他社比較

  • 早わかり
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  • 決算書 貸借対照表(B/S)
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星2つ 企業兼大株主オリンパス  企業概要

 当社グループの業績は、今後起こりうる様々なリスク(不確実性)によって大きな影響を受ける可能性があります。当社グループは、経営理念や企業戦略などの事業目的達成を支援するため、グローバルなエンタープライズ・リスクマネジメント手法を導入しており、リスクマネジメントは、「リスクマネジメント及び危機対応方針」及び関連規程に基づいています。また、当社グループは、「機会」と「脅威」の両面からエンタープライズ・リスクマネジメントに取り組んでいます。機会は、当社グループの持続的な成長と価値創造につながる積極的かつ適切なリスクテイクを通じて捉えられる一方、脅威は、事業目標の確実な達成とコンプライアンス違反の防止のために特定され、優先順位をつけて対処されます。

 2023年4月より当社グループは、ガバナンス・リスク・コンプライアンス(以下、GRC)に関連するリスク&コントロール、コンプライアンス、プライバシー、情報セキュリティの4つの機能を統合し、グローバルGRC組織として新たに立ち上げました。加えて、既存のエンタープライズ・リスクマネジメント・ポートフォリオを先進的な手法に移行し、当社の全ての機能で、この強化された方法にしたがってグローバルなリスクポートフォリオを検証、改良するためのリスク評価を実施しました。

 特に注力したエンタープライズ・リスクマネジメントの活動は以下の通りです。

- グローバルなリスクコントロール機能の構築

- グローバルな手法とアプローチの構築

- グローバルに調和したプロセスの構築

 これらの活動に注力することで、合理的なエンタープライズ・リスクマネジメントが実行され、事業計画及び財務計画にリスクを反映することを企図しています。また、十分な情報に基づいた経営の意思決定をサポートすることで、当社の事業目標と企業戦略の達成の確度を高めることを目指しています。

エンタープライズ・リスクマネジメントの組織体制

 当社グループは、グローバルおよび地域レベルの新しい委員会組織として、グローバル及び地域リスクアシュアランス・コンプライアンス委員会(以下、G-RACC、R-RACC、総称してRACCs)を設立しました。RACCsは、リスクに対処し、適用される方針、法律、規制を遵守するための枠組みを確立、実施、管理することを目的としています。また、勧告、指導、重要リスクについては、グループ経営執行会議(以下、GEC)、取締役会、 監査委員会に定期的に報告され、継続的なモニタリングが行われます。

 また、リスクオーナーとして、グローバル事業・機能責任者、地域事業・機能責任者を任命しました。また、各事業・機能でリスク管理を担うリスクコーディネーターを任命しました。リスクオーナーは、自身が管轄する領域において対策(例:組織体制、プロセス準備、重点対策など)を講じる責任を負います。

<エンタープライズ・リスクマネジメント体制>

エンタープライズ・リスクマネジメントの手法とアプローチ

 当社グループでは、5つのリスクカテゴリー(1.戦略(外部環境変化を含む)、2.オペレーション&製品、3.ファイナンス、4.ガバナンス、5.IT&デジタル)、及びそれらを具体化したサブカテゴリーによるエンタープライズ・リスクマネジメント手法とアプローチを用いています。

<エンタープライズ・リスクマネジメント リスクカテゴリー>

 また、当社グループでは、事業目的の達成や企業戦略に影響を及ぼす可能性のある個々のリスクを評価し、明示するために、3つのリスク評価基準(1.エクスポージャー、2. 脆弱性、3.速度)を用いています。

- エクスポージャーは、発生可能性と発生時の影響によって決定します。可能性とは、リスクが顕在化する確率を示し、影響度とは、リスクが顕在化した場合の結果の重大性を示します。可能性と影響度のレベルは、定量的(財務的数値に基づく)または定性的基準として評価します。

- 脆弱性(Vulnerability)とは、リスクが発生した場合に、組織がそのリスクを管理する準備がどの程度できているかを示します。

- 速度 (Velocity)とは、リスク発生後、当社がどの程度の速さでリスクの影響を受けるかを示します。

 これらの基準に基づき、当社グループは積極的にリスクを特定、軽減し、監視しており、対応策を定期的に見直し、有効性を検証しています。また、リスクを可視化して管理するため、エクスポージャー、脆弱性、速度を組合わせてリスク評価結果を4つの象限に分け、当該リスクにどのように対処するべきかについて示す「3Dリスクマトリックス」と呼ばれる手法を用いています。さらに、最新のITツールを用いたデータベース及びダッシュボードを導入することにより、十分な情報に基づくリスクベースの意思決定を行うための支援も行っています。

