かんぽ生命保険 【東証プライム:7181】「保険業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、全国の郵便局ネットワークを通じて保険サービスを提供することで、お客さまのいざというときの支えとなり、お客さまの人生をお守りしてきました。そうした事業活動そのものがサステナビリティを実現するための取り組みであると位置づけ、当社は、以下の「サステナビリティ方針」を定めております。
(サステナビリティ方針)
かんぽ生命保険は、経営理念を実現し、お客さまの人生を保険の力でお守りするという社会的使命を果たすことで、サステナビリティ(持続可能性)をめぐる社会課題の解決に貢献し、当社の持続的な成長とSDGsの実現を目指します。
また、社会的使命を果たし、サステナビリティをめぐる諸課題に取り組むため、5つの優先的に取り組む社会課題(マテリアリティ)を特定しており、マテリアリティに沿った各取り組みを推進しております。
マテリアリティの特定プロセスとしては、SDGsの17の目標を達成するための具体的な169のターゲットから、生命保険業を営む当社にとっての社会課題を抽出し、抽出した課題を「ステークホルダーからの期待」と「当社にとっての重要度」の2軸で優先順位をつけ、特定しております。なお、特定した課題の内容については、サステナビリティ委員会及び経営会議で協議・決定し、取締役会へ報告いたしました。
表 「優先的に取り組む社会課題(マテリアリティ)」
優先的に取り組む社会課題 (マテリアリティ) | 実現を目指す SDGsのゴール | 主な取り組み |
郵便局ネットワーク等を通じた 保険サービスの提供 | ● 地域密着の郵便局ネットワークを通じた基礎的な保障の提供 ● 郵便局ネットワークとDX推進によるデジタル ● あらゆる世代の保障ニーズに応える商品開発 | |
地域と社会の発展・環境保護 | ● カーボンニュートラルに向けた取り組み ● TCFD提言に沿った取り組みの実施 ● ESG投資の推進 | |
健康増進等による健康寿命の | ● ラジオ体操の普及促進 ● 健康応援アプリ「すこやかんぽ」を活用した ● 健康増進への関心や社会的ニーズを踏まえた ● ESG投資の推進 ● 新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応 | |
社員一人ひとりが生き生きと | ● 企業風土改革・働き方改革 ● 人材育成、人材活用の強化 ● ダイバーシティの推進(女性活躍推進、育児や | |
社会的使命を支える | ● お客さまからの信頼回復 ● コンプライアンスの徹底 ● コーポレートガバナンスの強化 |
※ 17色のカラーホイールは、ESG投資の推進がSDGsの17のゴールすべてに関連することを意味しております。
(1) ガバナンス
当社は、広報部担当執行役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し(サステナビリティ推進室を事務局とする)、サステナビリティ戦略の協議や、サステナビリティ実施計画の策定・進捗の報告等を行っております。
サステナビリティ委員会での検討・協議の状況は、適時経営会議に報告するとともに、重要なものについては、経営会議で協議・決定の上、取締役会へ報告しております。
また、全社一体となったサステナビリティ活動を推進するため、拠点ごとに「サステナビリティキーパーソン」を設置しております。サステナビリティキーパーソンは、社員の行動変革を促すリーダー的役割を担っており、拠点内において、サステナビリティに関する理解浸透・意識醸成のための研修を開催するとともに、各種活動の具体化や推進等を行っております。
なお、気候変動リスクに対する課題については、リスク管理統括部担当執行役を委員長とするリスク管理委員会、人的資本に関する対応については、人事戦略部担当執行役を委員長とする働き方改革委員会でそれぞれ取り組みを推進するなど、関連する各専門委員会で協議・検討し、サステナビリティ委員会とも連携して対応しております。
(2) リスク管理
当社はリスク選好ステートメント※を設定し、ERMに基づき事業運営における健全性を確保しつつ、持続的な成長や中長期的な企業価値の向上を目指しております。リスク選好ステートメントでは全体方針に加え、保険引受リスク・資産運用リスク・オペレーショナルリスクをリスク区分として定めております。
気候変動リスクに関しては、全社的な気候変動リスクの洗い出し・リスク評価を実施し、リスク管理委員会に報告いたしました。今後も、年1回以上の気候変動リスクの洗い出し及び評価、シナリオ分析の継続・高度化を実施するとともに、気候変動リスク管理態勢の定着化を進めてまいります。
