ニコン 【東証プライム:7731】「精密機器」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 当社グループが目指すサステナビリティ
当社グループでは、企業理念である「信頼と創造」を事業活動の中で具現化することで、持続可能な社会に貢献しつつ自社の持続的成長を図ることが、サステナビリティと考えています。
この考えを主文とし、それを支える4つの意志を「サステナビリティ方針」として取締役会で決定しました。この方針のもと、当社グループでは、社会的責任に対する会社の基本姿勢と、それに基づき従業員がとるべき行動の規準を定めた「ニコン行動規範」を定めています。
サステナビリティ方針
ニコングループは、企業理念である「信頼と創造」を事業活動の中で具現化することで、持続可能な社会への貢献と自社の持続的成長の双方を目指します。 ・ニコンならではの製品・サービスを生み出し、事業活動を通して、環境・社会課題の解決やSDGs達成に貢献することを目指します。 ・自らの事業が環境・社会に与える影響を常に客観的に評価し、課題を継続的に改善していくことで、より良い影響を環境や社会にもたらすよう努めます。 ・積極的にステークホルダーとの対話を行うことで、社会の変化を的確にとらえるとともに、ステークホルダーからの要請や期待に応え、自らの活動を常に見直します。 ・法令等を遵守するにとどまらず誠実・公正に行動するとともに、適切な情報開示を行います。 |
(2) ガバナンス
サステナビリティ方針を実効あるものにするため、当社グループでは、サステナビリティ委員会を核として、サステナビリティに関するマテリアリティ(重点課題)の特定、目標設定、進捗管理、評価、改善のプロセスを実施しています。
サステナビリティ委員会は原則として年2回開催しており、同時に専門家による講演や意見交換も行うことで、各委員がグローバルな社会課題やその動向についての知見を高めています。
2022年度は、サステナビリティ委員会を4回開催し、改善のプロセスの一環として、サステナビリティへの取り組みが2022年4月に発表した中期経営計画の「2030年のありたい姿」の実現に繋がるものとなるようにマテリアリティの点検を実施し、一部を見直しました。
サステナビリティ委員会の委員長は代表取締役 兼 社長執行役員、副委員長はサステナビリティ戦略部担当役員、委員は経営委員会メンバーおよび全事業部長/本部長が任命されており、関係部門の部長などがオブザーバーとして参加します。また、審議の内容は、最低年1回、取締役会に報告し、取締役会は活動の妥当性、有効性やリスクについて管理・監督します。
サステナビリティ委員会では、サステナビリティ方針や社会動向に合致するマテリアリティを審議すると共に、それに即した目標設定に注力しています。
目標設定においては、「人と機械が共創する社会の中心企業」という「2030年のありたい姿」を実現し、人と機械がよりシームレスに共創していく世界で人間の可能性を拡げ、豊かでサステナブルな社会の実現に貢献することを念頭に置いています。
そうした姿を実現し、当社グループの社会に対する価値提供領域を拡大するために、マテリアリティのリスクや機会に対してどう取り組み、どのようなゴールを目指すのかを重視し、戦略や指標・目標を検討しています。
(3) リスク管理
当社グループでは、経営に重大な影響を及ぼすリスクに対して適切に対応できるよう「リスク管理委員会」を設置しています。本委員会はリスク管理を統括する組織として、代表取締役であるCROを委員長とし、経営委員会メンバーなどを委員、総務部と業務企画室を事務局とするなど、重大リスクに対してより効果的な対応を図るため、重点対象のリスクについて継続的なモニタリングや、機動的な支援ができる体制を構築しています。
リスク全般についてはリスク管理委員会が管轄していますが、専門的な対応が必要なリスクに対しては、その傘下の品質委員会、輸出審査委員会、コンプライアンス委員会の3つの委員会で対応を図るとともに、サステナビリティの視点から、サステナビリティ委員会でもマテリアリティを中心としたリスクのモニタリング、および「環境」、「社会・労働」に関するリスクへの対応を図っています。
リスク管理委員会とサステナビリティ委員会はマテリアリティに関するリスクに関して適宜情報を共有し、必要に応じて、両者で連携してリスクへの対応を図っています。
(4) 戦略と指標及び目標