<エンタープライズ・リスクマネジメント評価手法>

エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセス

 当社グループのエンタープライズ・リスクマネジメント・プロセスの主な構成要素は以下の通りです。

- リスクアセスメント(リスクの特定、分析、評価)

- 対応策(リスクの低減、リスクマネジメント活動の実行及び調整)

- リスクモニタリング(リスクモニタリングプロセスの設計、実施、リスクトリートメント活動の有効性の評価)

- リスク報告(リスク及びその対応策を集約・評価し、関連するステークホルダーに定期的に報告する。リスク報告は、リスクマネジメントの年次計画の一部として立案・社内へ展開される)

 エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセスでは、スリーラインモデルの考え方に沿って、リスクコントロール機能と各事業・機能が緊密に連携を行っています。また、リスクコントロール機能は、エンタープライズ・リスクマネジメント手法及び運用ガイダンスを提供、維持、開発する責任を負っており、新しい組織体制・手法の社内への浸透を進めています。

<エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセス>

マクロ経済ビジネス環境

 ウクライナにおける戦争と中東情勢の影響により、世界のマクロ経済が大きな影響を受けており、エネルギー価格は上昇し、世界レベルで高止まりしています。さらに、インフレの進展は、引き続きサプライチェーンの混乱の影響も受けています。顕著な技能労働者の不足もあり、経済と消費の全体的な減速につながっていましたが、供給サイドの問題が解消され、金融引き締めが続く中、ほとんどの地域でインフレ率は想定よりも早く低下しつつあります。

 また、地政学的な不安定性は経済成長にとって最大の脅威の1つであり、他にもサイバー攻撃、大きな災害を伴う異常気象、原材料や部品の調達から製品供給までの不確実性などに起因し、潜在的な影響の大きいサプライチェーン・リスクは近年増加しています。貿易摩擦が激化し、原材料の安定的な調達が難しくなることで、原材料価格の上昇や製品の供給不足が発生しており、サプライヤー管理の強化に集中的に取り組む必要があります。

 さらに、世界的に環境問題への意識が著しく高まっており、あらゆるステークホルダーからの要請が増加しています。

 技術面では、あらゆる領域でデジタルトランスフォーメーションが加速しています。それに伴い、開発サイクルの短縮が求められる傾向にあり、いわゆる技術革新領域(AI/ロボット/ICT)の実用化も進んでいます。

業界特有のビジネス環境

 医療分野では、医療費の抑制や医療サービスの安全性・有効性の向上による患者のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指し、国内外で医療制度改革が継続的に実施されています。その結果、米国食品医薬品局(以下、FDA)や欧州医療機器規制(以下、EU-MDR)をはじめ、各国の医療機器申請・登録に対する法規制要件は年々厳格になっています。また、感染予防や再処理(洗浄・消毒・滅菌)に関する要件も複雑化しています。

 各国の医療政策の変化、医療費の削減、医療関連法規の強化、感染予防や再処理に対する要求のさらなる高まりなどにより、技術開発のハードルや複雑さは増しています。それに伴い、新技術や代替技術だけでなく、IT技術大手をはじめとする異業種からの医療業界への参入もあり、事業環境は厳しさを増しています。

 さらに、先進国を中心に社会の高齢化が進むにつれ、医療に対するニーズは確実に高まっています。高騰する医療費を適正化し、効果的で質の高い医療サービスを提供するため、各国で医療制度改革が進められています。また、このような状況下、当社グループが関わる事業領域には多くの競合他社が存在し、技術革新も進んでおり、特に治療機器事業における競争は、一層激化しています。

 中国市場では、米中貿易摩擦が激化し、国産優遇政策や集中購買の推進など、不透明感が強まっており、今後も注意が必要ですが、当社グループは、中国市場を持続的な成長が期待できる市場であると認識しています。その他の新興国市場においても、経済成長とともに医療ニーズが高まっており、さらなる成長が期待出来ると考えています。

 また、当社グループが事業を展開する業界では、 グローバルで人材獲得競争が激化しており、労働市場の変化で退職率の高まりもみられ、人材の採用・育成・確保がますます重要になっています。

