アズビル 【東証プライム:6845】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、azbilグループが判断したものであります。
(1)経営方針
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、社会のwell-beingの実現を通じてグループ社員全員のwell-beingを実現し、あらゆるステークホルダーと信頼関係を構築することにより継続的な企業価値の向上を図り、皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。
このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。具体的には、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の3事業において、計測と制御の技術を核に、「人を中心としたオートメーション」の発想に基づく製品・サービスを提供し、お客様のニーズや社会課題の解決に貢献することで、お客様・社会とともに自らの持続的成長を目指しております。
(2)経営戦略等
当社は、人を中心に据え、人と技術が協創するオートメーション世界の実現に注力し、お客様の安全・安心や企業価値の向上、地球環境問題の改善等に貢献する世界トップクラスの企業集団になることを長期目標と設定、段階的に中期経営計画を立案し、この目標達成に向けた取組みを行っております。オートメーションに焦点をあてつつ単一市場への過度な集中を避け、3つの事業分野から成る複合的な事業ポートフォリオの構築を進め、顧客開拓やシナジー等による事業領域の拡大に取り組んでまいりました。
これらの事業領域には、既存の製品・サービスの提供では持続的な成長の実現が厳しくなってきている成熟領域もあれば、IoTやAIといった新たな技術革新に伴い、急激に変化している領域もあります。基盤を確たるものとし、企業としての存続を確かなものとする取組みを継続するとともに、更なる成長を実現するため、国内外の事業機会の変化を的確に捉え、事業創造の視点から「商品と顧客現場の連携」によるソリューション提案力の向上に取り組み、azbilグループならではの価値の提供を実現してまいります。
長期目標の達成に向け、社会の環境、ニーズが大きく変化するなか、2022年8月にはグループ理念を基に「機会」と「リスク」の両面から、ダブルマテリアリティ(環境・社会が企業に与える財務的な影響と、企業活動が環境・社会に与える影響という2つの軸で重要性を評価する考え方)を取り入れ、当社グループが長期にわたり取り組む重点課題として10のマテリアリティ項目を特定し、2023年度は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、これらを再確認しました。これらのマテリアリティに基づき、事業や企業活動に関する7つの項目については、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)の領域において目標を「azbilグループSDGs目標」として具体的に定めるとともに、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務である3つの項目については、CSR活動において具体的な目標を定めております。それらの目標の達成に向けて様々な取組みを行うことで、「サステナビリティ経営※1」を推進しております。
2023年度も、2022年度に引き続き地政学的リスクに端を発したグローバルサプライチェーンの課題に加え、エネルギー・部品価格の高騰並びに、部品等の長納期化やインフレ等が世界経済に大きな影響を与えた年となりました。この厳しい状況下において当社グループとしましては、市場ごとに事業環境は異なるもののお客様の生産性改善ニーズ等による受注を着実に捉え、調達・生産プロセスの改善により売上を拡大するとともに、インフレ等によるコスト上昇に対し、価格転嫁対応を含む収益力強化と業務効率化の展開により過去最高業績を更新しました。
2023年度に実施してまいりました具体的な活動としましては、研究開発拠点「藤沢テクノセンター」内の新実験棟にてクラウドや人工知能を活用した先進的なシステム・ソリューションや、MEMS※2技術による高機能・高性能デバイスの開発プロジェクトが進展しました。また、あらゆる業務の変革に不可欠なDXの推進も強化しました。最新のデジタル技術を活用した製品・サービスの開発から、「仕事と働き方の創造」の観点での業務の効率化・高付加価値化まで積極的に取り組んでいます。加えて、昨今注目を集めている生成AIについても業務効率の観点で活用に着手しており、安全に利用するための基盤を整備しつつ、DXの促進を加速しています。生産面においても、2022年に竣工した中国大連生産子会社の新工場棟において全面稼働が開始されたことに続き、タイ生産子会社も2024年4月に新工場棟が竣工し、グローバルでの生産基盤の強化が進みました。さらに、成長領域における事業拡大に向け、出資を含む他社協業も継続して実施し、GX(グリーントランスフォーメーション)※3の推進を通じ脱炭素社会の実現に貢献してまいりました。
