ニコン 【東証プライム:7731】「精密機器」 へ投稿
企業概要
当社グループを取り巻く事業環境は、「4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (業績等の概要) (1)業績」に記載のとおりでありました。
当社グループは、2022年4月7日に中期経営計画(2022~2025年度)を発表し、折り返し地点を迎えました。中期経営計画の概要は以下のとおりです。
・ありたい姿
今回の中期経営計画策定にあたっては、まず2030年のありたい姿をイメージし、その実現に向けて2025年に到達するべき目標を定め、その実現に向けた施策を積み上げています。2030年の社会は、人々の価値観や人生観が変化し、気候変動や資源不足など社会環境が変わり、Industry5.0到来などテクノロジーの革新も続くと予想しています。このようなメガシフトが起こるなか、人間が生活のための“労働”を機械に任せ、より創造的な「自己実現のための仕事」と「価値を追求する消費」に注力できるようになるための「人と機械の共創」が進むものと考えています。
ニコンには、ものづくりを革新するテクノロジーや高度なソリューションをグローバルに広げる力・ブランド、そしてステークホルダーからの支持といった3つの強みがあります。これらを活かし、2030年の「人と機械が共創する社会」に新たな価値を提供し続けたいと考え、2030年のありたい姿を「人と機械が共創する社会の中心企業」としました。これに向けて、まずはお客様としっかり伴走し、お客様の欲しいモノやコトの「本質」を理解した上で、お客様のイノベーションを支える存在を目指します。
・全体方針
本中期経営計画は、2022年度から2025年度までの4年間を対象期間としています。2030年へ向けて、「お客様の欲しいモノやコトをお客様にとって最適な方法で実現」する存在になることを「2025年のありたい姿」に定めました。
具体的には、まず『「ソリューション提供」の強化』のため、プロダクトアウト的発想から脱却し、お客様に寄り添い、そのニーズを的確に把握し、完成品・サービス・コンポーネントを一体でソリューションとして提供します。また、それぞれの事業における「成長ドライバー」による利益成長と「サービス・コンポーネント」ビジネスの拡大によって利益の安定化に努めます。
そして、光学・EUV関連コンポーネント、材料加工・ロボットビジョン、デジタル露光、映像コンテンツ、細胞受託生産・創薬支援の5つの「成長ドライバー」に注力します。
<中期経営計画の全対像>
・中期経営計画の進捗状況
2023年度を経て、折り返し地点を迎えた本計画ですが、ありたい姿や数値目標など、本計画の大枠は堅持しています。前半2年は増収が続き、2023年度時点で本計画最終年度の目標である売上収益7,000億円を2年前倒しで達成することができました。主に映像事業とヘルスケア事業、そして2022年度の途中で連結子会社化したドイツのNikon SLM Solutions AG(以下、SLM社)が増収に貢献しました。
一方、事業を取り巻く環境の変化を踏まえ、事業別の収益構成は見直しました。クオリティオブライフ領域の映像事業・ヘルスケア事業は収益の拡大を追求する一方、インダストリー領域の精機事業などは収益計画を下方に修正しました。また、2030年のありたい姿の実現に向けて、成長投資の中身を見直し、オーガニック成長のための投資を拡大すると共に、経営管理の強化を図る方針です。
<中期経営計画の進捗概況>
・各事業の戦略と進捗
映像事業では、ターゲット層であるプロ・趣味層に対して、ミラーレスカメラを中心とする高付加価値製品を提供する事業戦略の下、市場の拡大もあり、新製品のミラーレスカメラ「Z 8」、「Z f」の販売が好調に推移しています。更なるラインアップの拡充や、業務用動画分野で独自の顧客と技術を持つ米国のRED.com,LCC(以下、RED社)を完全子会社化して動画機能を強化し、中高級機市場で安定収益確保を目指します。
精機事業においては、FPD露光装置分野では、技術開発の推進、高精細化と高生産性の追求により、メジャープレーヤーとしての地位と安定的な収益を確保します。また半導体露光装置分野では、主要顧客の生産計画に備えるとともに、三次元化などのニーズに個別対応することで新たな顧客の獲得を目指します。顧客の要求に応えながら製品競争力を強化、新製品投入により顧客拡大を推進していきます。