当社グループでは、マテリアリティを選定するとともに、それぞれに対する戦略を策定し、サステナビリティに取り組んでいます。持続可能な社会への貢献と自社の持続的成長を一体のものと考える当社グループにおいて、これらマテリアリティのリスクや機会に適切に対応する戦略を定めて、着実に実行することが経営において重要と考えています。
マテリアリティは、経営ビジョンや事業のバリューチェーンとの関連性が高いサステナビリティの課題を抽出してそれらの影響度を評価し、候補としたものをサステナビリティ委員会で検討し、経営委員会で決定しています。
当社グループでは、IR、顧客とのミーティング、地域社会やNGOとの対話、従業員アンケート、さまざまなESG調査への対応などを通じ、ステークホルダーの意見を収集しています。これらの意見をマテリアリティの決定やそれらに対する戦略に反映しています。
また、マテリアリティに関する施策は、目標管理制度に組み込んで全社に展開することにより、各目標の着実な実行を図るとともに、従業員一人ひとりの業務に、サステナビリティが浸透することをめざしています。こうした活動の進捗を、サステナビリティ委員会において半期ごとに確認するとともに、経営における重要事項として取締役会に報告し、取締役会が目標に対する進捗度合いを管理・監督しています。
さらに、サステナビリティへの取り組みの実効性向上のため、ニコンの役員報酬の業績連動型株式報酬制度を見直し、経営基盤強化に向けた取り組みであるサステナビリティ戦略や人的資本経営への取り組みを評価要素に組み込みました。
マテリアリティに関する戦略、指標・目標
マテリアリティ | ありたい姿 | 戦略 | 指標 | 目標 |
①コア技術による社会価値創造 | 人と機械が共創する社会の中心企業 | 成長ドライバー、サービス・コンポーネントの拡大 | 成長ドライバーの連結営業利益に占める比率 | 2030年度:40%以上 |
サービス・コンポーネントの連結営業利益に占める比率 | 2030年度:50%以上 | |||
②信頼に応える品質の維持・向上 | 安全、環境、セキュリティに配慮した競争力のある製品・サービスの提供 | 品質マネジメントの高度化と定着 | 事業環境の変化に対応した品質マネジメントシステムの見直し計画の達成度 | 毎年度:100% |
品質マネジメントシステムの運用状況モニタリング・改善計画の実施率 | 毎年度:100% | |||
品質に関する基本教育の理解度(事業部、グループ生産会社) | 2025年度:80%以上 | |||
③脱炭素化の推進※1 | 2050年度までにサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを実現 | Scope1、2、3の削減と再生可能エネルギーの導入加速 | Scope1、2削減率 (2013年度比) | 2030年度:71.4% |
Scope3の3カテゴリ(「購入した製品・サービス」「輸送、配送(上流)」「販売した製品の使用」)削減率 (2013年度比) | 2030年度:31% | |||
再生可能エネルギー導入率 | 2030年度:30% | |||
④資源循環の推進 | サプライチェーン全体における資源消費の最小化と資源循環利用の最大化 | 資源消費量の削減と廃棄物等の削減 | 廃棄物総排出量削減率 (2018年度比) | 2030年度:10%以上 |
淡水消費量削減率 (2018年度比) | 2030年度:5% | |||
製品へのリサイクル材使用率 | 2030年度:5%以上 | |||
⑤汚染防止と生態系への配慮 | サプライチェーンにおける人の健康と生態系への負の影響ゼロ | 化学物質の適切な使用と生態系への影響・依存の低減 | 製造プロセスにおける有害化学物質の使用 | 2030年度:使用ゼロ |
製品における有害化学物質の含有 | 2030年度:含有ゼロ | |||
FSC認証紙または再生紙の比率(カタログ、取扱説明書、梱包箱) | 2030年度:100% | |||
⑥レジリエントなサプライチェーンの構築 | 事業リスクや社会課題に対し、常に健全な状態が保たれたサステナブルなサプライチェーン | サプライチェーンのリスクアセスメントと有事に即応できる仕組み構築 | 人権デュー・ディリジェンス実施*率(重要な調達パートナー) *改善完了 | 2025年度:100% |
サプライチェーンのBCP体制把握* *社数 | 2025年度:100% |
マテリアリティ | ありたい姿 | 戦略 | 指標 | 目標 |
⑦人権の尊重 | バリューチェーン全体における人権リスクの最小化 | ニコン人権方針による人権啓発と人権デュー・ディリジェンスの実施 | 人権方針浸透度 | 2030年度:100% |
