企業コニカミノルタ東証プライム:4902】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)サステナビリティに関する基本的な考え方 ―中長期の成長に向けて

 当社の考えるサステナビリティとは、「事業によって社会・環境の問題/課題を解決することで持続可能な社会の実現に貢献し会社が成長していくこと」です。社会・環境課題の解決を、経済合理性のある事業として実行することで、当社の持続的な成長を遂げることができると考えております。

 この考えに基づき、2020年には、10年後の2030年のあるべき「持続可能な社会」の姿を見据えて、取締役会の決議を経て長期経営ビジョンを策定し、当社が向き合うべきマテリアリティ(重要課題)を特定しました。

①長期経営ビジョン-2030年の社会と当社の存在意義

 当社は2020年に2030年の社会を考察し、世界人口の構造変化、デジタル革命の進行、バイオテクノロジーの産業利用拡大、世界構造の多極化、気候変動・温暖化の潮流から、「組織や個人が、爆発的に増加するデータを活用して多様な価値を創造し、持続的に発展する自律分散型の社会」が訪れると考えました。このような社会においては、組織や個人が求める豊かさが個別化・多様化し、それらの充足ニーズが高まる一方、資源不足や気候変動による影響、社会保障費の増大、雇用や創造への機会格差といった課題の解決が求められます。

 この世界観のもと、当社は独自のイメージング技術をコアに、ニーズと課題のトレードオフを解消し、「人間中心の生きがい追求」と「持続的な社会の実現」とを高次に両立することが当社の存在意義であると結論付け、「Imaging to the People」という長期の経営ビジョンステートメントに集約しました。

 当社発足以来不変の「経営理念」の下、価値創造の源泉としての企業文化・風土である「6つのバリュー」を基盤に経営ビジョンステートメント「Imaging to the People」の実現を目指しております。

 長期経営ビジョンとフィロソフィー体系(経営理念、経営ビジョン、6つのバリュー)

②マテリアリティと価値創造プロセス

 当社は自社が向き合うべき重要課題として、「働きがい向上および企業活性化」、「健康で質の高い生活の実現」、「社会における安全・安心確保」、「気候変動への対応」及び「有限な資源の有効活用」の5つをマテリアリティとして特定しました。

 2030年に想定される社会課題からバックキャストして、当社の強みである無形資産(顧客関係、技術の融合、多様な人財)を融合させ、4つの事業群を通して製品やソリューションを提供し、顧客との共創を通じて生み出される顧客価値、結果としての経済価値であるキャッシュ・フローを創出し、環境・社会課題の解決のインパクトを拡大していくプロセス、これを持続的に繰り返していくことで企業の成長を図ってまいります。

 価値創造プロセス

③持続的な価値創造を支える無形資産

 次の3つの無形資産は当社が継続的に価値を生み出すための源泉となるものです。

●顧客関係

 当社は長年にわたり事業を通じて世界各地で顧客との関係性を築いてきました。デジタルワークプレイス事業では、オフィス事業で培ったグローバルの顧客基盤からの知見を活かすとともに、オフィスや病院、物流、製造、教育といった様々な業種・業態の現場の課題に向き合い、顧客のワークフロー改革や価値創造を支援することで、顧客との関係性をより強固なものとして拡大しております。インダストリー事業では、業界をリードする先進的な顧客との長期的な関係性により、時代の先を行く技術の実用化やバリューチェーンの変革など、当社が社会に大きな価値を提供する機会につながっております。

●技術の融合

 当社が根源的に持つ強みは、創業以来150年こだわり続けてきた「画像」にかかわる4つのコア技術(材料・光学・微細加工・画像)です。これらにAI技術を組み合わせることに2014年から取り組み、介護支援サービスなどの事業創出や、製造現場の安全安心対策など様々な社会課題の解決に応用できる技術に進化させてきました。また4つのコア技術を事業をまたいで「融合」させることで新たな価値を創造する取組みも始まっております。プロフェッショナルプリント事業のデジタル印刷機に対する自動品質最適化機能「IQ-501」の搭載はその一例で、「光学」、「微細加工」、「画像」を組み合わせ、印刷作業の自動化によるワークフロー改革を実現しております。

