術総合研究所と共同で「バイオプロセス技術連携研究ラボ」を設立いたしました。石油由来の材料原料から作るものづくりからの転換として、微生物を用いて非石油由来の原料から合成するバイオモノづくり技術はカーボンニュートラル実現のキーテクノロジーとして注目されています。この技術領域に対して、当社が保有するセンシング技術や、機械学習、ディープラーニング等のAI技術の強みを生かし、バイオものづくりを将来社会に拡大していく上で課題の一つである生産プロセスの“みえる化”による安定生産・スケールアップの実現に向けて取り組んでおります。

 研究開発により創出される技術(発明、アイデア、ノウハウ等)については、特許権の取得に加え、著作権法・不正競争防止法等の各種法制度や契約を利用することにより、知的財産として適切な保護・活用を行い、当社グループの競争優位性の維持、成長のドライバーとしております。

 新たな中期経営計画の策定に合わせて、同計画に沿った知財戦略を策定し、実行しております。具体的には、中期経営計画の基本方針のうち、特に事業の選択と集中による事業収益力の強化を推進すべく、「知財アロケーションの見直し」、「強化事業の拡大を支える知財障壁構築」等の施策を進めています。

「知財アロケーションの見直し」においては、事業の選択と集中による強化事業の拡大をさらに推進するため、知財投資の選択と集中を進め、全社の特許出願に占める強化事業の比率を大幅に引き上げています。

「強化事業の拡大を支える知財障壁構築」においては、事業の拡大・成長を確かなものとするため、事業や製品が立ち上げ期から拡大・成長期に差し掛かるタイミングで「知財の壁」を築き、競合の参入を抑制しております。例えば、インダストリー領域の中核事業の1つである機能材料事業においては、大型ディスプレイ領域でのシェア拡大のキーとなる「SANUQI」フィルムの価値を守る「知財の壁」を構築しております。大型ディスプレイ領域の市場では各ディスプレイサイズへの効率的な対応の観点から偏光板メーカーでの広幅ライン化が加速しており、偏光板に使用する機能性フィルムにおいても広幅シフトへの対応がシェア拡大のキーとなります。「SANUQI」はCOPフィルムとしては比較的後発ながら、「溶液流延+ベルト」方式で製膜することにより、超薄膜化や多様な機能の付与によるカスタマイズが可能な点に加え、後延伸工程と組み合わせることにより柔軟に広幅化に対応可能という価値で、顧客のニーズを捉え、シェアを拡大しております。当社では、COPフィルム全般については特許に関しても競争優位のポジションではありませんが(左グラフ)、「SANUQI」の提供価値を実現する「溶液流延+ベルト」方式での製膜に集中的に出願することにより、右のグラフに示すように「知財の壁」を築き、「SANUQI」の価値について競合が参入することを抑制しております。

「新樹脂全般での領域」と「溶液流延+ベルト方式領域」に関する日本特許(公開特許+登録特許)のスコアマップ

(注)株式会社パテント・リザルトの特許分析ツール「Biz Cruncher」を用いて当社にて作成いたしました。円の大きさが各社の特許件数を、横軸が最も評価の高い特許の評価値を、縦軸が特許群全体の評価値を示しております。

 上述した環境負荷を低減する技術開発に加え、持続可能な社会の実現をめざして、省エネルギー、リサイクル可能な環境配慮型製品の開発、使用済み製品の廃材を高機能材料として再活用する技術、バイオマス由来材料を活用する技術の研究開発を進めております。複合機の本体や消耗品(トナー等)に使う石油由来材料を再生材料へ転換し、プラスチック由来のCO2排出量の削減を進めてまいります。バイオマス由来材料や廃材を複合機等の高機能材料として活用するためには、一般的に石油からのバージン材に比べて性能が低下するとともに製品品質が安定しにくいという課題があります。当社グループは、この課題を解決するために、長年使ってきたコア技術の1つである材料技術、成形加工技術を発展させ、材料開発、材料選択、加工技術の組み合わせにより、新しい樹脂開発を進めます。複合機への展開だけでなく、様々な企業と本技術を共有し実用化することで、連携の輪をグローバルに広げ、環境価値の効果を飛躍的に大きくしてまいります。