ヘルスケア事業においては、生物顕微鏡では、世界の大手光学顕微鏡メーカーとして、市場の7割を占める民間企業の開拓を進め、民間企業への売上比率を5割超へ拡大しています。世界トップクラスのシェアを誇る網膜画像診断機器は、診断の高度化や在宅化・遠隔診断などに対応します。細胞受託生産では、大手製薬企業から再生医療ベンチャーまで幅広い顧客のプロジェクトを支援し、中長期的な事業成長の基盤を築きます。売上1,000億円、営業利益100億円規模を安定達成できる体制を確立していきます。
コンポーネント事業では、光学コンポーネント、EUV関連コンポーネント、エンコーダなどで、拡大する先進需要に対応した将来製品の採用が進展しています。完成品・サービス・コンポーネント一体の「ソリューション提供」体制強化を進めています。
デジタルマニュファクチャリング事業では、2030年に向けて、社会において宇宙ビジネス拡大、製造業のデジタル化、カーボンニュートラルなどの変化が予想され、技術面では高出力レーザーや人工知能(AI)、小型・多機能センサーなどの技術革新が想定されています。このようなトレンドを踏まえ、SLM社の大型部品造形用金属3Dプリンターの拡販により、防衛・宇宙航空市場へ本格的に参入する計画です。こうしてものづくりの世界に革新をもたらし、売上成長を目指します。
・基盤戦略と進捗
本計画に掲げた事業戦略を実行するには、経営基盤の強化が極めて重要です。「創造(事業)を通じた社会への貢献」を掲げたサステナビリティ戦略に注力しています。企業理念である「信頼と創造」に基づき、事業が環境・社会に与える影響を評価・改善し続けることで社会の期待に「信頼」で応えつつ、事業を通じて、より積極的に環境・社会課題の解決やSDGs達成に貢献する価値を「創造」していきます。
人的資本経営についても順調に進んでいます。ありたい姿の実現に向けた最も重要な経営資源と認識して、顧客に伴走する次世代人材を獲得し、育成、活躍してもらい、成長戦略を実現するための採用戦略、採用ブランディングを強化するなど、優秀な人材のさらなる獲得に向けて力を入れています。今後も更に多様な人材の活躍推進、従業員エンゲージメント強化に力を入れていきます。
一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)、ものづくり、経営管理については、さらなる整備を進めていきます。DX、ものづくり、ともに重点的に資本配分していくとともに、グループガバナンスの強化、グローバルコンプライアンスの体制整備に尽力していきます。
<経営基盤強化>
・資本配分
当社グループは研究開発型企業として成長することが、ステークホルダーから期待されていると認識しており、配分可能原資の大半を成長投資やR&Dに振り向け、持続的な企業価値向上を目指しています。成長加速のための戦略投資につきましては、2023年9月にSLM社、2024年4月にRED社の100%子会社化を実施したことから、大型M&Aは一区切りとして当初計画から1,100億円削減する一方、R&D、設備投資を合計800億円増額し、オーガニック成長を目指します。また、株主還元を重視し、追加で300億円以上の自己株式取得を実施する計画としています。
設備投資では、EUV関連コンポーネントの増産に向けた対応や、ビジネス開発と先進R&Dを集約する環境配慮型新本社の建設を進めています。
<資本配分:持続的な成長に向けた投資と株主還元強化をともに推進>
・「信頼と創造」の基に
ニコンは、2030年に到来する「人と機械が共創する社会」をしっかりと支える企業を目指しています。本業を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献し、従業員には自己実現の機会を提供します。そして、事業の成長と企業価値の向上を通じて、株主を含む全てのステークホルダーの期待にお応えしていく、そうした未来を目指します。
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