また、人的リスクに関しては、上記オペレーショナルリスクのリスク区分において、人事運営上の不公平・差別的行為などから当社が損失を被るリスクを管理しており、経営陣と社員のコミュニケーションの活性化、多様なキャリア形成へのサポート及びマネジメント力の強化等により、人的リスクの顕在化を抑制しております。
気候変動及び人的資本に関する機会の識別・評価の詳細は「(3) 戦略、指標及び目標」を参照ください。
なお、サステナビリティ関連のリスク管理については、更なる整備を進めていく必要があると認識しており、今後検討を行ってまいります。
※ リスク選好ステートメントとは、当社のリスクテイクの方針(目標収益達成を果たす上で、どのようなリスクを取るか)を定めたものです。当社では「定性的なリスク選好」と「定量的なリスク選好」に分けて設定しております。
(3) 戦略、指標及び目標
当社では、表「優先的に取り組む社会課題(マテリアリティ)」に記載のとおり、5つのマテリアリティに沿った各取り組みを推進しております。
以降は、サステナビリティに関する社会的な要請の高まり等を踏まえ、中期経営計画において目標を設定し、当社が重点的に取り組んでいる気候変動課題及び人的資本への対応について記載しております。
① 気候変動課題への対応
<戦略>
当社は、金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures, TCFD)」の提言に、2019年4月に賛同を表明しております。
当社は、気候変動課題を、企業のリスクと機会になると認識し、全社で取り組む必要があると考えており、中期経営計画の基本方針として、ESG経営の推進(社会課題の解決への貢献)を掲げ、気候変動課題をはじめとするサステナビリティを巡る社会課題の解決に取り組んでおります。
今後も、これまでの気候変動に関する取り組みをより一層推進するとともに、更なる情報開示に取り組んでまいります。
ア.気候変動が当社事業に及ぼすリスクと機会
当社は、気候変動による当社への主な影響(リスクと機会)を生命保険事業、資産運用のそれぞれにおいて、次のとおり認識しております。
※1 上記リスクと機会の特定に当たっては、想定される大小のリスクを洗い出した上で、当社事業における重要性を勘案し、影響度の高いリスクと機会を開示しております。
※2 影響の受ける時間軸は、短期:5年、中期:15年、長期:30年程度と想定しております。
イ.気候変動が当社事業に及ぼす影響分析
気候変動が当社の事業に及ぼす影響を把握するため、以下のシナリオ分析を実施しました。今後も引き続きシナリオ分析を継続し、精度の向上を図るとともに、分析結果を踏まえて脱炭素に向けた取り組みやリスク管理を行ってまいります。
a.気候変動が当社の生命保険事業に及ぼす影響分析
気候変動が当社の生命保険事業(保険金支払)に及ぼす影響について、保険金支払額の大幅な増加に繋がるような事象として、夏季の気温上昇による熱中症の罹患者の増加、感染症媒介蚊の活動可能地域拡大等による熱帯性感染症の罹患者の増加や洪水被害等の増加・長期化による健康被害などが考えられます。
2022年度は、熱中症死亡について以下のとおり一定の前提を基に定量的に分析した結果、当社の死亡保険金支払額実績と比較して極めて小さい点や、将来のお支払いに備えて積み立てている責任準備金からのお支払いが可能である点を踏まえれば、保険金支払額の増加が当社の財務健全性に与える影響は限定的であることが確認できました。また、2021年度に実施した下記(b)及び(c)の分析結果については前提に大きな変更がないため、結果に大きな影響がないことを確認しました。
なお、気候変動が生命保険事業に及ぼす影響については、一般的に確立された計測モデルはない上、長期間にわたり発現するなど気候変動自体の不確実性が高いことから、分析の精度や信頼性についての課題は多いと考えております。今後、更なる調査・ストレステスト等の分析を通して、リスク把握に取り組んでまいります。
(a) 熱中症死亡の増加
気温上昇としてIPCC※1第5次評価報告書に基づくRCP8.5※2シナリオを適用した場合の、日本全国の平均気温の上昇を前提とし、国内で熱中症死亡が増加することを想定した試算を行いました。年齢階層別に分析を行った結果、特に高齢層を中心に、2031年度から2050年度までの累計で保険金等の支払額が約70億円程度増加するものと推定しております。
(b) 熱帯性の感染症被害拡大
感染症媒介蚊について気温上昇がもたらす活動地域・活動期間の拡大を推定し、蚊が媒介する熱帯性の感染症(デング熱、マラリア)による保険金等の支払額の増加について分析しました。気温上昇としてIPCC第5次評価報告書に基づくRCP8.5シナリオを適用し、近年の熱帯地域における熱帯性の感染症の発生状況や本邦の衛生状態等を参考に、デング熱が日本国内でも流行し、お客さまが入院、お亡くなりになったりすることを想定の上、2031年度から2050年度まで毎年被害が発生したと仮定した試算では、保険金等の支払額の増加は、20年間の累計で最大150億円程度でした。
