フォースタートアップス 【東証グロース:7089】「サービス業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「for Startups」という経営ビジョンを掲げ、挑戦者に対し必要な支援を行う成長産業支援インフラとなることを目指しております。企業成長を支える原動力は「人材」と「資金」であり、イノベーションを担うスタートアップ企業の成長やスタートアップ・エコシステムの継続的な発展には、人材と資金の確保がなければ成り立たたないことから、当社グループは、主に人材と資金の側面から成長企業を支援することで、成長スピードと成長確度を高め、社会に貢献してまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益であります。また、持続的な事業拡大と企業価値向上のため、将来の売上高成長に欠かせない「社員数」を重要指標と捉えております。
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略
・経営環境
近年、AI、IoT、ロボット、ビッグデータ、ブロックチェーン等、第4次産業革命と呼ばれるデジタル技術の発展を背景に、新産業が創出され、「GAFAM(Google Apple Facebook Amazon Microsoftの総称)」と呼ばれるような巨大新興企業が世界で台頭しております。また、米国・中国を中心に世界では新たな産業やユニコーン企業(注1)が続々と誕生しており、国際競争力及び平均賃金水準の上昇において新興企業は大変重要な存在となっております。
国際競争力において日本は、1990年代初頭には世界1位であったところ、直近の2023年では世界35位まで低下しております(注2)。また、主要国の平均賃金が上昇していることに対して、日本の平均賃金は約30年間横ばいの状況が続いております(注3)。国際競争力の低下や平均賃金の上昇停滞には、様々な要因がありますが、一つの要因としてスタートアップ・エコシステム(注4)の構築が発展途上であることが挙げられます。スタートアップは、社会課題の解決と経済成長を担うキープレイヤーであり、雇用創出・所得拡大・国の財政を支える成長ドライバーになる可能性があります。グローバリゼーションを勝ち抜く国際的な競争力を有した成長企業を生み出すには、如何にイノベーションを創出できるかが重要であり、イノベーションの創出にはスタートアップ・エコシステムの構築・発展が必要不可欠と当社グループは考えております。
我が国においても、政府の成長戦略において、産業競争力強化の観点からスタートアップ企業の支援及びスタートアップ・エコシステム強化の重要性が提唱されております。政府は2022年を「スタートアップ創出元年」と定め、2022年11月に公表された令和4年度補正予算案において、スタートアップ関連事業に約1兆円の補正予算が閣議決定され、2022年11月末には『スタートアップ育成5か年計画』が公表されました。この『スタートアップ育成5か年計画』においては、5年後の2027年度に、スタートアップへの投資額を10倍超(10兆円規模)とすることを目標に掲げ、日本がアジア最大のスタートアップハブとして世界有数のスタートアップの集積地になることを目指す方針が打ち出されました。また、①スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築、②スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化、③オープンイノベーションの推進、の大きな3本柱の取り組みを一体として推進することも併せて公表され、官民を挙げた取り組みが実行されつつあります。
当連結会計年度におけるスタートアップ業界を取り巻く環境は、主要国の金融市場の引き締めやシリコンバレー銀行の破綻、中国経済の失速などのマクロ環境の不透明さを背景に、2023年のスタートアップの資金調達額が世界で前年比42%減、同じく米国では33%減(参照:CB INSIGHTS「State of Venture 2023 Report」)と大きく下落いたしました。米国の状況の影響を受け、2023年の日本のスタートアップの資金調達額も前年比で約20%減(参照:STARTUP DB)となり、「スタートアップ冬の時代」と呼ばれる厳しい事業環境となりました。考えうるリスク要因としては、アセットオーナーのベンチャーキャピタルへの資金配分の減少、未上場企業の評価額低下によるスタートアップ企業側の調達額の規模の減少、並びにそれらに伴う人材採用活動の停滞が挙げられます。