▲タイ生産子会社の新工場棟 | ▲竣工式の様子 |
収益力という観点では、これまで取り組んできた受注時の採算性改善、海外生産・調達の拡大といった収益力強化施策に加え、価格転嫁等を含めたコスト上昇への適切な対応やDXの推進を通じた業務効率化をグローバルに展開することにより、一層の収益力強化を行いました。また、資本コストを意識した経営の観点からは、投下資本利益率(ROIC)を導入したことにより、投下資本からの収益性に基づく経営資源活用の最大効率化及び事業ポートフォリオ管理を強化することで、当社グループ全体の企業価値向上に繋げてまいりました。
また、経営体制におけるガバナンス強化の観点から、コーポレート・ガバナンスの強化を重要課題とし、取締役会の監督・監査機能強化、経営の透明性や健全性の強化、執行の責任体制の明確化等に取り組んでまいりました。その取組みの一つとして、2022年度に指名委員会等設置会社へ移行した後も、2023年度には中長期的な業績目標の達成及び企業価値向上に向けた動機づけを目的に、インセンティブ報酬としての株式報酬の構成比率を拡大することを決定し、報酬ポリシーを改定しました。今後も取締役・執行役等の企業価値向上への意識及び株主価値の最大化への意欲を一層高め、株主の皆様との価値共有に繋げてまいります。
2024年度におきましても事業環境の構造的変化が継続することを前提に、顧客・社会の変化を支援できることがオートメーション事業の価値との考えに基づき、アズビルならではの技術・製品・サービスを活かすことのできる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」、「ライフサイクル型事業」という3つの成長事業領域に注力し、新たな課題の解決策を提供することにより、BA、AA、LAの3事業での成長を実現してまいります。
2024年度はこれまでの変革の実績を起点に、“更なる成長に向けた変革”の年度と位置付けております。2030年度の長期目標を達成するため、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献による社会のwell-beingの実現を通じて事業を拡大するとともに、社員全員のwell-beingを実現し、その過程において社員一人ひとりが達成感と成長実感を得られるような成長を目指します。具体的には、半導体市場のような技術革新により需要が拡大する市場とカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど社会課題対応として需要が拡大する市場を成長市場と定義し、それらにおける“計測と制御”領域での競争優位性を高めることによる事業成長を目指します。また、継続的に競争優位性を持った商品群を創り出すため、人的資本、製品開発、生産、DXの各分野に継続した投資を実施し、コア技術の強化、人材育成、DXによる技術伝承と業務効率化を図ります。加えて、成長領域としての海外事業では、市場シェアの拡大と商品力の強化を目指します。こうした取組みを通じて、方針に掲げたサステナビリティ経営の推進に向け、ガバナンス体制の強化と企業成長の原動力でもある人的資本への投資にも積極的に取り組むことで中期経営計画の着実な達成に繋げ、各社員のwell-beingを実現します。
今後も多岐にわたる事業環境において不安定な状況が継続することも想定されることを前提に、持続可能な社会に向けた取組みの強化が一層重要になると認識しております。アズビルの基幹事業であるオートメーション事業は、建物、工場、ライフラインといった領域の“空間の質”を向上させながら、資源・エネルギー使用量を適正に抑制することが可能であり、我々の事業を拡大することが地球環境負荷の低減に繋がります。持続可能な社会の実現のためには、資源・エネルギー使用量を適正に抑制する仕組みを構築する必要があり、当社グループは事業を通じて、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実現してまいります。
※1 2022年8月に特定したマテリアリティと、その目標となるazbilグループSDGs目標の詳細については当社統合報告書(azbilレポート2023のP21、22)をご参照ください。
※2 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板の上に微細加工技術によって集積した機器。