●多様な人財

 当社の人財における優位性は、グローバルな事業展開や積極的なM&Aなどを通じて獲得してきた多様性にあります。これを活かすため、人事制度の整備とともに、ポテンシャルのある人財が挑戦できる機会の提供を進めており、特に女性活躍推進は、これを経営課題と位置付けて注力しております。同時にグループとしての一体感の醸成に向け、従業員の満足度調査をグローバルで毎年実施し、経営方針の浸透、職場の課題の抽出と解決を行っております。また前述のコア技術とAI、IoTの技術を組み合わせる人財の増強にも目標値を設定して推進しております。

(2)重要なサステナビリティ課題への対応に関する基本的な方針

①ガバナンス <サステナビリティ関連のリスク・機会を監視及び管理するしくみ(プロセス・統制・手続き)>

 当社では、取締役である代表執行役社長がサステナビリティマネジメント全体についての最高責任と権限を有し、その有効性について責任を担っております。代表執行役社長のもと、サステナビリティを担当する各役員がグループ全体のサステナビリティマネジメントを推進しております。

 重要なサステナビリティ課題に関する議論や意思決定は、ほかの重要な経営課題と同様に、社長及び執行役・執行役員が参加する経営審議会その他の会議体の場で行っております。

 サステナビリティ中期経営計画は、担当する各役員が策定し、会社全体の経営計画としてとりまとめ、経営審議会その他会議体での審議・承認を経て、取締役会の承認を得ます。またマテリアリティについても、中期経営計画の策定プロセスの中で、経営企画を担当する役員を中心にサステナビリティを担当する各役員がリスクの変化度合いを見直すローリングを行い、必要に応じて見直しを行い、経営審議会その他の会議体での審議・承認のうえ、取締役会の承認を得ております。

 サステナビリティを担当する各役員は、サステナビリティに関する中期計画を検討・推進する機関として、必要に応じて「推進会議」を設定しております。例えば、環境に関する中期計画を検討・推進する機関として「環境推進会議」を設定しております。環境を担当する役員が議長となり、各事業部門やコーポレート部門などの各組織長に任命された推進責任者が参加し、環境に関する中期計画、年度計画の審議、四半期ごとの進捗状況の確認やグループの環境課題に関する検討を行っております。

② リスク管理 <サステナビリティ関連のリスク・機会を識別・評価・管理するプロセス>

 当社は、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置付け、中長期的な視点でリスクを評価しております。

 サステナビリティ関連の中長期のリスクは、マテリアリティをマネジメントするプロセスの一環として継続的に監視し、必要に応じてマテリアリティの改訂に反映させます。具体的には、中期経営計画の策定プロセスの中で、経営企画を担当する役員を中心にサステナビリティを担当する各役員がリスクの変化度合いに基づいて、必要に応じて見直すことで、その妥当性を継続的に担保しております。

 短期・中期のリスクを含む全リスクはリスクマネジメント委員会において管理しております。

 執行役及び執行役員の職務分掌に基づき、それぞれの担当職務ごとにリスク管理体制の構築と運用にあたっております。リスクマネジメント委員会は定期的(年2回)及び必要に応じて臨時に開催しており、抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかの検証・評価を行っております。リスクマネジメント委員会の協議内容は定期的に監査委員会に報告しております。

 なお、当社のリスク管理体制・リスクマネジメントプロセスの詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

(3)サステナビリティ課題に関する重要性の評価と優先順位付け <サステナビリティ課題を特定するプロセス>

 当社では2020年に、10年後の2030年にあるべき「持続可能な社会」の姿を見据えて、社会・環境課題が当社に与える影響を機会とリスクの観点から評価し、そこからのバックキャスティングによって「今なすべきこと」を「5つのマテリアリティ」として特定しました。その際のプロセスは次のとおりです。