(c) 未知の感染症の発生
熱帯林の開発、永久凍土の融解等により、未知の感染症が顕在化し、新たな感染症の大流行(パンデミック)が発生する恐れがあります。未知の感染症が発生した場合、対面営業による営業活動が困難になる等の理由により、営業実績が低迷する可能性がありますが、数十年に一度の発生確率を仮定した場合、当社の財務健全性に与える影響は限定的であることが確認できました。
※1 IPCCとは、Intergovernmental Panel on Climate Changeの略語で、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織のことです。
※2 RCP8.5シナリオとは、RCPシナリオの一つです。RCPシナリオとは、人間活動に伴う温室効果ガス等の大気中の濃度が、将来どの程度になるかを想定した排出シナリオのことです。
b.気候変動が当社の資産運用に及ぼす影響分析
(a) NGFSの気候シナリオ分析
脱炭素社会への移行に伴う経済環境の変化により、当社保有資産への影響が想定されます。当社では、気候変動リスク等に関する金融当局ネットワーク(NGFS※1)が公開する複数の金融市場シナリオ※2及び炭素価格シナリオを使用して、2050年までの当社保有資産への影響を分析しました。
なお、気候変動が資産運用に及ぼす影響については、一般的に確立された計測モデルはない上、長期間にわたり発現するなど気候変動自体の不確実性が高いことから、分析の精度や信頼性についての課題は多いと考えております。今後、更なる調査・ストレステスト等の分析を通して、リスク把握に取り組んでまいります。
(当社運用収益に係るシナリオ分析)
NGFSシナリオ(金融市場シナリオ)の下で、当社利差益への影響を分析しました。当社が分析に使用したシナリオは、国内外の長期金利が緩やかに上昇するシナリオであることから、国債等の円金利資産を保有する当社においては、利差益の増加が見込まれました※3。
(当社保有資産に係るシナリオ分析)
NGFSシナリオ(炭素価格シナリオ)の下で、有価証券価値の下落額(投資先企業の将来炭素コスト負担増額)を分析しました。当社ポートフォリオにおいては、特に10年超の年限が長い債券において一定の下落額が見込まれました※4。実際には、投資先企業の収益悪化や時価評価額下落は徐々に顕在化することや、保有資産は途中売却が可能であること等を踏まえると、当社財務状況への影響は限定的であると考えております。
※1 NGFSとは、Network for Greening the Financial Systemの略語で、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するための中央銀行及び金融監督当局の国際的なネットワークのことです。日本からも2018年6月に金融庁が、2019年11月に日本銀行が参加しております。使用したシナリオは、①各国が現在行われている以上の気候変動対策を行わないために地球温暖化が進行するCurrent Policiesシナリオ(3℃以上上昇)、②2050年カーボンニュートラル及び気温上昇1.5℃目標を各国が協調して計画的に達成するNet Zero 2050シナリオ、③2030年以降に急速に気候変動対策を進めるDelayed Transitionシナリオ(対応遅れ)の3シナリオです。
※2 2022年公表のシナリオ(シナリオモデル:REMIND-MAgPIE 3.0-4.4)。なお、直近のロシア・ウクライナ 戦争やこれに起因するエネルギー危機等の影響は考慮しておりません。
※3 本分析において、インフレ率の上昇等に伴う事業費の増加等は考慮しておりません。
※4 算出に必要なデータ(温室効果ガス排出量等)が揃わない場合は、分析対象外としております。また、投資先企業が将来実施する、収益改善の取り組み等による効果は考慮しておりません。
(b) 重要セクターに着目した資産運用収益への影響分析
気候変動の影響度合いが大きく、かつ当社の投融資額が多い重要度が高いセクターとして、電力、鉄鋼、エネルギーの3セクターを対象として選定し、それぞれ2℃及び4℃シナリオ※における影響度を分析しました。結果として、2℃シナリオにおいては、いずれのセクターについても、炭素税の導入や再生可能エネルギーの普及等の社会変化が業績や財務に及ぼす影響が大きくなる可能性が示されました。
今後とも、当該セクターの投資先については、分析結果を十分に考慮したエンゲージメントを実施してまいります。当社は、投資先に対し、分析により示された具体的影響に関する対話を実施するとともに対応を促し、運用成果の向上を目指します。
