いすゞ自動車
【東証プライム:7202】「輸送用機器」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針・企業理念・行動方針
当社グループを取り巻く事業環境の変化は日増しに加速しており、事業は複雑性を増しています。こうした状況下で、当社グループはさまざまな社会課題を解決し、商用車業界をリードしていくために、自らの存在意義、そしてお客様・社会に対する提供価値を問い直すことが必要とされています。
このような課題認識のもと、当社グループは、従業員一人ひとりが高い視座に立ち、同じ価値観を共有し、一丸となって社会課題の解決に取り組むことが必要と考え、2023年5月に新たな経営理念体系「ISUZU ID」を策定しました。
「ISUZU ID」の概要は以下の通りです。
◆PURPOSE(使命):地球の「運ぶ」を創造する
お客様、そしてパートナーの皆さまと地球上のすべてのモノ・ヒトの「運ぶ」を主体的に創造するとともに、カーボンニュートラルへの対応や、進化する物流への貢献など、新たな「運ぶ」の価値を提供し、社会を豊かにしていきたい、という決意を表しています。
◆VISION(将来像):「安心×斬新」で世界を進化させるイノベーションリーダー
あらゆる社会課題の解決に貢献していくために、従来大切にしてきた「安心」に、「斬新」を掛け合わせ、イノベーションリーダーを目指します。
◆MISSION(任務):あなたと共に「運ぶ」の課題を解決する
すべての人々と共に社会を前進させるという意志を込め、4つの分野(お客様満足度・地球へのやさしさ・働きがい・社会への影響力)でNo.1を目指し、日々努力します。
◆CORE VALUE(コア・バリュー):相互成長
イノベーションリーダーとして、一人ひとりが挑戦・変化・貢献する意欲を持ち、集団として尊重・信頼・刺激し合うことで、成長していきます。
今後、当社グループは「ISUZU ID」を起点に、既存事業の更なる強化と新事業への挑戦を通じて社会課題の解決に貢献し、世界を進化させるイノベーションリーダーを目指します。
(2)対処すべき課題
「地球の『運ぶ』を創造する」をPURPOSE(使命)として、「運ぶ」に関わるさまざまな社会課題を解決するためには、多様化するお客様ニーズや不確実性の高い事業環境にもしなやかに対応し、絶えず柔軟に変革し続けることが不可欠です。
変革の実現に向け、当社グループでは2024年4月に、中期経営計画「ISUZU Transformation – Growth to 2030」(以下、「IX」)を公表しました。「IX」は「ISUZU ID」のVISION(将来像)とMISSION(任務)を、足元からのフォーキャストと「ISUZU ID」からのバックキャストで、2030年目線で具体化し策定したものです。当社グループは2030年に向けて、創造・提供する価値を従来の商品軸から、新たにソリューションへと広げ、ビジネスモデルを変革します。現在の収益拡大と、未来の収益への投資を両輪として、お客様・社会をはじめ、あらゆるステークホルダーが抱える課題を「安心×斬新」な「運ぶ」で解決する、「商用モビリティソリューションカンパニー」を目指していきます。
次に挙げる課題は、「ISUZU ID」の実現のみならず、自動車業界・商用車業界におけるお客様のご期待や技術的変革に対応するため中長期的な観点から抽出したものです。
「運ぶ」を創造する新事業への挑戦
物流業界を取り巻く環境は、カーボンニュートラル(以下、「CN」)社会の実現が急がれるなか、昨今の慢性的なドライバー不足等の課題を抱えています。こうしたお客様・社会課題の解決に貢献し、未来の新たな収益へと成長させるため、従来培ってきた当社の強みである「安心」を活かし、「自動運転ソリューション」、「コネクテッドサービス」、「カーボンニュートラルソリューション」の3領域を軸に、「安心×斬新」でお客様と社会の課題を解決する新事業に挑戦します。これら新事業への挑戦に向け、総額1兆円規模のイノベーション投資を着実に実行します。
(前中期経営計画期間中の取組み)
「自動運転ソリューション」については、自動運転に関する新技術の開発実証を推進してきました。同時に、アライアンスパートナーの拡充にも努め、2024年3月には路線バス領域における自動運転システムの開発を目的に、世界初のオープンソース自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発リーダーである株式会社ティアフォーと、資本業務提携について合意しました。
「コネクテッドサービス」では、かねてより運行管理・ドライバー支援サービス「MIMAMORI」、高度純正装備「PREISM」等の先進的なコネクテッドサービスを、業界に先駆けて導入してきました。前中期経営計画期間中には、株式会社トランストロン及び富士通株式会社と共同で、商用車情報基盤「GATEX」の提供を開始しました。商用車の運行管理や稼働サポートサービスの提供に加え、多様なデータ連携により、物流業界が抱えるさまざまな課題の解決に貢献する仕組みを提供可能となります。