当社グループのリスク状況(2024年3月期)

 2024年3月期に実施したグローバルリスクアセスメントに基づき、リスクを特定・評価しました。

 3Dリスクマトリックスにおいて"Improve"の領域に特定されたリスクについては、対応策の優先順位を高く設定しています。"Test"の領域に特定されたリスクについては、既にコントロールが実施されていますが、同時に、定期的なモニタリングにより、既存のコントロールが適切にかつ効果的に機能しているか、確認しています。"Monitor"の領域に特定されたリスクは、エクスポージャーが許容可能なレベルであることを継続的に確認し、必要に応じて追加の対応策を設定します。

リスクカテゴリー:戦略(外部環境変化を含む)

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このリスクカテゴリーは、「計画・資源配分」、「事業開発・投資」、「コミュニケーション・ステークホルダーマネジメント」、「マーケットダイナミクス」、及び「不可抗力」のサブカテゴリーで構成されています。最も高いリスクとして評価されたのは、地政学の脅威、サプライチェーンの中断、不安定な市場における事業展開であり、このカテゴリーには市場・競合状況に関するリスクも含まれています。以下はその一例です:

•価格、技術、品質等において、競争力を有する製品を適時に投入する必要がありますが、その成否によっては収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

•M&A先の選定には、機会と脅威の両方があり、リスクに基づいた慎重な選定、契約前のデューデリジェンス、デューデリジェンス結果をフォローアップする統合プロセス、契約後のデューデリジェンスが必要ですが、その成否によっては当社グループの事業遂行に影響が生じるほか、のれんの減損や、その他これに伴う費用の発生など、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

対応策

 当社グループでは、上記のリスクに対応するために以下の対応策を実施しています。

•市場における代替技術・製品の出現などを含めた競争環境を注視し、マーケティングや知的財産および関連部署との協力の下で、採用すべき新技術の選定および開発の迅速化に努めています。社内での開発のみならず、M&Aやアライアンス等を通じた社外の技術の取り込みも積極的に検討するとともに、市場ニーズに即した高付加価値の新製品・技術の開発にも取り組んでいます。

•サプライチェーンの脆弱性を低減するための、サプライチェーンのビジビリティを高める取り組み。

•グローバルな事業継続マネジメントシステムの強化。

•合併・買収プロセスの見直しと強化。

経営戦略・方針との関連:成長のためのイノベーション、生産性の向上

リスクカテゴリー:オペレーション&製品

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このカテゴリーは、「研究開発」、「製造・修理」、「エンド・ツー・エンド・サプライチェーン」、「販売・マーケティング・サービス」、「品質」、「資産」、及び「人的資源」のサブカテゴリーで構成されています。最も重大なリスクは、製品品質、エンド・ツー・エンドのサプライチェーン、マーケティング&セールスに存在します。これらは、製品のライフサイクルだけでなく、製品の安定的な供給に関するリスクも含まれています。以下はその一例です:

•2023年3月期にFDAより受領した警告書のフォローアップ活動に関連し、大規模な品質改善プログラムと改善活動の推進により、製造、品質、サプライチェーンマネジメント、及び研究開発の非常に多くのリソースが用いられ、通常行うべき業務とリソースのバランスを保つ必要があり、その成否によっては当社グループの事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。

•地政学的危機、自然災害、その他サプライチェーン上の課題が増加する中で、サプライチェーンの外的な混乱に対する当社の回復力を更に向上させる必要性を認識しています。自然災害リスクが顕在化した例としては、令和6年能登半島地震があり、当社の製造機能にとって重要なサプライヤー及び当該サプライヤーからの短期・中期的な原材料供給に影響を与えています。

対応策

 当社グループは、患者様の安全に最も重点を置き、顧客に高品質な製品・サービスを提供するため、エンド・ツー・エンド・サプライチェーンの安定と品質プロセスの改善に注力しています。

主な活動は以下の通りです:

•品質マネジメントシステムと品質プロセスをグローバルかつ持続的に強化し、調和させるために、グローバルな複数年にわたる品質プログラムを実施。

•サプライチェーンの可視性を向上させ、特定のサプライヤーに依存しない体制を構築するためのプロジェクトを実施。

•グローバルな事業継続マネジメントシステムの強化。

経営戦略・方針との関連:患者様の安全と持続可能性、生産性の向上

リスクカテゴリー:ファイナンス

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このカテゴリーは、「資本構造」、「会計・報告」、「流動性・信用」、「収益サイクル」、及び「税務」のサブカテゴリーで構成されています。