※ IEA「World Energy Outlook」の各シナリオ、IEAレポート、環境省他「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 ~日本の気候変動とその影響~」などを参照しております。
各シナリオの世界観
※ シナリオの世界観には、IEA「World Energy Outlook 2021」等を参考
シナリオ分析のプロセス
≪STEP1≫重要セクター別のリスクと機会の重要度評価
国際機関等が発行する文献調査を中心に、外部有識者の協力を得ながら、当社にとって重要な3セクターにおけるリスクと機会の重要度を評価しております。
≪STEP2、STEP3≫重要セクターへの影響
STEP1で抽出した重要セクター別の重要度の大きいリスクと機会の項目について、STEP2として2℃シナリオと4℃シナリオにおける具体的な状況を想定し、STEP3として投融資先企業の業績・財務に与える影響について定性的に評価しております。
<セクター①電力>
<セクター②エネルギー>
<セクター③鉄鋼>
※ 「影響因子(パラメータ)」及び「業績・財務への影響」に記載している矢印(↑/↓)については、影響因子の方向性又は当社の資産価値への影響の方向性を示したものです。
≪STEP4≫対応策
重要セクターの投資先について、シナリオ分析で抽出された具体的影響を十分に考慮し、「目的を持った対話」(エンゲージメント)を実施することで、中長期的な運用成果の向上を目指します。エンゲージメントにおいては、投資先に対し具体的影響への対応状況について確認するとともに、脱炭素化に向けた取り組みを促してまいります。
(c) 投資先企業における炭素コストの影響分析
今後、脱炭素社会への移行が進む中で、各国政府による炭素税の導入などカーボンプライシングを通じた炭素コストの増加により、当社の投資先企業へ影響が及ぶ可能性があります。そこで当社の国内外の株式及び社債ポートフォリオについて、以下の2つのシナリオに基づいて、炭素コスト増加に伴う投資先企業への影響について定量的な分析を行いました※1、2。
シナリオ | |
低炭素価格シナリオ | パリ協定に基づく各国のNDC(Nationally Determined Contributions、国別削減目標)が完全に実施されるシナリオ。 |
高炭素価格シナリオ | 各国の政府による適切な政策実施により、2100年の気温変化がパリ協定と整合的である2℃以下となるシナリオ。 |
投資先企業における炭素コスト負担額は、国内外の株式及び社債のすべてのアセットクラスにおいて、2050年にかけて増加します。また、国内社債において、他の資産と比較して、炭素コスト負担額が大きくなっております。これは、国内社債の投資残高が4資産中で最も高く、また炭素コストの大きいセクターの保有割合も相対的に大きいことによります。
利益指標としてのEBITDA※3と炭素コスト負担額とを比較し、炭素コスト負担額がEBITDAを超える投資先を財務への潜在的影響が大きい投資先と考え、これらへの投資金額のポートフォリオに占める割合を算出いたしました。その結果、当該割合は、2050年時点において、低価格シナリオで1.7%、高価格シナリオで9.4%となりました。
当社としては、財務への潜在的影響が大きい投資先企業に対するエンゲージメントを強化し、脱炭素化への移行を促すことで、ポートフォリオへの影響緩和を図ってまいります。
※1 分析の前提となる炭素コストの想定として、S&P Trucost社 によるUCC(Unpriced Cost of Carbon)を使用しております。UCCは、IEAによる炭素価格シナリオ等をベースとし、地域や産業特性も加味し、企業の温室効果ガス排出量を現時点のもので一定と仮定した上で、将来時点における企業の追加的な炭素コストを推計したものです。
※2 今回の分析は、現状のEBITDA、温室効果ガス排出量を用い、推定される炭素コストを前提として算出した簡易的なシミュレーションです。将来的な経済や事業環境の変化、政策対応等の変動要因は考慮しておらず、それらによって投資先への財務影響は大きく変化する可能性があります。
※3 EBITDAとは、Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略で、税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します。
ウ.脱炭素に向けての取り組み
当社は、カーボンニュートラルの実現に向けて、低炭素社会への移行に関する取り組みを実践し、事業の強靭性を高めてまいります。
事業会社としての取り組み | ・施設や車両の省エネ化 ・再生可能エネルギーの使用 |