「カーボンニュートラルソリューション」では、CN時代を見据え、小型車市場にBEV(※1)及びFCV(※2)を上市したほか、大型市場でのFCVの上市に向けて、2023年度には燃料電池システムの開発及び供給パートナーである本田技研工業とともに、モニター車による公道での実証実験を開始しました。さらに、商用BEVの導入検討や課題解決のサポート、温室効果ガス排出削減効果を定量化するトータルソリューションプログラム「EVision」を構築し、商品販売のみならず、お客様のニーズに合わせた柔軟なEV導入・運用の提案を可能にしました。また、2022年6月には「いすゞ環境長期ビジョン2050」の取組みを着実に実現するために、2030年までのロードマップを示した「2030環境ロードマップ」を策定しました。
(※1)BEV:Battery Electric Vehicle
(※2)FCV:Fuel Cell Vehicle
(今後の計画)
「自動運転ソリューション」では、2027年度に、日本及び北米を皮切りに自動運転レベル4技術を活用したトラック・バス事業を開始します。この実現に向けて、2024年4月より自動運転技術の獲得や基礎的なサービスの作り込みを本格的にスタートさせ、2026年よりアライアンスパートナーとの協働によるモニター実証を行う予定です。また、当社内に自動運転技術を活用した事業の検討組織を設立し、中長期的には数百名規模への拡大を見込んでいます。これらの取組みと、当社が従来培ってきた「通常時、緊急時の車両制御技術」、「お客様による使われ方の熟知」を掛け合わせることで、2027年度より順次、高速道路・ハブ間での輸送や、市街地をはじめとする路線バスの自動運転ソリューションを提供していきます。
「コネクテッドサービス」では、国内においては運送事業者・荷主の輸配送効率を高めるサービスを提供するほか、業界を超えたさまざまなデータを前述の商用車情報基盤「GATEX」と連携させることで新たなサービスを創出します。さらに、北米より高度純正整備「PREISM」と「EVision」を展開し、2028年までに北米以外の主要地域へも対象エリアを拡大します。
「カーボンニュートラルソリューション」では、「いすゞ環境長期ビジョン2050」に基づき、マルチパスウェイで技術開発を進め、各国の使われ方・地域状況・社会動向に適した商品を展開することで、CN社会実現に貢献します。具体的には、2030年までに全車種でCN商品をラインナップに加える予定です。CN商品の開発加速のため、藤沢工場内に電動開発実験棟を新設し2026年6月の稼働開始を目指します。
さらに、2030年代の普及期を見据え、価格競争力のあるBEVの投入や、バッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Concept」をはじめとする周辺事業の展開を本格的に推進し、社会のCN化を牽引します。
「運ぶ」を支える既存事業の強化
当社グループは150カ国以上で事業を展開し、うち37カ国以上でシェア第1位、グローバル販売台数は66万台以上と、世界中のお客様・社会の「運ぶ」を支えてきました。今後も業界を牽引するとともに、お客様・社会の「運ぶ」を支え続けるためには、既存事業の商品力・販売力を強化し、グループの事業基盤を一層強固にする必要があります。当社グループは、商用車市場のグローバルリーディングカンパニーとして、2030年度に新車販売85万台以上、売上高5兆円以上を目指します。
(前中期経営計画期間中の取組み)
無事故社会の実現、ドライバーの労働環境改善等、ますます高度化・複雑化する物流業界の課題解決に資するため、市場ニーズの変化を見据えた商品開発に取り組みました。具体的には、主力商品である小型トラック「エルフ」や中型トラック「フォワード」のフルモデルチェンジ、ピックアップトラック「D-MAX」の大幅改良、量産BEVの市場投入、各種快適装備・安全支援機能の大幅拡充を進めてきました。
また、ボルボ・グループより全株式を取得し連結子会社化したUDトラックスとは、技術・事業における相互連携を強化し、スケールメリットを追求すると共に、お客様・社会の課題解決に向けたソリューションの提供に努めました。具体的には、初の共同開発商品である新型トラクタヘッド「ギガ」と「クオン」の市場投入、400拠点以上のサービスネットワークや物流・部品デポ、海外オフィスの相互活用、そして「Japan Mobility Show」の両ブランド共同出展を事例に、グループ一体で効率化を追求し、2024年3月期には140億円のシナジーを創出しました。
(今後の計画)
CV(※1)事業では、いすゞ・UDトラックスの販売・サービスチャネル及び商品の相互補完でシナジー創出をさらに加速させることにより、グローバルでの徹底的な拡販を実現します。また、コンポーネント組合せ開発基盤「I-MACS」の活用により、迅速かつ柔軟な仕様設定を実現し、圧倒的なラインナップで各国・地域のニーズに応えていきます。加えて、CN時代を見据え、従来培ってきたメンテナンスリースや、「EVision」をはじめとする「トータルライフサイクルで稼働を支えるサービス」を地域毎のニーズに合わせて海外へ展開し、確かな収益源であるアフターセールスの一層の強化を目指します。
LCV(※2)事業は、グローバルサウスへの拡販を進めるとともに、2030年に向けては、さまざまなユースケースを踏まえた多様な動力源(高効率ICE(※3)、PHEV、BEV)の提供及び次世代に求められる要素技術開発を推進し、事業成長を目指します。