※3 GX(グリーントランスフォーメーション):カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会システムの変革。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標※4として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、4ヵ年の現中期経営計画(2021~2024年度)※4においては、売上高3,000億円、営業利益360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としてまいりました。最終年度となる2024年度は事業収益力の強化を進め、2021年度に策定した営業利益・率、ROE目標を上回る、売上高3,000億円、営業利益375億円、営業利益率12.5%、ROE12.2%を計画しております。
※4 2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。
(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を事業活動の中心に据えて企業活動を進めています。2024年度においてもサステナビリティ経営の推進を基本に据えながら、研究開発・設備投資を積極的に行い、商品力強化を進めるとともに、これを支える人的資本を強化します。中期経営計画におきましても、経営資源を有効かつ戦略的に配分し、様々な取組みの加速・定着を図ってまいります。その具体的な内容は次のとおりです。
① 国内事業
3事業とも国内では成熟産業に位置しておりますが、それぞれが置かれている環境は事業ごとに大きく異なります。
ビルディングオートメーション(BA)事業は、中期的には国内の大型建設需要は旺盛になっていますが、このような繁忙な環境下においても、お客様に満足いただけるより高い品質の製品やフィールドサービスを提供し続け、また、カーボンニュートラルやウェルネスを中心とした新しいニーズに対してもazbilグループならではの新規商品の提供や、事業開拓のための他社協業を推進しています。また、堅調な業況を背景に、業務処理体制をより強固なものとし、より効率的な運営を進めるべく社内DXを加速していきます。業界のトップランナーとして蓄えてきた社内のノウハウやデータを集積し、更なる高度化を進めることで、より高い収益性を実現する事業体制を強化してまいります。
商品としては、従来のモノ売り、フィールドでのエンジニアリングやサービスにとどまらず、クラウドを応用した分野での商品を拡充していきます。具体的には、設備管理者不足対策に貢献するべく、ビル向けクラウドサービスに新アプリケーションとしてクラウドMT(Manager's Tool)を追加し、販売を開始しました。 |
▲ビル向けクラウドサービスの新アプリケーション: クラウドMT(Manager's Tool) |
アドバンスオートメーション(AA)事業では、景気の循環による変動影響はあるものの、継続したグローバルでの市場拡大が期待されるなか、脱炭素化、サーキュラーエコノミー、生産高度化、安全・安定操業、人手不足対応等の要望に対して、計測・制御分野を中心に貢献できる領域は大きく、更なる事業領域の拡大と事業成長が期待できると考えています。AA事業は「グローバルに競争力のある事業展開を通じ、持続可能な社会へ貢献する高収益な事業体」となることを目指しています。そのために、成長戦略として、社会の環境変化や技術の潮流変化に対応した「azbilグループならではの新しいオートメーション領域」を創出していくとともに、原価低減、販売価格適正化等の各種収益力強化施策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションを通じて着実に実行してまいります。
具体的な新しいオートメーション領域への導入事例としましては、クラウド型バルブ解析診断サービス「Dx Valve Cloud Service」が大手化学会社や大手ガス会社へ順次提供が開始されております。これはバルブの解析診断結果や運転中の稼働データをWebコンテンツで提供するクラウド型サービスで、プラントや工場で稼働するバルブの健全性を診断し、その結果を可視化することによって、生産設備の安定化や保安力強化に貢献し、お客様へ継続的な価値の提案・提供を実行しております。
▲Dx Valve Cloud Serviceはバルブの診断結果を3つのコンセプトで提供 |
▲Web上のダッシュボードで全体感を把握し、バルブ個別の健全性は診断結果詳細画面で確認が可能 |
