クボタ
【東証プライム:6326】「機械」
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企業概要
当社は食料・水・環境を一体のものとして捉え、技術とソリューションを通じてこの3つを正しく循環させることで持続可能な社会の実現をめざしております。近い将来起こり得る社会課題を予見し、それを見越した製品開発と新たなサービス・事業の創出を通じて、より一層社会に貢献していきます。これに向けて、事業に直結した製品・技術の開発と会社の持続的な発展を支える中長期的研究開発の両立に努めております。
また、当社は、中期経営計画2025のメインテーマの1つとして「次世代の成長ドライバー候補の確保に向けた取組み」を掲げ、GMB2030実現へ向けた基礎づくりを進めており、グローバル規模での競争を勝ち抜いて持続的な成長を実現するために、研究開発に積極的に資源を投入しております。
当年度に発生した研究開発支出は1,118億円であり、事業別セグメントごとの研究開発支出及びその主な研究開発成果等は次のとおりです。なお、「その他」事業の研究開発支出及び特定の事業セグメントに関連づけられない基礎研究支出等は、合算の上で「その他・全社」として分類しております。
(1) 機械
農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械に係る製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。
① トラクタ「M7(エムセブン) 4シリーズ」の開発
欧米畑作市場や北海道を中心にご好評をいただいているトラクタ「M7(エムセブン)シリーズ」のモデルチェンジ機を開発しました。主な特長は以下のとおりです。
[特長1] パワーシフト(有段変速)とKVT(無段変速)の2種類のトランスミッションを採用しています。作業用途等に応じてS・P・Hの3つのグレードから選択いただけます。
[特長2] KVTを採用しているプレミアムハイ(H)仕様では、0.5km/h未満の超低速走行が可能で、長芋の掘り取り作業などがスムーズに行えます。手元のスイッチで駐車ブレーキの操作が可能な「パーキングスイッチ機能」を採用しました。トラクタから離席した際には自動で駐車ブレーキが作動する機能も搭載しており、安全性が向上しました。
[特長3] パワーシフトを採用しているスタンダード(S)仕様、プレミアム(P)仕様においても、ノークラッチで停止・発進することが可能な「エクスプレスリスタート機能」を採用しました。楽に停止・発進することが可能で、エンストの心配が低減されます。
[特長4] GF(オートステアリング)仕様が進化しました。曲線経路・傾斜地・長時間走行時の走行精度が向上し、最低車速を0.1km/hからオートステアリングを開始できるようになりました。
[特長5] KSAS対応直接通信ユニット、リヤハッチ半開き機構、電動ヒーターミラーを標準搭載しています。作業灯は全てLEDを採用しています。
② アグリロボ無人自動運転コンバイン「DRH1200A-A」の開発
自動運転レベル2(有人監視)の無人自動運転コンバイン「DRH1200A-A」を業界に先駆けて開発しました。主な特長は以下のとおりです。
[特長1] AIカメラとミリ波レーダを搭載することにより、収穫作業時にほ場内に存在する作物や雑草、鳥などを障害物として検出せず、人・障害物を正確に検出する周囲監視システムを採用しています。無人での自動運転中に周辺の人や障害物を検知すると機体が自動で停止し、安全性を高めています。
[特長2] 無人自動運転時に刈取り部に稲・麦の詰まりを検知した場合に、自動で詰まりを除去する自動リール制御機能、自動目詰まり解除機能を搭載しています。自動で詰まりを除去して作業を再開するので、監視者が機体まで行くことなく、詰まりによる時間ロスを最小限にとどめます。
[特長3] 必要な手動運転の周回数を1周に抑えたことで、90%以上の領域で自動運転が可能になりました。 最外周の1周を運転して刈取り作業をすることで、機械が自動で最適な刈取りルートを作成します。2周目からは、ほ場周辺で使用者による監視の下、無人自動運転が可能です。
※算出条件 ほ場1ha(100m×100m)、ヘッダサイズ2.6m
[特長4] レーザセンサとRTK-GNSSアンテナにより、畦の高さと位置を検出し、畦が低い場合は機体の一部を飛び出させて効率的な旋回を行います。
[特長5] 有人仕様も用意しています。有人仕様では搭乗して周囲の確認や作物の状態に合わせた刈取り部の操作をする必要はありますが、無人仕様と同様に最外周を1周するだけで、ほ場マップを作成し、2周目からは自動運転が可能です。
③ BEVゼロターンモア「Zeシリーズ」の開発
カーボンニュートラル実現に向けた取組みの1つとして、電動化への関心が高い欧州市場のプロユーザ向けに環境に配慮した製品として、BEV(注1)ゼロターンモア(乗用芝刈機)「Zeシリーズ」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。
[特長1] リチウムイオン電池駆動式および、環境に配慮した電動システム制御技術の採用により、ガソリンエンジン式の従来機に比べて、エネルギー効率、CO2排出量ともに50%以上改善しています。