RBA行動規範遵守率(生産系事業所) | 2025年度:90%以上 | |||
⑧ダイバーシティ,エクイティ&インクルージョン※2 | 多様性を受容し事業活動に活かす企業文化の実現 | ニコン グローバル ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン ポリシーの浸透、多様な人材が活躍できる環境整備と、DEIの事業活動への展開 | DEIポリシー浸透度 | 2030年度:100% |
女性管理職比率(㈱ニコン) | 2025年度:8.0%以上 | |||
⑨従業員の健康と安全※2 | 安全かつ快適な職場環境下で一人ひとりが心身の健康と豊かさを実感しながら能力を発揮 | ニコングループ健康安全方針の浸透と健康安全活動の実施 | 定期健康診断有所見率(㈱ニコン) | 毎年度:前回全国平均*以下 *厚生労働省公表の全国平均値(製造業) |
業務起因性、業務遂行性の高い労働災害件数 | 2025年度:60件以下 | |||
ストレスチェック高ストレス者率(㈱ニコン) | 毎年度:前回全国平均*以下 *委託業者公表の全国平均値 | |||
⑩コンプライアンスの徹底 | コンプライアンス違反の発生ゼロ | ニコン行動規範の浸透 | コンプライアンス意識の定着* *意識調査による確認 | 2025年度:95%以上 |
内部通報制度の認知度* *意識調査による確認 | 2025年度:95%以上 | |||
⑪コーポレート・ガバナンスの強化 | 透明性・効率性が高くステークホルダーに信頼されるガバナンス | 取締役会の実効性評価の継続実施と多様性向上 | 取締役会の実効性評価と重点課題対応 | 毎年度:100% |
取締役会のダイバーシティ | 毎年度:ステークホルダーの要請に応える取締役会構成の最適化 | |||
⑫リスクマネジメントの強化 | 重要リスクへの対策が適切に講じられている | 環境変化と経営戦略に即した全社的リスクマネジメント体制の確立 | リスクアセスメントに基づく重要リスクの特定と施策実施の進捗度 | 毎年度:100% |
※1 詳細を「(6) 気候変動への対応」の項に記載
※2 詳細を「(5) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、これに関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績」の項に記載
当社グループでは、今後も社会や会社の状況に合わせて、サステナビリティに関するマテリアリティ、戦略、指標・目標を見直していきます。またその進捗や実績を本報告書などで開示し、ステークホルダーと対話しながらリスクと機会に対する取り組みを深めることで、2030年のありたい姿を実現するとともに、持続可能な社会の発展に貢献していきます。
(5) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、これに関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績
① 人材に対する基本的な考え方
当社グループは、「信頼と創造」という企業理念のもと、コア技術である光利用技術と精密技術をベースに製品やソリューションを提供しています。人々や産業の希望や期待に応え、より豊かな社会の実現をサポートするグローバル企業です。
その担い手となるのは、「当社グループで働く多様な人材」です。当社グループはこれまでも、様々な能力や価値観、経験を持つ人材が集まり、その才能を活かし合うことで、創業100年を超える実績と世界に誇る高いものづくり力を築き上げてきました。従業員一人ひとりの成長と、その力を最大限に活かし合うことが、チームや組織力を向上させ、当社グループの成長に繋がっていきます。さらなるグローバル化や価値観の多様化が進む中で、ニコンと、そして社員一人ひとりが社会やお客様から求められる存在になるためには、会社と従業員が共に成長していく関係でなければなりません。
そのために、当社グループは会社の目指す方向性や組織の目標を明確に示し、これに連動した人材戦略を実行することで、多様な従業員がその能力を最大限に発揮し、自身と当社グループの成長を実感できる環境や活躍の機会を提供していきます。従業員に求められるのは、その機会を逃すことなく、主体的・継続的にスキルを磨き続ける姿勢です。当社グループは、成長に向けて挑戦し、努力する従業員を支援するとともに、成果を出し、組織に貢献した従業員には、その活躍に公正かつ公平に報いていきます。
