企業萩原電気ホールディングス東証プライム:7467】「卸売業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 経営環境

 当社グループを取り巻く環境は、世界規模での業界の垣根を越えた新たなビジネスモデル創出の動きやIoT・AI(人工知能)の活用といった新しい技術の台頭など、環境変化が激しい状況となっております。現況では、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い経済活動の正常化が進みましたが、世界的な金融引き締めや継続的な物価上昇による景気への影響、中国経済の先行き懸念、地政学的なリスクの発生など、世界並びに日本経済の先行きは不透明でありますが、当社グループにおきましては、主要顧客を中心に次世代のモビリティ社会の実現に向けたエレクトロニクス化、デジタル経営に向けた情報化投資や設備投資ニーズは引き続き伸長していくものと想定され、デバイス事業、ソリューション事業ともに、これまで以上に付加価値やスピード感を伴った対応が求められるとともに、カーボンニュートラルや自然との共生など社会課題にも経営視点を当てながら経営していくことが必要な環境となっております。

(デバイス事業)

 当社グループのデバイス事業は、トヨタグループを主体とした自動車関連企業を中心にルネサスエレクトロニクス株式会社製品を主体とした半導体や電子部品等の販売及び技術支援、組込システムのPoC(概念実証)開発支援や組込ソフトウエアを中心とした受託開発事業を行っております。

 当社グループの主要顧客の属する自動車業界は、「100年に一度の大変革の時代」にあり、CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)への取組が急速に進んでおります。その実現に向かって、自動車の電動化や電子化、企業活動全般における情報化がより一層進んでいくことが予測される中、当社グループの取り扱う半導体や電子部品は必要不可欠な製品であり、今後も需要拡大とビジネス機会の増大が期待されます。

 このような環境の中で、当社グループの主要顧客である自動車関連企業におきましては、高機能、高品質、高信頼のシステムをいかに低コストかつ効率的に開発、生産するかという課題を抱えております。当社グループは長年にわたる自動車関連企業とのビジネスの中で培った知見、ノウハウを活かし、顧客の企画段階より参画し、より顧客のニーズに合ったシステム提案を行うとともに、その実現のため、開発サポートも行っております。

 また、近年は車載組込ソフトウエアの重要性がますます高まる中、検証や開発支援をはじめとしたソフトウエア支援に対するニーズも強くなっており、当社グループにおける事業も拡大しております。そのようなビジネス機会の増大に対し、適切な人的投資やサービスの強化、グループ企業やパートナー企業との連携を図りながら、事業の更なる拡大を目指しております。

 海外での事業展開におきましては、当社グループでは、従来から主要顧客の海外生産をサポートしておりますが、近年はビジネスの現地化が進み、エレクトロニクスの高度化や現地開発に伴う顧客の技術支援のニーズは一段と高まっております。そのような事業機会の変化に対して、日本で培った知見と各拠点で得た有益な情報を活かして、その土地に合う確かな商品とサービスを展開するとともに、各拠点での開発や設計支援の間口を広げながら、事業の拡大を目指しております。

(ソリューション事業)

 当社グループのソリューション事業は、顧客社内で使用されるIT機器、組込機器及び計測機器の販売や、ITプラットフォーム基盤及びIoTシステムの構築に加え、自動化や省力化に貢献する各種FA(ファクトリーオートメーション)・特殊計測システムの設計・製造・販売及び産業用コンピュータの開発・製造・販売を行っております。

 近年、「第4次産業革命」とも呼ばれるIoT、AI、ビッグデータを活用した産業分野のデジタル化が急速に進むなか、当社グループが得意とするセキュリティ分野やFA分野でもそれらのIT技術を中心に市場が拡大しております。当社グループの主要顧客においても、IoTをはじめ最新技術や新製品を取り入れたITインフラ整備や工場内のデジタル化の推進、さらにはIT技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)によるビジネスモデル変革やイノベーション創出への期待が高まり、ソリューション事業におきましては、今後も需要拡大とビジネス機会増大が期待されます。

 ITソリューション領域では、製造業を中心に広い業種の顧客を持ち、情報システム部門や生産技術・開発部門を中心に、パソコン、サーバやストレージをはじめとするIT機器の販売、アプリケーションやプラットフォーム開発などのSIサービスを提供しており、近年はサイバーセキュリティ対策からのネットワーク再構築サービス、AIやRPA(Robotic Process Automation)によるデータ活用と業務オペレーションの自動化、エッジ、IoTシステムや生産管理システムなどのインフラ整備やシステム開発の需要が高まっております。製造現場の効率化などITインフラ構築に多くの実績を持つ当社グループは、中部地区トップクラスの契約数となる大手SⅠerやITベンダとのパートナー契約も活かし、多種多様に広がりを見せるITニーズに対して、豊富なアイテムと最新の技術トレンドも活用した最適なITソリューション・サービスを提案しております。