 当社グループは、世界のさまざまなマーケットにおいて製品およびサービスを提供しており、為替についてのリスクを認識しています。為替が円高に推移した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼし、一方、円安は好影響を与える可能性があります。外貨建債権・債務について可能なものについてはヘッジを行っていますが、急激な為替変動が生じた場合、あるいはヘッジの対象となる債権・債務の発生が予定と大きく異なった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 資金調達のリスクについて、当社グループは、金融機関等からの借入、社債発行による資金調達を行っていますが、金融市場の環境変化によっては、当社グループの資金調達に影響が生じる可能性があります。また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの資金調達に悪影響が生じ、一方、業績良化等により資金調達コストが低下した場合、好影響を与える可能性があります。

 さらに、世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等により、追加の税負担が生じる可能性があります。繰延税金資産については、経営状況の変化や組織再編の実施等により、回収可能性の評価を見直した場合、繰延税金資産に対する評価性引当金の積み増しが必要となる可能性があります。そのような事態が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に影響が生じる可能性があります。

 この他にも、当社グループでは、顧客や取引先等の信用リスクなども認識しています。

対応策

 当社グループでは、為替変動リスクを軽減することを目的として、先物為替予約や通貨スワップ等のデリバティブ取引を利用しています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化などを通じて、外貨建債権・債務の縮小を図っています。

 資金調達に関するリスクに対しては、コマーシャル・ペーパーや公募社債の発行等、資金調達手段の多様化による調達コストの低減に取り組んでおり、長期の有利子負債は基本的に固定金利を採用することで、金利上昇の影響を限定的にしています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化や財務管理の強化を図っています。

 世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等に関しては、法令の改正や規則の変更に対するモニタリングを行いながら、社内の取引ルールを適宜見直していきます。繰延税金資産については、グループ各社の収益性をモニタリングしながら、それぞれの会社が適切な収益を確保出来る様に業績を管理することに加えて、グループ会社間の組織再編においても再編後の収益性の変化に留意することでリスクの最小化を図ります。

 また、信用リスクについては、与信先の財務状態等をモニタリングの上、必要に応じた対応を行います。

経営戦略・方針との関連性:生産性の向上

リスクカテゴリー:ガバナンス

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このカテゴリーは、「カルチャー」、「規制、法務」、「コンプライアンス」、「データプライバシー」、及び「コーポレートガバナンス」のサブカテゴリーで構成されています。以下はその一例です:

•契約管理プロセスと契約管理データベースの統合が不十分なことで、透明性の欠如を引き起こし、契約違反やクレーム、債務を誘発する可能性があります。

•多くの医療機器規制や法律、複雑な貿易規制に直面しており、書類の不備や違反が直ちに製品供給に影響を及ぼす可能性があります。

•2023年3月期にFDAから受領した警告書で指摘された事項に対して実施中の是正活動は、規制を遵守するために完全に実行する必要がありますが、今後の経過によっては、FDAによりさらなる規制措置が取られる可能性があります。

•グローバルに一貫した事業継続マネジメントシステムの統合に遅れが生じる可能性があります。

対応策

 これらのリスクに対して実施・継続している主な活動は、以下の通りです。

•契約管理プロセスの評価および強化。

•規制要件に対応する改善プロジェクト及び全社の品質向上プログラムを統合し、総合的な品質・規制対応を強化。また、グローバルなメドテック企業での経験と知見を有する社外取締役で構成される品質保証及び法規制委員会を設置し、同プログラムの活動の監督および戦略的な助言を実施。

•当社と規制当局の間における、計画と期待の整合性を確保するための緊密なコミュニケーションの確立。

•グローバルに一貫した事業継続マネジメントシステムを構築し実行するためのプロジェクトをキックオフし、既存の事業継続措置との統合を目指す。

経営戦略や方針との関連:患者様の安全と持続可能性

リスクカテゴリー:IT&デジタル

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このカテゴリーは、「ITセキュリティ・サイバー」、「ITアプリケーション」、「ITガバナンス」、「ITインフラ・サービス」及び「デジタル」のサブカテゴリーで構成されています。当社においてはサイバーセキュリティ侵害のリスクを重く評価しており、常に注意と対応が必要だと考えています。