また、変化に対応し、多様化する社会やお客様の課題に応えるためには、当社グループで働く人材が持つ多様な知識や経験、価値観、専門性などを活かす必要があります。共に働くメンバーの個性や能力を認め合い、活かし合うことのできる職場環境や企業文化の醸成に向け、「ダイバーシティ,エクイティ&インクルージョン」(DEI)を推進していきます。
このことが、当社グループの社会やお客様への価値提供力を高め、従業員のやりがいやエンゲージメントを高めることに繋がり、チームのため、自分の成長のために主体的に考え、行動する、自律した「個」の形成へと繋がる好循環を生み出します。当社グループは多様な従業員一人ひとりと共に成長し、企業理念である「信頼と創造」の実現と、持続可能な社会に貢献し続ける企業を目指します。
② 中期経営計画と連動した人材戦略
中期経営計画の軸となる方針は、ソリューション提供の強化による「主要事業の安定化」と「戦略事業の収益拡大」です。また、グローバルに存在するお客様の欲しいモノやコトの「本質」を理解し、完成品・コンポーネント・サービスをお客様にとって最適な形で提供していくことは、すべての事業に共通する戦略であり、当社グループのコア技術と他社とのオープンイノベーションを組み合わせるなど、社内外のシナジー強化にも取り組みながらビジネスモデルの変革を進めます。
こうした経営戦略の担い手となる人材には、次のような要素が求められます。
・環境変化に柔軟に対応し、社会・顧客起点の発想や価値提供ができること
・組織やチームの目標達成のために自律的に考え、行動できること
・国・地域・事業を超えて多様な人材や組織と協働できること
・新たな価値観と既存の価値観を掛け合わせ、シナジー創出ができること
特に、成長領域においては、顧客開発とソリューションビジネスの強化をリードする人材の獲得が急務となっています。また、既存領域においては、当社グループの強みである「ものづくり」を支える人材が今後不足する見込みです。
このように、ありたい姿の実現に向けた人材の質的転換と量的確保が求められる中、人材の流動化や獲得競争がグローバルに激しさを増しており、経営戦略を実践する人材の確保への危機意識が高まっています。こうした経営戦略上の要請や現状認識を踏まえ、当社グループでは、人材の「獲得」「育成」「活躍」の3つを人的資本経営の考え方に基づく人材戦略の柱に据え、それぞれ以下の方針のもとで各施策を展開しています。
なお、経営戦略と人材戦略を一体のものとして推進を図るため、求められる人材やスキルの具体的な定義や各施策の検討は、社長執行役員以下のトップマネジメントが中心となり、人事部門と連携のうえ行っています。
<人材戦略の3つの柱>
| 方針 | 重点項目 |
獲 得 | 事業運営上必要な人材を安定的に確保する。 経営戦略上獲得が急務な人材については新規採用やM&A等により早期獲得を目指す。 | ・ビジネス開発人材、技術営業など重点的に獲得 ・採用ブランディングの強化 ・獲得プロセス・体制の強化 ・雇用・労働条件の柔軟化 |
育 成 | 業務遂行に必要なスキルや役割、キャリアパスなどを明確化し、自律的な成長を促すための幅広い教育、育成の機会を提供する。 中核人材やグローバル人材については戦略的な登用や配置により計画的に育成する。 | ・中核人材の早期選抜と計画的な育成 ・人材グローバル化に向けた戦略配置 ・キャリアデベロップメント、リスキルプログラムの拡充 |
活 躍 | 多様な従業員が自律的に成長する姿勢とチームに貢献する意識を持ち、その能力を最大限に発揮できる環境(制度・職場環境・企業文化等)の構築を推進する。 | ・若手・キャリア採用者が成長・活躍できる環境整備 ・ダイバーシティ,エクイティ&インクルージョンの推進 ・実力・意欲重視の抜擢・登用 |
③ 人材戦略を支える基盤となる文化・環境
a) ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン
当社グループでは、年齢や性別、国籍等を問わず、多様な従業員一人ひとりが、その能力を最大限に発揮し、活躍することのできる機会の提供と環境整備に取り組んでいます。
2022年度には、従来の「ダイバーシティ&インクルージョン」をさらに一歩進め、「エクイティ(公平性)」の視点を入れた、「ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン」(DEI)として推進を図るべく、マテリアリティのタイトルを改題しました。単に平等なだけでなく、従業員一人ひとりの事情に応じた公平な活躍・挑戦機会の提供を目指します。