STEP1:課題のリストアップ

 GRIスタンダードやSDGsなどの国際的なフレームワークやガイドライン、各専門分野のマクロトレンドなどを参照しながら環境・社会・経済面での課題を広範囲にリストアップしました。ストックホルム・レジリエンス・センターの「SDGsウェディングケーキモデル」をベースとし、「ECONOMY(経済)」「SOCIETY(社会)」「BIOSPHERE(環境)」の関係性を念頭に置きながら、課題を抽出しました。抽出にあたっては、当社が関連する、あるいは関連する可能性がある事業領域、そのサプライチェーン/バリューチェーンを範囲として、社会・環境変化や規制・政策動向、ステークホルダーからの要請事項などを考慮して進めております。

STEP2:課題の抽出と重要度評価

 リストアップした課題の中から、特に当社に関連性の高い分野を抽出したうえで、マテリアリティ分析(重要度評価)を行いました。当社のマテリアリティ分析は、リスクと機会の側面をそれぞれ評価している点に特徴があります。リスクと機会をそれぞれ評価することで、SDGsを進めるにあたり、企業に期待されている「社会課題を機会と捉えビジネスを通じて解決することで事業成長を図る」ことを実践しております。マテリアリティ分析は、それぞれ「ステークホルダーにとっての重要度(顧客、取引先、株主・投資家、従業員など)」と「事業にとっての重要度(財務的な影響度)」の2軸で5段階評価し、優先順位を付けました。

STEP3:妥当性確認、特定

 経営企画を担当する役員は、これらのマテリアリティの評価プロセス及び評価結果の妥当性を検証し、優先的に取り組むべきマテリアリティを特定しております。特定したマテリアリティは、経営層による審議のうえ、取締役会による承認を受けております。またマテリアリティを定期的にレビューし、必要に応じて見直すことにより、その妥当性を担保してまいります。

(4)重要なサステナビリティ課題と、関連する機会及びリスク<特定したサステナビリティ課題の詳細と関連するリスクや機会>

 2022年時点でのマテリアリティと関連する機会とリスクは次の表のとおりです。

 当社の各事業はマテリアリティを意識した価値創造に取り組んでおります。例えば、インダストリー事業では、製造現場で熟練工の経験値に基づくスキルに依存していた検査工程を自動化・省人化することで熟練工の技術継承問題を解決すると同時に、最終製品の高品質化に貢献することで「働きがい向上及び企業活性化」に寄与しております。また、プロフェッショナルプリント事業では、適時・適量・適所での生産による輸送・保管・廃棄・中間材の低減といった顧客のサプライチェーンの変革を通じて「気候変動への対応」と「有限な資源の有効利用」に寄与しております。さらに、ヘルスケア事業では個別化医療の実現と早期発見・早期診断による「健康で質の高い生活の実現」に寄与しております。

 なお、サステナビリティに関するリスクは、マテリアリティのマネジメントやリスクマネジメントのプロセスに落とし込んで対応しております。

 

社会・環境課題

(2030年想定)

機会

リスク

働きがい向上

および

企業活性化

デジタル格差

人手不足の解消

雇用や創造への機会格差

ワークフロー、サプライチェーンの変革による顧客の生産性の向上と創造的な業務へのシフトを支援

ダイバーシティを重視した環境づくりの停滞による、従業員の自律性、イノベーション力の低下

健康で質の高い生活の実現

医療や介護の持続性が低下

医療アクセスの制限

社会保障費抑制

イメージングと医療ITサービスによる早期診断、医療費抑制、QOLの向上への貢献

 

社会における安全・安心

確保

設備老朽化などによる労働災害発生のリスク

画像監視による企業や社会の安全・安心の確保

高度な計測・検査による顧客の品質確保

製品・サービスに起因する重大事故による企業や社会における損害の発生

気候変動への対応

脱炭素社会への移行による変化への適応

気候変動による社会・経済・生態系への影響

ワークフロー、サプライチェーンの変革による顧客企業や社会におけるエネルギー/CO2負荷低減

持続可能なエネルギーへの転換遅れによる競争力低下

ペーパーレスの進行に対応する事業転換の遅れ

異常気象によるサプライチェーンの寸断

有限な資源の有効利用

循環型社会への移行による変化への適応

資源枯渇による社会・経済・生態系への影響

ワークフロー、サプライチェーンの変革による顧客企業や社会における資源抑制・資源有効利用

持続可能な原料への転換遅れによる競争力低下

資源不足による部材コストアップと供給不安定化

 各事業の取組みと関連するマテリアリティ(主要なもののみ)