 また、患者様への治療の質と効率を向上させるために、当社製品にデジタル技術を活用することが増えており、サイバーセキュリティの侵害に対する対策は、製品開発からバリューチェーン全体に及んでいます。

対応策

 サイバーセキュリティ侵害を回避し、適切に管理するための最も重要な対応策は以下のとおりです。

•ITおよび情報セキュリティに関する取り組みの維持・管理のため、ITおよび情報セキュリティ機能を強化。全社的なセキュリティ態勢強化のため、グローバルプロジェクトを実施・継続

•エンタープライズ・リスクマネジメントシステムに直結する、ITリスクマネジメントフレームワークを導入

•サードパーティのプロバイダーとのセキュリティおよび連携要件を見直し、強化

•サイバーセキュリティ侵害が顕在化した際に顧客や患者様への影響を最小限に留めるため、事業継続管理を全社で整合させるプロジェクトのもと、事業継続計画と災害復旧計画を強化

 •サイバーセキュリティ侵害から製品とデジタルサービスを守るため、最新のサイバーセキュリティ要件を考慮した技術やプロセスなどの対策を講じるための全社的な取り組みを開始

•サイバーセキュリティの脅威や日常の業務で取ることのできる回避策について、従業員教育を定期的に実施

経営戦略・方針との関連:患者様の安全と持続可能性、生産性の向上

 リスク評価手法の変更およびリスクポートフォリオの全面的な見直しにより、リスクの内容および順位を変更しました。この結果、以下のリスクは前述のトップリスクよりも評価が低くなったため、上記に記載していません。なお、これらのリスクはすべて、当社グループのリスクポートフォリオに含まれており、現在も対応・モニタリングを行っています。

•訴訟に関するリスク

•人材に関するリスク

•気候および環境を含むサステナビリティに関するリスク

星3つ 企業兼大株主ニコン  企業概要

(1)リスク管理体制と運用状況 

当社グループでは、会社の持続的発展を目的に、企業経営・事業継続に重大な影響を及ぼすあらゆるリスクに対し、識別・評価・管理が重要な課題であるという認識のもと「リスク管理委員会」を設置して、リスク管理を行っています。

リスク管理委員会は、リスク管理担当役員であるCRO(Chief Risk Management Officer)を委員長とし、委員は経営委員会の構成員等、事務局は総務部と内部統制推進室として、年に2回定期的、また必要に応じて随時開催しています。全社的な見地でリスクを把握し、重点対象のリスクについて継続的なモニタリングや、機動的な支援ができる体制を構築する等、当社グループを取り巻くリスクを適切に管理する体制整備に努めています。

 リスク管理委員会がリスク全般を管轄し、専門的な対応が必要な事案は、傘下の品質委員会、輸出審査委員会、コンプライアンス委員会にて対応しています。また、サステナビリティ委員会とその傘下の環境部会、サプライチェーン部会にて、サステナビリティに関するリスクを把握するとともに対策を審議し、グループ全体で対応しています。

なお、当社の委員会やコーポレート・ガバナンス体制の模式図は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等]」に記載のとおりです。

<ニコングループのリスク管理体制図(2024年3月31日現在)>


(2)リスクの把握と対策

当社グループでは、当社グループが抱えるリスクを把握するため、リスクアセスメントとして「リスク把握調査」を毎年実施しています。この調査は、当社の部長相当以上及び国内・海外グループ会社社長に実施しているもので、全社的な重要リスクの洗い出しや分析・評価を行い、対応状況をモニタリングしています。調査結果をもとに、影響規模と発生確率で表す「リスクマップ」を作成し、重要リスクの認識や、取り組みを強化すべき課題の判断をリスク管理委員会にて行っています。

当社グループの戦略・事業その他を遂行する上で、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主なテーマは以下のとおりです。これらのリスクは、当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられるほかのリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

①事業、経営に関するリスク

・リスク

中期経営計画において、材料加工・ロボットビジョンは、戦略事業「デジタルマニュファクチャリング」の中期成長ドライバーと位置づけています。戦略投資の一つとして、金属アディティブマニュファクチャリングにおける統合ソリューションをグローバルで提供するドイツSLM Solutions Group AG(現Nikon SLM Solutions AG)に対して公開買付けを実施し、当社の連結子会社とする等、事業の拡大を進めていますが、関連する市場の成長が想定よりも鈍い場合等は、本計画期間である2025年度までに期待される規模への成長に届かない可能性があります。