 当期におけるグループ全体の研究開発費は651億円となりました。そのうち、デジタルワークプレイス事業及びプロフェッショナルプリント事業に係る研究開発費が294億円、ヘルスケア事業に係る研究開発費が122億円、インダストリー事業に係る研究開発費が142億円、その他事業及び基礎研究費用が93億円であります。各事業部門別の研究の目的及び研究成果は以下のとおりであります。

(1)デジタルワークプレイス事業

 デジタルワークプレイス事業においては、複合機、ITサービス・ソリューション、「Workplace Hub(ワークプレイスハブ)」を組み合わせた、各種ハードウェア、ソフトウェア、システムソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施しております。

 オフィス用複合機・プリンターのラインアップ bizhub(ビズハブ) iシリーズとして、A4カラー複合機「bizhub C4051i」「bizhub C3321i」、A4カラープリンター「bizhub C4001i」、A4モノクロ複合機「bizhub 4051i」(以下、bizhub C4051iシリーズ)を開発しました。

 働き方の多様化やDX推進による業務環境とプロセスの急速な変化により、ドキュメントを扱う複合機やプリンターの役割は、IoT機器の一つとしてますます大きくなっております。bizhub C4051iシリーズは、シンプルな操作性と高生産性により業務効率を向上させ、豊富なネットワーク機能と堅牢なセキュリティ機能により、働く場所や時間を柔軟に選ぶことができる多様な働き方をサポートします。

bizhub i シリーズは、複合機のパネルからアプリケーションダウンロードサイト「Konica Minolta MarketPlace」に接続し、アプリケーションをインストールすることで、操作性向上やクラウドとのスキャン連携等の機能を複合機に追加することができます。さらに、リモートメンテナンスによる常時監視・保守や自動アップデートにより複合機が最適な状態に維持されるほか、災害時の早期復旧が可能になる等、将来にわたって顧客の事業継続をサポートするサステナブルな高品質サービスの提供とあわせて企業のDXを促進しオフィスのITサービスとのタッチポイントとなり、効率的なIT活用を支援しております。

 また、生産に必要な部品調達過程からメンテナンスを含む顧客先での使用期間、その後の回収と再利用のための処理にいたるまで製品ライフサイクル全体にわたって環境に配慮した製品となるよう開発しております。

 開発体制の最適化として、ベトナムの大手IT企業であるFPTソフトウェアの日本法人FPTジャパンホールディングス株式会社と 複合機ソフトウェア開発に関する合弁会社を2024年4月1日付で設立することを決定しました。これにより、顧客への価値提供は維持拡大しながら、開発投資を効率化することで、中期経営計画で収益堅守事業と定めたオフィス事業の基盤をさらに強化し、安定的な収益を創出します。

 さらに当社は、「Intelligent Connected Workplace」のプラットフォーマーとして顧客のDXを支援する技術を開発しております。

2020年に商用稼働した「COCOMITE(ココミテ)」はクラウドで提供する自社開発オンラインマニュアル作成・運用サービスです。人材育成・技能伝承の課題解決に着眼し、既知の業務マニュアルの作成・運用の非効率さの解消を切り口に新たに開発されました。マニュアルの効率的な作成、管理を基本機能としてリリースして以降、顧客の声・アクセスログ解析から新機能開発や改善を重ね、オンラインマニュアルコラボレーションツールに進化、成長を続けております。

 また、AI技術によって、教育分野における教員の働く教育現場の課題解決に貢献するべく、2019年から文部科学省の学校における先端技術の活用に関する実証事業に取り組んでおります。学習支援サービスや学びの分析サービスを搭載した教育機関向けのトータルソリューション「tomoLinks(トモリンクス)」によって、教育のDXを広く展開し、多様な子どもたちが誰一人取り残されることなく社会とつながる個別最適化された協働的・探究的な学びに貢献しております。