また、グローバルでのDEI推進を加速するため、DEIに関する当社グループ共通の考え方を示す基本方針の検討を進め、2023年4月に「ニコン グローバル ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン ポリシー」を制定しました。一人ひとりがチームの一員としての居場所を感じ、個々の能力を活かし合うことのできる職場環境や企業文化の醸成を図るとともに、各地の法令や事業特性などを踏まえた具体的な取り組みを、グループ全体で、または会社・事業毎に推進していきます。
<女性活躍推進>
女性活躍推進は日本の社会課題のひとつであり、当社においても重要な課題のひとつに位置づけています。「女性管理職比率」と「新卒採用における女性比率」を具体的なKPIに、活躍推進のための具体的な取り組みを実施しています。
また、女性のみならず、育児や介護など、多様な事情を抱えた従業員がライフステージに応じた柔軟な働き方が選択できるよう、制度や環境の整備にも取り組んでいます。
KPI | 対象範囲 | 目標値 | 2022年度実績 |
女性管理職比率 | 株式会社ニコン | 2025年度末までに8%以上 | 6.9% |
新卒採用における女性比率 | 株式会社ニコン | 25%以上 | 32.3% |
b) 従業員の健康と安全
従業員の健康と安全は、企業活動の根幹を成すものです。従業員が心身ともに健康と安全であることを実感して働ける職場環境を整備・提供することが、職場の活力や生産性向上をもたらすことに繋がると考えています。
こうした考えのもと、当社グループでは、毎年、「ニコングループ健康安全活動方針」を策定し、それに基づく各施策を展開しています。また、会社と従業員が一体となって、健康の保持・増進と安全管理の徹底、法令遵守に努め、グループ全体の労働災害の発生防止に努めています。
KPI | 対象範囲 | 目標値 | 2022年度実績 |
業務起因性、業務遂行性の高い労働災害の発生数 | 国内グループ会社 | 40件以下 | 27件 |
(6) 気候変動への対応
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示
当社グループは、気候変動への対応を重要な社会課題と認識し、脱炭素化の推進をマテリアリティ(重点課題)の一つとしています。「脱炭素社会の実現」をニコン環境長期ビジョンと位置づけ、2050年度までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成することを目指しています。長期ビジョンと連動するニコン環境中期目標では、2030年度までにScope1※1およびScope2※2における温室効果ガス排出量を2013年度比で71.4%削減すること、Scope3※3の「購入した製品・サービス」「輸送、配送(上流)」「販売した製品の使用」における温室効果ガス排出量を2013年度比で31%削減することを目標としています。この目標は、Science Based Targets(SBT)イニシアチブ※4に1.5℃水準として認定を受けています。
これらの目標の達成に向け、当社グループでは製品、事業所、物流などのサプライチェーンの各段階での温室効果ガス排出の削減に取り組んでいます。この姿勢を明確化するため、RE100※5に2021年2月に加盟し、同年3月にはBusiness Ambition for 1.5℃※6に賛同しました。また一方で、気候変動によるビジネスにおける機会を認識しており、社会の脱炭素化に貢献する製品・ソリューションの提供に注力しています。
※1 Scope1 敷地内における燃料の使用などによる直接的な温室効果ガス排出のこと
※2 Scope2 購入した電気・熱の使用により発生する間接的な温室効果ガス排出のこと
※3 Scope3 サプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な温室効果ガス排出のこと(Scope1、2を除く)
※4 気候変動など環境分野に取り組む国際NGOのCDP、国連グローバルコンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)による国際的な共同イニシアチブ。パリ協定の「世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて2℃未満に抑える」という目標に向け、科学的根拠に基づく削減のシナリオと整合した企業の温室効果ガス削減目標を認定している
