キャピタル・アセット・プランニング 【東証スタンダード:3965】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「FT(Financial Technology)とIT(Information Technology)の統合により、ファイナンシャルウェルネスを創造する」ことをパーパスとして掲げ、個人資産の最適なアセットアロケーションと次世代への不安無き財産の移転の実現を目指しております。この理念に基づき、1990年4月の設立以来、金融リテールビジネスの業務プロセスを最適化するためのシステムを開発・提供してまいりました。金融リテール、すなわち個人金融市場をターゲットドメインと定義し、情報通信技術と金融ノウハウの双方のバランスを重視する金融ITブティックを目指すことを基本方針としております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としております。経営指標としては、特に売上規模を表す売上高、収益性を表す営業利益、資本効率を表すROEを重視し、拡大を目指してまいります。
(3) 経営環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、2024年4~6月期より輸出や設備投資が増加に転じたことに加え、労働力確保に向けた賃上げの動きが活発化し個人消費の増加が見られたこと等明るい兆しが見えてきました。一方、米中国間の対立による輸出入制限やサプライチェーンの見直し等世界経済のブロック化をはじめ、ウクライナ、中東、台湾情勢等の地政学リスクや米国新政権の外交、経済政策が日本経済に影響を及ぼす可能性は高く、景気の先行きは不透明さを増している状況にあります。
当社グループの主要顧客が属する金融分野における主なトピックスとしては、政府による「資産所得倍増プラン」に基づき、本年より貯蓄から投資へシフトする施策が新NISA制度として本格的に実行されたことが挙げられます。「資産所得倍増プラン」では、貯蓄から投資に変えていくことで持続的な企業価値向上の恩恵が資産所得の拡大という形で家計にも及ぶような好循環を実現させることを目指しており、本年はその契機となった1年だったといえます。
一方、テクノロジーの分野では、生成AIの急激な進歩に伴い業務プロセスの自動化、省力化への活用をはじめ、業種、業務内容や個々の顧客ニーズに合わせたパーソナリゼーションを追求するための先進のAIテクノロジー活用事例が増えてきました。2024年以降、新NISA制度の開始と生成AI活用の進展という2つの大きな環境変化による追い風を受け、当社グループはその潮流の中で積極的な取り組みを推進している状況であります。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、急速に変化する国内外の環境変化に対応し、中長期的な視点から持続的に企業価値を高めていくために、このたび2025年9月期~2027年9月期を対象とする中期経営計画を取りまとめ、今後3年間の経営戦略を策定しました。
本中期経営計画においては、改めて理念体系を再構築し、「FTとITの統合により、ファイナンシャルウェルネスを創造する」というパーパスを制定するとともに、中長期的に目指す姿としてデジタルトランスフォーメーションを実行しながら「金融サービスとアセットマネジメントのイノベーターになる」というビジョンを掲げています。また、社員が共有する行動規範として、①起業家精神、②サイエンス+アート、③革新性、④人と社会に貢献という4つのバリューを制定しました。これらの経営理念の下、中期経営計画を実現していくために、以下の5つの成長戦略を推進していく計画です。
① 顧客基盤深耕・強化施策:強固な顧客基盤と独自技術を活かし、デジタルトランスフォーメーションやAI・クラウドテクノロジーの活用研究と人材の育成を通じて、より幅広いサービスを提供
② 事業ポートフォリオ改革:成長と収益性の向上を図っていくために、従来生命保険会社向け売上が大きな比重を占めていた収益構造から銀行、証券会社を含めたバランスの取れた事業ポートフォリオへの転換を推進
③ ファミリーオフィスビジネスへの参入: 100%子会社として設立した株式会社Wealth Engineが中心となってファミリーオフィスビジネスに参入し、アセットマネジメントとタックスマネジメントを融合したコンサルティングサービスを関係税理士法人とともに提供