ライフオートメーション(LA)事業では、ライフライン分野において、主体であるガス・水道メーターの交換に関する安定した需要へ対応しています。さらに、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、従来の製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メーターからデータを活用したサービスプロバイダーとして他社との協業等も推進して新たなエネルギーマネジメント事業を創出し、売上高と利益の拡大を図ります。サービス型事業とスマートメーター事業を融合したSMaaS事業を推進してお客様や社会に新たな価値を提供し、さらにクラウド事業を強化してソリューション提供力の向上を目指します。また、住宅用全館空調システム分野では、新設建物から既設建物や小規模建物まで、幅広く快適性を提供する快適住空間プロバイダーへの事業拡大を推進し、お客様の生活の質を向上する快適さの実現を目指します。
以上のような3つの事業軸への取組みに加えて、持続可能な社会への貢献に「直列」に繋がる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」の成長領域の目標達成のため、出資を含む他社との協業を実施してまいりました。具体的には2023年度は、外資系データセンターのトータルマネジメントシステムを手掛けるX1Studio株式会社と出資契約及び業務提携契約を締結し、今後市場拡大が見込まれている国内のデータセンター市場における事業機会の拡大を図ります。また、再生可能エネルギー領域でのソリューション拡大に向け、フォレストエナジー株式会社への資本参加を決定し、再エネ活用モデルの構築により、脱炭素化を支援することを目指します。さらには、成長が期待される国内未上場企業を投資対象としているジャフコSV7ファンドに出資し、拡大が見込まれる新たな事業領域の市場情報や革新的な技術情報の入手、投資先企業との関係構築等を行い、新規事業領域の探索に繋げてまいります。
② 海外事業
長期目標達成に向けた成長実現のため、海外事業拡大に関する施策の検討・遂行及びグローバルでの経営基盤の強化を進めています。海外事業における変革をさらに加速させるために、地域特性を活かした事業推進・管理体制を確立し、各国・各地域のお客様に対して日本で培ってきた技術やノウハウを活かしたazbilグループ独自のソリューションをグローバルに展開していきます。具体的には、海外での市場シェア拡大、市場ニーズに合わせた商品の拡大、新規領域ビジネスへの参入を進め、売上高の伸長を目指していきます。
BA事業では、アジア地域の建物市場を中心に、都市化の進展が継続し、オフィスのグレードアップが進むことが見込まれています。そのため、国内事業モデルでの強みである省エネルギーのアプリケーション技術、エンジニアリング、サービス力を活用した製品・サービスの提供を推進していきます。一例として、タイではバンコク中心部に位置する五つ星ホテルにて、大手総合不動産会社との協業によりESCO※5サービスを開始し、当社ではBEMS※6の導入による空調・換気等の設備機器の運転管理の改善や効率化、各種省エネルギー制御の導入等、ESCO事業の推進をサポートしております。このような活動は、スマートビルディングソリューションの分野においても高く評価され、その結果、「東南アジア スマートビルディングソリューション カンパニー オブ ザ イヤー アワード」をFrost & Sullivan(フロスト・アンド・サリバン)※7から2年連続で受賞しました。 |
▲ESCO事業を開始したタイバンコク中心部に位置する 五つ星ホテル |
AA事業では、中長期的な視点で循環的な景気変動はあるものの、グローバルでの経済成長の継続、更なる生産性改善の要求、設備老朽化への対応、環境規制の拡大、新技術の活用に対する期待等を背景とした生産設備の自動化投資は引き続き拡大が見込まれています。そのような状況下において、脱炭素社会へ向けた産業構造の転換を見据え、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断等、新しいオートメーション領域の開拓を進めていきます。加えて、戦略地域の営業体制強化や営業活動の質の改善を継続することで、顧客のカバレッジ拡大を通じた事業成長を継続し、さらには、価格転嫁を含む収益力強化施策も継続し、高い利益率を引き続き確保してまいります。
LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域で事業展開する欧州のアズビルテルスター有限会社において、欧州におけるこれまでの急速なインフレ進行による費用増加への影響に対応すべく、適切なコスト管理、販売価格適正化等、収益力の強化と装置販売とエンジニアリング、サービスの両輪による事業基盤の強化を継続してまいります。
