企業インフロニア・ホールディングス東証プライム:5076】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、機械事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は5,104百万円です。

(建築事業、土木事業及びインフラ運営事業)

 連結子会社である前田建設工業(株)においては、「総合インフラサービス企業」に変革するため、生産性や品質の向上に加え、多様化する社会課題に対し、ビジネスを通じて解決することで社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。

 当期の具体的な取り組み方針として、現場作業の自動化・省力化・DX分野、脱請負のさらなる加速を目的としたマネジメント分野、また中長期にわたり取り組むべき社会課題として考えられるカーボンニュートラル分野などに重点を置きました。

 また、技術開発の推進にあたっては、当期も定期的に審査会を開催し、進捗状況の共有と新たに発生した課題への即時対応を進めました。これにより、昨今の事業環境の急激な変化に即応すべく、取組課題の絞り込み、経営資源の選択と集中を図っています。

 当連結会計年度における研究開発費は3,175百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。

①シールド工事へのMAIOSS-Ⅱ導入~シールドDXに向けた基盤を整備~
 シールドトンネル工事の施工データを収集するデータプラットフォームとして、「MAIOSS-Ⅱ」を開発したことを3月29日にプレスリリースしました。本開発システムを社内の統一規格として導入を始めました。工事中の機械類の動作や応答値、資材や掘削土の物流、人の動きなどの様々なデータを本システムにより取得・蓄積し、今後のシールド自動化に向けてシールドDXを推進してまいります。

②油圧ショベルの自律運転を可能にする「自動施工計画・管理システム」を開発、実用性を確認
 数台の油圧ショベルを自律運転可能な「自動施工計画・管理システム(特許出願中)」を開発したことを3月25日にプレスリリースしました。前田建設工業(株)のICI総合センター(茨城県取手市)にて、日立建機(株)、(株)イクシスとの共同実証試験により、本システムの実用性を確認しました。

 本システムは、BIM/CIMにおいて施工計画モデルから詳細な作業計画モデルを自動生成し、その計画に基づいて複数台の油圧ショベルを自律制御可能なシステムです。近年、建設業界では、少子高齢化や技能労働者不足といった問題に対応するため、安全性と生産性の向上が求められています。現在開発が進められている遠隔操作技術などにより構成される無人化施工技術は、安全性向上は期待できるものの生産性向上への寄与は限定的です。そのため、1人で複数台の油圧ショベルをオペレーション可能な本システムの実証試験を行いました。

 今後、本システムは、山留掘削、トンネル・シールドなどのズリ・土砂搬出、ダム・道路などの造成といった様々な建設現場への適用に加え、人が行きにくい危険個所である災害現場や放射性廃棄物の処理・処分といった現場における活用が可能と考えています。

③鉄筋工事の新たな管理システムとして「配筋360」を全国の作業所へ展開
 アクセンチュア(株)、ピクシーダストテクノロジーズ(株)と共同で、360度撮影可能なデジタルカメラを使い、建設中の現場を動画撮影した後、その動画とBIMを重ね合わせたデータ上で対象物を測距した静止画を切り出す技術を開発しました。

 現在、配筋写真管理を対象に現場試験までを完了し、通常の撮影時間に比べて80%の削減効果を確認しました。配筋検査では、360度動画とBIMを重ね合わせることで、鉄筋の本数や位置が適切か、かぶり厚さが確保されているかなどを確認することができます。従来、施工管理において、現場の「工事記録」は静止画を何枚も撮影し、事務所で選定する必要があるなど大きな業務負荷となっておりました。時間外労働の上限規制への対応、働き方改革などの社会的要請も高まる中、本技術により、特に記録写真の撮影方法の変革が期待でき、業務方法の抜本的な見直しにより、業務負荷軽減にもつながると考えています。2024年4月より、社内においてモデル現場を選定し、全国展開を開始する予定としています。

④外側耐震補強「マスターフレーム構法」のトルコ国での普及を推進
 ICI総合センター内に設置しているICIテクノロジーセンターは、トルコ国において自社保有技術である外側耐震補強「マスターフレーム構法」の普及を建築事業本部海外部と協力して推進しています。現地で使用する専用アンカーの外径を2/3に縮小した場合のコンクリートとの一体性能に関する構造実験を、イスタンブール工科大学にて実施しました。この結果、日本より細い柱及び梁が多いトルコの建物に使いやすくなります。当センターでは、昨年2月の大震災により既存建物の耐震補強が喫緊の課題であるトルコ国の復興に寄与できるようさらに尽力してまいります。