(2)プロフェッショナルプリント事業

 プロフェッショナルプリント事業においては、プロダクションプリント/産業印刷の生産性と印刷品質、自動化・省人化・スキルレスを訴求し各種印刷機やサービスソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施し、顧客のDX支援によるプロセス改善・リモート化・分散印刷を実現してまいります。

 新世代モノクロデジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオプレス) 7136シリーズ」、またモニター画面に近い鮮やかな色合いを表現できるハイクロマトナー(高彩度トナー)採用のデジタル印刷システム「AccurioPress C84hc」を発売しました。

 さらに、複数のプロダクションプリント機の情報を一括で可視化し管理効率化と工程の継続的な改善を支援するソリューション「AccurioPro(アキュリオプロ)Dashboard」シリーズに「AccurioPro Dashboard JobManager」を追加し、印刷データ入稿から梱包・出荷まで工程全体進捗をリアルタイムでみえる化することで、効率的な生産計画の作成や修正を可能とします。

 産業印刷ユニットにおいては、多様なメディアへの印刷と高い生産性、優れた画質と信頼性で新たな印刷ビジネス領域を切り開く「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1e」を提供し、様々なアプリケーション(出力用途)や市場からのニーズに対応しております。また、ラベル印刷では使いやすさと導入コストでご好評をいただいた「AccurioLabel(アキュリオ ラベル)230」とその上位機種である「AccurioLabel 400」を提供しております。当社初の白トナーを搭載し、自動品質最適化ユニット「IQ-520」を導入することで常に安定した画像品質を保ちます。

(3)ヘルスケア事業

 ヘルスケア事業においては、デジタル診断にフォーカスし、データサイエンスの力をフル活用して「早期診断」と「個別化医療」を実現することで、患者様個々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を追求するとともに医療費の削減に貢献するべく研究開発を推進しております。

 ヘルスケア分野では、“見えないものをみえる化する”高度なイメージング技術を重要な柱に据え、IoTプラットフォームにAI技術を活用した診断支援機能や患者ポータル等様々な高付加価値サービスを搭載・展開するための研究開発を推進しております。

 当期においては、ヘルスケア分野では、X線画像診断の始まりである国産初の「さくらレントゲンフィルム」の発売から90年の節目の年を迎えました。X線画像診断に“動き”の情報を付加した「X線動態」による解析を「診断学」へ進化させるべく、国内外の大学との動態撮影に関連する有用性研究を複数開始し、成果が見え出しております。具体的には、国内の放射線技術学会において、X線動態撮影に関する発表セッションが前連結会計年度(以下「前期」)よりも倍増しました。世界中の医師や放射線技師、医学研究者の方々と新たな価値の共創を進め、動態画像に『こういう活用ができる』という意味づけをしていただき、医療界の課題解決と進歩・発展に貢献してまいります。医療IT分野では、日米アジア諸国へ各国のニーズに適合したソリューションを効率的に展開できる開発体制構築が進捗しました。国内において、患者も活用できる「infomity(インフォミティ) スマートクリニックサービス」を発売しました。これにより、医療機関と患者をつなぐインフラとなり、より日常に寄り添った医療の提供をサポートし、生活習慣病の予防や重症化予防に貢献してまいります。また、X線動画解析ワークステーション「KINOSIS(キノシス)」が公益財団法人日本デザイン振興会主催の2023年度グッドデザイン賞を受賞しました。

 プレシジョンメディシンユニットでは、グループ会社のコニカミノルタREALM株式会社が、DNA及びRNAの2種類の遺伝子情報を解析する機能を併せ持つがんゲノムプロファイリング検査用システム「GenMineTOP がんゲノムプロファイリングシステム」の前期の製造販売承認に続き、日本国内で保険適用を受けて検査受託を開始しました。本システムを用いて精緻ながん診断を推進することで、患者一人ひとりの特性を鑑みた適切な治療の実現等を通じて、患者のQOL向上に寄与してまいります。