機関投資家としての取り組み | ・ESGインテグレーション※における気候変動要素の組み込み ・気候変動への対応を重視したスチュワードシップ活動の実施 ・投資ポートフォリオの温室効果ガス排出量計測及び管理 ・社会の脱炭素化に資する投資の推進 |
※ ESGインテグレーションとは、投資判断において、財務情報に加え、ESG要素を考慮することです。当社では、全運用資産に対して実施しております。
<指標及び目標>
ア.温室効果ガス排出量削減目標
当社は、2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、Scope1※1及びScope2※2において、以下の温室効果ガス排出量の削減に関する中間目標を設定しております。
項目 | 目標※3 | 基準年排出量※4 | 2021年度実績※4 | 2021年度削減率※4 |
Scope1及び | 2030年度までに2019年度対比で46%削減 | 18,940 tCO2e | 14,877 tCO2e | 2019年度対比で |
また、Scope3※5におけるカテゴリー15(投資先ポートフォリオから発生する温室効果ガス排出量)についても、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すとともに、2029年度末までに2020年度末対比で50%削減する中間目標を設定して脱炭素化に取り組んでおります。※6
※1 Scope1とは、自社が直接排出する排出量です。新規事業による増加分を除きます。
※2 Scope2とは、他社から供給された電気などの使用に伴う排出量です。新規事業による増加分を除きます。
※3 上記目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化によって見直す可能性があります。
※4 Scope1及びScope2の基準年排出量については、当社の組織体制の変更等により変更の可能性があります。それに伴い、2021年度実績及び2021年度削減率も更新する可能性があります。2022年度実績は集計中のため、2021年度実績を記載しております。
※5 Scope3とは、サプライチェーンにおけるScope1、Scope2以外の間接排出です。15のカテゴリーに分類され、投資ポートフォリオにおける排出はカテゴリー15に該当します。
※6 Scope3におけるカテゴリー15の目標は、投融資先企業のScope1及びScope2の排出量について、当社の持ち分比率をかけて算出した値の合計です。対象資産は、国内外上場株式及び国内外クレジット(企業融資を含む)です。
イ.投融資先再生可能エネルギー施設の総発電出力KPI
当社は、中期経営計画期間(2021年度~2025年度)中の投融資先再生可能エネルギー施設の総発電出力に係るKPIを設定しております。
項目 | 目標※1 | 2022年度実績※2 |
総発電出力※3 | 中期経営計画期間に150.0万kW | 95.3万kW |
※1 上記目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化によって見直す可能性があります。
※2 2022年度実績は、速報値のため、今後更新する可能性があります。
※3 当社持ち分換算後、投融資先再生可能エネルギー施設から出力される電力に限ります。
② 人的資本に関する対応
<戦略>
ア.目指す姿と人的資本経営の推進
当社は、お客さまから信頼され選ばれる企業になること及びお客さまに感動いただける保険サービスの提供を通じた持続的な成長を目指しております。そのためには、主体的に行動し付加価値の高い成果を発揮できる多様な人材の確保が必要不可欠であると考えております。
こうした目指す姿の実現に向け、当社は、新たに「『人的資本経営』3つの基本理念」を人材育成方針及び社内環境整備方針として定め、人的資本経営に取り組んでおります。
(「人的資本経営」3つの基本理念)
1.社員が主体的に行動する企業風土の定着
2.戦略的な人材確保
3.多様な人材の活躍と柔軟な働き方の推進
イ.「人的資本経営」3つの基本理念を設定した背景及びその取り組み
「人的資本経営」3つの基本理念は、当社の再生や持続的成長の土台としてこれまで取り組んできた企業風土改革、働き方改革及びダイバーシティの更なる推進や、経営戦略上の主要な課題である「営業力の底力をつけること」、「ビジネスモデルの改革」及び「主体的に行動する社員の創出・増加」の実現に向けて設定しております。