(※1)CV:Commercial Vehicle
(※2)LCV:Light Commercial Vehicle
(※3)ICE:Internal Combustion Engine
「ISUZU ID」を基軸とした経営基盤の確立
「ISUZU ID」で示すVISION(将来像)・MISSION(任務)、「IX」で示す「商用モビリティソリューションカンパニー」への変革を実現するためには、人的資本経営やグローバル視点でのグループ経営を支える経営基盤の確立が必要不可欠です。当社グループではグローバル基準の人財マネジメント基盤の整備、「安心×斬新」を実現する人財への投資を加速し、更なる事業成長を目指していきます。
(前中期経営計画期間中の取組み)
人財マネジメントの一環として、2022年5月に横浜へと本社を移転しました。グループ企業を集約するとともに、新本社の最新オフィス設備・IT環境を活用し、海外拠点も含めた社内、そしてグループ内コミュニケーションの活性化を図っています。また、従業員の自律的成長を促すため、ダイバーシティ&インクルージョン推進を目的としたボルボ・グループのソーシャルネットワーク「VOIS」に参画しています。 さらに、グローバル視点でのグループ経営を支える、ガバナンス体制の実効性向上のため、2022年3月期より監査等委員会設置会社へ移行し、経営の監督機能の一層の強化を図りました。また、社外取締役を5名(取締役総数13名)、うち女性2名とすることで、取締役会における多様性を向上しました。
(今後の計画)
「ISUZU ID」を基軸として、機能軸組織・人財戦略・人事制度の基盤整備を行います。具体的な取組みとして、従業員の専門性強化と挑戦を後押しする、グローバル基準の人財マネジメント基盤整備に着手します。変革の第一弾として、従来の職能型を改め、職務型を採用した新人事制度を2024年4月よりスタートしています。順次対象を拡大し、2026年度にはグループ全体で運用します。職務(ジョブ)の明確化とそれに基づいた適所適財の人財配置、公正な評価・報酬を実現することで、対話と育成の文化を醸成し、従業員の更なる成長を支援します。
また、新事業展開に向けた技術・サービスの開発や、既存事業運営の効率化への取り組みを通して、事業戦略の推進に必要なDXケイパビリティの充実を図ります。具体的には、各パートナーとの協力による全従業員の基礎スキル及び専門領域のスキル向上、技術革新に対応する新たなスキルの獲得を進めます。専門人財の獲得とリソースシフトの促進により、デジタルを用いてイノベーションを創出する集団へと変革し、世の中に提供する価値の拡大を目指します。
強固な収益基盤・財務基盤の確立及び成長投資と株主還元の両立
当社グループは、企業価値の持続的な向上を目指し、事業継続及び将来成長に必要な投資を優先に実行していきます。グループ全体での既存事業の強化を軸に、新事業を強力に推進することで、2030年度には売上高6兆円、営業利益率10%以上を目指します。
(前中期経営計画期間中の取組み)
資材費の高騰をはじめとする、さまざまな事業環境変化がありながらも、売上高目標・営業利益目標を達成し、事業規模の拡大を実現しました。
収益性として、前中期経営計画最終年度には、売上高3兆3,867億円、営業利益率8.7%、ROE12.7%を達成しました。また、前中期経営計画期間における設備投資及びR&Dの累計金額は6,369億円にのぼります。さらに、株主還元では、配当累計1,829億円、自己株式取得は500億円と、適正な自己資本水準を維持した、機動的な自己株式取得に取り組みました。財務健全性としては、各格付にてA格を取得しています。
(今後の計画)
企業価値の持続的な向上を目指し、先述の事業により得られた収益をもとに、将来成長に必要な投資を優先して実行するとともに、株主還元と財務健全性を両立していきます。
収益面は、2030年度には売上高6兆円、営業利益率10%以上、ROE15%以上を目指します。積極的なイノベーション投資を推進しつつ、既存事業ではDXを活用することで業務効率化を図り、収益を確保します。株主還元は、配当性向は平均で40%を維持し、着実な配当成長を目指します。また、固定資産と自己資本のバランスを考慮しつつ、自己株式取得を継続します。また、財務健全性は、各格付でのA格を維持しつつ、有利子負債も活用していきます。
投資について、2030年代に向けて積極的な投資を実行します。まず、「成長の可能性」として、「運ぶ」を創造するイノベーション領域に総額1兆円を投資します。具体的な内容として、CN社会実現に向けた基礎研究・技術開発・環境ロードマップの推進、自動運転の事業化に向けた技術開発、事業・設備投資、コネクテッドサービスの進化・拡充、次世代商品・SDV対応等が挙げられます。また、「経営の安定性」として、「運ぶ」を支える既存事業領域に対し、総額1.6兆円を投資します。具体的には、当社グループの生産拠点強化や、販売・サービスのインフラ投資、商品ラインナップの拡充等を見込んでいます。
当社グループはこうした投資によって、持続的成長と付加価値の提供を実現します。
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