(5)重要なサステナビリティ課題への取組み及び指標

① 気候変動

 当社の環境経営は、「環境課題を解決していくことで、事業を成長させていくこと」をコンセプトとし、世の中から必要とされる会社になることを目指しております。地球規模での気候変動問題を解決するには、自社だけの取組みでは限りがあります。そのため、当社は、取引先、顧客を中心とするステークホルダーとの連携によって地球上のCO2削減に積極的に関わっていく「カーボンマイナス」の実現を目指しております。カーボンマイナスとは“自社責任範囲と定められるCO2排出量(スコープ1,2,3排出量)に比べて、責任範囲外でのCO2削減貢献量(スコープ1,2,3以外での削減)を多くすること”と当社では定義しております。

 また、近年の社会の要請を鑑み、自社責任範囲のCO2排出量において「ネットゼロ」を目指すことといたしました。ステークホルダーが社会的責任を果たす活動の支援をするだけでなく、自社の社会的責任を果たすことで、脱炭素化の効果を加速するとともに、当社とステークホルダーの結びつきを広げ、ともに事業成長していくことを目指しております。

〔ガバナンス〕 気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンス

 当社では、気候変動への対応をサステナビリティマネジメントの管理対象の一つと位置付けており、主要な目標値の設定や変更などの意思決定は、最終的には取締役会の承認を得て実施しております。具体的には、2008年、20017年、2020年、2023年に取締役会で目標値の設定や変更の承認を実施しております。

 サステナビリティマネジメント体制については、「(2)重要なサステナビリティ課題への対応に関する基本的な方針 ①ガバナンス」に記載しております 。

〔戦略〕 気候関連のリスク及び機会に係る組織の事業・戦略・財務に対する影響

 当社は気候変動リスクに対処するため、2023年5月に2050年にバリューチェーン全体で温室効果ガス排出ネットゼロを目指すビジョンを設定しました。気候変動に起因するリスクを事業リスクに融合し、気候変動対策にかかわる中期目標及び年度計画を、製品の企画・開発、生産・調達、販売などの事業中期計画と連動させることで、ビジネスを通じて目標の達成を目指しております。

 また機会の観点では、顧客企業や社会におけるエネルギー/CO2削減の貢献度を高め事業成長を図る「カーボンマイナス」の達成時期を2025年にさらに前倒ししました。創業以来150年かけて各事業が育ててきたコア技術を、AI活用(データ駆動型開発・生産)と事業領域を跨ぐ技術融合で“進化したコア技術群”として強化し、ワークフロー、サプライチェーンの変革によるエネルギー/CO2削減の貢献度を高め、インダストリー事業の成長と、社会に必要とされる企業となるための事業創出を進めてまいります。

<気候変動シナリオ分析の実施と結果>

 当社では、気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合と、気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合の2つのシナリオを想定し、2030年の視点で当社グループの業績に影響を及ぼす事業リスクと、気候変動における課題の解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれ特定しております。

 シナリオ分析を行う際の枠組みとして、気候変動シナリオ分析の対象事業分野の特定、重要な気候関連リスク及び機会の特定、気候変動に関する既存の科学的シナリオの検討、シナリオに対するリスク及び機会とその財務影響の検討と明確化、今後の対応の方向性・方針・戦略の検討のプロセスを経て実施しております。