会社が直面する様々な課題を解決し持続的に成長するためには、全社員が共通の価値観を共有し、社員一人ひとりが主体的に考え、行動することが必要と考えております。そのため、当社の経営理念である「いつでもそばにいる。どこにいても支える。すべての人生を、守り続けたい。」を更に具体化し、全社員の日々の業務の判断・行動の拠り所となる共通の価値観として、「あなたがいてくれてよかった。ありがとう」を策定いたしました。お客さまから「あなたがいてくれてよかった。ありがとう」と頼られる存在になるため、社員一人ひとりが、お客さまのためになすべきことを自問自答しながら主体的に行動する企業風土の定着(基本理念1)に取り組んでおります。
また、お客さまから信頼され選ばれる企業になるためには、「営業力の底力をつけること」や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用による「ビジネスモデルの改革」の実現が必要と考えております。それらを実現するため、現状及び将来必要な人材の「量」と「質」を把握するとともに、経営戦略に合った人材の採用、育成等(基本理念2)に取り組んでおります。
そして、社員の仕事と育児や介護の両立等の多様な社会のニーズに応えるため、当社は、多様な人材の活躍と柔軟な働き方を推進(基本理念3)しており、社員の満足度の向上を図っております。
a.(基本理念1)社員が主体的に行動する企業風土の定着
経営陣と社員が将来のビジョンを共有し共感することや、社員の主体性を引き出すマネジメント、多様なキャリアにチャレンジできる機会の提供を通じて、社員のエンゲージメント※1の向上と主体的に行動する企業風土の定着を目指しております。
具体的には、会社が直面している課題やその取り組み等に対して、社長から全社員への定期的なメッセージ発信を行う「社長通信」や経営陣と社員が定期的に意見交換する「フロントラインミーティング」、社員が社長に直接提案を行う制度の「かんぽ目安箱」を実施しております。これにより、会社の将来のビジョンや方針等の理解を促進するとともに、経営陣と社員が同じ方針に基づいて全社一体となって課題等に取り組んでおります。
また、社員の主体性を引き出す取り組みとして、キャリアに関する社員本人の希望を踏まえて各社員の育成方針などの議論を行う人材育成会議を実施しております。これにより、社員一人ひとりが自身の強みや弱みに気づき、その改善等に社員自らが取り組むことで、能力やモチベーションの向上を図っております。加えて、管理職の人事評価の中で、部下社員が能力を最大限発揮できる環境の構築が役割であることを明確化するとともに、各拠点の管理職等を対象にコーチング※2研修を実施し、マネジメント手法の改善に取り組んでおります。これにより、部下社員との定期的な対話を通じてコミュニケーションを活性化するとともに、主体的に行動する社員の育成や組織力の強化を図っております。
このほか、社員の自律的な成長等を目的に、現在と異なる職務や環境で新たな業務へ挑戦することができるキャリアチャレンジ制度を導入しております。これにより、社員自ら新たな業務に挑戦し、その領域でのスキル向上や視野を広げることで新たな発想等による課題解決力の向上を図るとともに、人事交流の活性化による組織間の相互理解も促進しております。
これらの取り組み等を通じた社員のエンゲージメントを客観的に把握するため、年2回ES調査(エンゲージメントスコア調査)を実施し、各拠点の職場環境に関する課題や問題点を特定の上、継続的な改善活動に取り組んでおります。
※1 エンゲージメントとは、会社との深い関わり合いや関係性を意味する言葉です。
※2 コーチングとは、管理職等が部下社員とともに達成したいことを明確にすることで、考え方や行動の選択肢を増やし、社員が主体的に行動するように促すコミュニケーション・スキルです。
b.(基本理念2)戦略的な人材確保
現状及び将来必要な人材の「量」と「質」を把握し、経営戦略に合った人材の採用や強化領域への配置とリスキルの促進、各階層及び領域に応じた育成の実施により、会社の持続的な成長を支える人材を確保してまいります。
具体的には、組織及び人事面から各部門の事業拡大や変革をサポートするツールとして、現状及び将来必要な人材の「量」と「質」を可視化する人材ポートフォリオの策定を進めております。これにより、当社において、特に重点的に強化すべき組織や今後各領域で必要となる人材を特定し、現状とのギャップ分析を実施することで、ギャップを踏まえた採用や適材適所の配置、育成を行い、戦略的に人材を確保してまいります。その一環として、新卒採用や経験者採用においては、アクチュアリー※1、資産運用、営業、IT・デジタル分野における専門人材等の積極的な採用をそれぞれ実施しております。加えて、中長期的な視点で営業力の底力をつけるため、営業社員一人ひとりの能力の伸びを定量的に評価する仕組みを構築してまいります。このほか、会社の成長を支えていく経営リーダーを、長期的な計画の中で戦略的に育成していくことを目的に、次世代リーダー育成プログラムを策定しており、将来を見据えて、各領域・階層に応じた社員育成を実施してまいります。※2