一方で、当社グループを取り巻く国内のスタートアップ企業の事業環境には改善の兆しが出ております。ここ1,2年採用活動を停止していた既存大型顧客の複数社が採用活動を積極化しており、当社への支援ニーズが高まっている状況にあります。この2点から当社タレントエージェンシーサービスを中心とする当社グループの事業環境は、好転しつつあるものと見込んでおります。
・経営戦略
上記経営環境の中、当社グループは、従前に公表しておりますとおり、2026年3月期に連結売上高50億円超を目指します。また、オフィス移転に伴う一時的な費用が発生すること等を踏まえつつ、中長期的には大きな拡大余地が見込めることから、2026年3月期における営業利益率15%を基準とし、上振れ分については翌年度以降の売上高拡大に向けた再投資に充当する方針といたします。
これまで当社グループは、中核事業であるタレントエージェンシーサービスにおけるスタートアップ企業向け人材支援の圧倒的な実績とブランド力を背景に、オープンイノベーションサービスやベンチャーキャピタル事業への拡充を進めておりました。しかし、当社の強みや付加価値を考慮すると、今後も当社が「スタートアップ人材支援領域のリーディングカンパニーであり続けること」が、結果としてオープンイノベーションサービスやベンチャーキャピタル事業の収益機会につながり、今後のスタートアップ・エコシステムの発展及び当社の持続的な成長につながるものと考え、経営戦略を再定義いたしました。そのため、中長期の方針として、経営資源をタレントエージェンシーサービスに集中させ、タレントエージェンシーサービスの売上・利益の持続的かつ高い成長を実現するとともに、タレントエージェンシーとオープンイノベーションの両サービスのシナジー強化に取り組んでまいります。
具体的な経営戦略については以下のとおりです。
① 成長産業支援インフラとしてのポジショニング確立
我が国のスタートアップ企業への投資は増加傾向にありますが、ベンチャーキャピタル投資額の対GDP比は0.03%(注5)と諸外国と比較して未だ小さく、人材がスタートアップ企業へ流入する潮流も未だ発展途上であることから、当社グループが属するマーケットは成長余地が大きいと認識しております。このような中、日本を代表するグローバル企業を生み出すためには、人材と資金を質・量ともに提供する企業の存在が不可欠であると考えております。
既存のタレントエージェンシーサービスのより一層の規模拡大により、人材支援企業としてのポジショニング確立を図ります。また、2022年3月期から開始したベンチャーキャピタル事業を通じた資金支援企業としてのポジショニングの確立にも努め、今後の収益機会の拡大を目指してまいります。
② 持続的な競争優位の確保
当社グループは、事業運営を通じて、スタートアップ企業に関する定量・定性情報を蓄積しております。当該情報は、独自アルゴリズムを用いた「数値化されたスタートアップ企業情報」として可視化され、当社グループの競争優位の源泉となっております。スタートアップ業界は日々目まぐるしく変化していることから一般的に情報が陳腐化しやすく、参入障壁が低い人材紹介やコンサルティングビジネスにおいて、当該「数値化されたスタートアップ企業情報」は障壁として有効に機能するものと考えております。今後も、ベンチャーキャピタル・起業家等イノベーションに関わるプレイヤーとのより緊密な連携により、当該競争優位性の維持・確保に努めてまいります。
③ スタートアップ・エコシステムの形成による自律的成長サイクルの構築
スタートアップ・エコシステムの形成においては、①起業家人材の創出、②資金の供給、③優秀人材の確保、④大手企業や研究機関の協力、⑤会計・法務・知財等の専門知識のサポート、⑥起業文化の醸成、⑦EXIT環境の整備等が必要と当社グループは考えております。当社グループは「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、独自のアルゴリズムを用いて各スタートアップ企業を数値化し、当社グループが成長性の高いと考えるスタートアップ企業(有力スタートアップ企業)を選定し、優先的にサービスを提供する仕組みを構築しております。これは、有力スタートアップ企業を優先的に支援することが、結果的に次のユニコーン企業を生み出し、新産業の創出につながると当社グループが考えていることに因ります。また、人材と資金の両側面から支援をすることで、更なる企業成長を促進し、その結果、新たな需要(人材・サービス)を生み出す、自律的な成長サイクルの構築を目指してまいります。
④ バリューを体現する人材の採用及び育成
当社グループの最も重要な資産は「人」であり、企業成長には人材成長が欠かせないと認識しております。当社グループは、経営ビジョンである「for Startups」を実現するために、従業員の目指すべきバリュー(価値観)として、以下の3つを重視しております。