④ ストックビジネス向けプラットフォーム開発:業務提携した台湾のSoftBI社と共同でIFAや会計事務所向けデジタルプラットフォームを開発し、使用料課金に基づくストックビジネスを強化
⑤ 海外市場開拓:経済発展とともに生命保険に対するニーズの増加が期待される東南アジア市場の開拓に向けて、当社が蓄積したシステム開発ノウハウを導入・展開し、システム開発受託を通じて市場参入を図る
当社グループは、今後もITソリューション、アセットマネジメント、コンサルティングの事業ドメインにおいて、人生100年時代、大相続時代のための顧客ニーズに合ったソリューションサービスを提供してまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、金融サービスに必要となるシステムを金融機関等及びその顧客に提供することにより、売上高の拡大及び収益性の向上を図り、持続的かつ安定的な成長及びより強固な経営基盤の確立を目指しております。この目的を実現させるため、当社グループは新たに策定した中期経営計画の推進・実行を重要課題の中核に据え、以下の事項を優先的に対処すべき課題として取り組んでまいります。
① 顧客基盤の深耕と強化
当社グループは、生命保険会社・銀行・証券会社をはじめとする金融機関が取り扱う金融商品の増加及び消費者ニーズの多様化に対応するため、金融サービスに関する業務プロセスを先進テクノロジーを活用してDX化し、顧客の業務改革に貢献していくことを市場機会として捉えています。現在、政府は「資産所得倍増プラン」を掲げ、「貯蓄から投資へ」を実現するべく金融機関へ個人のニーズやライフプランにあった顧客本位の業務運営を実施することを推進しています。このような状況下、既存の顧客に対しては、長年に亘る信頼関係をベースに潜在的ニーズをいち早く把握し、生成AIやクラウドといったテクノロジーを活用した新たなサービスを幅広く提供し、顧客との関係性をより一層強化してまいります。また、子会社の株式会社インフォームを通じて、生命保険システム開発の上流、要件定義工程を含む全工程に係わる業務を受託し、金融機関の長期的戦略パートナーとしての地位を獲得していく方針です。
② 事業ポートフォリオ改革
当社グループは、生命保険会社向けの売上比率が高く、我が国人口構成上の課題や生保業界の動向、顧客のシステム開発方針の影響を受けやすい状況にあるため、特定の販売先への売上集中を緩和して事業ポートフォリオを適正化し、収益基盤の安定性を確保することが課題であると認識しております。この課題に対処するため、既存顧客との関係を維持・強化するとともに、銀行・証券会社等非保険会社向け売上を拡大し、既存販売先のシステム投資予算に占める当社グループの受注比率即ちウォレットシェアを高めてまいります。2024年1月から導入された新NISA制度は、メガバンクや証券会社においては新たな顧客獲得の機会になっています。このような機会を捉え、生成AIを活用したアドバイザー向けシステムをはじめ、ライフプランニング・公的年金に係る計算エンジンや現代ポートフォリオ理論、金融工学系・生保年金数理系計算エンジン等当社グループが有する豊富なナレッジデータベースを活用して金融機関のニーズに沿った提案を行い、新規取引先の拡大に努めてまいります。
③ ファミリーオフィスビジネスの展開
団塊の世代の相続問題に対する関心が高まっており、相続発生前後の個人保有資産の組替えが個人資産管理の重要なテーマとなりつつあります。また、欧米においては、企業経営者や資産家に対してファミリーオフィスと呼ばれる機関が二世代、三世代にわたる事業の成長と承継、さらには事業から生まれた財産の運用を実行しています。日本においても、企業経営者や資産家等を対象に資産管理や運用、事業承継に関するコンサルティングの必要性が今後ますます高まってくると予想されており、このような環境を踏まえ当社グループは新たにファミリーオフィスコンサルティング事業を展開するために、100%子会社 株式会社Wealth Engineを設立しました。今後は、当社開発のIFA・会計事務所向け資産管理プラットフォームを活用し、デジタルによる新しいマルチクライアントファミリーオフィス事業を展開していく計画です。
④ ストックビジネスの拡大