また、支店やサービスセンター等における書類審査や請求内容のシステム入力等のバックオフィス業務等の効率化等、ビジネスモデルの改革を進めながら、適切にリスキル(必要なスキルの習得)を行い、お客さま対応を行う部門等へ段階的にシフトしてまいります。
※1 アクチュアリーとは、確率や統計等の手法を用いて、将来の不確実な事象の評価を行い、保険数理業務、リスクマネジメント等を行う専門職です。
※2 基本理念2の指標及び目標については、人材ポートフォリオに基づく戦略的な人材確保に向けて、検討を進めてまいります。
c.(基本理念3)多様な人材の活躍と柔軟な働き方の推進
多様な人材が互いの「個」を尊重し、それぞれの役割を果たし成果を上げることや時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができる環境の整備により、多様化する社会のニーズに応え、社員・お客さまの満足度の向上を目指しております。
具体的には多様な人材の活躍の一環として、管理職候補層の女性社員へ向けたキャリア形成支援研修やアンコンシャスバイアスに関する研修などの実施により女性活躍を推進しております。加えて、育児や介護をしながらでも安心して社員が働き続けられるよう、育児休業取得社員に対する職場復帰プログラムの実施の徹底や、仕事と育児の両立支援セミナー等に取り組んでおります。更に、当社は、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を推進するため、テレワーク環境を整備しており、更なる業務改善・生産性の向上に取り組んでおります。
また、障がいのある方の就労能力を正しく評価し、就業機会を提供することは企業の社会的責任の一環であると考え、障がい者雇用を積極的に推進しております。加えて、障がいのある社員との定期的な対話や座談会の実施、専用相談窓口の設置、これらの取り組みを牽引する「障がい者雇用促進リーダー」の配置等を行い、障がいのある社員の職場定着を支援しております。
<指標及び目標>
ア.ES調査(エンゲージメントスコア調査)
「社員が主体的に行動する企業風土の定着(基本理念1)」を実現するために、まずは社員のエンゲージメントの向上が必要であると考えており、ES調査に基づくエンゲージメントスコアを2020年度から測定し、2025年度までに他社平均の「B」以上を達成することを目標として掲げております。
2021年度は社内コミュニケーション活性化等の取り組みによりエンゲージメントスコアが改善したものの、2022年度は同スコアが前年度から低下しました。これは2022年4月からの新しいかんぽ営業体制への移行により、移行後の全社員の半数に相当する約13,000人が新たに当社の社員となったことに起因する、会社全体としてのまとまりや一体感の醸成における課題が背景にあると考えております。今後も、<戦略>に記載のフロントラインミーティングによる経営陣と社員のコミュニケーションの活性化や、社員が社長や経営陣に直接意見・提案を行う目安箱を通じた社員の声を経営に活かす仕組みに継続して取り組み、エンゲージメント向上を目指してまいります。
項目 | 目標 | 実績 | ||
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
ES調査 ※1,2,3,4 | B (2025年度まで) | CC | CCC | C |
※1 当社の社員が、仕事内容・職場環境・人間関係・福利厚生などについてどの程度満足しているかを、株式会社リンクアンドモチベーションが提供する「モチベーションクラウド」により評価するものです。Cは全11段階中上位から9段階目、CCは上位から8段階目、CCCは上位から7段階目、Bは上位から6段階目の評価です。
※2 調査方法:外部サイトからの回答によるもの
※3 対象社員:他社からの出向者を含む在籍社員(当社からの出向者及び派遣社員、育児休業や病気休暇等の休職中の社員は除く)
※4 当社事業における重要性を勘案して、主要な事業を営む当社について記載しております。
イ.本社における女性管理職比率
「多様な人材の活躍と柔軟な働き方の推進(基本理念3)」を実現するためには、ジェンダー平等を実現し、社員の働きがい・企業価値の向上へ繋げることが重要であると考えており、本社における女性管理職比率を指標とし、2030年度までに30%以上を達成することを目標として掲げております。目標達成に向け、各年度の目安を設けながら計画的に取り組みを展開しており、具体的には、<戦略>に記載の、管理職候補層の女性社員へ向けたキャリア形成支援の研修等の実施により、多くの女性社員が活躍できる職場環境の整備を推進してまいります。
項目 | 目標 | 実績 | |