以上に加えて、グローバルでの成長を支える経営管理の課題解決のため、①事業ラインと連携した業務運営の標準化・共通化・効率化、②内部統制等のグループ内ガバナンスを効かせた、強固な経営基盤・管理体制への注力、③グローバルでの競争を勝ち抜くために必要な人材育成・人材基盤整備の推進、という3つの切り口からアプローチを図り、各社の堅確な体制構築を進めてまいります。
※5 ESCO(Energy Service Company)事業:工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。
※6 BEMS (Building Energy Management System):室内環境とエネルギー性能の最適化を図るためのビル管理システム。
※7 Frost & Sullivan (フロスト・アンド・サリバン):国際的な成長戦略コンサルティング・リサーチ会社。
③ 生産・開発
azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内ではグローバル生産体制構築の一環として、生産の中核拠点である湘南工場の生産機能と藤沢テクノセンターの研究開発機能との連携を強化し、グループ内のマザー工場としての機能整備を継続して推進中です。また、今後の事業成長の基盤を強化していくために、研究開発の中核拠点である藤沢テクノセンターを中心に、競争力のある商品を創出するための体制と仕組みづくりへの変革を進めています。具体的には、2022年9月に竣工した、新たな実験棟、新たなクリーンルーム・校正室を基盤として研究開発活動の効率化を進め、高度でより先進的な技術開発を推進していきます。海外では、グローバルでの需要拡
大に対応した生産能力の拡大、生産工程の高度化と更なる自動化の推進を目的に、2022年4月の中国大連生産子会社の新工場棟竣工に続き、2024年4月にはタイ生産子会社の新工場棟も竣工し、日本、タイ、中国を3極とした生産体制を強化しました。また、グローバル開発体制の強化に向け、今後成長が期待されるインドにおいては、インド工科大学ルールキー校※8と革新的なデジタルソリューションの共同研究について覚書を締結し、互いに関心の高い分野での共同研究やインターンシッププログラムを実施するなど、商品力の強化、課題解決に向けて様々な外部パートナーとの連携を深めていきます。 | ▲当社とインド工科大学ルールキー校のMoU締結式 |
※8 インド工科大学ルールキー校:engineering, sciences, management, architecture and planning, and humanities and social sciencesの高等教育を提供する機関。1847年の設立以来、同校は国に技術人材とノウハウを提供する重要な役割を果たしている。
なお、地政学的リスクによるグローバルサプライチェーンの課題、エネルギーや部品価格の高騰、インフレ等は今後も一定の範囲で継続すると想定しております。そのため、生産オペレーションの改善を継続しつつ、緊急事態発生時においてもお客様への影響を最小限にするBCPの取組み範囲の拡大や、グローバルな生産体制や適正な在庫管理を意識した調達体制を整備し、より一層のガバナンス強化を推進してまいります。
④ 経営管理
経営管理面では、リスクマネジメントにおいて、経営に大きな影響を及ぼすリスクを正確に把握し、その影響を最小限に抑えるため、プロセスの大幅な見直しと現場部門と経営層が一体となった取組みにより、不確実性への対策を強化しました。また、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用に向けた準備と会計レベルの向上と、それに伴う内部統制の強化も進めてまいります。さらに、全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応え、企業価値の持続的向上を進めるため、基盤となるコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と認識し、取締役会の監督・監査機能の強化、経営の透明性・健全性の強化、執行の責任体制明確化等に取り組んでいます。
なお、azbilグループとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも積極的な活動・取組みを進めております。E(環境)では、サステナブルな経済社会の実現に寄与するため、日本経済団体連合会の「生物多様性宣言・行動指針」への賛同を表明し、持続可能な社会の実現へ向け、気候変動対策、資源循環対策、生物多様性保全対策等、幅広い社会的な環境活動と、当社グループの事業活動の融合を進めております。気候変動対策では、製品やサービスを通じてお客様のCO2削減を支援し、2030年の温室効果ガス削減目標達成に向け省エネ技術を強化し、また、再生可能エネルギーの使用を進めています。なお、2050年のネットゼロ達成に向け、2023年6月にSBTi※9へのコミットメントレターを提出し、サプライチェーン全体のCO2削減にも注力しています。資源循環対策では、事業を通じて資源削減とサステナブルな製品設計に努め、2030年までに全新製品を100%リサイクル可能にすることを目標にしています。これにより、製品が適切にリサイクルされるような設計を実現し、天然資源の有効活用と廃棄物削減を目指しています。生物多様性保全対策では、ネイチャーポジティブ※10の視点から事業を通じて生物多様性に貢献し、サプライチェーンや国内外の組織と連携して自然保護の取組みを強化しています。