⑤ICI総合センターにおいて、「JHEP(ジェイヘップ)」のAAA認証を更新
 ICI総合センターは、継続的な生物多様性保全への貢献度を客観的・定量的に評価・可視化できる認証制度である公益財団法人日本生態系協会の「JHEP(ジェイヘップ)」認証で、2018年度に最高ランクのAAA認証を取得しています。2023年度、同協会による更新審査を受け、AAA認証を更新することができました。引き続き生物多様性の保全活動を継続するとともに、当センターを検証フィールドとしたネイチャーポジティブに寄与する研究開発についても尽力してまいります。

⑥ICI総合センターに移築した「旧渡辺甚吉邸」(登録有形文化財)を一般公開
 ICI総合センター(茨城県取手市)において、2022年度に移築し、2023年度に国登録有形文化財に登録された旧渡辺甚吉邸に関して、事前予約制の一般公開(3日間)を実施しました。2023年度は、合計4回の一般公開を通じて、多数の方々に見学頂きました。今後も、定期的な公開を行い、建築技術と地域住民をはじめとする一般の方々との交流の場としての価値向上に努めてまいります。

⑦鉄骨建方精度管理システム「建方ナビ」を鉄骨造の作業所で活用
 鉄骨建方の精度を立体に可視化し直観的に把握することができる、鉄骨建方精度管理システム「建方ナビ」を6月14日にプレスリリースしました。鉄骨建方精度の品質確保及び不具合の未然防止手段の確立は、安全・安心な建築物の提供に不可欠であり、本システムの可視化機能を活用することで、作業者の熟練度に依存せずに精度よく鉄骨建方の管理が行えるため、建設業界における重要課題の一つである「高齢化、担い手不足」と技術承継に貢献できると考えています。現在、全国の鉄骨造の作業所にて活用中です。

⑧「自動装薬システム」を山岳トンネル工事現場に適用して実証試験を実施
 開発を進めている 「自動装薬システム」を山岳トンネル工事現場に適用して実証試験を行い、基本性能を確認したことを、9月11日にプレスリリースしました。切羽とドリルジャンボ操縦席間を無人にした実現場での装薬作業は業界初となります。本システムの導入により、切羽とドリルジャンボ操縦席間を完全に無人化し、作業員が切羽に立ち入ることなく装薬作業を自動化することが可能となり、約9割が切羽で発生している山岳トンネルの労働災害を最小限に抑えることができます。引き続き、本システムの完成度向上と実用化に向けて技術開発を推進してまいります。

⑨生成AIの画像・動画制作分野で(株)タジク及び(株)光邦と共創することを合意
 ICI総合センター内に設置しているICI未来共創センターは 、生成AIの画像・動画制作分野で、(株)タジク及び(株)光邦と共創することで合意しました。具体的には、まちづくりやインフラサービス、印刷分野における生成AI画像・動画制作活用をリードすることで、建設及び印刷業界全体の効率性や有効性の向上を目指します。

⑩ZEB設計支援システム「ZEB-Scope」を開発
 BIMと相互連携可能なデータベースと各種ツールの自動連携により 多様なZEB仕様を迅速かつ高精度に評価可能なZEB設計支援システム「ZEB-Scope」を開発したことを、10月25日にプレスリリースしました。本開発システムを活用しZEBの普及に努めながら、ZEB評価に留まらず、建築物のLCAも考慮した最適設計を実現するシステムの実現を目指し、取り組みを進めてまいります。

⑪周辺地盤への影響を抑制した施工が可能な「泥土の回収試験装置」の現場適用開始
 大深度圧力下におけるシールドマシンのチャンバ内泥土の性状確認を可能とする「泥土の回収試験装置」を、大規模シールド工事現場に適用して運用を開始したことを11月15日にプレスリリースしました。本装置は回収した泥土を大気圧下に解放することなく、チャンバ内の圧力状態を保持したまま試験を行うことができる業界初の構造であり、チャンバ内泥土の性状をより正確に把握することが可能となります。これにより、大深度、高水圧下のシールド工事で安全な掘進が可能となり、周辺地盤への影響を抑制した施工が可能になります。

⑫「市民がより能動的にインフラサービスに参画する未来へ」をテーマに「ICI DAYS 2023」を開催
 ICI総合センター内に設置しているICI未来共創センターは、11月15日に「ICI DAYS 2023」を開催しました。今回のテーマ「市民がより能動的にインフラサービスに参画する未来へ」と題して、同センターの描く未来のインフラビジョンを示すとともに、先行事例紹介やパネルディスカッションを行いました。今後、共創パートナーの皆様と未来のインフラサービスの実現に向けて、社会にインパクトをもたらすテクノロジー・サービスの開発を進めてまいります。

(舗装事業)

 連結子会社である前田道路(株)においては、「新たな収益基盤と未来への投資を確立すること」を研究開発部門の使命と捉えており、競争力の促進を図るため、「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」、「次世代道路包括管理システムの開発」、「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」を重点テーマにあげて研究開発に取り組んでいます。