(4)インダストリー事業

 インダストリー事業においては、センシング技術、材料コンポーネント技術、画像IoT技術を活かしたソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施し、産業界のバリューチェーン変革推進で顧客と社会に貢献するため、産業のモノづくり最適化と安全・安心を提供してまいります。

 センシング分野においては、強みである光・色・外観の計測技術を基盤として、ICT領域や自動車領域に向け、高品質な製品・ソリューションを提供しております。

ICT端末のディスプレイの高性能化、今後市場の成長が見込まれるAR/VR分野の計測需要に対応し、超低輝度領域まで測定可能な分光放射輝度計「CS-3000HDR」や次世代ディスプレイカラーアナライザー「CA-527」を開発し、ソリューションの拡大を図りました。

 自動車の外観計測においてはトンネル型の塗装欠陥検査装置に加え、顧客の最終検査工程で必要となる検査機能、例えば車体のすき間・段差・キズ・へこみ等の測定を自由に組み合わせられるAll in One検査装置の提供を開始しました。

 ハイパースペクトルイメージング技術においては、リサイクル分野において中赤外線分光カメラで、識別と分類が困難とされる黒色プラスチックの仕分けを実現しております。さらには、長波長赤外線分光カメラ「FX120」を開発し、鉱物調査、環境分析の用途にも新たな可能性の探索を進めております。

 材料・コンポーネント分野における機能材料ユニットにおいては、液晶画面の基幹部材となる偏光板用保護フィルム向けに、従来のTAC製品に加え、新樹脂フィルム「SANUQI」(COP系)、「SAZMA」(アクリル系)等を新プラットフォームとすることでお客様の選択の自由度を高め、さらに 2.5mの超広幅品等の高付加価値商品の販売及び開発を展開しております。また原材料の使用量を減らすことができる薄型フィルムや、サプライチェーンの環境負荷やロスの低減が可能な長尺フィルム商品等、環境に配慮した商品の準備を進めております。

 光学コンポーネントユニットにおいては、成長領域である半導体検査用レンズに欠かせない超高精度加工技術開発や移動体に搭載するセンサーデバイス用レンズ及び観測観察用レンズ等の開発・製品化に取り組んでおります。光学設計技術・微細加工技術に材料技術を掛け合わせた高機能コンポーネントの開発に注力し事業化推進を図ってまいります。

IJコンポーネントユニットにおいては、産業用インクジェットヘッド技術の開発、製品化に注力し、サイングラフィック領域からプリントオンデマンドの商業印刷領域、そしてプリント基板上の回路形成をはじめとした工業用途への拡大に向けて、さらなる製品ラインアップの拡充に取り組んでおります。

 画像IoTソリューションユニットは、製造業・防災・セキュリティ等の領域を中心に、AIによる予知保全、安全安心確保に向けたモニタリング・ソリューションを展開しております。当期においては、ガス漏えい検知技術にAI解析を掛け合わせ、従来捉えられなかった煙の発生を、いち早く、正確に検知可能なアプリケーションを開発し、AIカメラとの組み合わせによる「火災予防ソリューション」や「高精度な自動車のライセンスプレートの検知・認識ソリューション」を展開しております。

 さらに、世界的に脱炭素/環境負荷低減の機運が高まる中、国連の活動であるメタンガス排出量報告フレームワーク「OGMP2.0」推進向けた石油ガス事業者の活動が進展しております。また、米国においては米国環境保護庁(EPA)によるメタン排出規制強化への対応が石油ガス事業者に求められる中、ガス漏えいを定量化する「流量推定技術」を搭載した「ガス漏えい検査システム(GMP02)」を提供することにより、顧客の課題解決に取り組んでおります。

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