S(社会)では、「人権」、「労働」、「環境」、「腐敗防止」に係わる「国連グローバル・コンパクト」に署名し、中期経営計画において人的資本・知的財産への取組みを強化しています。また、社員が活き活きと仕事に取り組んでいけるようにするための総合的な取組みを「健幸経営」と定義し、様々な制度・施策の整備・展開を継続してまいりました。この取組みは経済産業省にも評価され、この度、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門(ホワイト500))」※11に3年連続で認定されました。 G(ガバナンス)では、2022年6月に、監督機能と執行機能の明確な分離、さらに意思決定の迅速さと透明性を高める目的で「指名委員会等設置会社」へ移行しました。また、取締役会の実効性を高めるためにアズビル独自の「取締役執行役連絡会」を設置するなどの工夫に | ▲健康経営優良法人2024(ホワイト500) |
より、経営戦略や事業ポートフォリオに関する議論、重要リスクの特定、法定委員会活動等につき従来以上に活発な議論を行っています。
これらの取組みの結果、環境省が主催する第5回ESGファイナンス・アワード・ジャパン※12環境サステナブル企業部門において、開示充実度が一定基準を満たしている企業として「環境サステナブル企業」に2年連続で選定されました。また、国際環境非営利団体であるCDP※13により、「気候変動」に対する取組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価され、Aリスト(最高評価)に3年連続で選定されました。
2024年度においても、持続可能な社会の実現に「直列」に繋がり、企業価値の向上を目指してESGにおける各課題を整理し、今後更なる改善への取組みを継続してまいります。
なお、経営管理面の重要課題である、株主還元等の資本政策につきましては、連結業績を基に、純資産配当率(DOE)を参照し、中期経営計画で目標として掲げる自己資本当期純利益率(ROE)等の水準に加え、成長投資及び健全な財務基盤を確保するための内部留保等を総合的に勘案し、「規律ある資本政策」の方針に照らして、機動的な自社株取得とともに、配当水準の向上に努めつつ安定した配当を維持していきたいと考えております。
※9 SBTi (Science Based Targets Initiative):CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)が共同で設立した、企業のCO2排出量削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ。
※10 ネイチャーポジティブ:自然生態系の損失を食い止め、回復させていくことを意味する。
※11 健康経営優良法人認定制度:地域の健康課題に即した取組みや日本健康会議が進める健康増進の取組みを基に、特に優良な健康経営を実践している企業を顕彰する制度で、その中で上位500法人のみが『ホワイト500』に認定される。
※12 ESGファイナンス・アワード・ジャパン:ESG金融又は環境・社会事業に積極的に取り組み、インパクトを与えた機関投資家、金融機関、仲介業者、企業等について、その先進的取組みなどを広く社会で共有し、ESG金融の普及・拡大に繋げることを目的として環境大臣が表彰するもの。環境サステナブル企業部門では、重要な環境課題に関する「リスク・事業機会・戦略」「KPI」「ガバナンス」の開示充実度が一定の基準を満たしている企業を「環境サステナブル企業」として評価・選定する。
※13 CDP:企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。2000年に英国に設立され、130兆米ドルを超える資産を保有する680以上の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を介して、企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護を働きかけている。
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