 組込領域では、工作機械、半導体製造装置、産業機械、物流搬送装置等の製造業を中心とした顧客の製品に組み込まれる制御コントローラや表示デバイスなどの情報機器や産業機器、自社製造の産業用コンピュータを提供しております。今後は、新技術の台頭や自動車、半導体産業における生産設備投資やシステムの刷新がよりいっそう進むものと見込まれ、物流・半導体搬送装置の需要増、5Gを活用したシステム構築の立ち上がりも期待されます。長年にわたるFA業界への対応、自社ブランドによる産業用コンピュータの開発、生産の経験を活かし、長寿命、FA用途の耐環境性能をもつ高信頼、高性能な製品を国内生産により長期供給できることを強みに、安定したモノづくりを支援し、高度化が望まれる生産現場のニーズに対して付加価値の高いソリューションを提供しております。

 FAソリューション領域では、自動車関連企業の技術部門や研究開発部門へ、性能検査や機能評価をはじめとした計測機器、検査装置やシステムを納入しております。自動車業界のCASEへの取組を背景に性能・機能評価の需要が高まっており、今後は、機器やシステムの高性能化のニーズ拡大、レガシーシステムの刷新需要も予想され、中部圏はもとより関東や関西での活動機会の増加が見込まれます。当社グループでは、電波計測設備、FA機器、モデルベース開発ツールを扱う商社機能と、特殊計測機器など内製でシステム化を手掛けるメーカー機能をあわせ持ち、製品の機能検討、試作、量産等、各段階の用途やニーズに応じた幅広い対応をしております。内製のシステムは、計測・制御モジュールのトップメーカーからアライアンスパートナーの認定を受け、システム設計やコード作成、他社製ソフトウエア・ハードウエアの統合、実装にいたるまで、顧客の個々のニーズに合わせたシステムを構築しており、自動車業界の高い品質基準を満たしながら成長市場での領域拡大を目指しております。

 また、2023年3月期に、ファインピッチ接合技術をコアとした効率的な生産ラインを具現化する生産システム構築技術や、お客様の多彩なニーズにスピーディーにお応えするカスタム化技術に強みを持つ「萩原エンジニアリング」を新たに当社グループに迎えたことにより、一貫対応による設備インテグレーターとしてきめ細やかでスピーディーなFAソリューションの提供が可能となっております。

(2) 経営の基本方針

 当社グループは、「創造と挑戦」を経営理念として掲げ、全従業員が変化に適応し、新たな価値を「創造」し続けるとともに、現状に満足することなく、更なる成長に「挑戦」し続けてまいります。

 2050年には世界の人口が95億人を突破すると予測されており、今後、近未来に向かって、エネルギー、衣食住、交通手段、通信手段など人々の生活に密着した領域は、多様な価値観や様々な技術革新を伴いながら発展していきます。ますます広がりを見せる領域に、当社グループの得意とするエレクトロニクスソリューションは必要不可欠です。今後も自動車業界をはじめとした製造業や、データ活用を中心に製造業にとどまらない他業種のお客様に対し、ソリューション志向の考え方により、社会やお客様の課題を解決し期待に応えていくことで、世界中の人々の生活をより快適により豊かにすることこそが、当社グループにできる社会貢献と考え、グループ一丸となって「創造と挑戦」を実践し、すべてのステークホルダーから選ばれる企業グループに成長していくことを目指してまいります。

(3) 中期経営計画及び経営ビジョン

 当社グループは、新たな経営ビジョンとして「先進エレクトロニクスで人と社会とテクノロジーをつなぐエンジニアリングソリューションパートナー」を掲げ、2025年3月期から2027年3月期までの3か年を対象とする中期経営計画「Make New Value 2026」を推進しております。

 中期経営計画のもと、得意領域であるモビリティやモノづくり領域に加え、ロジスティクスやロボティクス等の隣接業界や、デジタル活用によるエネルギーやスマートシティ等のメガトレンドへの領域における課題に対し、その解決にお応えするソリューション志向を持ち、社内外でのビジネスイノベーション活動を通じて創造する最適なソリューションを提供し、持続可能な社会への貢献と企業価値向上を目指してまいります。