●気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合

 気候変動の「リスク」への対処

当社への影響

対象セグメント

分類

財務影響

時間軸

対処

調達・製造コストの上昇

ステークホルダーからの再生可能エネルギー調達の要求

インダストリー事業

デジタルワークプレイス事業

市場

評判

短期

生産・研究開発・販売拠点における再生可能エネルギー由来電力の導入

化石資源・化石燃料の代替化

インダストリー事業

政策・法律

中~長期

CO2フリー燃料の導入検討、ICP(注1)の導入検討、調達戦略の最適化

新たな排出規制・税制への対応

インダストリー事業

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

ヘルスケア事業

政策・法律

短~中期

省エネ生産技術開発

製品開発コストの上昇

新たな製品エネルギー効率規制と市場への対応

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

政策・法律
市場

短期

環境ラベル新基準相当の製品省エネ設計、公共調達・入札要件への対応

製品サービスの需要変化による売上減少

オフィスにおける紙への出力機会の減少

デジタルワークプレイス事業

市場

短~中期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

(注1)インターナル・カーボンプライシング

 気候変動の「機会」

当社への影響

対象セグメント

分類

財務効果

時間軸

製品サービスの需要変化による売上増加

印刷産業及びアパレル産業のサプライチェーンを変革するデジタルソリューション

プロフェッショナルプリント事業

製品/サービス

短~中期

製品カーボンフットプリントを低減した機能材料、使用済みプラスチックの分別性・リサイクル率向上に貢献するハイパースペクトルイメージング(注2)インクジェット技術による生産プロセスの変革

インダストリー事業

製品/サービス

短~中期

(注2)可視光~非可視光領域の多波長計測技術。この技術により、物体の表面の色や外観の検査だけでなく、内部成分の検査まで可能となる。

●気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合

 気候変動の「リスク」への対処

当社への影響

対象セグメント

分類

財務影響

時間軸

対処

生産能力減少による収益減

気候パターンの変化に伴う自然資源の供給量不足・供給停止

インダストリー事業

慢性物理

長期

特定の自然資源に依存しない製品設計と開発

大規模気候災害の発生に伴うサプライチェーン分断

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

急性物理

中期

事業継続管理(BCM)の構築、消耗材の域別分散生産及び供給

製品サービスの需要変化による売上減少

異常気象及び森林火災の発生に伴う森林資源へのアクセス制限

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

慢性物理

長期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

 気候変動の「機会」

当社への影響

対象セグメント

分類

財務効果

時間軸

製品サービスの需要変化による売上増加

急性的な異常気象・自然災害への防災・減災に貢献する画像IoT・センシングソリューション

インダストリー事業

製品/サービス

中期

「リスクと機会の分類」

移行リスク

政策・法律、技術、市場、評判

物理的リスク

急性物理、慢性物理

機会

資源効率、エネルギー、製品/サービス、市場、レジリエンス

「財務影響」の定義と評価基準

追加コスト又は利益減少 10億円以上

追加コスト又は利益減少 1~10億円

追加コスト又は利益減少 1億円未満

「財務効果」の定義と評価基準

利益創出 100億円以上

利益創出 10~100億円

利益創出 10億円未満

「時間軸」の定義と評価基準

長期

10年以上

中期

3~10年以内

短期

1~3年以内

〔リスク管理〕 気候関連のリスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス

 当社は、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置付け、中長期的な視点でリスクを評価しております。気候変動を含む環境リスクは、中長期的な観点から、「気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、低炭素社会へ移行した場合」と「気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合」の2つのシナリオで気候変動リスクの影響度と不確実性を評価し、管理しております。またこの環境リスクをグループ全体の経営リスクの一つとして位置付け、リスクマネジメント委員会において管理しております。

 気候変動への対応に関する計画や施策について、四半期ごとにグループ環境推進会議において審議するほか、リスクの変化度合いを見直すローリング作業を同会議にて毎年2回行い、リスクを再評価しております。計画の進捗状況については、グループ環境責任者から代表執行役社長に毎月報告されております。また重要な環境課題についても、グループ環境責任者から経営審議会その他の会議体、リスクマネジメント委員会等に報告されております。取締役会では、気候変動への対応に関する経営計画の進捗について定期的に報告を受け、その執行状況を監督しております。

 なお、当社のリスク管理体制・リスクマネジメントプロセスの詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

〔指標と目標〕気候関連のリスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標

 当社では、気候変動のリスクと機会を管理する指標として前述の「カーボンマイナス目標」、「製品ライフサイクルCO2排出量」に加え、「再生可能エネルギー由来電力比率」を定めております。