また、主要事業においては、映像事業の主要製品であるデジタルカメラは、ミラーレスカメラ市場での厳しい競争に加えて、部品の価格高騰や調達の遅れによる影響が生じており、将来的には市場環境悪化の可能性があります。

 精機事業が扱うFPD露光装置の需要は、ディスプレイ市場自体は安定的に需要が見込める市場ですが、設備投資の縮小継続により露光装置需要の回復が伸び悩む可能性があります。半導体露光装置の対象市場である半導体市場は、中長期的に大きく成長が見込まれるものの、競合他社の先端プロセス開発の状況によっては、液浸露光装置の需要が減少する可能性があります。また、当社グループの主要顧客が設備投資計画を変更した場合等、当社グループの収益に影響を及ぼす恐れがあります。

・対応

 デジタルマニュファクチャリング事業では、デジタル化が進む製造業に対して独自の価値を提供し、競争力のある新製品を市場に導入すること等で、新たな市場の形成を進めていきます。また、取締役会等で定期的にモニタリングを行い、市場の動向を注視することで、タイムリーに戦略を検討・修正できる体制としています。

 映像事業は、生産販売面での最適化、サプライチェーンや物流の改革、徹底したコストダウン、デジタルマーケティングの強化、開発効率化等に取り組み、引き続き事業の収益体質強化を進めています。

FPD装置事業は、露光装置の需要が落ち込む環境下でも一定の利益を確保するため、新規露光装置及びサービスビジネスによる収益拡大やトータルコスト低減を進めています。半導体装置事業は、収益性重視の事業戦略の下、既存顧客以外の開拓を積極的に進めるとともに、サービスビジネスを拡大していきます。

②研究開発に関するリスク

・リスク

 当社グループの事業分野は厳しい競争下にあり、高度な研究開発の継続によって製品の開発が常に求められています。そのため、当社グループの収益の変動にかかわらず、製品開発のための投資を常に継続する必要があります。しかし、投資の成果が十分に上がらず新製品、次世代技術の開発や市場投入がタイムリーに行えない場合や、当社グループが開発した技術が市場に受け入れられなかった場合、あるいはゲームチェンジ等抜本的な変化により当社の技術が不要となる場合、企業価値が低下し、収益が減少する可能性があります。

・対応

 当社グループでは「技術戦略委員会」にて、注力すべき新領域の開拓や既存事業の競争力向上につながる技術戦略を明確にし、技術開発の方向性と重点投資分野を決定しています。幅広い社会的課題やニーズに積極的に応えながら、当社グループの長期的な成長を実現していきます。

③各種規制・制度変更に関するリスク

・リスク

 当社グループはグローバルに事業を展開しているため、生産及び販売活動の多くが日本国外であり、連結売上収益に占める海外売上収益比率は高くなっています。多くの国々において、輸出入規制、競争法、労働法、腐敗防止、移転価格税制等、各種法規制の適用や企業の社会的責任を求められています。これら法規制や社会的責任として求められる内容は大きく変わる可能性があり、その変化により事業活動費用増加や事業の制約、レピュテーションリスク等を受ける可能性があります。

・対応

当社グループでは、「リスク管理委員会」によるリスク整理・管理に加え、専門的な対応が必要なリスクに対しては、その傘下の品質委員会、輸出審査委員会、コンプライアンス委員会の3委員会で対応を図るとともに、サステナビリティの視点から、サステナビリティ委員会及び傘下部会でもマテリアリティを中心としたリスクのモニタリング及び対応をしています。またその中で、規制の変更に関してグループ全体で情報を収集後、当該情報に基づいた実務プロセスへのフィードバックや規制を踏まえた戦略を立案する等、更なる体制強化に取り組んでいます。

④M&A、戦略的出資に関するリスク

・リスク

 当社グループは、新規事業の創出や既存事業領域の拡大、事業シナジー実現のために、M&Aや戦略的出資を行っています。市場環境の著しい変化や対象企業の人材流出等により所期の成果を達成できない場合、のれんや有価証券等の減損損失により、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当事業戦略に基づき、M&A対象、戦略的出資先を探索し、対象企業の価値やリスク等のデュー・ディリジェンスを行っています。また、買収や出資後の検証については、CFOを委員長とする出資モニタリング委員会において、当初の目的に対する進捗確認を定期的に行い、必要に応じて戦略の軌道修正を図っています。