2021年度 | 2022年度 (2023年4月1日現在) | ||
本社における 女性管理職比率※1,2,3 | 30%以上 (2030年度まで) | 13.9% | 15.5% |
※1 各年度の翌4月1日現在の本社(サービスセンター含む)管理者のうち、女性の管理者の割合です。
・ 本社女性管理職比率(%)=「女性管理者数(本社及びサービスセンター)」
÷「全管理者数(本社及びサービスセンター)」×100
※2 算出にあたり、2021年度までは、他社からの出向者を含み、他社への出向者を含めておりません。2022年度からは日本郵政グループ各社との整合性を図るため、当社を本籍とする社員を対象としており、他社からの出向者を含めておらず、他社への出向者を含めております。
※3 当社事業における重要性を勘案して、主要な事業を営む当社について記載しております。
ウ.育児休業取得率
「多様な人材の活躍と柔軟な働き方の推進(基本理念3)」を実現するためには、社員の仕事と家庭の両立を支援し、社員が育児をしながらでも安心して働き続けられることが重要であると考えており、育児休業取得率を指標としております。2025年度までに男女とも育児休業取得率100%を達成するという目標に向けて、2022年度は2021年度と比較して男性における取得率が向上しており、今後も<戦略>に記載の、育児休業取得社員に対する職場復帰プログラムの実施の徹底や、仕事と育児の両立支援セミナー等の取り組みを継続的に実施することで、育児休業を取得しやすい、また、円滑に職場復帰しやすい風土を醸成し、目標の達成を目指してまいります。
項目 | 目標 | 実績 | |
2021年度 | 2022年度 | ||
育児休業取得率※1,2,3 | 男女とも100% (2025年度まで) | 女性:100.0% 男性: 92.7% | 女性:100.0% 男性: 96.9% |
※1 対象期間中に出産(男性の場合は配偶者が出産)したもののうち、育児休業を開始した社員(開始予定の申し出者を含む)の割合です。
・ 女性の育児休業取得率(%)=「育児休業(育児休業法第2条第1号。以下同じ。)をした女性労働者数」
÷「出産した女性労働者数」×100
・ 男性の育児休業取得率(%)=「育児休業をした男性労働者数」÷「配偶者が出産した男性労働者数」×100
※2 算出にあたり、他社からの出向者を含み、他社への出向者を含めておりません。
※3 当社事業における重要性を勘案して、主要な事業を営む当社について記載しております。
エ.障がい者雇用率(日本郵政グループ全体)
「多様な人材の活躍と柔軟な働き方の推進(基本理念3)」に関して、障がいのある方に適切な就労機会を提供することが、企業としての社会的責務であるとの認識の下、障害者雇用促進法により義務付けられる障がい者雇用率(法定雇用率)を保持すべく、障がい者雇用率を指標にしております。日本郵政グループ各社とも、障がい者雇用の推進に積極的に取り組んでおり、日本郵政グループ全体で約6,300人の障がいのある社員が様々な職場で活躍しております。
当社においては、<戦略>に記載の、障がいのある社員との定期的な対話や座談会の実施、専用相談窓口の設置、これらの取り組みを牽引する「障がい者雇用促進リーダー」の配置等を行い、障がいのある社員が明るく生き生きと活躍できる環境を整備しております。
また、日本郵政グループ各社は、日本郵政株式会社の子会社として設立された「ゆうせいチャレンジド株式会社」に対して、日本郵政グループ各社の清掃業務等の一部を委託しております。2025年度までに障がい者雇用率2.5%という目標に向けて、2022年度は2021年度と比較して向上しており、今後も日本郵政グループ全体で障がい者雇用に積極的に取り組むことで、目標の達成を目指してまいります。
項目 | 目標 | 実績 | |
2021年度 | 2022年度 | ||
障がい者雇用率※1,2 | 2.5% (2025年度まで) | 2.35% | 2.42% |
※1 各年度の6月1日現在の日本郵政グループ(日本郵政株式会社・ゆうせいチャレンジド株式会社・日本郵便株式会社・株式会社ゆうちょ銀行・株式会社かんぽ生命保険・日本郵政スタッフ株式会社を含む)の全社員(期間雇用社員等を含み、派遣社員を除く)のうち、障がいのある社員の割合です。
・ 障がい者雇用率(%)=「雇用障がい者数(日本郵政グループ全社員のうち障がいのある社員数)」
÷「算定基礎労働者数(日本郵政グループ全社員数)」×100
※2 当社では、障がい者雇用率の算定において障害者雇用促進法に基づくグループ適用を採用しているため、日本郵政グループ全体の障がい者雇用率を目標としております。
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