[特長2] 約90kgの重量物であるバッテリパックを、短時間で容易に交換ができる機構を採用しました。また、バッテリパックを車載した状態でも、外した単独状態でも充電ができる構造としました。これにより、プロユーザが求める一日作業(一日あたり6~8時間)の稼働を可能にしています。
[特長3] 体積エネルギー密度と出力特性が良いラミネートタイプのバッテリモジュールを採用したことにより、小型(約64L)で、高出力(最大10kW)、長寿命(保証期間3年1,500時間)のバッテリパックを実現しました。国連輸送規格、欧州バッテリパック規格等の電池規格に適合し、安全性・信頼性・耐久性を確保しています。
[特長4] 複数モータの協調制御技術を採用したことにより、なめらかな電動走行および、高い操作性・刈性能を実現しました。傾斜地においてもスムーズに発進・停車ができる自動パーキングブレーキ機能も装備しています。
(注) 1 バッテリー式電気自動車(Battery Electric Vehicle)の略称。
当セグメントに係る研究開発支出は730億円です。
(2) 水・環境
パイプシステム(ダクタイル鉄管、合成管等)、産業機材(反応管、スパイラル鋼管、空調機器等)、環境(各種環境プラント、ポンプ等)に係る製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。
① GENEXメタルシート仕切弁(呼び径300)の開発
多くのお客様にご好評いただいているGENEXメタルシート仕切弁(呼び径75~250)に加え、(呼び径300)を開発し、ラインアップに追加しました。主な特長は以下のとおりです。
[特長1] メタルシート仕切弁を採用している管路においても、耐震継手一体構造によりフランジレス化を実現できます。
[特長2] 弁箱外面にC-protectを行うことにより、GX形の直管、異形管と同等の長寿命化を実現できます。
[特長3] 剛構造の弁箱と柔構造の弁体の組合せにより、地震動等の外力負荷時にもシート部の止水性を維持できます。
② MRデバイスを活用した「点検合理化技術」の開発
水害防止の役割を担う排水機場の点検作業効率の向上と、点検作業員のノウハウ伝承を目的として、MRデバイスを活用した「点検合理化技術」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。
[特長1] 3D点群データとMR技術を活用することによって、作業員の視界に点検箇所が可視化されるため、排水機場の点検箇所を作業員が正確に把握できます。
[特長2] MRデバイスの空間認識を活かした入力手法を確立したため、MRデバイスに表示された点検箇所の旗をタッチすることで点検記録表を空間上に表示させ、記録欄にタッチすることで入力ができます。記録用に別のデバイスを必要とせず、ハンズフリーで点検と同時に点検記録ができるので、タブレット端末等のスマートデバイスと同等以上の安全性と作業性を確保できます。
[特長3] 熟練作業員の作業を標準化し、作業手順・箇所など、作業員をアシストする機能を搭載しているので、非熟練者でも熟練作業員と同等の時間で作業ができます。
[特長4] 点検中に故障等が発生した際に、遠隔でアシストできるリモートアシスト機能を構築しました。遠隔地の技術者が状況を踏まえて必要な資料を作業員のMRデバイスに表示して的確な指示・アドバイスができるので、ロス時間を削減できます。
[特長5] この点検合理化技術を導入することによって、導入前の点検と比べて、約37%の時間削減が図れました。
当セグメントに係る研究開発支出は67億円です。
(3) その他・全社
当社はK-ESG経営を推進しており、研究開発においても環境・社会課題の解決に資するイノベ-ションの創出に向けた取組みを加速しております。カーボンニュートラルに関しては、農業機械及び建設機械向けの新動力源の研究開発を進めております。具体的には、電動化でBEVトラクタを2023年度に上市し、2024年にBEVミニバックホー、BEVゼロターンモア(乗用芝刈機)を上市しました。さらに、燃料電池や水素等の新動力源の実現に向けた取組みを行っております。
また、これまで進めてきた燃焼効率向上等の低燃費化やバイオディーゼル含有率向上等の研究開発にも引続き注力して取組んでおります。加えて、自動運転技術による作業ロス低減や最適省エネ運転、バイオマス(農業残渣や食料残渣)の活用等、多面的な取組みを結集することで、カーボンニュートラルを実現していきます。
スマート農業については、他社に先駆けてトラクタ・コンバイン・田植機の自動運転技術を確立しておりますが、より一層使いやすい機械とすべく、AIや先進センサの活用研究等のさらに高度な取組みを進めております。天候情報、生育モデル、リモートセンシングの活用等、データ農業の取組みも現地実証を計画的に進めております。
また、田んぼダムに関する研究等、営農支援システム「KSAS」、ほ場水管理システム「WATARAS」及び水環境プラットフォーム「KSIS(注2)」の連携に関する研究開発も引続き計画的に進めております。
(注) 2 クボタスマートインフラストラクチャシステム。水環境インフラ施設・機器向けのIoTソリューションシステム。
当セグメントに係る研究開発支出は321億円です。
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