⑤地政学のリスク

・リスク

 前述のとおり、当社グループはグローバルに事業を展開しているため、連結売上収益に占める海外売上収益比率が高く、海外市場への依存が大きくなっています。海外での事業展開は、世界経済全体の動向に加え、政治問題、貿易摩擦や紛争等の影響、暴動・テロ・戦争等による社会の混乱により、事業活動に大きな障害や損失が生じる可能性があります。また、外国為替相場が急激又は大幅に変動した場合は、当社グループの収益や財政状況に多大な影響を及ぼす恐れがあります。

・対応

 当社グループでは、リスク管理委員会によるリスク整理・管理に加え傘下の委員会や、サステナビリティ委員会及び傘下の部会にて、リスクのモニタリング及び対応をしています。当該リスクが顕在化する可能性やその影響レベルについては、社会情勢等により左右されるため、具体的に予測することは困難でありますが、情報収集及び事業に与える影響の分析を行い、対策を検討、実施しています。また、当社グループは、売上規模と販売地域に応じた適切な為替ヘッジを行っています。

⑥調達のリスク

・リスク

 近年、グローバル規模の異常気象や自然災害、地政学的な影響等さまざまな要因により労務費、原材料価格、エネルギーコスト等が大きく変動しています。加えて、サプライチェーンにおける人権、労働環境、安全衛生や脱炭素といった環境等に関する社会課題へのステークホルダーの関心も高まっており、サプライチェーンの不安定要素・リスクが増加していると考えています。

・対応

 部品調達や物流においても不確実性と変動性の高い状況が継続しています。そのため、当社グループは調達パートナーと共に品質及びESG(Environmental環境、Social社会、Governanceガバナンス)の観点を持ち、協働活動を進め、当社グループ全体でレジリエントなサプライチェーンの構築に取り組んでいます。そして、調達パートナーとの強固な関係を築き上げ、サプライチェーンの可視化、BCP(事業継続計画)の策定・強化、温室効果ガス排出量の把握、人権デュー・ディリジェンスの強化等を通じて、大きく変化する事業リスクや社会課題に対して柔軟に対応できる体制を構築しています。これによりリスクを低減し、持続可能な成長を目指しています。

⑦環境のリスク

・リスク

 気候変動に起因する異常気象や洪水、渇水等の自然災害や感染症の拡大により、開発・生産拠点及び調達先等に甚大な損害が生じた場合、操業に影響が生じたり、生産や出荷が遅延したりする恐れがあります。また、脱炭素社会に向けた動きが加速する中、各国において炭素税等の政策・法規制の導入又は導入検討が進んでおり、エネルギーや原材料のコストが増加するリスクがあります。

 環境政策・法規制等により、基準の遵守や情報開示等の対応が求められ、年々強化される傾向にあります。対応が十分ではないと、行政処分等による生産への影響や課徴金、社会的信用の失墜等会社経営に甚大な損害を与える可能性があります。特に化学物質等に関連する法規制が強化された場合、必要な材料・副資材の入手が困難になる可能性があります。

・対応

 当社グループは、気候変動や天然資源の枯渇、廃棄物問題、有害化学物質による汚染などの環境問題を自社の存続にも関わる問題と捉えてマテリアリティとして位置づけ、サステナビリティ委員会や関連する委員会、部会でリスクのモニタリングを行い、さまざまな対策を講じるとともに、地球環境に配慮した経営を行っています。また、グループ全体で省エネルギー活動や再生可能エネルギーの活用、開発・生産プロセスの効率化等をはじめとしたバリューチェーン全体での温室効果ガス削減やBCPの策定に取り組んでいます。

 社内の規程類を整備し、担当者の教育等を実施することで、バリューチェーンを含めた管理体制を強化するほか、規制の変更等のタイムリーな把握等に努めています。また法規制よりも厳しい自主基準値を設けることで環境汚染の未然防止に努めています。