①重点方針及び重要経営指標

 当社グループでは、中期経営計画「Make New Value 2026」の重点方針を「稼ぐ力」の向上による企業価値向上と定めております。そして、計画期間を次なる成長ステージへの飛躍に向けた構造変革と事業基盤の確立を実行する期間と位置づけ、3つの構造改革を6つの重点戦略で推し進めることで、最終年度である2027年3月期に売上高3,000億円、営業利益110億円へと事業成長させるとともに、ROEは11%以上を達成することを目指しております。

②構造改革

 当社グループが持続的に成長し続けるために、「稼ぐ力」の向上を実現する3つの構造改革に取り組みます。

(ビジネスモデル変革による提供価値の向上)

 社会や顧客課題への解決策を提案し、提供価値を高めることで「稼ぐ力」を強化いたします。

 既存のビジネスモデルである卸型ビジネス、システムインテグレーション、メーカービジネス等については、グループ全体でソリューション志向のもと、付加価値となる付帯開発やサービス事業を拡大してまいります。また、既存のビジネスモデルに加えて、データを価値化することで収益性が期待できるプラットフォーム事業等の新たなビジネスモデル作りに取り組むことで市場での存在感を示してまいります。

(資本生産性を意識したマネジメント改革)

 ビジネスモデル変革と併せて資本生産性を意識したマネジメントスタイルの変革に着手いたします。

 当社グループの株主資本コスト7~8%を踏まえた投下資本に対する利益に着目した社内マネジメントの仕組みを構築するほか、事業ポートフォリオへの戦略的アプローチを可能にする仕組みの構築と運用をすることで、タイムリーな資本生産性を意識したマネジメントの実現を目指してまいります。

(人的資本活用による従業員パワーの最大化)

 ソリューション志向によるビジネスモデル変革の推進を担う「創造と挑戦する人材」の育成と人材育成の基盤強化を加速させてまいります。

 従業員のパフォーマンスを最大化し、経営目標と達成に向けた従業員の活動をシンクロさせるため、専門性を活かす処遇や異動による経験値の獲得、そして会社目標と従業員目標がスケーラブルに連動した目標管理の仕組みを導入・強化し、次の成長ステージに向けた全従業員の経営参加意識を醸成し、全従業員で企業価値向上に取り組む企業運営を目指してまいります。

③重点戦略

 当社グループが培ってきたモビリティ領域への理解や知見などの当社グループらしさを活かしながら、ビジネス戦略とテクノロジー戦略を融合し、社内外の連携を強化することで、社会や顧客の課題を解決する最適なソリューション提供を目指してまいります。

(デバイス事業戦略)

 主力である半導体・電子部品の卸型ビジネスの規模を拡大する取組によって、これまで蓄積してきた車載・電装領域の知見の幅を広げ、活用し、モビリティ領域のソフト化に対応するエンジニアリング事業や、メーカーとしての事業等、付加価値の期待できる事業を社内外のパートナーとともに開拓することで、「稼ぐ力」の向上を目指してまいります。

(ソリューション事業戦略)

 当社グループの強みであるITソリューション、組込ソリューション、FAエンジニアリングの3事業の事業規模拡大について、地域拡大、ソリューション拡大、パートナーとのアライアンス等により実現してまいります。

 また、これまで製造業を中心に取り組んできたソリューション事業を通じて得た知見、デバイス事業と共に培った車載・電装領域への知見を最大限活かして、データ収集やデータの価値化等、データを活用したライフサイクルマネジメント等のトータルソリューションの志向を以て、製造業向けにとどまらないデータプラットフォーム事業を拡大いたします。

 これらの4事業の融合により、ものづくりを基点に幅広い産業で通用するサービスと技術を育成し、新たな市場への挑戦と「稼ぐ力」の向上を目指してまいります。

(ビジネスイノベーション戦略)

 当社グループ内での共創に加え、他社とのコラボレーションや技術協業によるイノベーションにより、新しい「稼ぐ力」の立上げを加速してまいります。

(経営管理高度化戦略)

 ITやDXの推進によりオペレーションの効率化や経営資源の最適化を図り、資本生産性を意識したマネジメントスタイルへの転換に向けた取組を加速させてまいります。

(人材戦略)

 当社グループらしい「ヒト」の強みを活かした人的資本経営で、全従業員の持てる力を最大化させてまいります。

 詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性に関する取組」に記載しておりますので、ご参照ください。

(ESG推進)

 社外からの要請に応えながら、気候変動や人的資本などの取組を向上させてまいります。

 情報開示を通じて幅広いステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを充実させることで、環境価値・社会価値・経済価値を高め、サステナビリティの進化を目指してまいります。

 詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しておりますので、ご参照ください。

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