 「カーボンマイナス目標」においては、当社の製品ライフサイクルの範囲外において、私たちが排出するCO2よりも多くの排出削減貢献を社会・顧客で創出する「カーボンマイナス」の状態を2025年までを期限として実現することを目標としております。

 また、「製品ライフサイクルCO2排出量」には、スコープ1,2の全て(生産段階、販売・サービス段階のCO2排出量)と、主要なスコープ3(調達段階、物流段階、製品使用段階のCO2排出量)が含まれております。中期的には2025年までに2005年度比で61%削減、2030年までに70%削減することを目標として設定しております。2022年度は、約85万トン(スコープ1は15万トン、スコープ2は15万トン、主要なスコープ3は55万トン)で58%削減となりました。長期的には、2050年にバリューチェーン全体で温室効果ガス排出をネットゼロにする目標を設定しております。

 さらに、「再生可能エネルギー由来電力比率」では、化石燃料を利用できなくなる将来予測を踏まえ、当社の事業活動で使用する電力における再生可能エネルギー由来の割合を、中期的には2030年までに50%以上に高め、2050年までに100%にする目標を設定しており、スコープ2の削減に寄与します。

② 人的資本

〔人財育成方針及び社内環境整備方針〕

 当社は、グローバルレベルで加速しているデジタルトランスフォーメーション(DX)の広がりの中、社会から必要とされる会社として持続的な成長を続けるために、プロダクト主体のビジネスから、画像やデータを活かしたサービス主体のビジネスへと業容転換を図ってきました。

 デジタルの力を活かしてサービス主体のビジネスを展開するには、従業員一人ひとりが優れた知識や知見、独自のスキルを持ち、顧客の個々の課題を捉え、前例がない中で課題解決のために自律的な考えに基づく行動をとること、すなわち、プロフェッショナル人財であることが必要になります。

 そのために、ポテンシャルある人財を見つけ、タフミッションや育成プログラムを効果的に与えることで、育成スピードを加速するとともに、これらの人財の力を最大限引き出せる組織風土、すなわち、エンパワー力の高いマネジメントのもとで、誰もが安心して発言できる心理的安全性が担保された組織を創ることが重要です。これらを通して、「プロフェッショナル人財個々の持つ違い」が有機的につながり、違いが“力”になることで、グローバルでの熾烈な競争に打ち勝てると考えております。

〔指標と目標〕

●女性活躍推進

 当社を取り巻く環境変化は過去と比較にならないほどダイナミックであり、複雑性が増しております。このような非連続な変化の中では、過去の前例が通用しない中で、スピード感をもって、そして質の高い決定を行うことが求められます。

 この決定の質を高める上で重要なことは、多様な人財が意思決定の場に入り、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の健全な議論を行ってこそ、多面的な視点で考え抜かれた決定につながると考えております。そのために、まずはグローバル共通の課題でもある女性の活躍推進を中心に据え、管理職に占める女性比率をKPIに据えて、長期的に取り組んでおります。

 とりわけ日本においては、世界の中でも女性活躍の取組みが遅れている状況を踏まえ、2016年以降は経営課題に位置付け、専門組織を創るとともに、女性が活躍できる組織風土醸成、教育研修の実施、ポテンシャルある女性社員の個別育成強化等、力強く推進しております。これらの活動により、活動開始当初は当社では3%前後の管理職に占める女性比率が直近では約10%となりました。

 但し、海外ではどんどん女性活躍が進んでおり、当社グループにおいても海外拠点を含むグループ全体の管理職に占める女性比率は20%となっております。この点は真摯に受け止め、活動をもう一段進めるため、2026年度に13%以上、2030年度に18%以上となるよう目標を掲げ、女性活躍推進に対する取組みを強化しております。

●画像IoT人財の増強

 現在の社会は、デジタル化の進展によって第4次産業革命といわれる大変革期にあり、AI・IoT・ロボットなどの技術が社会システムや働く人々の現場ワークフローを大きく変えようとしております。