・「Startups First」
全ては日本の成長のために。スタートアップスのために。
※スタートアップス=『進化の中心』にいることを選択する挑戦者達
・「Be a Talent」
スタートアップスの最たる友人であり、パートナーであり、自らも最たる挑戦者たれ。そして、自らの生き様を社会に発信せよ。
・「The Team」
成長産業支援という業は、Teamでしか成し得られない。仲間のプロデュースが、日本を、スタートアップスを熱くする。
当社グループは、当該バリューを体現した「強い個人」を一人でも多く輩出することが、組織成長に寄与すると考えていることから、従業員に対し、社内外において様々な成長機会の提供を行っております。今後も、社内外での様々な教育研修機会の提供を通じて、人材の採用・育成を強化してまいります。
⑤ コアコンピタンスを活用した事業領域の拡大
当社グループは、創業以来一貫してスタートアップ企業のサポートに特化した事業運営をしており、当該事業アセットを活用し、事業領域の拡大を図ってまいります。
・データベースを活かした収益機会の拡大
我が国のスタートアップマーケットに関する情報は網羅的に一元化されていないことが課題と当社グループは考えております。当社グループが運営する「STARTUP DB」はスタートアップ企業に関するデータベースとして24,000社(本有価証券報告書提出日現在)以上を収録しているほか、独自のアルゴリズムを背景に「数値化されたスタートアップ企業情報」を有しております。当社グループが有するタレントデータベースとスタートアップデータベースの双方を活かし、収益機会の拡大を図ってまいります。
・当社グループブランドの確立による収益機会の拡大
当社グループは、成長産業支援を事業目標としており、当社グループとスタートアップ企業、ベンチャーキャピタル、大企業、大学・研究機関、政府・自治体、メディア、専門組織等との連携を強めていくことで、スタートアップ・エコシステムの中心的存在になることを目指しております。成長産業支援の中核的企業としてのブランドを確立させ、収益機会の拡大を図ってまいります。
[脚注、用語の説明]
注1.ユニコーン企業
企業価値または時価総額10億ドル以上で、設立10年未満の未公開企業
2.出典:IMD World Competitiveness ranking 2023
(IMD:International Institute for Management Development)
3.出典:OECD Average annual wages
4.スタートアップ・エコシステム
起業家・人材・投資家・大手企業・研究機関・起業風土等の社会的な環境が有機的に連携し、スタートアップ企業が自律的・持続的に創出される環境
5.出典:内閣官房成長戦略会議第8回(令和3年3月17日開催)配布資料「基礎資料」
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの対処すべき課題としては、既存事業の拡大、収益性の向上、内部管理体制の整備が重要であると認識しております。
① 優秀な人材の確保と人材育成の強化
当社グループは、今後も事業領域を拡大しつつ、各事業の成長を目指し、ミッション・ビジョンに共感する優秀な人材を積極的に採用し続けることが必要不可欠だと考えています。そのため、新卒・中途を問わず、積極的な採用活動を継続してまいります。
また、急激な組織の拡大に伴い、今後は人的資本投資やエンゲージメントの強化がより一層必要になると認識しています。そのため、当社は、人事ポリシーを策定するとともに、当社独自のエンゲージメント指数の集計を行い組織拡大に合わせた進化・改善や、教育・研修の拡充などを進め、社員が自己実現できる環境を整備することで、中長期的な成長を目指してまいります。
② 認知度の向上
当社グループは、スタートアップ業界においては、スタートアップ企業向け人材支援の実績により、ブランドの認知は高いものと認識しております。しかしながら、社会全体からみると知名度が低く、認知度を向上させることが課題となっております。2022年に「スタートアップ育成5カ年計画」が発表され、スタートアップ企業への認知拡大が進むなか、今後は、社会全体に向けたスタートアップ関連の積極的な情報発信等、認知度を向上させる取り組みを行ってまいります。
③ 内部管理体制の強化
当社グループは、ビジネスの特性上、個人情報や企業情報を含め、機密性の高い情報を有しております。定期的な社内教育の実施や管理体制の強化に取り組んでおりますが、内部統制の整備と実効性ある運用を通じて、組織の健全なる発展に努めてまいります。
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