⑧人的確保のリスク

・リスク

 当社グループは、高度な技術や専門知識及び能力を有する社員等、多様な人材によって支えられており、市場での激しい競争に打ち克ち、事業成長を実現するためにはこうした人材の確保が重要です。有能な人材を採用・育成できず、あるいは主要な人材が退職した場合、事業活動への影響や、知識・ノウハウの社外流出、収益と財政状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。特に労働流動性が高い国や地域における人材流出の危険性は高いと考えられます。主要な人材が流出し、補充が困難な場合、当社グループの成長に影響を及ぼす可能性があります。また1990年前後の大量採用やこれまでに幾度かあった新規採用抑制の影響で、社内での高齢化が進み、中堅・若手の不足により、技術・技能の伝承や業務ノウハウの引き継ぎが適切に行われないリスクがあります。

・対応

当社グループは中期経営計画で事業を支える経営基盤の強化に取り組んでいます。その中で、人的資本経営の考え方に基づいて、人材の「獲得」「育成」「活躍」の3点を人材戦略の柱とする各施策を実行し、成長戦略実現を支える人材獲得に向けた採用戦略の実行にこれまで以上に力を入れています。また、人材の育成・活躍に向けては具体的なカリキュラムを組み、固有技術・技能の伝承と標準化・共有化を推進し、多様な人材がグローバルで活躍できる環境・機会の創出に取り組んでいます。

⑨情報資産とサイバーセキュリティのリスク

・リスク

 当社グループは、技術情報や取引先及び顧客情報等の多くの情報資産を保有しており、サイバー攻撃や故意、過失、災害等により、情報システムの重大な障害や個人情報の不正利用、情報セキュリティ事故を生じさせた場合、当社グループの企業価値の毀損や、損害賠償請求を受けるリスクがあります。個人情報保護や、製品のセキュリティ要件に関する世界各国の法令に違反した場合、厳罰に処される可能性があります。

 また、デジタル化が急速に進むなか、社内システムの老朽化や業務の複雑化・属人化、基幹システムのサポート終了等が、業務の非効率となる可能性があります。

・対応

 当社グループでは、個人情報保護を含む情報管理において代表取締役 兼 社長執行役員を最高責任者と定めるとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に準拠した業務プロセスを構築しています。サイバー攻撃に対し高い防御力を維持し、インシデントの早期発見と対応のため、様々なセキュリティ対策を行い、グローバルで一括して監視・対応する運用体制の改善・強化を進めています。保管セキュリティレベルの向上を図るとともに、情報取り扱いに関する社内規程の整備や従業員教育等を実施しています。

 基幹システム更新プロジェクトを推進することで、デジタル化による業務の効率化、デジタルマーケティングの強化、サービスプラットフォームの整備等を強化していきます。

⑩知的財産、訴訟のリスク

・リスク

 当社グループは、製品開発に伴って多くの知的財産権を取得、保有し、他社にライセンス供与もしています。当社グループの知的財産権を他社が無断使用すること等に起因して提訴に至った場合、大きな訴訟費用が発生する可能性があります。一方で、他社、個人等より、知的財産権を侵害したとして、製造・販売の差し止めや損害賠償請求を受ける可能性があり、当社グループの収益や財政状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応

 既存事業の成長や新事業の創生につながる「知的財産戦略」を策定し、この戦略に従って知的財産活動を継続的に推進しています。研究開発活動によって生み出された技術や製品に関する特許、意匠、商標等、知的財産を保護しています。将来を見据えた知的財産の創生と権利化を各事業部門や研究開発部門と協働しながら行うことで、市場における競争優位の確立を図っています。また、法務・知的財産部門と関連部門で連携して、他社知的財産権の調査等を適宜実施し、他社知的財産権の侵害の未然防止に努めています。

⑪災害、感染症等のリスク

・リスク

 大地震・火災・洪水等の自然災害(異常気象、気象変動に起因するものを含む)による水・電力・通信網等のインフラストラクチャーや物流機能の障害や感染症の拡大等に伴い、事業活動に大きな障害や損失が生じる可能性があります。当社グループの開発・製造拠点や調達先等に壊滅的な損害が生じた場合、操業が中断し、生産や出荷に遅延が生じるおそれがあります。これによって生産や販売が制約され、事業の復旧に多大な費用が生じた場合、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

 当社グループでは、大規模災害や感染症等の発生に備えてBCPを策定し、定期的に見直しています。当社では、「首都直下地震」等の大規模地震を想定し、主要事業部門のBCPの再点検・アップデートを行い、事業継続のための施策を実施しています。また、国内グループ会社を含めて、大規模地震発生時の行動についての教育や、災害時を想定した安否確認及び通信訓練等の各種訓練を実施しています。

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