 このような急速な変化の中、当社が世の中に必要とされる企業であり続けるためには、保有するコア技術を最大限に活かし、それをさらに進化させていくことができるDX人財、すなわち当社における画像IoT人財の強化がますます重要になっていくと認識しております。

 そのために、当社では従業員が計画的にITやデジタル技術のスキルアップを図れるように、9つのロール(人財タイプ)を定義し、それぞれのロールに対する育成体系を明確にするとともに、一定レベルのスキルを保有している人財のスキル認定を行っております。

 これらを通し、人財を可視化したうえで、画像IoT人財が自身の能力・スキルを実際に発揮できるよう、強化領域へのシフトや効果的なプロジェクトへの参画等、具体的な活躍の場の提供を進めております。

 これをさらに進めるために、KPIとして画像IoT人財を2023年度末には1,000人とし、2025年には各事業の技術者の半分以上を画像IoT人財とすることを設定し、活動を強化してまいります。

●従業員エンゲージメントの向上

 経営の実行力を高めるためには、戦略を実行する現場(個人・組織)の課題を把握し、スピード感をもって改善していくことが必要です。

 そのために当社では、Global Employee Survey(グローバル従業員意識調査)を2021年に大きく見直し、単なるスコアの収集に留まらず、サーベイを通して従業員一人ひとりの声に耳を傾け、強みや課題を理解して改善策を実行すべく、“Your Voice”と名付けた調査をグローバルに実施しております。この調査では、回答者の匿名化されたコメントに対し、上司が回答するなど、双方向のやり取りを可能とするとともに、各職場のエンゲージメント向上に向けた優先課題をAIにより抽出し、即座に確認できる仕組みを取り入れております。

 これにより、各職場でのクイックなアクションが可能となっており、職場単位でのワークショップの実施や、経営からの情報発信機会の増加など、各現場の課題に即した解決策を打ち出しております。

 昨年の調査では、グローバルで3.5万人(85%)が調査に参加し、ベンチマークにはまだ届かないものの、その差は縮まりつつあり、各地域で改善が確認できております。

 今後、この活動をさらに進めるため、2025年に業界(同じプラットフォームを利用して従業員満足度調査を実施したグローバル企業におけるテクノロジー業界)平均への到達、さらに2030年には業界上位25%となることを目標に掲げ、グループ一体となって取り組んでまいります。

③人権

〔人権に関する基本的な考え方と取組み〕

 人権は、全ての人間が持って生まれた権利であり、普遍的な価値の一つです。2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」が採択されたことにより、人権尊重に関する企業の責任が明確になりました。 各国で人権に関連した法規制化が進み、UNGPsに沿った人権取組みの重要性が益々高まっております。

 これらの背景を踏まえて、当社グループは、UNGPsに基づき、コニカミノルタグループ人権方針を2021年9月に制定しました。本方針に基づき、当社グループの事業に関連するビジネスパートナーやその他の関係者に対しても、人権の尊重を求めております。また2022年4月に改訂したコニカミノルタグループ行動憲章においても、事業活動における最も基本的な要件の一つとして人権尊重を規定し、グローバルの従業員を対象に毎年実施するコンプライアンス研修に組み込んで周知を行いました。

 当社は、人権デュー・デリジェンスの仕組みを構築し、当社グループの事業活動や取引の結果、潜在的又は顕在的に負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題を抽出し、抽出した負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題に対して影響度を評価し、特に優先度が高いと思われる人権課題(当社グループ従業員の人権、サプライチェーンにおける人権、顧客の人権)を特定しております。評価は定期的に見直すとともに、特に優先度が高いと思われる人権課題に関しては、人事/法務/調達/品質/IT/サステナビリティを担当する各部門がそれぞれ目標設定、施策の検討・実施を行っております。

 また、人権に関する懸念を通報できる制度を活用して、人権侵害の申し立てがあった場合には、速やかに調査し、当社が人権に対する負の影響を直接的に引き起こした、あるいはこれに関与したことが明確である場合、社内外のしかるべき手続きを通して是正策を講じてまいります。

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