※5 CDPと非営利組織The Climate Groupがパートナーシップのもと運営する国際的イニシアチブ。事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギーで調達することを目標としている
※6 国連グローバルコンパクト、SBTイニシアチブ、We Mean Businessの3社が世界の気温上昇を産業革命以前のレベルから1.5℃未満に抑え、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすることをめざし、企業に科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定するよう呼びかけるキャンペーン
① ガバナンス -気候関連リスク及び機会にかかわる組織のガバナンス-
取り組み | ●代表取締役 兼 社長執行役員が委員長を務めるサステナビリティ委員会においてリスクと機会を特定、戦略と指標・目標、並びにその実績を審議、脱炭素関連の投資可否を判断 ●サステナビリティ委員会傘下の環境部会において、気候変動に関するリスクと機会を検討、戦略と指標・目標の起案および進捗管理を実施 ●サステナビリティ委員会での決定に基づき、サステナビリティ戦略部門が全グループの気候変動対応を推進 ●サステナビリティ委員会の活動状況を最低年1回取締役会に報告。取締役会は気候変動を含む環境関連の活動の妥当性、有効性やリスクについて管理・監督 |
2022年度の進捗状況 | ●サステナビリティ委員会を4回、環境部会を2回開催し、気候変動対応に関する事項を審議・決定 |
② 戦略 -ビジネス・戦略・財務計画に対する気候関連リスク及び機会の実際の潜在的影響-
取り組み | ●マテリアリティ(重点課題)の一つに 「脱炭素化の推進」を設定 ●気候変動シナリオ分析を実施し、リスクと機会を特定(P.21参照) ●気候変動対応を含むサステナビリティへの取り組みを、中期経営計画を通して実行 ●気候変動対応を含むサステナビリティへの取り組みの評価を役員報酬に反映 |
2022年度の進捗状況 | ●ニコン環境中期目標達成に向けた再生可能エネルギーの導入を検討 ●気候変動によるリスクと機会を分析 ●中期経営計画期間中のビジネス拡大による温室効果ガス排出への影響を検証 |
③ リスク管理 -気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスと総合的なリスク管理への統合-
取り組み | ●リスク管理委員会がグループのリスクを全社的に管理するとともに、サステナビリティ委員会が専門的見地から気候変動を含む環境リスクについて把握、評価し、対応を協議 ●各委員会で審議・承認された内容は取締役会に報告 ●特定したリスクの潜在的財務影響額を、中期経営計画の財務シミュレーションにおいて、他の潜在的要素とともに把握・認識 |
2022年度の進捗状況 | ●「リスク把握調査」を実施し、結果を影響の規模と発生確率で表す「リスクマップ」を作成。関連部門にフィードバックし、全社的なリスクの認識を共有 ●特定したリスクを環境アクションプランなどに反映し、グループ全体に展開 |
④ 指標と目標 -気候関連リスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標-
指標 | 目標 |
Scope1,2削減率 (2013年度比) | 2030年度:71.4% |
2023年度:36.5% | |
Scope3の3カテゴリ(「購入した製品・サービス」「輸送、配送(上流)」「販売した製品の使用」)削減率 (2013年度比) | 2030年度:31% |
2023年度: ・環境配慮製品創出50%以上 | |
再生可能エネルギー導入率 | 2030年度:30% |
2023年度:25% |
当社グループでは、2022年度の温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)及び電力の再生可能エネルギー使用率は以下の結果になりました。引き続き、ニコン環境中期目標に沿って脱炭素化の推進に取り組みます。
Scope3の排出量については、サプライヤーの実際の状況をモニタリングすべく、2023年度よりCDPサプライチェーンプログラムに参加し、情報収集を開始いたします。