当社グループの売上高は、受託開発収入、使用許諾収入、保守運用収入及びコンサルティング収入で構成されていますが、現在受託開発収入に偏重している状況にあります。この課題に対応していくために、プラットフォームを活用したストックビジネスにより利益率の高い使用許諾収入の拡大を図り、利益率の向上を目指してまいります。当社グループは、2024年に台湾でプライベートバンキングシステムを提供するトッププレイヤーであるSoftBI社と業務提携を締結し、IFA向けの資産管理プラットフォームを共同で開発することに合意しました。このプラットフォームの開発によりポートフォリオ分析やゴールベースプランニングに基づく資産管理が効率化され、これを活用した金融資産、不動産、生命保険、個人年金保険などの個人資産の組替・運用によるアセットマネジメントとタックスマネジメントの統合コンサルティングの提供が可能となります。同プラットフォームをIFAや会計事務所向けに提供することを通じて、システム使用料課金による安定的な売上計上の確保を目指してまいります。
⑤ 海外市場の開拓
少子高齢化に伴う日本の生命保険市場の成長鈍化を想定し、国民の平均年齢が若く経済発展とともに生命保険に対するニーズの拡大が期待される東南アジア市場でシステム開発受託を通じた参入を実行します。東南アジアの生命保険市場においては、人口、平均年齢、GDP、カントリーリスク等を勘案すると、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムの4カ国が進出候補先として有力と考えられます。業界関係者へのヒアリング、現地調査や、業務提携先のSoftBI社の顧客基盤を活用した調査・分析を行い、総合的に検討の上対象国を決定する予定です。その後、当社のシステムやノウハウを導入・展開し早期の立ち上げを目指します。まず、生命保険市場に焦点を絞って市場開拓に注力する計画ですが、生保システム市場のみならず銀行や証券領域での市場性も調査してまいります。
⑥ 生成AI等先進テクノロジーの活用研究
オープンAIが開発したChatGPTの登場が社会に与えたインパクトは大きく、この先進のAIテクノロジーを有効に活用したシステムをいかに早く開発し、テクノロジーの進歩に遅れを取らないよう研究開発に注力していくことが重要課題と認識しております。また、2040年には就労人口が1,100万人不足すると予想され、AIの活用は当社にとり必須の課題と認識しております。当社グループでは、生成AI活用研究プロジェクトを組成し、生成AIを中心とした最先端テクノロジーの研究、先進の大学生成AI研究室との連携、ならびに金融、アセットマネジメント、税務等の専門知識と最新のテクノロジーを融合した新サービスの創出を目的として活動しております。生成AIを活用した新サービスの開発実績としては、新NISA制度に対応して投資信託やETFの最適組合せをアバターが提案する生成AIアプリ、W2C(Wise Wealth to Customer)を開発しました。さらに、業際的業務と言われるプライベートバンキング業務向けには、相続対策・納税準備対策のベストソリューションをはじめ、納税準備のためのアセットアロケーションや投資政策書の作成等アセットマネジメントとタックスマネジメントを統合する生成AI活用システムも開発しました。また、汎用性の高いシステムとして、生成AIを活用して保険会社の募集関連文書のチェックや評価を行うサービス「LibelliS」を新たに開発し、既に多くの顧客から広範囲な業務における引き合いを受けております。今後も引き続き先進テクノロジーに関する研究開発を強化し市場をリードする革新性のあるシステムを開発・提供してまいるとともに、システム開発人口不足に対する切り札と認識しております。
⑦ 優秀な人材の確保と人的資本投資
当社グループが属する情報サービス産業では、開発人材への需要の高まりを受け人材の獲得競争が激化しており、優秀な人材の確保が一段と難しくなってきております。また、当社グループ社員はシステムだけではなく、保険数理、金融知識、ポートフォリオ理論、社会保障、相続・財産承継、税務等に加え、今後は生成AIやメタバース等の最新技術を習熟していくことが求められます。こうした中、「金融サービスとアセットマネジメントのイノベーターになる」というビジョンを実現していくために、新規採用及び中途採用を拡充して戦略的人材を補強するほか、リスキリング・学び直しの施策として、CAPユニバーシティという社内教育体系を確立し、総合的人材教育、特にITとファイナンスに係るフィンテック事業領域の最新の教育を継続的に強化してまいります。また、社員の給与水準の向上をはじめ働きやすい職場環境にするために、在宅勤務制度の継続やオフィス環境の整備といった人的資本に係る様々な投資に力を入れてまいります。
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