 当連結会計年度における研究開発費は1,372百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。

①「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」に関する研究開発

Ⅰ.バイオ重油製造施設の稼働開始

前田道路(株)では、2030年度に2013年度比でCO2排出量を50%削減、2050年度にはカーボンニュートラルの達成を目指しています。その一環として、運営子会社である日本バイオフューエル(株)は2023年12月より、バイオ重油の製造を開始しました。この施設では、動植物由来の油滓等を原料に、バイオ重油製造技術を活用した環境負荷低減エネルギーを自社精製・製造することにより、自社のエネルギー由来のCO2排出量削減に取り組んでおり、2026年度以降には約3万5千トン/年のCO2排出量削減を見込んでいます。

Ⅱ.再生路盤材へのCO2固定化技術の開発

アスファルトプラントの排気ガスに含まれるCO2をコンクリート再生路盤材に炭酸塩化(固定化)するシステムの開発を進めています。2023年度は、つくばテクノセンター内に併設した実験用アスファルトプラントを利用し、固定化用の反応槽をパイロットスケールに大型化させて検証を始めました。2024年度は,アスファルトプラントへの実装を図るべく,最適な反応条件に関する検証を進めるとともに、仕様決定、場所選定、行政協議等を並行して進めていきます。

    ②「次世代道路包括システムの開発」に関する研究開発

道路の包括的民間委託を受託している複数自治体の道路をテストフィールドとして、各種デバイスから得られるデータを活用した道路維持管理システムの開発を進めています。データドリブンによる道路管理の効率化・高度化を図るべく、社会実装を目標としてプロトタイプ検証を行っています。

③「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」に関する研究開発

アスファルト舗装工の品質管理の効率化高度化技術として非破壊で舗装密度をリアルタイムに推定するシステムを開発しています。国土交通省の「舗装工事の品質管理の高度化に資する技術」に関する技術公募では、当社中国支店受注の舗装新設工事を検証現場に選定し、共同で応募した前田建設工業株式会社他との「次世代αシステム」ともにこのシステムの検証を行いました。現在、このシステムの安定性向上や精度向上に向けて取り組んでいます。

(機械事業)

 連結子会社である(株)前田製作所においては、カーボンニュートラルによる持続可能な社会の実現に向け電動仕様クレーン、林業用機械の開発及び海外マーケットの更なる拡大のため米国向け製品の開発を推進しています。また、要素技術開発として今後の労働力不足に対応するべく自動化・遠隔制御技術等の開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は555百万円であり、主な研究開発結果は次のとおりです。

①巻上ワイヤー破断防止装置の開発

お客様にクレーンをより安全に使用して頂くためクローラクレーンのオプションとして巻上ワイヤー破断防止装置を開発し、特許出願を行うとともに量産先行品を出荷しました。

②林業用フォワーダ(走行集材機械)FC560Sの開発

 カーボンニュートラルによる持続可能な社会の実現に向け、5.6t積載林業用フォワーダ(走行集材機械)FC560Sを新規開発し、発売しました。また、当該機種では走行安全機能及び積載量計測において特許出願をしています。

③米国向け8.1t吊りクローラクレーンCC1908S-1USの開発

 海外マーケットの更なる拡大のため、米国向けに現地排ガス規制に適合した8.1t吊りクローラクレーンCC1908S-1USを開発、発売しました。

④ブーム屈折式かにクレーンMK3053Cの開発

 国内、欧州向けにブーム屈折式かにクレーンMK3053Cを新規開発し、発売しました。当該機種は、エンジン仕様、エンジン・電動併用仕様、バッテリー仕様の3仕様を同時に市場投入しました。また、ブーム伸縮機構の補助機能において特許出願も行いました。

⑤合金微粉末事業の推進

 脱炭素社会実現に向け必要とされる省電力機器で使用される接合材は、高温度耐用が要求されることから、高価な金、銀が使用されており、これらに代わる合金粉末の接合材が求められています。

(株)前田製作所では、合金微粉末の製造特許取得業者と連携し、均一組成、低酸化の品質を確保した上で大量生産可能な装置を導入し、合金微粉末製造事業を推進しています。

⑥自動化・遠隔制御技術の開発

(株)前田製作所のコア技術であるクレーン制御技術とオープンイノベーションにより習得したIoT技術を応用展開し、建設ニーズや大型機械に対応した自動運搬システムの研究・開発を進めています。今後は、現場施工の省人化へ向けて前田建設工業(株)と共同で取り組んでいる自動運搬システム等様々な装置への応用、また、データ解析による新たな付加価値創出を進めてまいります。

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