気候変動シナリオ分析について
当社グループでは、気候関連リスクと機会について、事業の特性や生産拠点・事業所の立地条件、近年の気候変動起因による自然災害の度合いと頻度、業界の動向、関連する法令の動向、IPCCの気候変動予測に用いられているRCP(代表的濃度経路)シナリオや外部の調査機関による調査結果・シナリオを総合的に考慮した分析を行い、2℃および4℃シナリオ下におけるリスクの評価、特定を行っています。
2℃シナリオにおいては、温室効果ガス排出規制などの強化やそれに伴う市場要求、4℃シナリオにおいては洪水などの自然災害の増加や気温上昇、いずれのシナリオにおいても再生可能エネルギーの移行拡大などのエネルギー技術とコストの変化を認識し、財務への影響を考慮して事業戦略として気候変動への適応対策を行っています。リスク分析は継続して実施し、レベルアップを図っていきたいと考えています。
気候変動による当社グループへのリスク
<財務影響> 大:100億円以上、中:10億円~100億円、小:10億円以下
<緊急度> 高:3年以内、中:3~10年、低:10年以上
当社グループへのリスク | 財務 影響 | 緊急度 | 対応 | |
物理 (急性・ 慢性) | 台風・水害などの気象災害が増加した場合、主要生産拠点(日本・タイなど)やサプライヤーの拠点の被災、物流網の寸断などにより供給/操業が停止したり資産価値が低下する可能性がある。また、海面上昇によりこれらのリスクの発生確率が高まる可能性がある。 | 大 | 中 | ・トータルサプライチェーン マネジメント活動の推進 ・事業継続マネジメント(BCM)の推進 |
平均気温が上昇した場合、冷房などの空調設備の負荷増大により電力コストが増加する可能性がある。特に、精密機器の製造・輸送などの過程で必要な厳密な温度管理が困難になる、または管理コストが増加する可能性がある。 | 小 | 低 | ・積極的な省エネ活動の推進 | |
長期的な降水パターンの変化や干ばつの発生により水資源の利用が制約され、操業に悪影響が生じる可能性がある。 | 中 | 低 | ・取水量の削減 ・水資源のリサイクル促進 |
当社グループへのリスク | 財務 影響 | 緊急度 | 対応 | ||
移行 | 政策・ 法規制 | ・炭素税等のカーボンプライシング政策が導入・拡大された場合、事業コストが増大する可能性がある。また、サプライヤーへの適用により仕入れ価格が上昇する可能性がある。 ・事業拠点を有する国のエネルギー政策の変更により、電気料金が上昇し、事業コストや仕入れコストが増加する可能性がある。 | 大 | 中 | ・省エネの推進、再エネ導入による温室効果ガス排出の削減 ・モーダルシフトや物流ルート改善による温室効果ガス排出の削減 ・サプライヤーへの温室効果ガス排出削減の要請 |
技術 | ・製品使用時の排出削減、製造法・素材の低炭素化に乗り遅れた場合、販売機会が減少する可能性がある。 | 大 | 低 | ・省エネの推進、再エネ導入による温室効果ガス排出の削減 ・製品の省エネ性能向上 ・新素材・製造法の構築 | |
市場・ 評判 | ・顧客の脱炭素要求に十分に応えられない場合、販売機会が減少する可能性がある。 ・脱炭素対応が十分でない場合、評価・評判を損ない、株価や売上に影響する可能性がある。 | 中 | 低 | ・省エネの推進、再エネ導入による温室効果ガス排出の削減 ・積極的な情報開示の推進 |
気候変動による当社グループにとっての機会
<時間的範囲> 短期:3年以内、中期:3~10年、長期:10年以上
ニコングループにとっての機会 | 時間的範囲 |
・脱炭素社会の実現に貢献する技術やビジネス展開に対する消費者/機関投資家などからの評価が高まり、売上が増加し株価が上昇する可能性がある。 -社会のエネルギー効率向上に貢献する光を使った付加加工や微細加工 -既存部品の補修などで製品の長寿命化に貢献する付加加工 -ものづくりの効率化に貢献する高度な手や目を持つロボットやデバイス製造プロセス -光源の省エネルギー化、長寿命化・耐久性の向上による環境にやさしい製品の提供 -時間・空間/現実と仮想を超えて人がつながる社会の実現に貢献する映像制作技術 | 短期~長期 |
生産プロセス、物流の効率化や省エネ活動により、将来的な炭素税やエネルギーコストを低減できる可能性がある。 | 短期~長期 |
物理的リスクへの備えとして実施するトータルサプライチェーンマネジメントや 自社のBCMの改善により事業体制を強靭化できる可能性がある。 | 短期 |
- 検索
- 業種別業績ランキング